明日へのヒント by シキシマ博士

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「ALWAYS 続・三丁目の夕日」 夢が終わったあとに残るもの

2007年11月29日 10時36分14秒 | 明日のための映画
先日オープンした「ワーナー・マイカル・シネマズ日の出」は、我が家から歩いても20分、車なら5分くらいという気軽な距離にあるのが嬉しいです。
だから、久しぶりに、身障者である母と一緒に映画を観ることができました。
いつもだとトイレなどの心配があるため、誘っても行きたがらないのですが、今回は誘いに乗ってきました。
11年前に脳梗塞をわずらい車椅子の生活になって以来、劇場での映画鑑賞はこれが初めてです。
観る作品は「ALWAYS 続・三丁目の夕日」。
これに先立って、前作はDVDで観せておきました。
入り口でチケットを切ってもらい、母を乗せた車椅子を押して場内に入ります。
車椅子用スペースに誘導。私もすぐ隣の席に座ります。いつも私が選ぶ座席位置よりもだいぶスクリーンに近いですが、実際に座ってみると思ったほど前過ぎることはありません。
そして、いよいよ上映開始です。

(前作から4か月後の)昭和34年春。
東京タワーが完成し、東京オリンピックの開催も決まり、いよいよ高度経済成長期に向かおうとしている日本。
鈴木オートは取引先も増え、順調に稼動していた。
しかし、誰もが時流に乗れているわけではなく、事業に失敗した親戚の娘・美加を、一時的に鈴木家が預かることになる。
一方、作家の茶川は相変わらず貧乏だが、淳之介と仲良く暮らしている。
しかし、一度は息子を引き取ることを諦めた淳之介の父・川渕が、再びやって来るようになっていた。
淳之介を渡したくない茶川は、芥川賞に挑戦することを決意する…。
(監督・VFX:山崎貴 146分)


母は居眠りをすることもなく、2時間半の間、スクリーンに見入っていました。
観終わったあとは自分から感想を言ったり、連れてきた甲斐があったようなので、まずは一安心。

前作は、私が実行委員をしている「あきる野映画祭」でも上映しました(昨年7月)
その時に、山崎監督と小清水一揮くん(鈴木一平役)に舞台挨拶に来ていただいたこともあり、心情的には批判的なことを書きたくはないのですが…。
でも、嘘は書けませんね。はっきり言って、かなり残念な部分のある作品だと言わざるをえません。

私は、前作が高く評価されたのは、昭和をリアルに再現したからだとは思っていません。
昭和という時代を利用することで、実感し易くすることに成功した〝ファンタジー映画〟だと思っています。ファンタジーとして成功したのだと思っています。
前作の冒頭で、六子が集団就職で東京にやって来るところを観ながら、我々観客も〝三丁目〟という昭和に似た虚構の世界に入って行けたのです。
ほかにも、一平が玩具のグライダーを追って路地を曲がると大通りがあり、その先に建設中の東京タワーが見えたり。
淳之介の母を捜すために、二人の少年が三丁目の外へ出ていくという小さな冒険が描かれたり。
そんなふうに、〝三丁目〟という虚構世界を、構造的に奥行きを持たせて描いたことで、実際に画面には映らない部分にまで、我々の想像力を連れて行ってくれたのです。
映画に出てきたテレビや冷蔵庫、そして見えない指輪は、ファンタジーで言えば〝魔法〟にあたるものだと思います。
前作は、そんなふうに、ファンタジーとして良く出来ていたと思います。

しかし、続編ではそれらファンタジーの要素が、ことごとく機能しなくなってしまいました。
ひとつには、観る側がもうこの虚構世界に慣れてしまい、新鮮なワクワク感を持てなくなってしまったことがあると思います。
日テレのTVスポットを見せられ過ぎたというのもあるでしょうね。
でも、それだけではありません。
羽田空港や日本橋などが表面的にはリアルに再現されているけれど、前作のように見えない部分までも想像させることが出来ていないのです。
東京タワーもこじんまりとして見えてしまいます。
なぜでしょう?
奥行きのある物語がないからだと思います。
多くは前作のエピソードの蛇足に見えるし、そこにはもうファンタジーがありません。
宅間先生がいくら〝焼き鳥踊り〟をしても、けっきょくタヌキが現れることがなかったのがそれを象徴しています。
新たに描かれた則文(堤真一)の戦友の話も、トモエ(薬師丸ひろ子)と元恋人の話も、六子(堀北真希)が級友と映画を観ているシーンも、まるで商品サンプルを見ているようで共感できるほどの深みがありません。
見えない指輪に匹敵する魔法も、今回新たに登場するものはありません。
いろんな意味で、既に夢が覚めてしまっています。
映画の中でも、(おそらく)制作サイドの一部でも、そしてそれを観ている我々観客の気持ちの中でもです。
夢から覚めた状態でなおファンタジーを語り続けるだけなら、前作を超えることなんてできない。
しかし…

夢から覚めても、なお、消えないものもありました。
周りのほとんどの夢が覚め、芥川賞受賞の奇跡も起こらなかったあとに、それでも残されたもの。
茶川(吉岡秀隆)と、ヒロミ(小雪)との、互いを思う気持ちです。
これは、現代の感覚で見れば、きれいごと過ぎるエピソードかもしれませんが、だからこそ信じてみたい。
一人の人を愛し、幸せを願い続ける気持ちは、貧困や芥川賞を逃したくらいで覚めてしまってはいけないと思うから。
共感できないエピソードも多い映画ですが、だからこそ、ここは際立っています。
ここには作り手が伝えたい真実がある気がして、自分は共感しました。
それで充分です。
続編を作った意味も、ここにあると思います。

演技において、大人の出演者たちは前作とあまり変わり映えしないけれど、子役の須賀健太くんと小清水一揮くんの成長が嬉しい。
この二人の放つエネルギー・存在感によって、凡作になることを免れた気がします。
24色の色鉛筆など、一平のエピソードは前作より明らかに良いと思います。
美加(小池彩夢)を交えた子供たちのエピソードは、もっと描いても良かったのではないでしょうか。

いろいろ辛口の感想になりましたが、観て良かったです。
母と共に観ることができる、こういう映画があることを喜ばしく思います。


前作のDVDはこちら
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