東埼玉病院 リハビリテーション科ブログ

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健康長寿を妨げる!! 「サルコペニア」(一般向け)

2018年12月19日 | 臨床雑記

日本が世界を代表する超高齢社会であることは言うまでもないことですが、そういった中、いわゆる「健康寿命」を伸ばすことが声高に言われるようになりました。

そしてその「健康寿命」を縮めてしまう危険性の高いものとして「サルコペニア」というものが近年注目されています。
先日自分が参加した秋季リハ医学会でも、サルコペニアをテーマにした講演が行われていました。
今回はそこで聞かせていただいた話を元にお話しさせていただきたいと思います。

ではそのサルコペニアとは何か?
これは筋肉量低下+筋力低下を示す概念で、転倒や骨折、歩行機能をはじめとする基本動作能力の低下、さらには生命予後の悪化にまでつながることが報告されているもので、ここ十数年でかなり注目されるようになりました。

当院も神経難病や回復期、呼吸器疾患に内科疾患など多岐に渡る患者さんを受け入れておりますが、このサルコペニアにあたる患者さんは疾患を問わず多くいらっしゃるような印象があります。
そのために動けなくなったり、肺炎になったり、なかなか退院できていないような患者さんも多いのではないでしょうか(あくまで個人的な見解ですが…)?

そんなサルコペニア、
診断基準はあるのですが、通常歩行速度や握力、手足の筋肉量について検査を必要とするため、診断が容易ではありません。
そこで一般の方向けに、簡便に実施できるテストを一つ紹介したいと思います。
それは「指輪っかテスト」と呼ばれるもので、ふくらはぎの一番太い部分を両手の親指と人差し指で作った輪っかで囲むだけのテストです。
囲めない場合はサルコペニアの可能性が低く、隙間ができるとサルコペニアの可能性が高いことが言われています。
あくまでサルコペニアの可能性を確認するだけのテストなので、その点は注意してやってみてください。



そして、サルコペニアの治療法は大きく分けて2つあります。
1つはいわゆる運動です。
有酸素運動も筋トレもどちらも有効と言われており、ただ筋肉がつくだけでなく、内分泌系が活性化することで筋肉を破壊するような炎症作用を抑える効果があると報告されています。

もう1つはしっかり栄養を取ることです。
その栄養というのも、特に大事だといわれているものはタンパク質、そしてビタミンDです。
筋肉はタンパク質でできているのでタンパク質を取るのが大事というのは、ご理解いただけるかと思います。なので、肉や魚、卵、大豆製品、乳製品を多く食べるといいですね。
「たくさん食べられない!」という方はご飯よりおかずを食べるように意識するといいと思います。
ついでに参考までにですが、筋肉量を維持したい方は体重1kgあたりタンパク質1g、増やしたい方はタンパク質1,2~1,5g摂取するとよいそうです。
栄養成分表示に「1食あたり」などの表記で記載されていますので、参考にしてみてください。

ビタミンDは骨を強くする役割で知られていましたが、最近筋肉を強くする役割もあることが言われるようになりました。日本食品標準成分表2010によると5.5μg/日を目安としており、100μg摂取しても問題ないと言われているそうです。
鮭(1切れ25.6μg)やさんま(1尾19.0μg)、ぶり(1切れ8.0μg)などの魚や卵(1個0.9μg)、しめじ(2.2μg)、乾燥シイタケ(3枚1.0μg)などに含まれています。
詳しくはお近くの栄養士に聞いてみるとよいと思います。

またビタミンDは食事から取る以外にも、日光浴にて皮膚からつくられることも言われています。
晴れた日にはぜひお散歩に行かれると、有酸素運動にもなるので一石二鳥になるかと思います。

そしてこれら2つのことを単独で行うより、併用したほうが改善率も断然異なることが言われていますので、ぜひ両方に取り組んでいただければと思います。



よくスポーツ選手が運動の前後などで、いわゆるプロテインなどを摂取している場面を見るかと思います。
これは理にかなっており、運動時間の近くでアミノ酸を摂取することにより筋力upに結び付きやすいことが報告されています。ただアミノ酸はタンパク質を分解したものになりますので、運動時間の近くでタンパク質を摂取しても、筋肉として再合成が始まるまでには時間がかかります(若者は1時間、高齢者では3時間もかかると言われています)。

そこで栄養補助食品としてゼリー飲料で出ているものが数多くあり、手軽にアミノ酸やビタミンD、水分を補給できるのでオススメです。
運動をする際のお供にしてみてください。


少なからず病気を抱えている方は多いと思いますが、それでも少しでも長く元気にいられるようにこういったことを毎日意識することは、病気に負けない身体つくりにつながると思います!!
今回の記事が少しでもそういったことの助けにつながりますように。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

C5(PT)


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