ハツっては所長の検査を受けてダメ出しをされ、今度はダメ出しをされない様に規定よりも深くハツリ、我々の疲労度はどんどん増していた。
「常務、なんとかして下さいよ。今週末で予定の工期の一ヶ月半ですけど、まだ半分ちょっとしか終わってませんよ…」
私は渡に電話で、改めて現状を訴えた。
「分かったわ、ワシが所長と話をするわ」
「お金の話もして下さいね」
「それは後や…」
「知りませんよ、今の段階で利益なんてありませんからね」
「しゃーないやろ、こうなったら…」
いつも威勢のイイ渡だったが、今回ばかりは声のトーンも落ちていた。
翌日、所長の葛西との話し合いが終わると、渡は作業用コンテナにやって来た。
「どうでした?」
「ま、とりあえずは逃げる訳には行かんからな、このまま継続や」
「そうですか…」
私は心の何処かで、
「もうたくさんだ!出て行ってくれ!」
と葛西に言われる事を期待していたが、そんなに甘くはなかった。
「工期の件は?」
「『全力を尽くしてくれ!』と言うことや」
「この前聞きましたけど、所長、僕らのせいで大変な目に遭ってるって、O組の中であちこちに吹聴しているらしいじゃないですか」
「…そうや、ワシらのせいらしいわ」
「らしいわって、規定よりも大幅に深くハツって、自分で検査前にダメ出しをして工期が延びてるのに、僕らのせいなんですか?しかも隔週で土曜日が休みなんですよ?」
「そういう人間なんや、あの所長は」
「…最低ですね」
渡は渋い顔をしながら、ポケットからタバコを出した。
「常務、ここじゃ吸えませんよ、休憩所に行かないと」
「そうやったな、お前、少しくらいなら離れられるんやろ?」
渡は出したタバコをポケットに収め、返事を聞く前に歩き出そうとする。
「ヨッシー!ちょっとだけ休憩所に行くから、なんかあったら呼んでくれる?」
いつもの様にコンテナの側をウロウロとしていた堂本に声を掛け、早足で渡に追いつく。
「一つお前に言う事があるんや」
「はい」
「所長が工期が延びてるのを気にして、我々に援軍を入れるそうや」
「援軍?ウォーターの業者ですか?」
現場事務所前の自販機に渡が硬貨を入れ、コーヒーのボタンを押す。
「ガコンっ!」
コーヒーが取り出し口に転がり出る。
「ちゃうちゃう、お前は?」
「僕はコーンスープで」
自分でコーンスープのボタンを押す。
「ガロンっ!」
かなり熱くなっている黄色っぽい缶を左手で取り、右手でつり銭を取り出して渡に手渡す。
渡は休憩所の引き戸を開けて、埃っぽいパイプ椅子に腰掛けた。
「援軍はな、普通のハツリ業者や」
「ええー?マジですか?」
「そうや、そのマジや」
渡は答えながら、
「カシュンっ!」
と缶コーヒーのプルタブを起こす。
「…本当ですか?」
「本当や」
「・・・」
私はどこか屈辱的な気分になり、ムッとしながらコーンスープのプルタブを引き起こした。
「常務、なんとかして下さいよ。今週末で予定の工期の一ヶ月半ですけど、まだ半分ちょっとしか終わってませんよ…」
私は渡に電話で、改めて現状を訴えた。
「分かったわ、ワシが所長と話をするわ」
「お金の話もして下さいね」
「それは後や…」
「知りませんよ、今の段階で利益なんてありませんからね」
「しゃーないやろ、こうなったら…」
いつも威勢のイイ渡だったが、今回ばかりは声のトーンも落ちていた。
翌日、所長の葛西との話し合いが終わると、渡は作業用コンテナにやって来た。
「どうでした?」
「ま、とりあえずは逃げる訳には行かんからな、このまま継続や」
「そうですか…」
私は心の何処かで、
「もうたくさんだ!出て行ってくれ!」
と葛西に言われる事を期待していたが、そんなに甘くはなかった。
「工期の件は?」
「『全力を尽くしてくれ!』と言うことや」
「この前聞きましたけど、所長、僕らのせいで大変な目に遭ってるって、O組の中であちこちに吹聴しているらしいじゃないですか」
「…そうや、ワシらのせいらしいわ」
「らしいわって、規定よりも大幅に深くハツって、自分で検査前にダメ出しをして工期が延びてるのに、僕らのせいなんですか?しかも隔週で土曜日が休みなんですよ?」
「そういう人間なんや、あの所長は」
「…最低ですね」
渡は渋い顔をしながら、ポケットからタバコを出した。
「常務、ここじゃ吸えませんよ、休憩所に行かないと」
「そうやったな、お前、少しくらいなら離れられるんやろ?」
渡は出したタバコをポケットに収め、返事を聞く前に歩き出そうとする。
「ヨッシー!ちょっとだけ休憩所に行くから、なんかあったら呼んでくれる?」
いつもの様にコンテナの側をウロウロとしていた堂本に声を掛け、早足で渡に追いつく。
「一つお前に言う事があるんや」
「はい」
「所長が工期が延びてるのを気にして、我々に援軍を入れるそうや」
「援軍?ウォーターの業者ですか?」
現場事務所前の自販機に渡が硬貨を入れ、コーヒーのボタンを押す。
「ガコンっ!」
コーヒーが取り出し口に転がり出る。
「ちゃうちゃう、お前は?」
「僕はコーンスープで」
自分でコーンスープのボタンを押す。
「ガロンっ!」
かなり熱くなっている黄色っぽい缶を左手で取り、右手でつり銭を取り出して渡に手渡す。
渡は休憩所の引き戸を開けて、埃っぽいパイプ椅子に腰掛けた。
「援軍はな、普通のハツリ業者や」
「ええー?マジですか?」
「そうや、そのマジや」
渡は答えながら、
「カシュンっ!」
と缶コーヒーのプルタブを起こす。
「…本当ですか?」
「本当や」
「・・・」
私はどこか屈辱的な気分になり、ムッとしながらコーンスープのプルタブを引き起こした。
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