
■監督・脚本 佐藤純彌
■原作 辺見じゅん「決定版 男たちの大和(上下)」(ハルキ文庫刊)
■キャスト 反町隆史、中村獅童、仲代達矢、鈴木京香、松山ケンイチ、蒼井 優、長嶋一茂、余喜美子、高畑淳子、白石加代子、渡 哲也
□オフィシャルサイト 『男たちの大和/YAMATO』
昭和19年2月、特別年少兵として戦艦大和に乗り込んだ神尾(松山ケンイチ)たちは、憧れの大和を前にし目を輝かせていた。 しかしその喜びも束の間、彼らを待ち受けていたのは厳しい訓練の日々だった。 神尾たちは上官である森脇(反町隆史)・内田(中村獅童)の叱咤激励のもと訓練に励んでいたが、彼らの努力もむなしく、日本は日増しに敗戦の色を濃くしていた。 そして翌年の4月、米軍が沖縄上陸作戦を開始したのを受け、大和に沖縄特攻の命を下される。
おススメ度 ⇒★★★ (5★満点、☆は0.5)
cyazの満足度⇒★★★☆
小さい頃、プラモデルでよく作ったのが戦艦大和だった。 いや、正確に言うと欲しがって買ってもらったものの、説明書の最初の部分で挫折し、オヤジに変わりに作ってもらったというのが本当のところだ。
“絶対に沈まない船”、その戦争での大和の戦いなんて知る由もない子供ながら、凄い戦艦だなあと思っていた船だった。
“お国のために散る” それはその言葉だけで受け取るのは非常に難しい。 その背景にこの映画の命題があるのだと思う。
拒否できない命をかけた戦争への参加と、送り出す母親・家族との葛藤と現実。 今のこうした平和な時代に想像を絶するものだったことは想像できるものだ。
この大和は、沖縄に向かう途中、その乗組員の大半は若い命で、そしてその志しとは別に、さしたる活躍の場を与えられず約3,000人の命とともに東シナ海に散った。 中にはわずか15・6才の少年たちが、その尊い命を投げ出して逝った。 その“想い”を今の同じ世代がどう感じたのであろうか。
かつて「戦争を知らない子供たち」という歌が流行った。 戦争体験した人たちは、「戦争をわからない人間が何を生意気なことを・・・」と非難した。 わからない知らない戦争だけど、二度とこういう悲惨な戦争を起こしてはならないとアクションを起こした若者たちを理解せず、戦争体験をしたその人たちは悲惨な戦争を封印してしまっていた。
この映画は年齢層が高かった。 戦争物であるから想像は出来ていた。 もう話の半ばで泣いているお年寄りが多かった。 一方で戦争体験していると予測される人たちは、美味しそうに最後までお菓子を食べながら、途中居眠りしつつという人たちもいた。 この映画の主人公たちと同じ年代の中高生も多く観られた。 是非そんな彼らの感想を聞いてみたい気がした。
この映画の主軸は死にゆくことが宿命の上官と部下との生死の葛藤、恋人(愛人)との別れと再会、そして何よりも息子を死の旅に出す母親の心の叫びが中心に描かれている。 実寸大の大和のセットを作り、戦闘シーンはかなりの迫力があった。
中心に居る反町隆史、中村獅童、そして松山ケンイチの演技は素晴らしかったし、遠い日の大和の乗組員たちへの鎮魂歌のようにも思えた。 蒼井 優も好きな人に対する言うに言えない感情と葛藤を上手に演じていた。 さりげなくも余喜美子、高畑淳子、白石加代子の3人の母は、戦争における一番根底にあるものを露呈していたと思えた。 自分がお腹を痛めた子供が、戦争というどうしようもない悪魔と、国からの命令で避けられない死の世界へ出発させなければならない想いは、生きている心地がしなかったろう。 そして何よりも自分よりも先に逝ってしまうことに、どんな残酷な体験よりも生き地獄を経験させられたことだろう。 原作者の辺見さんが女性であるので女性の視点で戦争と戦争に生きた男たちを、母親に近い目線で描いていたのだと思える。
中盤から後半にかけて内田の娘(鈴木京香)と生き残った神尾(仲代達也)の回想を軸に物語りは語られる。 この二人の会話の中に事実が解き明かされていく。 生き残った責め苦を感じつつ、大和に一番近いところにいながら、大和に会いにいけない神尾と内田の娘との出会いがきっかけで再び大和に再会するまで。 そして娘が内田の遺骨を大和のもとに帰してやるシーンは涙を堪えることが出来なかった。
この映画の何が良かったって聞かれても、それを表現することは難しい。 この映画を観る前にアメリカに語学勉強に行っている若い友人と話した。 日本では感じなかった“戦争”も、アメリカで生活し始めて身近に感じようになったと。 戦闘機が当たり前のように頭の上を飛んでいったり、学校の友人がイラクに行ったり、戻ってきたりということが日常茶飯事らしい。 そんな話を聞くと改めて平和過ぎる日本を感じてしまう。
観終わったこの映画の感想を、映画好きの友人にメールしたら、その返信メールに「チャズはこの映画は観ないと思ってた。」と書いてあった。
実は、僕のおフクロの兄が戦艦大和に乗っていた。 子供の頃からおフクロにその話を聞かされた。 この兄は21歳の時に戦死した。 僕が寝ていた部屋にはこの兄の遺影が飾ってあった。 「軍海国帝本日大日」の帽子を被った写真が・・・。
おフクロはよく言っていた。 お前は兄貴の生まれ変わりだと。 実際に僕の名前はオヤジの名前から一字取ってつけたものだが、この兄と読み方は同じ名前だった。 そして21歳で死んだ命日に、生まれ変わりが本当かどうかは別にして、亡くなった同じ歳の同じ日に僕は一歩も家を出なかった。 今でも、大きな事故もなく、ここまで生きてこれたのは兄が守っていてくれているのかもしれない。
今も頭の中を、長渕剛の「CLOSE YOUR EYES」というフレーズが巡っている。 戦争を知らないからこそ是非観て欲しい。
戦争を否定すると左と呼ばれる
常に勝った者が正義であり負けたものが悪である
それを理解でき判断できるのは当事者だけだろう
僕は戦争を知らない、でも知りたくもない
でも事実を知らずに肯定も否定もしたくはない
25歳の僕が見て劇中涙が止まらなかった・・
なんと説明すれば良いか言葉も見つからないが
とめどなく悲しかった とめどなく虚しかった
初めての書き込みが重い文章ですみません^^;
日本映画だから、戦争映画だからと言わずに是非見て欲しい作品でした。
観ないのかな?って思っていました。
レビューがなかなかアップされてなかったので....。
そうでしたか、理由が判りました。
そういった経緯がお有りだと本作の観賞には
私みたいに戦争経験が無い者とは違った
意味の辛さが有るのも当然だと感じました
>自分よりも先に逝ってしまうこと
生きて帰って来ても....。
自分を責め続けて
>生き残った責め苦を感じつつ、
原作者が女性でしたので視点が違っていたのにも新たな悲しみをさそいました。
敵、味方を問わず心の奥深くに
キズを残してしまう”戦争”は二度と
犯してはならない事だと
感じられずにはいられません!
>戦争を知らないからこそ是非観て欲しい。
同感です!
史実は史実として、それぞれがこの映画を観て色々な思いが込み上げると思います。戦争がどうこうではなく、こういう過去の悲惨な事実を、こういう映画というものを通して考えるキッカケとなってくれたらいいと思います。
僕も戦争は知りません。でも明らかにこれは事実であり、そんな歴史の経過を経て、この平和があるのだと思っています。
人の痛みがわからない、尊い命を虫けらのように殺めている人たちに強制的に見せたい映画ですね。
ただ、今もこの戦争という凶器は無くならず、罪のない人が死んでいくのは納得できません。
人が人であるかぎり、他人に奪われる命はないんですよ。
・・・ちゃかしてすいません。
でも、この映画まともに感想を書くと
ホントに重くなってしまいます。
自分のエントリよりコメント返しでつらつら書いて、
それでもいまだにまとまりません。
で、枝葉の部分だけ言うと、
圧倒的に50代以上の人らで満席になってて
後ろから見てほとんどの人が目頭をおさえてて
「CLOSE YOUR EYES」の前奏が流れ出すとともに
み~んな席を立って帰ってくという
マナーもへったくれもない状態で
3度びっくりしました。(爆)
いろんな意味で初体験。
まあふだん映画館に足を運ばない人が来てたのは事実で、昔に思いをはせていたのも確かで。
・・でもDVDは売れないだろうな・・。
メーテルに会いたい・・・。
(おいっ、それは銀河鉄道やろ!)
え~お返しをば、致したところで(笑)、
すいません、僕のレビューも映画の内容より輪郭と私的想い出のみです(笑)
>マナーもへったくれもない状態で
「へったくれ」←懐かしい響き(笑)
「寒い」は「さぶい」^^
なんでやねん(笑)
>まあふだん映画館に足を運ばない人が来てたのは事実で、昔に思いをはせていたのも確かで
その辺が東映のねらいだったでしょうね(笑)
>でもDVDは売れないだろうな・・。
た・ぶ・ん^^
大和の模型は売れてるらしいが・・・。
福井晴敏作品で今年映画化になった3本よりも史実だけに思うところがとても多かったです。
cyazさんの叔父様のお話、とても興味深く読ませていただきました。
自分の周りに戦争経験者がいて、その方たちのお話を聞けることはとても貴重ですよね。
絶対に忘れないためにも時々はこういう映画を作り続けて欲しいです。
cyaz さんの「大和」は、特別なんですね。よくわかります。感慨深い映画だったでしょう。良い作品に仕上がっていたし、観ることができてよかったですね。
自分の(昨年他界した)伯父も零戦のパイロットだったのですが、戦争のことは一切語りませんでした。実際に戦闘したことがあると語らないことが多いのかもしれません。
>自分の周りに戦争経験者がいて、その方たちのお話を聞けることはとても貴重ですよね
こういう映画という素材の中で、過去の戦争を風化させないようにしていきたいですね!
体験に勝るものはないですが、戦争体験は全世界の人がしないで済む世の中になって欲しいですね^^
>コメント、ゆっくり書きたかったりしまして…
いえいえ、ありがとうございます^^
僕も時々TB先にして、あとでコメントつけることが多いです(汗)?!
今も上記のミチさんに先にコメントされちゃいました(笑)?!
>自分の(昨年他界した)伯父も零戦のパイロットだったのですが
そうでしたか・・・。
10年程前に実際に零戦を現代に飛ばした人と仕事をしたことがありました^^