押しても駄目なら

風が吹けば、と共に非線型現象の第二例でしょう。

中国暴発 中嶋嶺雄・古森義久著 ビジネス社 ¥1575-内税

2005-04-14 20:00:29 | 読みちらし
図書館からやっと借りて読み始めた。一月くらい掛かったか。

近頃の新聞、テレビの報道を眺めていると画一的というか、感情的というか、ステレオタイプが激し過ぎる。見るに耐えず、読むに耐えずに、ついスイッチを切り、頁を閉じることになる。

この本はその意味では多面的な視点を読者に提供していると言える。しかし、説得力があるかと問えば、充分あるとは言えない、不充分である。充分納得させる根拠を提供しているとは言えない。

世の中にはこの手の本が少ないから、手っ取り早く、あれこれの見方があることを知るのには便利である。

そこから先は自分で調べる、勉強するしかない。

北朝鮮は・・・、韓国は・・・、中国は・・・などと感情的、単細胞的な思考に陥ってはならない。

つい60余年前には鬼畜米英と喧伝し、小学生まで♪出て来い二ミッツ、マッカーサー、出て来リャ・・・♪と登校の隊列行進で歌わされたのである。

民主的と呼ばれる政党にはこれらの国を正しく認識していない時期があり、今もそのくびきから抜け出していない部分がある。

例えば、社会主義国家は民族運動を尊重し、支援する、と言う神話である。このことについてはすでに述べた。ポイントは次の通り、『著者は次のように看破している。そもそもマルクス主義の創始者の一人であるエンゲルスは言語学を良く学んだが、エンゲルスにおいては民族は「歴史を担うことのできる」民族と、そうでない「歴史なき」民族とに分類された。19世紀には劣勢民族は優勢な民族が作る国家の中に吸収されて消えてゆく過程が進行しつつあった。この過程を言語にうつして言うならば、「歴史なき」方言の、「歴史を担う」中央語、標準語、文明後への統合過程になぞらえられるであろう。こうした滅亡民族の残骸を民族の屑とエンゲルスは称した。』

ソ連が崩壊する時にゴルバチョフはこれからは民族問題が大切だ、と言う主旨の発言をした、と私は記憶している。そしてその通りだった。アフガン問題にソ連は介入し、ロシアも引き続き介入した。911でテロ対策をアメリカの最大の問題として、世界の問題としてテロ対策を考えようとの米国の提案にロシアはあっさり賛成した。ゴルビーの民族問題の認識とこのテロ対策の認識との間には余り違いはないように私には感じられる。

テロ対策という問題提起に中国もあっさり賛成した。中国にはチベット、ネパール、新疆ウイグル地区などと絡む様々の民族問題があるようです。エンゲルスは少数民族の無視をしましたが、スターリンはそれを考えようとした時期があったようです。毛沢東はどうだったのでしょうか。小平、江沢民、温家宝は民族問題をどう考えているのでしょうか。台湾を・・・、北朝鮮を・・・、韓国を・・・、日本を・・・どう考えているのでしょうか。

こうした空間的・時間的にひろい視点から中国の問題は考える必要があるのではないか?が私の感想です。

いくつかの気になったエピソードを記します。

1.小売のビジネスでのヤオハンの撤退とカルフールの発展。人脈の利用の仕方が未熟とか。
2.共産党一党独裁の市場経済は自民党息災の資本主義経済と極めて似ている部分と全く異なる部分とがあるらしい。このあたりを経済の専門家には地道な研究活動をして欲しい。
3.中国は世界の工場を目指しているのだから資源・エネルギー問題は国にとって最優先課題である。このことを頭に入れて、対アラブ外交、エネルギー外交、資源外交を行っていると考えなければならない。
4.これはこの本には当然書いてないが、今回の日本常任理事国加入に対する抗日デモと1999年NATO軍機(米軍機)によるユーゴ中国大使館の誤爆抗議デモとの類似点と相違点。これを冷静に分析する必要がある。
5.台湾海峡問題の危険性はすでにこの本で指摘されている
6.中国は一党独裁でマスコミは存在しない。そうした社会では、東欧の場合は、外国からのテレビ、ラジオなどの報道が真実を知る上で役立った、と言われている。中国の場合はインターネットがある種の効果を発揮する可能性があると思われるが、どうだろうか。
7.文化活動はどうなっているのだろうか。

以上が不完全な読みちらしの感想。