樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

絵の中の樹

2009年01月28日 | 木と作家
シャープの液晶テレビ「アクオス」の広告は名画シリーズになっていて、テレビでは吉永小百合が湖のほとりで白馬に出会うという幻想的なCMを流しています。あの背景は、日本画の巨匠・東山魁夷(かいい)の作品『緑響く』。

       
                (TVCMで使われた『緑響く』)

この東山魁夷の作品に何が描かれているかを調べて、モチーフごとに登場頻度と描写面積を計算した研究者がいます。戦後の67作品について調べたところ、登場頻度の1位は樹木で84%。ほとんどの作品に樹が描かれているわけです。
空(51%)、水(48%)を大きく引き離しており、続いて草、岩、山、畑の順。全作品の総面積でも樹木が46%でダントツの1位。以下、水(17%)、空(11%)、草(7%)と続きます。

       
               (ブナの森と滝を描いた『青響』)

東山魁夷の画集をじっくり見ると、確かに樹木が多いです。風景について、「私は画家である前に人間である。私は人間的な感動が基底に無くて、風景を美しいと見ることは在り得ないと信じている」と書いています。巨匠は、特に樹木のある風景を美しいと感じていたわけです。

       
      (『樹』。プラタナスかイチョウか剪定を重ねた公園木のようです)

ところが、樹木が多いのは東山魁夷だけではありません。この研究者は国立公園を描いた洋画78作品についても同じ調査を行っていて、こちらの頻度は空(94%)、樹(86%)、水(65%)、山(56%)という順。総面積では樹(27%)、空(23%)、水(18%)、山(11%)という順になっています。

       
               (魁夷が北欧で描いた『映象』)

日本画、洋画ともに樹木が描かれることが多いわけで、それだけ日本の風景には樹木が溶け込んでいるということでしょう。樹はモチーフにしやすいということがあるかも知れません。
それにしても、この研究者はよく調べましたね。頻度は簡単ですが、面積はどうやって計算したんでしょう?
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4 コメント

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木々 (bulbul)
2009-01-29 06:30:58
 少し本題から外れるのですが、木をモチーフした作品で印象深いのは千住博の「水の森」でした。これは65インチ液晶ディスプレー8台を縦に並べ、それを屏風にみたて、モノクロの森を映し出すという試みでした。
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そんな試みが (fagus06)
2009-01-29 08:48:37
ありましたか。知りませんでした。
最近、エコブームで樹木の画像がよく利用されます。私もこのブログに使うような画像をたくさん持っていますが、時々仕事で使うことがあります。
先日はある製薬会社のパンフレットにトチの巨木の写真を使いました。
素人写真ですが、それなりに使えます。
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絵もいいですね (guitarbird)
2009-01-29 14:44:17
こんにちわ
東山魁夷の絵画集の本がうちの物置から出てきましたが、
ここに紹介されている絵もありました。
私は絵はよく分からないですが、カンスタブルの風景が好きで、
本を何冊か買いました。
もし私が自分で絵を描くなら間違いなく樹木は入れるでしょうね(笑)。
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日本画では (fagus06)
2009-01-30 08:18:03
東山魁夷よりも福田平八郎の方が私は好きですが、今回、画集をじっくり眺めてみたら、やっぱり巨匠と呼ばれる作家はすごいですね。
高校時代は一応、美術部で油絵を描いていました。でも、人物画ばかりでした。
今なら私も樹木を描きます。時々、森を歩いているとスケッチしたくなることがあります。
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