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落書き帳

内容は備忘録のため、解釈等含めて随時改変

エンジン技術_6 燃費の目玉(4) SKY-G EPAデータ

2016年10月30日 | エンジン・自動車

某シンポジウム(2010年 実車発売前)の図は公称トルク(現実)とかけ離れている。

エンジン技術_6 燃費の目玉(2) 過給ガソリンエンジン

続編でEPA取得の2014年型生産車エンジンデータ。

EPAの元資料の記載不足を潰すのがメンドクサイ。延々と自分用memoになった。

 

【資料1】 

Air Flow Optimization and Calibration in High-Compression-Ratio Naturally Aspirated SI Engines with Cooled-EGR 

https://www3.epa.gov/otaq/climate/documents/mte/2016-01-0565-air-flow-optim-calib-nat-asp-eng.pdf

161030現在アクセス不可の模様だが(EPAの別ページにリダイレクト)

$26ナリの販売サイトで、

http://papers.sae.org/2016-01-0565/

P5まで読める。

 

【資料2】 (資料1で引用されている)

Benchmarking and Hardware-in-the-Loop Operation of a 2014 MAZDA SkyActiv 2.0L 13:1 Compression Ratio Engine 

http://papers.sae.org/2016-01-1007/

P5まで読める。

 

【資料1】、【資料2】に共通だが、ε=13、要求RON91のエンジンに対し、ガソリンはRON91(E10)と、RON96(E0)のどちらかが使われているようだが、明示されていない箇所がある。

全負荷は関心の外で、部分負荷がメイン。高圧縮比直噴NA(M社エンジンがベース)にcooled-EGR、気筒休止を入れたらどうなるか?がEPAの関心事のようで、メーカーが勝手にやればいい話と思える。使用ガソリンについては推定を含む事を書く。

 

 

【資料2】から  お題は、2014 MAZDA SkyActiv 2.0L 13:1 Compression Ratio

p2  ガソリンの表に追記 含アルコール(エタノール)ガソリン E0(エタノール無し) E10(エタノール10%)

米国レギュラーはE10でこれがフツウの模様。「政治的・政策的」に、世界的に含エタノールガソリンが急増するのは2005年あたりから。

ハイオクはE0でエタノール無し。日本はE3が上限。E10はMJ/kgが低いことに注意。Net Heating Valueの欄に、D240なる注記があるので、ググるとASTM D240のことで、米国の工業規格。これによる測定値なのか一般的推奨値なのかは不明。ここでは全てこの数字を採用する。【資料1】【資料2】共この数字を使っていると判断する。以前書いたが、石油系燃料の低位発熱量は【真値】が捕まえにくい値のようで、国により一般的に使う値は異なるが自動車屋がコソコソいじるべき数字ではない。

「熱効率%」は、計算上採用した低位発熱量の数字を故意に伏せて、熱効率%の数字だけ発表するT社の存在があり、共通のモノサシにはならない。使用燃料と熱効率%の計算上使った低位発熱量が不明なものは疑うべし。直接的に計測できるのはg/kWhだけ。低位発熱量の計測はエラク面倒な模様。

含エタノール燃料はg/kWhが悪くなるのは事実で、炭化水素のみの石油系液体燃料に対してg/kWhが良くなることはない。

190203  E10ガソリンのg/kWh → E0ガソリン相当のg/kWh換算係数 【×0.974】 に関する補足説明を↓↓に追記

 

p2  熱効率ベンチマーク@2000rpm 

各エンジンのデータの出典は不明

①mazda 2.0L Skyactiv 2014年型 ε=13 要求RON91

 EPA取得の生データそのものをプロット。全負荷までプロットされている。凸凹があるのは生データだからで、このぐらいはあって当たり前。【資料1】【資料2】のデータをいろいろ突き合わせると、

・使用ガソリンはRON91 E10 でg/kWh(元データ)→熱効率%換算は41.76MJ/kgを使用している。

・【資料1】のg/kWhは、「生値」そのもので、E10でもE10の生データをそのまま使用。

技術的には当然の扱いだが、こっそり変な「換算」をやられるとワケがわからなくなるので重要な話。

②RICARD 2020 1.04L Standard Car

simulation結果なのでプロットが細かく凹凸が全くない。

③VW 2.0L E888 GenⅢB

例の「メーカー発表のドヤ顔BSFCmapエンジン」のようだが、アレ?BEMP=24barもあったっけ?と思うとこれも何らかのsimulationのようである。実機はこんなに細かくとらないし、無理やりとったところで凹凸だらけになる。「このspecでは実力ここまでしか出ません アレは盛り過ぎです」と誰かが何かの売り込み用に作ったの?

④グラフに格子状に線を入れて離れて眺めると、

熱効率33%(低位発熱量42.89MJ/kg換算254g/kWh)~37%(同227g/kWh)あたり、BSFCの10%の差を問題にしている。エンジン的には大差。

 

p2(RON91 E10)、p4(RON96 E0) 熱効率マップ

ハイオクを使うと2000rpm以下の高負荷熱効率が儲かる。ノック判定→リタード分が減る。もともとこの領域は点火時期、VVTの設定がカツカツの模様。

 

 

【資料1】から

当方はタダでダウンロードした(EPAサイトでフリーアクセス状態だった)ので、最低限のグラフは貼る。

p1 ε=13 BSFCマップ 【資料2】からの引用となっている

 

p5 ε=13 BSFCマップ 

二者を比較すると、全域後者がBSFCの数字(g/kWh)が良い。マップの水色面の上端がWOTのように見えるが(フツウはWOTに明確に線を入れる)WOTのBSFCは不明。エンジン回転は250rpm毎にデーターを採っている模様。マップの水色面の上端は、トルク10Nm、BEMP0.5barで端数処理がなされている。どのような処理がなされているのか不明だが(例えば切り捨てか四捨五入か)、結論に影響しないように扱う。

資料を読み進めると、後者はRON96 E0を使用しているように読める記述がある。

前者がRON91 E10(レギュラー)後者はRON96 E0(ハイオク)と推定されるので、BSFCの数字を比較する。

3000rpm(等高線が込み入っていない、目玉に近い安定した領域で低回転ほどはノッキング制約はきつくない)でBSFCの数字を比較すると↓

 

中負荷で比較すると、後者は3%程BSFCの数字が小さい。低位発熱量で説明がつく。この辺ではノッキング云々は関係ない。

これが妥当な判断か?1000rpm~4500rpmで500rpm毎に全部拾ってみる。等高線の存在するポイントしか拾えないので、右端は「全負荷」を必ずしも意味しない。

 

目玉の底の手前までの差は低位発熱量の差、高負荷で大きく差がつくものがあるのはノックリタードによる差と決めつける。極低負荷で差がつかないのはなぜか?とかいろいろきりがないが、

p1 ε=13 BSFCマップは、RON91 E10

p5 ε=13 BSFCマップは、RON96 E0

と判断して話を進める。

 

【資料1】p4 ε=13のWOTデータは、BEMP&BSFCがはっきり読み取れるがガソリン仕様が不明。

①【資料2】p2(RON91 E10と明記) の熱効率マップから全負荷BEMP、熱効率%を読み取りBSFC(g/kWh)換算 ガソリンはE10を使っているが、熱効率%→g/kWhはE0の低位発熱量を使う 大元の生データg/kWhより小さい数字になる

②【資料2】p4(RON96 E0と明記) の熱効率マップから全負荷BEMP、熱効率%を読み取りBSFC(g/kWh)換算

①②のマップデータは全負荷包絡線がアバウト、熱効率%はアバウトにしか読み取れないので多少おかしな数字も出てくるが、3者のBEMP、BSFC(g/kWh 数値は全てE0相当に統一)を突き合わせて、離れて眺めて雰囲気で判断すると、

【資料1】P4のWOTデータは、RON91 E10使用と判断。数字は勝手に記入。g/kWhの数字は、「E10の生データg/kWh」のまま。

 

E10生データg/kWh→E0相当にg/kWhを換算する。これがε=13 RON91のWOT BSFC実力と言いたくなるが、

【資料1】p1 ε=13 BSFCマップ (↑でRON91 E10使用と判断)

【資料1】p5 ε=13 BSFCマップ (↑でRON96 E0使用と判断) 

と矛盾する。WOT BSFCはWOT寸前より良くなることはない。高負荷の「BSFC等高線最大値」より良くなることはありえない。

 

ε=13 RON91のWOT実力推定は、↓

考え方は、「性能は中央値保証」「性能は中央値で表現する」。「中央値」の脳内定義は、

「所定の条件を固定すれば、平均的に実現されるであろう値」

「平均的に実現するであろう」の判断は、感覚による。

 

ε=13のマップBSFCマップ2枚にWOTトルク(↑の表の数字)を重ね書き。データーをツギハギしているから、飛び出したり届かなかったりする場所がある。

 

p6 ε=14のマップを引用 RON96使用と「WOTはノッキングでデータ取得できず」は明記されている。コレの実体はsimulationらしい。

 

ε=14 RON96 BSFCマップ(実線 実体はsimulationらしい)をAudi 【メーカー発表ドヤ顔マップ】(点線)と比較したのが↓。

高負荷増量域は正確にはわからないが想像で記入。WOTはRON100でも入れたと思って想像で記入。↓はアバウトな絵だが、離れてプロポーションを眺めるだけなら十分。

λ=1限界は、11.5bar/4500rpmで、43kW/L。

軽負荷はε=14の勝ちだが高負荷になると?

「勝ち負け」の話は置いておき、注目ポイントは、λ=1、4000rpm以下の最大BEMPのBSFCがNA、TCIにかかわらず250g/kWh前後で、似たような値になっていること。目玉を深く→圧縮比アップ→BEMPダウン、BEMPアップ→圧縮比ダウン→目玉は浅く のせめぎ合いの結果、現状技術では同じようなg/kWhに落ち着いている。

 

まとめ

① USA2014年型生産車 ε=13 RON91 WOTのBSFCは、

低回転は従来常識程度を確保、中回転は従来常識以下に抑えた。従来常識=1988 Opel C20XE 詳細は↑の表。WOTの空燃比は不明だがA/FセンサーでA/F=13程度に抑えたものと思われる。と書いたがA/Fセンサー自体は大昔から存在する。「全負荷リーン化」は目先の排気対応に比べれば優先順位は最下位で「センサーがあるからやった」話だがやらないよりはマシ。

② USA2014年型生産車 ε=13 RON91 WOTの空燃比は、

当然のλ<1だがノッキングの苦しい2000rpm以下も含めてメチャ濃くはしていない。メチャ濃くすると↑の表の水準のBSFCにはならない。

③ USA2014年型生産車 ε=13 RON91 1500rpmトルク (BEMP)

公称値が10barなら盛り過ぎ。1750rpmで10barなら納得。出ないなら出ないなりの公称値にするだけと言えばそれまでだが、「誰も見ていない真実」がこれ?

④ USA2014年型生産車 ε=13 RON91 2000rpm以下はノックマージン小。ノックコントロール込で「これで良し」と判断?

⑤ 【資料1】p1 ε=13 BSFCマップはRON91 E10ガソリン使用なので、E0相当のg/kWhにするには数字を×0.974する。「結果の整合性」からみて×0.974でおかしなところはないのでこれを採用。

 

****190203  E10ガソリンのg/kWh → E0ガソリン相当のg/kWh換算係数 【×0.974】 に関する補足 ****

 

「結果の整合性」からはおかしなところはないが、筋を通していない部分がある。

現実のエンジンは「発熱量が等しくなるように」制御していない。λ=1になるように制御するだけである。

λ=1 理想的には排気中の O2=CO=H2=0% O2センサ、A/FセンサでF/B制御する

ガソリン C1H2 として 理論空燃比 14.7 低位発熱量 44.0MJ/kg

エタノール 理論空燃比 9.0 低位発熱量 26.8MJ/kg

低位発熱量の数値は資料によりまちまちだが、ここでは上記の値とする。馴染みのある手元の数値を使っただけで「恣意的だ」と言いたい方はどうぞ。←全体整合性が個々の数値より重要

等空気量で比較したとき、理論空燃比での低位発熱量は(結果的には)ガソリンもエタノールも同等になる。「化学理論的に」「厳密に」これが成立するのかは守備範囲外だが、結果的にはそうなる。

エタノールのλ=1 燃料質量 ガソリンの14.7/9.0=1.63倍

ガソリンの単位質量低位発熱量 エタノールの44.0/26.8=1.64倍 

吸気冷却による吸入空気量アップ、ノッキング改善による点火進角効果を無視して等空気量かつMBTかつλ=1なら、E0ガソリンとE100エタノールの出力は同等になる。燃焼速度等の影響は無視する。実機のE0とE100でどうなのか?は知らない。

エンジン動作上はあくまでも「等空気量 λ=1での発熱量」を出発点にするべきだが、

① 2018年EPA公開データによると、空気量が同じでMBT領域ならE0/E10の軸トルクは同等→(結果的には)E0/E10で等発生熱量となる燃料を吹いていると解釈できる

② E10のg/kWh ×0.974で、MBT領域のE0、E10のg/kWhは【結果的には】同等

③ 低位発熱量の数値は資料によりまちまちで、「λ=1での発熱量ベース」での検討だけでは全体整合性を欠く場合がある どの数値を採用するかで【×0.974】の係数が変わり上記②の結果と不整合になる

E10ガソリンのg/kWh → E0ガソリン相当のg/kWh換算係数 【×0.974】 は変更しない 

【×0.974】はE10とE0の低位発熱量の比 低位発熱量はEPAによる数値

 

 

オマケmemo

「A/Fセンサ」「空燃比センサ」の名称とその「測定値」

技術的には不適切な日本語で、英語のLambda sensor が正確。

「O2センサ」は技術的にも適切な日本語。排気中の残存O2の有無に「ほぼ」デジタル的に反応する。

ガソリン   λ=1 A/F=14.7

エタノール  λ=1 A/F=9.0

「A/Fメーター」と称する計測器、あるいはECUの内部RAMで「A/F」を表示するモノがあるが、これは「A/Fそのもの」か?

調査・確認したことはないが、違うはず。ガソリンのλ=1で「14.7」と表示すればエタノールのλ=1も「14.7」と表示するはず。

A/Fセンサーは残存O2濃度(リーン側)、CO+H2+HC濃度 (リッチ側) に反応するので、原理だけからはこうなる。表示は(ある代表成分の)ガソリン換算の数字で、検出しているのは「空気過剰率λ」

「エタノールのA/Fそのもの」を表示したければ、なんらかの補正・換算が必要。

 

**** 補足終わり **** 

 

オマケ Priusと比較

SKY-G 2L EUR ε=14(実体はsimulationらしい) とPrius(2009年の3代目 並EGR)と比較する。排気量換算は一切しない「素のまま」比較。

SKY-Gに最適燃費線、等出力線を記入。

2009年3代目登場時の「量産実力値」と思われるkW~BSFCグラフに記入。元は広報資料?

DI/PFI、ハイオク/レギュラー、EGR無/EGR有、排気VVT有/排気VVT無、の違いはある。

2015年4代目(大量EGR)は最小214g/kWhらしいので、読者は↑に想像線を記入。

 

181027追記

後日EPA公開のBSFCマップ ε=13のレギュラー仕様にハイオクを使用

http://glanze.sakura.ne.jp/skyactiv_g_2.html

4500rpmはWOTに非ずで、260g/kWh以上の領域をカットしている。EPAのやっていることはM社と同類。1000rpmはRON91に対しガタ落ちで?が付くが、1500~4000rpmはWOTと思われ。

一連のEPAデータで、疑義無しで「WOT」は限られる。↓のRON91 E10は「full load」と明記されWOT。

と書いたが実はこれも1500rpm以下はWOT手前で止めている模様。full load ≠ WOT とする方言ですか?

EPA SKY-G  WOT BEMP&BSFC まとめ  

2014 mazda3の公称値らしきモノも、2017広報値と大同小異なので2017広報値を記入。

関心事は【RON91 ε=13 1500rpm WOT 10.4barの真実】

 

 

190203 SKY-G 追加情報

1500rpm以下はWOTデータを採っていない、採れていない模様

エンジン技術_6 燃費の目玉(7) 2018年EPA投下データ SKY-G 

 

 

***お遊びの続き終わり****