エコ・ニュージーランド Eco New Zealand

ニュージーランド発。エコライフ、環境保護、山、森、動物、アウトドア、山歩き、猫についてのブログ。

1080を使った害獣駆除

2009年07月23日 | 環境保全(生態系、動植物)
 こんにちは、試験勉強に追われて眠る暇もない?ねむりねこに代わり、猫かぶりが投稿します。

 本来、コウモリ以外に陸上に哺乳動物がいなかった、「鳥の天国」ニュージーランドでは、人間が持ち込んだネズミやポッサムなどの外来哺乳動物が、生態系に大きな被害を及ぼしています。木登りが上手なこれらの動物が、巣穴で卵を抱いているメス鳥やヒナ、卵を襲い、鳥類の急激な減少につながっているのです。



 南島南部のダート渓谷周辺でも、上の写真のモフア(英語名イエローヘッド)という、稀少種の鳥が生息しているんですが、ネズミの増加により、生息数の減少が心配されています。美しい鳴き声から「NZの森のカナリア」の異名を取り、100ドル札紙幣にも描かれる、この国を代表する鳥の一種。そこでネズミ駆除の為、今週と来週にかけ、ヘリコプターを使って、広大な範囲に上空から毒入りのエサをまく、大規模な作戦が行われることになりました。名付けて「ノアの方舟活動(Operation Arc)」。旧約聖書でノアが地球上の生物を方舟に乗せて大洪水から救ったように、絶滅危惧種の生き物が存続できるように、との願いが込められています。

 この毒というのが、日本ではあまり馴染みのない薬品、モノフルオロ酢酸ナトリウム、通称1080(テン・エイティ)。この毒は、約50種類の植物にも含まれる天然成分で、土中の微生物によって水分と酢に分解されるため、土壌汚染の可能性は全くなし。毒エサの形状はペレット状で、鳥が認識しにくい色(緑色)に着色され、鳥の嫌うにおいをつけてあるので、鳥が間違って食べる可能性はほぼ0。ポッサムやネズミなどの動物にとっては一粒で致死量の毒が含まれています。



 1080の空中散布に際しては、その必要性、散布範囲、散布量などについて、生物多様性(Bio Diversity)の研究者や専門のレンジャーが綿密な調査と研究を行って決定されます。詳しい説明は以下のウェブサイトをどうぞ(英語のみ)

環境保全省(Department of Conservation) わかりやすい英語で詳しい解説
森林鳥類保護協会(Royal Forest and Bird Protection Society) マンガで面白く、わかりやすく解説

 この作戦が功を奏して、鳥のがさえずり声が、たくさん聞こえる森が戻ってくることを祈りつつ……


最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (アリス)
2009-08-28 12:13:36
1080で検索してやってきました。

私はニュージーランドでアンチ1080の人たちの話を聞く機会があり、非常に興味深かったので投稿させていただきます。

まず、1080で他の鳥も殺されます。
http://www.stop1080poison.com/

こちらのトップでkeaが1080のペレットをつついている写真がみられます。
ギャラリーをご覧いただくと、ポッサムだけでなく、ペット、家畜、野生の鹿などの写真が見られるうえ(グロいです)
看板には、トランパーへ自分で飲み水を持ってくるようにというアドバイスが載っています。

わざわざ看板で注意を呼びかけるということは、本当に1080投下後の水は安全なのでしょうか?


また、1080を食べたポッサムの死骸は腐りません。
それだけ1080が強いので、微生物が分解することが出来ないのです。
(わたしも山の中でパンパンに腫れあがった死骸を見たことがありますが、とてもびっくりしました)
分解されないまま、毒として残ってしまうポッサムの死骸。
1080は非常に強いのです。

また、ポッサムを害獣ではなく資源としてみた場合に
ポッサムの罠を仕掛けて毛を取ることが出来ます。
ポッサム入りのマフラーなどはウール100%よりもしっとりして肌触りがいいですね。
しかし、ここ最近ではそういったものを作りたくても、ポッサムの毛が入手しにくい状態になっています。
(ポッサムファー買いますという広告をみたことがあります)

南島では30年以上前は、ポッサムの罠を仕掛けてファーを取って売る、という仕事をしている人たちがいました。
いまでもそういった仕事をしたい、と考えている人はたくさんいます。

1080をまくお金を、そのレイバーとして払ってもまだ余りある、という試算もあります。
http://www.1080.org.nz/8_Are_there_alternatives_to_aerial_poisoning_.html

http://www.1080.org.nz/1_Welcome_to_ESPC%3B_an_overview.html


こちらでは、美しいニュージーランドの景色を背景に、マスク・手袋などで重装備した人間が1080をまく作業をしている写真がトップにあります。
http://www.thegrafboys.org/

こちらはgraf boysが作成したアンチ1080の動画です。
非常にわかりやすく説明されています。
http://www.youtube.com/watch?v=2yJSvAe8SXw&feature=related


私もアンチ1080サイドの話を聞くまでは、1080は仕方がないと思っていました。
しかし、他の方法があることや、1080をめぐる利権の事を知ってからは考えが変わりました。

すこしでも多くの方に知ってもらいたいと思い、投稿させていただきました。
ぜひ一度ご覧いただいて、新たな発見をしていただければ、と思います。
長文、失礼いたしました。
アリスさんへ (ねむりなこ)
2009-08-29 18:37:26
長文の投稿、どうも有り難うございました。大変興味深く拝読しました。1080の反対集会に参加されたとのこと、アリスさんは日頃から環境問題に高いご関心をお持ちの方なのですね。

1080はこの国でも様々な議論を呼び起こしている、大変微妙な問題ということは、私も聞き及んでいます。反対派の意見の多くは「感情論」によるもので、生態学(ecology)や生物多様性(biodiversity)からの見地に基づいた、科学的で理論的な反論はあまりなされていないようです。アリスさんがご紹介されたウェブサイトも、感情に訴えかけるような写真を多用して、これを閲覧した人の理性を麻痺させるものが多いですね。

これに限らず、どのような問題でも、片方からの意見だけを聞くと事の本質を見失いやすいように思います。せっかく興味を持たれたのですから、賛成派の意見(科学的・学術的根拠や実際の散布方法など)にも目を向けられ、この議論の本質がどこにあるのか、研究されるのもおもしろいかもしれません。DoC (Department of Conservation) のウェブサイトには大変わかりやすい情報が掲載されていますし(http://www.doc.govt.nz/conservation/threats-and-impacts/animal-pests/pest-control/1080/)、またお住まいのお近くのDoCに行かれて、詳しい資料をもらったり、専門のスタッフにいろいろ質問されてはいかがでしょう。

ちなみに、クイーンズタウン周辺のエリアでの問題は、ポッサムよりもネズミ類(rodents)で、生息数がワナなどではとても対処できないほどの数に及んでいるので、1080の散布をしなければ、モフアは完全に森から姿を消すだろうとのことです。

また、1080の水質への影響ですが、空中散布後に水質検査は必ず行われているようです。これまでの検査の結果、薬物の濃度が一番高かった水質でも、体重60キロの人間の場合は6万リットル飲まないと死には至らないと報告されています(DoCウェブサイト資料より、http://www.doc.govt.nz/publications/conservation/threats-and-impacts/animal-pests/the-use-of-1080-for-pest-control/5-outcomes-of-1080-use/5_5-monitoring-waterways-after-1080-operations/

ありがとうございます (アリス)
2009-08-30 11:43:25
ご丁寧にお返事をありがとうございます。

私の周りにはアンチの人が多く、またキウイばっかりなので、日本人の方の意見を伺えるのは非常に勉強になります。


生態学についてですが、賛成派の意見は森の全体像を見ずに、ポッサムにのみ注目しすぎているように思われます。

1080を撒くことによりポッサムは駆逐されますが、ポッサムが天敵であるネズミやイタチの数が増えています。(クイーンズタウンのみならず、ウェストコーストでもです)
というのも、これら小動物は1080を食べずに
生きている動物しか食べないということ、(1080で死んだポッサムや鹿などを食べるので、ネズミ等も駆逐されると言う人がいますが、実際は食べません)
ポッサムに比べワナで捕獲しにくいことなどがあげられると思います。

実際、私はウェストコーストで道をピョンピョンとはねているネズミやイタチを何度と見かけています。
天敵がいなくなったこういった小動物は、鳥(特にヒナや卵)やカエル、ゲッコーなどを襲います。


また、1080が作られているのはアメリカですが、そこで生産されている90%がニュージーランドへ輸入されており、ニュージーランド以外の国ではほとんど使われていません。
(北米で一部、対コヨーテ用に家畜に使われていますが、使用方法は空中散布ではなく
家畜の首に1080のペレットを取り付け、コヨーテが噛み付いた時に毒を与える、という方法です)

生態系を維持するために増えすぎたポッサムを駆逐する、というのであれば
もう十分1080は撒かれていると思います。
まだ撒き続けることによって、ほかの生態系を壊してしまうことを危惧します。

ポッサム自体、野うさぎを駆逐するために持ち込まれた外来種です。
野うさぎは減ったかもしれませんが、ポッサムが増えた。
そして今度は増えすぎたポッサムを駆逐するために1080を撒く。
そうしたらまた新たな弊害が生まれるのは目に見えています。


他に賛成派の意見として
ポッサムを駆逐することにより、牛や羊の家畜の結核を予防する、というものがあります。
牛に限って言わせていただければ、毎年全ての牛に結核検査をすることが義務付けられており
陽性反応が出た牛は有無を言わさず、処分されます。
しかし、結核を持っているのはポッサムだけでなく
イタチ(stout,weasel)なども持っているといわれていますので
ポッサムのみを狙い撃ちして解決する話ではありません。
現にヨーロッパでは、牛に結核予防の注射をするという手法がとられています。
(子供の頃にしたBCGを牛にするのです)

ご紹介したサイトにも、DOCやAnimal Health Boardに対する反論が
感情論の部分以外のところでされています。
「反対派は感情論でしか話さない」というのは賛成派のプロパガンダですので
感情論以外からの意見をご参考いただければと思います。


個人的には、何においても「科学的に立証されているから」といって盲目的に信頼をすることは
「科学は絶対のもの」として理性が麻痺することにつながると思っています。
科学的にわかっていない事は山ほどあるのです。
また、人間や自然は簡単に立証できるほど単純ではないと思いますので
科学以外の観点から見ていくことも重要かと。
(いくらDOCから「薬物の濃度が一番高かった水質でも、体重60キロの人間の場合は6万リットル飲まないと死には至らないと報告」されていても
実際、人間は汚染されていると知って、その水を飲む気になるでしょうか?)

読んで下さってありがとうございます。
また長文で失礼いたしました。

コメントを投稿