エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

【スマート連載】スマートイノベーション第8回;「スマートパワー研究所を設立せよ!」

2013-03-27 06:39:44 | Weblog
 毎週「環境ビジネスオンライン」にウェブ連載している「見えてきたスマートグリッドの現実」に、「スマート会社を設立せよ!」を掲載しました(http://www.kankyo-business.jp/column/004409.php)。項目としては、1. 「スマートエネルギー産業クラスター」の核となる「スマートパワー研究所」、2.ノーベル化学賞受賞者の野依良治さんの提言を生かす、3.「スマートパワー研究所」とシリコンバレーとの「頭脳循環」の構築、です。
 全文は以下の通りです。ご関心があれば、お読みください。

●「スマートエネルギー産業クラスター」の核となる「スマートパワー研究所」

 2月18日の連載「日本にスマート産業クラスターを形成せよ」(http://www.kankyo-business.jp/column/004204.php)において、「ビジネス・エコシステム」に基づく「スマート産業クラスター」の形成がスマートグリッドのイノベーションを持続的に形成し、発展させるために必要であることを指摘しましたが、そのためのモデルを東北地方に作り、東北の復興、東北における新産業と雇用の創出に結び付けることが必要なのではないでしょうか。それを日本経済全体の再生につなげるという考えです。
 このため私が提案したいのは、国などの公的主体が中心になって、東北大学、福島大学、岩手県立大学などの教育研究機関と連携しつつ、エネルギー、情報通信、リスクマネージメントなどに関する大規模な研究センターとして「スマートパワー研究所」を東北地方に設立し、これを核としつつ、周辺の各種電子部品・自動車部品などのハイテク産業との前方・後方連携を伴った「スマート産業クラスター」を構築することです。
 国は、2011年度第3次補正予算を活用して、福島県、宮城県、岩手県における各地域(会津若松市、気仙沼市、石巻市、大衡村、山元町、宮古市、釜石市、北上市に加えて、南相馬市、いわき市)でのスマートコミュニティ構築を推進していますが(http://www.meti.go.jp/press/2012/04/20120417001/20120417001.pdf)、これとも連携します。

●ノーベル化学賞受賞者の野依良治さんの提言を生かす
 2001年ノーベル化学賞受賞者の野依良治さん(理化学研究所理事長)は、2011年5月15日付の読売新聞コラム『地球を読む』に「震災を超えて 東北に世界級の研究機関」と題する小論を寄稿し、次のように提言しています。
「東北地方に『人類社会の存続』を指向する世界第一級の専門機関を、既存の大学とは別に設立してはどうか。・・・・世界が原子力発電の縮減に向かえば、最終的に太陽エネルギーを中心として再生可能エネルギーに頼らざるを得ない。次世代技術開発に与えられた猶予は20~30年しかない。・・・・島国である日本は隣国からも電気を輸入できない。食料や水の供給にも莫大なエネルギーを利用しており、我が国はいかにして生命線を確保するのか。もはや問題の先送りが許される状況にはなく、迅速な決断が求められる。」
 野依さんの提言は、私の「スマートパワー研究所」と符合するものと思います。国は、福島県郡山市に再生可能エネルギーに関する世界的な研究拠点として、産業技術総合研究所の研究所を2014年4月にオープンすることとしていますが、その研究内容にスマートグリッドや関連する情報通信に関するものを加え、さらに、東北大学、福島大学、岩手県立大学などの教育研究機関との研究ネットワークの構築や産学官連携の促進などを行うことが必要です。
 今後のスマートグリッドの重要な構成要素は、ハードでは燃料電池やリチウムイオン蓄電池、ソフトでは需要応答や次世代エネルギーマネージメントシステム、クラウドやビッグデータの活用です。東北復興と日本経済再生に当たり、それらが住宅やオフィス、工場などやプラグインハイブリッド車や電気自動車などに導入されれば、膨大な需要創造を行うことができ、イノベーション・技術とコストの両面において日本が世界をリードすることができます。

●「スマートパワー研究所」とシリコンバレーとの「頭脳循環」の構築
 スマートグリッドにおいて新しいビジネスネットワークが掲載されつつある今、日本がとりうる唯一の選択肢は、ネットワークに積極的に参加し、燃料電池、蓄電池などスマートグリッドにある固有の要素技術の強み、優位な分野を活かしつつ、国境を越えた産業のネットワークを楕円のような二極構造にしていくことです。シリコンバレーとともに日本の各地域が楕円の極となることが求められています。
  日本経済は、シリコンバレーというよりも、今なお、アナリー・サクセニアン著『現代の二都物語』で指摘された1980年代のボストン128号線地域に似た構造を持っています。1995年以降の第3次ベンチャーブームにより日本の産業構造を分散型産業システムに変革しようという試みがなされたことがありましたが、十分な成果を挙げないまま、ITバブルの崩壊、「失われた20年」という言葉が象徴する長い経済の停滞、デフレの継続などにより変革のモーメンタムを失ってきました。
 3月4日の連載「日本のハンディキャップは競争力を決める『頭脳循環』」(http://www.kankyo-business.jp/column/004322.php)で指摘したように、産業競争力の決定 要因として最も重要なものは、アナリー・サクセニアン著『最新・経済系地理学』が指摘しているシリコンバレーとの「頭脳循環」です。私たちは、「シリコンバレー・モデル」のダイナミズムを早急に日本に移植するため、官民あげて上記の「スマートパワー研究所」とシリコンバレーとの間で積極的な「頭脳循環」のサイクルを形成することが必要です。
 国としては、6月に策定する新しい成長戦略の中に、上記の「頭脳循環」の構築を進めることを盛り込むべきでしょう。

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