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不動産受験新報2007年8月号 司法書士 第8回ネコでも分かる供託法

2007-08-29 09:00:00 | Weblog
住宅新報社・月刊「不動産受験新報」20007年8月号
       (毎月1日発売 定価910円)

第8回
ネコでも分かる供託法
司法書士 田中利和
 
(1) 権利供託
教授「前回から執行供託に入ったんだけど,執行供託のイメージはつかめたかな?」
司法「金銭債権に対する強制執行による差押えの場合を想定して全体像を説明してもらいましたが,なんとなくといったところですね」
教授「今日から,出題範囲に関する論点を検討していこう。執行供託を勉強するときは常に下記の図を頭に入れておいてね。金銭債権に対する強制執行による差押えの場合の第三債務者が供託する場合は,2つに分類されているんだ」
       A
    
    a債権
       B       C
          b債権 
 A-差押債権者(執行債権者)
 B-債務者(執行債務者)
 C-第三債務者
司法「1つは,前回の話の中にも出てきた『権利供託』と呼ばれるものでしょうか?」
教授「もう1つは『義務供託』と呼ばれるものなんだ。まず,権利供託から学習していこう。権利供託の根拠条文が民事執行法156条1項だね。条文を確認しよう」
 
 第三債務者は,差押えに係る金銭債権(差押命令により差し押さえられた金銭債権に限る。)の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託することができる(民事執行法156条1項)。
教授「民事執行法156条1項によると,第三債務者は,供託をすることができるのであって,供託を義務づけられてはいないんだ。その意味で,これを『権利供託』と呼んでいる」
司法「なるほど」
教授「この権利供託により第三債務者が供託する形態としては,次の3つがある」
 
①金銭債権について全額の差押えを受けた場合における,「当該金銭債権の全額に相当する金銭」の供託
②金銭債権について一部の差押えを受けた場合における,「当該金銭債権の全額に相当する金銭」の供託
③金銭債権について一部の差押えを受けた場合における,「当該差押金額に相当する金銭」の供託
(日本加除出版『供託の知識167問』301頁より)
教授「具体的に各場合について考えてみよう。先の図を使って,まず①のケースから考えてくれるかい。b債権の金額が100万円としよう」
司法「はい。BがCに対して100万円のb債権を有していた場合ですね。その場合,Bの債権者Aがb債権の全額の100万円を差し押さえたときは,Cが100万円を供託する場合です」
教授「そのとおり。これに関する過去の本試験を確認しておこう」
 
 金銭債権に対して強制執行による差押えがされた場合には,第三債務者はその金銭債権の全額に相当する金銭を供託しなければならない。(昭和57年 問13肢2)
司法「前回の復習ですね。この問題は誤りです。この場合,民事執行法156条1項の規定により『供託することができる』が正解です」
教授「そうだったね。ただ,この問題の論点は,供託をしなければならないかどうかということだったね。仮に『供託することができる』という出題形式であったとすると,供託金額については『金銭債権の全額』を供託するということで,①のケースに該当することになるね」
司法「そうですね」
教授「次に,②のケースはどうかな」
司法「同じくBがCに対して100万円のb債権を有していた場合,Bの債権者Aがb債権の一部として50万円を差し押さえたとき,Cが100万円を供託する場合です」
教授「そのとおり。これについても過去の本試験を確認しておこう」
 
 金銭債権の一部が差し押さえられた場合,第三債務者は,その債権の全額に相当する金銭を供託することができる。(平成元年 問14肢1)
司法「そうすると,この問題は正しいですね」
教授「民事執行法156条1項に照らせば,債権の一部のみが差し押さえられている場合であっても,当該債権の『差押えに係る金銭債権(差押命令により差し押さえられた金銭債権に限る)の全額に相当する金銭』を供託することができることは明らかだよね」
教授「最後に③のケースはどうだい」
司法「BがCに対して100万円のb債権を有していた場合,Bの債権者Aがb債権の一部として50万円を差し押さえたとき,Cが50万円を供託するということでしょうか?」
教授「そのとおりだよ」
司法「民事執行法156条1項は,『差押えに係る金銭債権(差押命令により差し押さえられた金銭債権に限る)の全額に相当する金銭』と規定していますが……」
教授「条文によれば,債権の一部の供託が認められるかは明らかでないよね。素直に条文を読めば,債権の一部の供託は認められないのではないかと考えそうだね。ところが,金銭債権の一部につき差押えがされたときは,第三債務者は,差押金額に相当する金銭のみを供託することもできるんだ(昭55・9・6民四第5333号)」
司法「そうなんですか」
教授「この論点も過去の本試験において出題されているよ」
 
 金銭債権の一部が差し押さえられた場合,第三債務者は,その差し押さえられた金額に相当する金銭を供託することができる。(平成元年 問14肢2)
教授「金銭債権の一部のみが差し押さえられた場合において,当該債権の全額に相当する金銭を供託することができることは前述のとおりだけれども,この場合に差押金額に相当する金銭のみを供託することができるかどうかについても,先例は積極的に解しているんだ」
司法「どういった理由からですかね」
教授「まず前提として,②のケースは,執行供託と弁済供託が混在しているということを踏まえておいてくれるかい」
司法「どういうことですか?」
教授「②のケースは,b債権の100万円のうち50万円が差し押さえられた場合だよね。その場合,100万円を供託したとき,差し押さえられた部分の50万円の供託については執行供託,その残余の50万円については弁済供託の性質を有しているんだよ」
司法「はい」
教授「それを踏まえて説明するよ。債権の差押えが行われた場合の第三債務者の不安定な地位を救済しようという権利供託の趣旨に照らす限り,一部差押えの場合においては,差押えの効力が及ぶ範囲内で供託が認められれば十分であり,残余の部分について併せて供託を認める必要はなかったはずだ。ところが,金銭債権の一部のみが差し押さえられた場合において,当該債権の全額に相当する金銭を供託することを認めた。これは,第三債務者をして差押えによる分割支払,つまり,差し押さえられた部分は供託して,残余の部分は執行債務者に支払うことの二度手間となる第三債務者の不利益から免れさせるためであって,第三債務者に全額の供託を強いる趣旨ではないと考えられているんだ」
司法「なるほど」
教授「そうすると,もし,第三債務者が二度に分けての免責行為,すなわち分割支払をすることの不利益を受け入れるならば,差押金額のみの供託を認めても差し支えないと考えられる。だから,差押金額のみの供託も認められているんだ(商事法務研究会『民事執行法・民事保全法と供託実務』30頁から一部引用)」
司法「なるほど。よく分かりました」
教授「ただし,金銭債権全額の差押えを受けた場合における全額未満の供託や,金銭債権の一部の差押えの場合における,差押金額と債権金額との間の適宜の額での供託は認められていないからね」
司法「了解しました」
教授「それに関連して,もう一度,下記の本試験の問題を見てくれるかい」
 
 金銭債権に対して強制執行による差押えがされた場合には,第三債務者はその金銭債権の全額に相当する金銭を供託しなければならない。(昭和57年 問13肢2)
教授「このような問い方であれば,この肢は誤りということになるけれども,次のような問題が出題された場合,ひっかからないように気をつけてね」
 
 金銭債権の全額が差し押さえられた場合,第三債務者は,民事執行法156条1項の規定により供託する場合には,債権全額を供託しなければならない。
教授「この問題は正解かな?」
司法「この問題の最後のくだりの『供託しなければならない』ばかりに気がいってしまうと,この問題は誤りだと解答しそうですね」
教授「そうだね。この問題は,すでに第三債務者は供託することが前提となっているので,『供託しなければならない』かということが論点ではなく,『供託すべき金額』が論点となっているからね。短い文章の問題ほどよく注意して読んでね」
司法「分かりました」
教授「以上が権利供託の供託金額に関する論点といったところだ。最後にもう1つ,よく出題されている本試験の問題を確認しよう。次の問題だ」
 
 給与債権が差し押さえられた場合において,第三債務者が供託するときは,差押禁止部分を含めた給与の全額を供託することができる。(平成8年 問11肢5)
司法「平成12年にも同じ趣旨の問題が出題されていますね」
教授「平成16年にも形を変えて出題されているから,今後も出題される可能性はあると考えていいだろう。ところで,平成8年の問題はどうだい?」
司法「この問題は正しい肢でしょうか」
教授「正しい肢だよ。結論として,第三債務者は,民事執行法156条1項を根拠として,差押えの効力が及んでいない差押禁止部分を含む債権全額に相当する金銭の供託をすることができるんだ」
司法「なるほど」
教授「簡単に説明しよう。給料は,生活保障的な性格が強いことから,公益上・社会政策上の理由により,原則として,その支払期に受けるべき給料の4分の3に相当する部分は差押えが禁止されているんだ(民執法152条1項2号)。そうすると,これを除いた金額が差押え可能な額ということになるよね。条文も確認しておこう」
 次に掲げる債権については,その支払期に受けるべき給付の4分の3に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは,政令で定める額に相当する部分)は,差し押さえてはならない(民事執行法152条1項)。
 給料,賃金,俸給,退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権(民事執行法152条1項2号)
教授「金銭債権について差押えがされた場合は,当該差押えにかかる債権の免責を受けるために,当該債権の全額に相当する金銭を供託することができる(民執法156条1項)。前述のとおり,民事執行法156条1項は『全額に相当する金銭』と規定しているけれども,債権の一部について差押えがされた場合には当該差押部分のみの供託が可能だよね(昭55・9・6民四第5333号)」
司法「そうすると,差押え部分のみの債権を供託すべきではないかということがいえますよね」
教授「そうなんだ。しかし,本問は給料全額を供託することができるといっている。ところが,給料については,直接全額払いが原則だから,それとの関係上,本問のように,差押えが禁止されている4分の3に相当する金額も含めて全額の供託ができるかどうかが問題となる」
司法「なるほど。そうすると,どうすべきでしょうか?」
教授「民事執行法156条1項は,『差押えに係る金銭債権(差押命令により差し押さえられた金銭債権に限る)の全額に相当する金銭』と規定しており,この『金銭債権』とは金銭の引渡しを目的とする債権のすべてを含むものであって,特に給料債権である場合を除外しているとは考えられないこと,給料の直接払いの趣旨は,中間搾取の弊害を除去し,給料が確実に労働者の手に渡るようにというところにある。また,給料の4分の3の部分は弁済供託の性格があり,労働者としてはいつでも自ら還付を受けることから,実質的に見ると直接払いの原則が満たされているといえる。したがって,給料の全額について供託することができると解されているんだ(商事法務研究会『供託実務相談』68~69頁から一部引用)」
司法「なるほど。だから給料債権の一部,つまり,差押え禁止部分を除いた給料の差押えがあったとしても,民事執行法156条1項に基づき給料の全額について供託することができるのですね」
教授「そういうこと。よし,今日はこのくらいにして続きは次回にしよう」
(参考書籍)
 ●『雑供託の実例雛形集』日本加除出版
 ●『供託の知識167問』日本加除出版
 ●『供託先例判例百選』有斐閣
 ●『供託実務相談』商事法務研究会
 
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