とんねるず主義+

クラシック喜劇研究家/バディ映画愛好家/ライターの いいをじゅんこのブログ 

とんねるずからはじまった

2007年04月01日 21時21分49秒 | ワンフー日記

『チュートリアリズム』
の感想で「別の記事にして書きます」と予告していたことについて、書きまーす。

ここ数年のお笑い人気にM-1効果や吉本興業の隆盛などさまざまな要因が重なって、いまコメディ界は第2次MANZAIブームとでも呼ぶべき様相を呈しています。

80年代の漫才ブームとのちがいは何か。それは、コンビの「絆」が重要視されることではないかな?と、わたしは感じています。

もちろん漫才自体のおもしろさやテクニックは大前提でしょうけれども、それに加えて、コンビ同士の「友情」とか「仲の良さ」に、いまの観客は魅力を感じる。コンビのどちらかだけが強烈な個性(=ボケ)をもっていて、やや影のうすいツッコミのあいの手によってそのボケを生かす、というありかたは、過去のものとなりました。

それほどたくさん漫才コンビを見ているわけではないのですが、知る限りで、「コンビ愛」というテーマをいまもっとも積極的に芸の一部として取り入れているのは、チュートリアルではないかと思います。

念のために言っておくと、わたしが通常考える「コンビ愛」は、プライベートでも仲がいいとか、いつもつるんでいるとか、そういうものを求めているわけではありません。「コンビはプライベートでは会わない」とか「たがいの住所も知らない」とかいった言辞を長年聞かされてきたわれわれ観客ですから、そこまでの幻想はもはや持たないのが一般的でしょう。

それに、仲が悪くてもステージではすばらしい芸を見せてくれるコンビだっているだろうし、すべてのコンビに「愛」を強制するという発想には違和感を感じます。

・・・と、口ではさめたことを言いながらも、やっぱりコンビがきちんと目と目を合わせて笑い合い、支え合う姿を見ると、熱くなってしまう。「心がほっこりする」という表現をいまの若者はよく使います。その「ほっこり」感をもっともストレートにあたえてくれるのが、お笑いコンビのみなさんなんだと思う。


そんな傾向に共感しつつも冷静に見ようとしてきたわたしにとって、チュートリアルの登場はまさに驚異でした。

先日、毎日放送で放映された特番で、チュートリアルが九州を旅するというのがありました。14年前に高校の卒業旅行で行った場所を、ふたりでもういちどたどってみようという企画です。普通にスーツケースをひっぱって2泊3日、仕事半分遊び半分といった風情の番組でした。

行く先々でふたりは思い出を語り合うのですが、それは本物の幼馴染みだけが共有する本物の思い出でした。というか、もはやふたりの人生そのものでした。幼稚園から共に育ってきたふたりですから、すでに25年以上一緒にいるわけなのです。

「こりゃあ筋金入りの親友同士なんだな」

と、思いました。

さらにおもしろいのは、本人たちがそれを客観的に認識していて、隠したりはずかしがったりせず、みずからの芸風として打ち出していることです。


そんな姿を見ると、とんねるずの若い頃を思い出さずにはいられません。
現在の「コンビ愛」重視の傾向は、とんねるずがつくったものだと考えているからです。
(これについては「お笑い界のニューホープ その5」で詳述しております。)

といっても、とんねるず以前の喜劇界についてくわしいわけでもないので、まちがっているかもしれません。がしかし、自分が幼いころから見てきた中では、構成員同士の友情(愛情)をウリとするコメディアンを他に知りません。

コンビ愛のないコンビなどいないでしょうが、とんねるず以前はそれを客体化して考えるということもなかったでしょうし、ましてやそれをコンビの看板として打ち出すこともなかったでしょう。

逆にいえば、だからこそとんねるずは新しかった。若者はその出現にショックを受け、強くひきつけられた。


とんねるずには同性愛を扱うネタが非常に多く、それを「とんねるずらしさ」とみなす人もいます。それは、ふたりの対等な人間同士の深いつながりを表現するために、もっとも有効な題材です。

同じ特徴がチュートリアルにも見られます。彼らの漫才には、意外なほど同性愛ネタが多い。ネタは徳井さんが書いているそうなので、彼の中にとんねるず(特にタカさん)に近い感覚があるのではないかな~と思う。

また、とんねるずはノリさんが女性、タカさんが男性としてしばしばラブストーリーを演じてきました。ビデオ「とんねるずのコント」を観ていると、「タカさんとノリさんは、こうして舞台の上で何度も恋愛をしてきたんだなあ・・・」と感じます。

チュートリアルは、これをネタではなく実生活で(というか実生活という設定のなかで)やってしまう。純情な少女のような心をもった徳井さんと、漢の心をもった福田さん(実像は逆かもしれないけど)は、相方への愛情を(照れながらも)ストレートに伝えることができる。ふたりが筋金入りの親友だからこそ、それは説得力をもつわけです。

悔しいかな、これはとんねるずにはなしえないことです。石橋貴明と木梨憲武は、尊敬しあうコンビであると同時に最大のライバルでもあるからです。

でも、とんねるずには、コンビになってから積み重ねてきた年月がある。「あじさい」としてノリさんが歌う曲を聴けば、彼らがいまでも「二人だけの世界」への愛をさけびつづけていることが、わかるのです。


「お笑い界のニューホープ その6」で、わたしはこう書きました。

「とんねるずは、現代の太夫才蔵にほかならない。タカさんとノリさんがにっこりと笑いあう姿に、わたしたちは、人と人の関係性の、理想の姿を見い出しつづけているのである。」

とんねるずが対象化し、人々に知らしめた太夫才蔵的関係性は、「コンビ愛」という新しい伝統となって、とんねるずにあこがれて育った若手芸人たちに受け継がれています。それは、逆説的に漫才という芸能の原点回帰となっているのかもしれません。


芸の方向性にちがいはあるにせよ、チュートリアルという、とんねるずの系譜のひとつを受け継ぐ(とわたしが勝手に思っている)才能豊かな芸人さんが出てきてくれたことを、うれしく思います。

究極のコンビ愛を見せてくれるチュートリアルが、芸人になることでかつての友情を失ってしまわないよう、願います・・・青いかな?







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2 コメント

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Unknown (タイタン)
2007-04-03 12:56:24
チュートリアリズムについては本当に何も知らないに等しいんですが…(っていうか、お笑い番組をそもそもあんまり見てない

なので、コメするのも変ですが、「コンビ愛」というお題でひとつ。

14歳から知っているキンキ(いきなりジャニ系…)
を見て来て思うのは、長く継続するのは、本当にたくさんの偶然の産物だということです。

お互いの個性、才能を活かしあうのも勿論ですが、順風満帆とはなかなかいかないし、
そのときお互いは相手にどういう気持ちを抱いたか、ずっと心に残ることでしょう。
(なのでキンキは壊れるかも、と何度も思ってました…実は。嫌いだからじゃないですよ、決して!)

そういう意味で「なんだろ、この二人」と思うのは、
最近ではドランクドラゴンかな?

「東京フレンドパーク」でのコンビっぷりは、かなり理解しがたく、でもマイペースで、あれはあれでバランスなんだろうな~と思ったものです。

…何を言いたいのかわからなくなってきました。
ごめんね~・・・


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Unknown (ファイア-)
2007-04-03 17:55:46
タイタンさん、コメントありがとうございます
そうですね、きっとお笑いだけでなく、いろんな分野で「コンビ」の良さ、難しさってあるんでしょうね。
「たくさんの偶然の産物」いい表現ですね。
キンキはうたばんでのトークとかを見てても、おたがいにすごく思いやってるなあというのを感じます。

そういえばドランクドラゴンって二人そろっているところを見たことがない・・・^^;
はねるのとびらとか笑いの金メダルとかのお笑い番組は、わたしも全然見てないです~
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