2012年10月19日09時15分 読売新聞
携帯基地局訴訟、電磁波の健康被害を認定せず
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20121018-OYT1T00379.htm
携帯電話基地局から放出される電磁波で耳鳴りや頭痛などの健康被害を受けているとして、宮崎県延岡市の住民30人がKDDI(東京)に基地局の操業差し止めを求めた訴訟の判決が17日、宮崎地裁延岡支部であった。
太田敬司裁判長は「電磁波による健康被害とは認定できない」として住民側の請求を棄却した。住民側は控訴を検討する。
基地局は同市大貫町の3階建てアパート屋上にアンテナが設置され、2006年10月に運用を開始。間もなく健康被害を訴える住民が相次ぎ、09年に提訴した。
判決は、住民の証言などから耳鳴りなどの症状が発生したことは認めたが、電磁波が住民の症状を引き起こすことは、WHO(世界保健機関)などの研究や調査では裏付けられていないと指摘。電磁波の強さは国の電波防護基準値を大幅に下回っており、「健康被害を生じさせるほどではない」とした。
住民3人の「電磁波による愁訴の出現(症状)の可能性が高い」とする医師の所見書についても「問診結果が主な根拠で、医学的意見としての価値を認められない」とした。
判決後、徳田靖之・原告弁護団長は「因果関係を認めた場合の影響の大きさを恐れた不当な判決」と批判。これに対し、KDDI広報部は「電波防護基準値を順守して基地局を運用していることに対し、適切で妥当な司法判断が下された」とコメントした。
宮崎日日新聞2012年10月29日
原告側が控訴 延岡・携帯基地局撤去訴訟
http://www.the-miyanichi.co.jp/contents/?itemid=49481&catid=74&blogid=13
携帯電話中継基地局の電磁波で健康を害したとして、延岡市大貫町の住民ら30人がKDDI(本社・東京)へ基地局の操業差し止めを求めた訴訟で、原告側は29日、請求を棄却した宮崎地裁延岡支部判決を不服として控訴した。
■ブログ主コメント追加
この判決を不当として、市民団体は、「延岡KDDI基地局裁判の不当判決に関する声明」を出しました。
賛同団体・個人は合計59件、そのうち海外は7件で、アメリカ、イギリス、イスラエル、フランスの4か国の団体/個人が賛同。
延岡KDDI基地局裁判の不当判決に関する声明
宮崎県延岡市では、2006年にKDDI携帯電話基地局が住宅地のアパートに設置されてから、頭痛や耳鳴り、不眠などの体調不良を訴える住民が現れ、時間がたつにつれて、その数は増え続けています。2010年に基地局から300m以内の住民を対象に行なった健康調査では、162人が何らかの症状を訴えています。KDDI自身による測定でも、室内の中央部で4.428μW/㎠という高い値がでました。基地局の電波を停止すると、数値は3万2000分の1に下がることから、電磁波との関連性が強く疑われています。
基地局周辺に住む住民30名は、同基地局の操業停止を求め2007年に提訴しました。ところが、10月17日に宮崎地裁延岡支部が出した判決は、住民の訴えを棄却するという信じがたい内容でした。
しかしながら、頭痛や耳鳴り、不眠、めまい、鼻血など共通した症状を、大勢の住民が基地局稼働後に訴えていることは、この判決文でもはっきりと認められました。携帯電話基地局に関する裁判で、健康被害が認められたのは日本ではこれが初めてで、その点では大きな意義があります。
一方で裁判官は、最新の科学的な知見を自らに都合よく解釈し、携帯電話基地局からの電磁波と健康被害の因果関係については「立証は不十分」という判断を下しました。電磁波による健康被害への不安や、被告KDDIの対応への憤りなどから、もともとあった症状を強く自覚した可能性がある、というのが理由です。有害な因子に曝されたと思うだけでも症状が生じる「ノセボ効果」の可能性があるとしたわけですが、ノセボ効果かどうか断定するには、医学的検査が必要です。
また、総務省の電波防護指針では、2GHz帯について1000μW/㎠まで認められているので4.428μW/㎠でも基準値以内です。電波防護指針は非電離放射線防護委員会(ICNIRP)などの国際ガイドラインに準じていますが、これは強い電磁波に短時間被曝して体温が上昇するような「熱効果」しか考慮していません。現在の私たちは、長時間、微量な電磁波に慢性的に被曝する状況にありますが、そもそも、このような状況を想定して被曝限度値を設定してはいないのです。
しかも、体温が上昇しない弱いレベルでもDNAや免疫系、神経系、脳血流、ホルモン分泌などに影響が現れる「非熱効果」を指摘する研究が多数発表されています。
そこで、諸外国では限度値を厳しくする方向へ動いています。たとえば、欧州評議会議員会議(PACE)は2011年5月、当面の目標として0.1μW/㎠、将来的には0.01μW/㎠に規制するよう加盟国政府に勧告しています。さらにPACEは、電磁波過敏症発症者に配慮し、電磁波のないエリアをつくるなど特別の対策をとること、基地局を設置する際には地域住民や自治体などと協議して決めることも勧告しています。基地局の規制、被曝基準値の厳格化、電磁波過敏症発症者の救済は世界的な動きです。
ちなみに、オーストリア医師会は今年3月、電磁波による健康問題に関する診療の増加を受けて、診断ガイドラインを発表しています。血液・尿検査の項目なども具体的に示し、被曝を避けるための具体的なアドバイスや、患者の被曝状況を把握するための問診票も作成しています。
近年では、携帯電話基地局周辺で延岡と同じように頭痛や耳鳴り、めまいなどを訴える住民が増えることを示す疫学調査が各国で発表されていますし、兵庫県川西市や沖縄県那覇市では、基地局が撤去されたことによって、住民の健康状態が著しく改善しています。
「電磁波による健康被害はノセボ効果の可能性がある」として健康被害との因果関係を否定するのは、現実に目を背け、被害を拡大することにつながります。日本は水俣病をはじめ、さまざまな公害を経験し、今も大勢の方が健康被害に苦しんでいます。早期に予防的対策をとれば、被害を最小限に抑えられたのに、因果関係が認められないとして先送りしてきた結果です。現在、原発事故による放射線の被害も発生しつつありますが、放射能と同じように電磁波もDNAを傷つけ、発がんの要因になります。世界中の基地局周辺で同じ健康被害を訴える人がいるという事実を踏まえ、客観的・科学的な立場で冷静に判断して、今後とも継続的に電磁波に関する問題を報道して下さるようにお願いいたします。
2012年10月21日
いのち環境ネットワーク代表 加藤やすこ
賛同団体
秋津一町内九州セルラー鉄塔建設反対期成会
旭川地球村 代表 山城えり子
安全食品連絡会 代表者 山中純枝
EMFセイフティ・ネットワーク 代表 サンディ・モウラー(アメリカ)
EMラディエーション・リサーチ・トラスト 代表 エイリーン・オコナー(イギリス)
(有)イーエム・エコ 代表 細川義治
石井秀子(大分県)
伊那谷の環境と健康を守る会 代表 野口俊邦
<いのちの林檎>製作委員会 代表 藤澤勇夫 馬場民子
宇都宮市議会議員 西 房美
海老名市携帯基地局の健康被害を考える会 代表 大村泰之・大貫美幸
江別電磁波を考える会 代表 菊池美智江
江別市議会議員 干場芳子
エミリー・パニアグア エンジニア(フランス)
オビリティ・セミナーズ 代表 ガリル・ページ(アメリカ)
小畑光朗(大分県)
ガウスネット 代表 懸樋哲夫
加賀美雅恵(東京都)
化学物質問題市民研究会 代表者 藤原寿和
環境と健康を考える会代表 北村義弘
くらしと電磁波を考える会 代表 佐藤千鶴子
黒薮哲哉 フリージャーナリスト(東京都)
携帯電話基地局問題を知らせる会 代表 新城明美
携帯電話楡木中継鉄塔建設に反対する会 野口小夜子
こどもと電磁波 代表 安東順子
相模原市議会議員 野元好美
さっぽろ基地局探険隊 代表 佐藤利恵
札幌大気汚染測定連絡会 代表 木椋とし子
ザミール・P・シャリタ博士、医療微生物学者、電磁的危険に関するコンサルタント(イスラエル)
自然環境センター 代表 池島芙紀子
持続可能社会ヲ模索 研究会 代表 土器屋美貴子
住環境測定協会 理事長 原田英敏
新東京タワー(東京スカイツリー)を考える会 共同代表:網代太郎、大久保貞利
スカパー巨大アンテナに反対する住民の会 代表 門川淑子
杉谷美代子(島根県)
高橋万里(東京都)
託麻の環境を守る会 会長 中原節子
地域の環境を考える会 代表 佐々木美幸
中継塔問題を考える九州ネットワーク 代表世話人 中原節子
電磁波・環境関西の会 代表 泉 泰通
電磁波環境研究所 所長 荻野晃也
電磁波と環境を考えるくにたち市民の会 代表 北村千佳子
電磁波と健康影響を考える タンポポプロジェクト 代表者 鈴木真美
電磁波問題を考察する会 代表 吉岡寛二
ドコモ三潴基地局移転要望の会 世話人 川勝聖一
豊田健康生活センター 所長 伊藤典良
中西 景子(東京都)
nara-action 代表 堀田美恵子
奈良脱原発ネットワーク 代表 堀田美恵子
Next-upオーガニゼーション(フランス)
東川 富美子(北海道)
ピープル・イニシアティブ・ファウンデーション(アメリカ)
藤井淑枝(愛知県)
別府の住環境と子供の未来を守る会 事務局 藤原万里
保坂令子(神奈川県)
真鶴町議会議員 村田知章
ヤマダユリカ(千葉県)
矢田 冨士子(東京都)
宮崎芳弥(千葉県)