図書館-J

自分の為に、読んだ本の感想メモ

本と出合いを大切に

『神様のパラドックス(下)』/機本伸司

2011-07-23 21:35:57 | 機本伸司
機本伸司 著『神様のパラドックス(下)』(ハルキ文庫)
【2011.04.23】読了。
(2011年7冊目)

下巻です。
読み切るのに時間がかかりました。



▼愚痴のような
最後まで、盛り上がれなかった自分に残念。
読書のペースがゆっくり分散型だったのがいけないのか、
あるいは、著者の作品を読み過ぎてマンネリを感じているからなのか。
勢いが感じられない。
著者の魅力は発揮されていると思うんだけどなぁ。
読み手である自分の問題か。

▼キャラクター
それぞれの登場人物の個性が薄い?
・・・というわけでもないんだけど、なんだろう?

そんな中、「フライデーM」が独特の存在感でしたね。
神とは何なのか、葛藤を続ける様子は人間よりも人間らしく思えます。
量子コンピュータ云々よりも、こんな存在を生み出せる技術に驚嘆です。
近未来って設定だったよね?

▼神とは
それでも終盤の神様論については、とっても興味深く読めました。
最終的に、一つに落ち着けないのも良いです。

▼難しいヨ
量子コンピュータの仕組みが最後までイメージできなかった。
理解できないのはしょうがないけど、もうちょっと受け入れたかったなぁ。

▼総じて
ぼんやり。
『神様のパズル』と続けて読むと、もっと面白く感じられるかもしれませんね。

でも、全体の雰囲気は好きです。
テーマが毎回素敵ですよね。奇抜というか、エンタープライズが溢れるって感じです。

次の作品にも期待。

『神様のパラドックス(上)』/機本伸司

2011-06-27 22:22:57 | 機本伸司
『神様のパラドックス(上)』(ハルキ文庫)
【2011.02.13】読了。
(2011年3冊目)


期待の機本伸司作品です。
ただ、ちょっと神様系が多くないですか?タイトル。ちょっと混乱してきました。
以前に『神様のパズル』を出版していますね。

今回は、量子コンピュータを使って、神様創って占いしようという話。
相変わらず目標が飛びぬけている。

▼続編ではなく
まず、読み進めると、見覚えのある単語。
ソウルオリジン。
そして登場する、ネオ・ピグマリオン。
確か以前読んだ、シリーズにも登場していたんじゃないでしょうか。
これまでは完全に背景だったので、胡散臭いイメージしかなかったネオピグマリオンですが、今回はこの組織の誕生を垣間見る事が出来るようです。

あとから気付いたけど、『神様のパズル』のスピンオフって書いてあった。

▼難しいテーマ
視点は大学生、直美。
量子コンピュータについては素人の彼女を通すおかげで、なんとか話が進みます。
なんたって量子コンピュータ。
どうしても仕組みがネックです。
色々説明してもらいましたが、やっぱりもやもやです。
それでも雰囲気で進行が可能なのは、素人視点が許されるからです。

▼年の差なんて
直美が機長さんに憧れるのは、ちょっと想像し難い。
結構年が離れているのでは?

しかし、雪の結晶ストラップ。
もどかしい。渡せないあの感じがもどかしい。

▼展開
事業は遅々として進まない。
難しいことをしているんだから当然なんだろうけれど、
ゴールが目的なんじゃなくて、過程がメインだと認識するべきかもしれない。

下巻の展開に期待

『パズルの軌跡』/機本伸司

2010-08-05 21:33:26 | 機本伸司
機本伸司 著『パズルの軌跡 穂瑞沙羅華の課外活動』(ハルキ文庫)
【2010.06.??】読了。
(2010年9冊目)


『神様のパズル』の続編!!
まさかあの話に続きがあるなんて考えてもいなかったので、本屋で見つけた時にはびっくりです。
『神様のパズル』は結構お気に入りです。
著者の機本さんの作品は、どれもテーマが魅力的なので、今回も自然と期待度は高まります。

それにしても、表紙が前作にもましてアニメチックですね。
ちょっと抵抗があります。
それに、なんとなく、絵柄が前作とは違いませんか?

まぁ、気になるのは内容です。
果たしてどんな内容なのか。

内容に触れながら、感想メモ。















▼続編なんだ
ただ一つ。
なぜ続編なのか。
続き物は、そのまま続けて読んでしまいたい。
なぜなら、前の話を忘れてしまうから。
今回も、続編を見つけたことが、うれしさ半分。残念さ半分。
前作を大雑把には覚えていても、今回読んでいくうちに、きっとどこかに障害をきたすに違いないからさ。
別の話としてもらえれば、入りやすいだろうに・・・なんて考えました。

稲の話とか、あったあった、なんて思い出しながらも読めましたが、
どうしてもキャラクターを掴むのに時間がかかりました。
前作がどう終わったのかとか、大事な点を失念してたりしましたから。

▼印象
スロースタート。
人間とは、エゴ、全体我、など面白い話題が具体的に触れられるようになるのは、中盤に至ってからです。
それまでは、手探り状態の主人公チーム。
未知の組織に立ち向かっていくわけですが、未知過ぎていまいちぱっとしません。

人間とは?
という疑問が前面に出ながらも、掘り下げ方が今一つ。

結論としては、
沙羅華が望み薄の消火活動をするシーンにもあるように、
結果じゃなく、過程を重んじるスタンス。
じたばたしてもがいて、必死に生きること。
それが生きる目的。
みたいな?
トレッキングの目的が山頂だからといって、山頂にワープしたら
きっとそれはトレッキングじゃなくなっちゃうように。
そういう結論は、僕にとってあんまり新鮮じゃないなぁ。
とても共感はできるんだけどね。

仏教でいう、「修証一如」ってやつです。

▼理想の生き方
ノアス化するというのは、動物と同じになるっていうんじゃないかな。
すると動物は悟っているのか、真理を得ているのか。
そういう疑問がわいてきませんか。

▼興味の連鎖
ツァラストラはかく語りき、が披露される場面がありました。
これ、タイトルは時々耳にしたことがあったんですが、そういう内容なんですか。そんな哲学的なものだとは思いもしませんでした。ちゃんと内容を知りたいです。

▼総じて
続編じゃなければ。
満足度はちょっと低めかな。期待値が高かったのもあるけど。

でもまだまだ読みますよ。
この作家さん、テーマが良いから。

『僕たちの終末』/機本伸司

2009-01-12 21:52:54 | 機本伸司
機本伸司 著『僕たちの終末』(ハルキ文庫)
【2008.07.11】読了。
(2008年38冊目)

本屋さんで見つけて、購入。
『神様のパズル』以来お気に入りの作家さんです。
これが3冊目になるかな。
小松左京賞なんてのも受賞してるし、肩書きも十分な魅力です。

読んだ記録です。
内容についても言及しながらメモ。
ネタばれあります。









▼扱う問題はデカイのだ
太陽の活動の影響で、地球での生存が困難になってきた。
そこでなんとか地球を脱出しようというお話です。
未来の話じゃなくて、現代(?)の科学技術で。

このテーマについて
あとがきでは、小松左京さんの『果てしなき』に関連づけたコメントがあったけれど、どちらかというとぼくは『さよならジュピター』を連想しました。

▼非現実的な問題を現実的に取り扱う
それにしても、ある程度現実的な視点から、地球脱出のための手段を想定する作業は、かなり野心的な印象を受けます。想像することさえ難しい問題を、物語として完成させたのだから、この作家さんはすごい。
『神様のパズル』でも宇宙を創る話でしたが、こういう超越的な作業への挑戦って非常に魅力的です。
普通ならはじめから「無理だろ」って思えることにあえて取り組むなんて。

▼立ちはだかる問題
宇宙船を造ろうというわけですが・・・
造船過程には多くの困難が伴います。
技術はもちろん、財政的な問題、政治的な問題も。

技術面に関して・・・推進方法としてラムジェットエンジンが顔を出しました。確か小川一水さんの『第六大陸』で見かけたのを思い出しました。一般的にどれくらいメジャーな手段なんでしょうか。
僕には他にもイメージし難い描写もたくさんありましたが、雰囲気だけでも楽しめれば満足です。

政治的な問題に関して・・・なんだかんだで、アメリカは世界を牛耳る厄介者のポジションです。こうして描かれるとアメリカという国が存在することの功罪について考えちゃいます。
それにしても、ギリギリの状況になっても、人類は協力できないのは運命なんでしょうか。結局自分で自分の首を絞める存在。たぶん、実際にもこんなことになるんでしょうね。自分で作り出したルールによって人類は苦しめられるんでしょう。助かるテクノロジーがあっても、それを形にするだけの統一性がない。悲しいことです。

▼キャラクターの魅力
岡本さんの口癖
「それは理屈に合わない」というのは、初めのころは面白く思ったけど、後半ちょっとくどい。
『スタートレック』のスポックが「非論理的だ」というのを非常に強く思い出される。著者も狙ってやったのだろうか。まぁ、彼のキャラクターはなかなかいいアクセントになっていたので、必要なキャラクターだったとも思う。
アメリカの宇宙船が「エンタープライズ」と命名されたというのもスタトレを意識してしまうが、偶然か。

主人公のキャラクターが今一歩。魅力に欠ける。
小説の主人公に、ダメ人間が置かれることも珍しくない。ただ、ダメはダメなりに何か魅力になるものを持ってるんです。だから小説の主人公になれるんです。
その点、彼の魅力は、なんだろう?
ひたむきに「真理」を求める姿勢か。生きる意味とか、そういう会話は魅力的で共感できたりする部分もあるわけですが、基本的な姿勢に「逃げ」が強く意識されます。言い訳がましい、とでも言おうか。期待を裏切る言動がちょっと残念。
さらに終盤、姿勢転換がまた唐突。ベクトルは望ましい方向へ向いたのに、そのきっかけがちょっと曖昧で唐突な印象。

▼話の行く先に
結末は
いい意味で裏切ってくれた。果たしてこの結末が望ましい結果を生み出すのかどうかは、さっぱり想像できない。でも、一つの可能性が増えたわけで、望ましいことではあるんだろうな。
ただ、本来の乗員が誰もいないなんて、肩透かし。
主人公の最後の立ち直りはとても好印象です。

▼ということで
話が壮大でした。
なんだかんだ書きましたが、満足しています。
こういう小説ってなかなか出会えない。
著者の他の作品にも興味がわくところです。

『メシアの処方箋』/機本伸司

2008-09-06 22:12:05 | 機本伸司
機本伸司 著『メシアの処方箋』(ハルキ文庫)
【2008.02.27】読了
(2008年18冊目)

著者機本さんの作品を読むのは、これが2冊目です。
前作『神様のパズル』が結構、好みの思想展開だったので、今回も期待値高くして手にとりました。

では、読書メモ。
読んだことを忘れないように、記録しておきます。
内容に触れますので

ネタばれ注意。










▼SFは物理ベースのみにあらず
今回も前回と同じく、サイエンスフィクション、つまりSFに分類される内容。
そして、思いました。
当たり前なんだけど、
SFってのは、みんな物理ベースではないんだ、と。
なんとなく宇宙とか未来とか、物理学がとっても存在感を示すイメージがあるんですが、今回はそれとはちょっと違う。
生物学の存在感が強い。

▼生命倫理
最初にヒマラヤで「方舟」が発見される。
メッセージを解き明かすと、遺伝子情報が。
生命倫理に関する議論を飛び越えて、操作された遺伝子によって「子」が生み出される・・・

この、人の遺伝子をどこまで操作してもいいのか、というテーマ。
あまり深く考えたことがなかったけど、それは答が出せない問だからかもしれない。
優秀な人間を生み出す。病気を防ぐために操作する。性別を選択する。容姿をコントロールする。
さて、何が許されて何が許されないのか?その理由は?
そんな問いに正解は求められません。

▼可能なら神を生み出してもいいのか?
もちろん本書のように、バイオハザードの可能性を顧みず、強行するのはいただけない。でも「神」を生み出せるのだとしたらどうだろう。
その場合、生命倫理の問題もあるが、もう一方で、神とは何かというのも問題だ。
神が生きて目の前にいること。それを認められるだろうか。
姿が抽象的で声が聞こえないからこそ「神」は「神」たり得るのではないか。
曖昧であることは、無限の可能性を秘めている。
だから、存在することで、可能性は限られてしまう。
そしたらもう、「神」ではない別のモノになってしまうと思う。

▼現実なら
「不空」は姿を現し、人々をいやした。さてそれは受け入れられる現象なのか。
真っ先にそういうものに飛びつく人もいるんだろう。
でも、多くの人は警戒するだろう。そして、効果がはっきりしてくると徐々にブームになるのだろう。
僕ならたぶんそのブームにかなり遅れて、それでも恐る恐る一歩を踏み入れるような信者になるかな。結局。

▼サボーター
このあたりの大衆の真理は、BBSという舞台でよく表現されていた。
ネット上、バーチャルの声がとても活き活きと。
それなのに、いざ城に集合した人の群れからは、もう声が聞こえない。彼らはただのコマとしての存在感しかなかった。
それがちょっと物足りないなぁ。

▼デザイナー
彼(ら?)の意図は、人間の心を埋めることなのか。
廃れて、疲れた心は不空の活動によって満たされる。あるいは満たされるきっかけを与えられた。それは、終焉に近い人類の文明を救うものなのか。
ヒマラヤの雪を溶かすまで地球の環境を改変してしまったこの文明。果たして心が埋まるだけで、救われるのか。
いや、不空はメシアではない。デザイナーの残した小さな抵抗なのかもしれない。その抵抗があることで、その場をしのぐことができる、その程度の。

▼気になるのは
不空の名前の由来となった「不空羂索観音」ってのを実際に見てみたいなぁ。

▼ことば
"時計回りは日時計からきている"(P.78)
へぇ。言われてみれば。
考えたことがなかったけど、納得。

"理解をこえたものに対して、拒絶するか、あるいは壊してしまうタイプの人間は、必ずいるからな"(P.372)
うんうん。
宇宙人なんか来たら、無条件で拒絶する人多そうだ。
開国したときの日本とかもそうかな。

▼まとめて
生物学的なSFはあまり馴染もないし、好みでもないんだけど、生命倫理に関する議論は面白く感じた。
なぜだろうか。答の出ない問題に向き合うとき、何かしらの充実感を得てしまうのは。
また、物語の展開が、想像の一歩上を行く。それがすごく好印象。
逆境を発想の転換で乗り越える。
そして、黒か白かの結果ではなくて、よりリアルで複合的な結果をもたらします。その辺が読んでいて満足できるポイントでしょうか。
前作『神様のパズル』と今回の『メシアの処方箋』、どちらもベクトルは違うんだけど、とても魅力的なテーマと議論、そして展開だったと思います。
欲を言うなら、キャラクターの性格とかそこら辺、もうちょっと魅力的に描いてくれると言うことない。

神様のパズル/機本伸司

2007-03-16 20:51:14 | 機本伸司

【2007.03.14】
機本伸司 著『神様のパズル』読了。
(ハルキ文庫)

第3回小松左京賞受賞作品です!
小松左京さんのファンとして、この肩書きは興味を惹くのに決定的でした。

表紙はライトノベル系かと思えるようなアニメチックな絵ですが、
この話のテーマは、「宇宙をつくることは出来るのか?」です。
壮大すぎですよね。興味津々です。

 

――以下ネタバレの可能性があります!――

▼タイトル
『神様のパズル』
作中で言及されるまで気づかなかった自分にショックですが、これってアインシュタインの言葉なんですね。
つい最近、アインシュタインについての調べものをしてたので、微妙にタイムリー。
(話はズレますが、アインシュタインは、「神」に関する発言を意外と多く残しています。科学を追及してると、「何か」があるのを意識しちゃうんでしょうね。)

▼登場人物たち
大学4年生の主人公。
研究室の選択の動機がまた何とも言えません。
読みながら、苦笑いしてしまいました。
そして、その一方通行っぷりにも。

17歳の天才・沙羅華。
飛び入学で若くして、主人公と同じゼミに。
主に彼女が「宇宙の作り方」に向けて突っ走るわけですが、年齢を17にする意味はあったのか。できたら普通の大学4年生にして欲しかった。
そりゃ、特別な天才ってことを象徴することは間違いないけどさ。なんていうか、いかにもライトノベルっぽい(完全に偏見ですが、ね)。
ただ、人格的な成長って展開が良い味付けになったのもまた事実。
(余談ですが、「天才」って肩書きで、真賀田四季を連想させる僕は森博嗣病です。)

▼絶滅論
P.37-38のシミュレーションで、絶滅について語られます。
これって、人類にも当てはまるんでしょうねぇ・・・
人類ってこのままでは自滅しますよね。環境破壊なり、戦争なり。あるいは知的好奇心で。
仮に世界が安定して争いをなくせたとしたら・・・外的要因(宇宙人とか!)との接触があったとき、絶対に支配される側になります。
これって避けられない運命なんでしょうか。

▼加速器
一応、僕も大学では天文学を扱いました。
だから、相対性理論くらいならイメージできるんです。
E=mc^2とか等価原理とかさ。
でも、量子力学や加速器までは、手を出してないんです。
特にストーリー中、加速器の話題が頻出しました。重ヒッグス粒子って何さ!
ここをイメージしづらかったのが無念。

▼批判的に
物理学は完璧かというとそうでもないんですよね。
科学は万能ではない。
でも、万能だと信じたくなりませんか。
いつか、物理は全てを明らかにしてくれる、って。
今の段階で、確かだと言えるような物理現象だってあります・・・が。
"物理学が正しいというのなら、とことん突き詰めたところまでさかのぼって、正しさを証明しておくべきではないのか?それがあやふやなままで、他が正しいといわれても、信用するわけにはいかない。"(P.77)
主人公はこんな風に語ります。
例えば、「虹」です。
虹のメカニズムについては説明が可能です。光の屈折とかで。
でも、じゃあ光って何か?どうして波長によって屈折率が違うのか?
「どうして?」を追求してったら、やっぱり答えられない問いが根本にあるんですよね。
(これが、所謂「人間原理」につながるのかなぁ)

▼最終理論へ
宇宙は"無"からつくられた・・・・すると、人間にも宇宙をつくることができるのか?
だって、材料は"無"なんだから。
もっともな疑問だよねー。

"宇宙は無から生まれた――。君たちはそれを無批判に受け入れているのに、じゃあ人間が無から宇宙を作ろうと言うと、それはできないと言う。何かおかしいと思わないか?"(P.76)
こうして始まった、宇宙はつくれるか議論。
そもそも始まりは"無"なのか?

しかし、読み始めて心配になったのは、このテーマを中心にもってきたということは、ストーリー的には、話のまとめとして何らかの結論を出さねばならないということです。
かといって、宇宙の謎が解けたなんて結論出したら、学生としての領分を飛び出しすぎですし・・・

全体の流れとしては、満足いくものでした。
「光子場仮説」等の登場にはビックリしましたがね。

人間が本当の「真理」を発見したら、それでおしまいだとも思います。
「真理」は発見するべきものではなく、追求するべき対象であるのではないでしょうか。

▼疑問の先に
"私が本当に知りたかったのは、自分のことだったのだ。自分は何故生まれてきたのか。何故生きているのか。こうして生きているのに、自分とは何かも分からないで私はここにいる。
(中略)
しかしそんな大事なことを、どうして誰も知らないのか。知らなくても何故、のうのうと生きていられるのか。根元的な疑問なのに、何故誰も向き合おうとしない。"(P.290)
宇宙の謎と共に、気になるのが、自分の生きる意味。
僕もよく考えます。そして結論が出ない問でもあります。
コレに悩んでる人って、意外と少ない?
長い人類の歴史の中で、この答は未だに明確には示されないのは不思議な話です。

▼表現
「フット・イン・ザ・ドア」(P.17)
初耳でした。
段々承諾させていこうっていう交渉術のようなものらしいです。

▼さいごに
ドラマ的には弱いが、哲学的には良質、って印象。

テーマは最高。
結論がモヤモヤっとしたけど、それは僕の理解力が足りないから。
人間の動きも、なかなか好印象。
重厚さは、小松左京さんに比べると断然見劣りしちゃうけど、それでも問題なし。

読んで正解って感じの小説でした。

余談ですが、この話、ゲーム化・映画化が決まっているそうです。
果たして・・・これを映像化して、面白いのかは疑問。
魅力は議論の展開にあるのに。
大衆受けを狙って、その魅力が削られそうじゃないですか?
まあ、でも宇宙テーマの作品がメディア展開されるのは歓迎です。