お父さん、あなたの昭和は幸せでしたか?
■監督・脚本 佐々部 清
■原案 秋田光彦
■キャスト 伊藤 歩、藤井 隆、藤村志保、鶴田真由、奥貫 薫、夏八木 勲、田山涼成、津田寛治、井上堯之、橋 龍吾、伊原剛志、水谷妃里
□オフィシャルサイト 『カーテンコール』
東京の出版社で働く香織(伊藤 歩)は、雑誌に掲載した大物政治家のスキャンダル写真が原因で福岡に異動することになった。 彼女が行くことになったのは、福岡のタウン誌での仕事。 そこで“懐かしマイブーム”を担当することに。 読者からのハガキを読んでいると、その中の1通が目に留まる。 そこには、昭和30年代後半から40年代中頃にかけて、下関の映画館・みなと劇場にいたある芸人のことが書かれていた。 興味を覚えた香織は、福岡から近い下関へ取材に行く。 また下関は、父親(夏八木 勲)が一人で暮らしている香織の故郷でもあった。 みなと劇場へ訪れた彼女は、そこで昭和33年から今までずっと働いているという女性、宮部絹代(藤村志保)に出会う。 そして、絹代から幕間(まくあい)芸人として人気のあった安川修平(藤井 隆)の話を聞くのだった。
おススメ度 ⇒★★★☆ (5★満点、☆は0.5)
cyazの満足度⇒★★★★
またまた佐々部監督に泣かされてしまった
かつて、佐々部監督の『半落ち』、『チルソクの夏』、『四日間の奇蹟』でも泣かされたが、今回もまたやられてしまった。 特に『半落ち』以外は、佐々部監督自身の故郷である下関を舞台にしている。 いつも海のそばで美しい景色を見せてくれる
幕間芸人の人生を通して、出会い、別れ、再会を毎度のことながら佐々部監督の人間味ある味付けで素晴らしい作品に仕上げている。 その描き方は派手さはないものの、どうすればこうも観てる側の琴線に優しく触れてくるのだろうか。 顔に似合わず(失礼)、繊細なストーリーに仕上げている
この当時の映画館に幕間芸人がいたかどうかはよくわからない。 少なくても、僕が記憶に残っている最初に観た映画は、多分ゴジラか、モスラかあたりだと思うのだが、幕間芸人なんていなかった。 懐かしいのは、昔は今のような座席指定システムがなかったため、前もって次の回を観るのに早く行って並んでいたものだ。 そして、その頃の映画館は立ち見は当たり前のような記憶がある。 客席への扉を開けたら、人が一杯で立ち見で観た記憶が多々ある。 余談になるが、僕が最後に立ち見で映画を観たのは数年前のシネスイッチ銀座(その頃はこの名称ではなかったような)での『ニューシネマ・パラダイス』だ。 想えば3時間もの長尺映画であったが、長さも足の疲れも感じさせない名画であった。
若き頃の幕間芸人安川修平に藤井 隆を起用している。 呼び込み、場内(外)整理から、ビラ配り、フィルム運びなど、様々な仕事も熱心にやっていた安川修平。 フィルムトラブルから彼は、観客のイライラをおさえるために舞台に立った。 そこでたまたまやった映画の歌や形態模写が好評を博し、幕間芸人として、素人芸ではあるものの映画への大きな愛情と、お客さんを楽しませるそんな熱心な青年役を藤井 隆は見事にこなしている。 売れない素人芸人とはややギャップがあるものの陰陽の裏表のなさそうな彼を使ったことは間違いではなかったと思う。
しかし、映画産業は翳りが見え、段々斜陽となってくる。 安川も仕事を追われ、妻を亡くし、娘を残していなくなってしまう。 ここから香織(伊藤 歩)とその仲間たち、ひいては香織の父親をも巻き込んでの安川探しが始まる。 みんなの努力で安川の居場所は突き止められるが、肝心の娘は父親に会いたくないと言う。
本当は素直に会いたいのにそれを拒むと娘は、みんなの気持ちを汲み、遠回りをしながらも安川との再会を果たす。 どんなに回り道をしても、親子は親子だ。 それ以外の何者でもない。 そんな微妙な“想い”を涙なしでは観れない。
この映画は宮部絹代役の藤村志保がストーリーテラーとして進んでいく。 派手さもなにもないその語り口が、逆にこの映画を盛り上げているように思う。 先に観た『春の雪』の三婆(岸田今日子、大楠道代、若尾文子)のように、藤村志保も三婆ほどインパクトはないが女優としてのキャリアは十分発揮していた。
主役の伊藤 歩も今まであまり目立つ女優さんではなかったが、今回は頑張ったんではないかな。 香織自身も安川を探し出し、娘との再会させる過程で、自分の父親との不仲を解消していく微妙なところを上手く演じていた。
それにしても老いた安川役にあの井上堯之を配したのは、佐々部監督が投じた魔球だった。 井上堯之はギターは一流だが、役者としてはキャリアはない。 だけど枯れた幕間芸人の安川役にはピッタシはまっていた。
映画館のポスターにしっかり『チルソクの夏』を貼っていたところなんて佐々部監督やるなぁって感じでした(笑) 『チルソクの夏』で主演していた水谷妃里もチョイ役で出演していた。
可笑しかったのは、親子を演じる伊藤 歩と夏八木 勲が、安川の最後のステージで客席脇の壁に並んだ時、二人の顔の鼻のあたりがソックリだったことだ。 それはまるで本物の親子のように似ていた(笑) 。 これから御覧になる方は要チェックで
情景は違うものの、先日観た『ALWAYS 三丁目の夕日』と同時期の時代設定で、古き良き時代のノスタルジックな映画に観も心も温かくなった映画でした
佐々部監督の作品を御覧になったことのない方は是非過去の作品を観ていただきたいと思います。 そしてこの『カーテンコール』は上映館が限られてしまうかもしれませんが、是非御覧になっていただきたい作品です。 ハンカチ・ハンディタオルの類はお忘れなく~
「うさぎ」のcyazさんにお会いできなくて残念(爆)。この映画は、観たいと思っているんですよ。なので、レビューは、ちょっとだけ読みました…(汗)。
今の時代は、みんなが望んでできてきたはずなのに、どうしてでしょうね。この頃やけに「なくしたもの」の大きさを思うなんて。。。もしかしたら、未来をみるのが、怖いのかなぁ。
最近昭和のいい時代を振り返る映画が多くなりました^^
自分でも忘れていた色んな想い出の引き出しを開けるキッカケを作ってくれていますよ!
cyazさん絶賛のこの作品ですが、僕は正直詰め込みすぎな印象を受けて乗り切れなかったです。
もう少しテーマを絞った方が良かったような気がしています。
藤井さんと伊藤さんの主演2人は良かったと思いましたが。
映画館に張ってある『チルソクの夏』のポスターには僕も反応してしまいました。
って、『チルソクの夏』は未見なんですが…。
>もう少しテーマを絞った方が良かったような気がしています
そういう部分はあったかもしれませんね!
娘の苦悩などにはもう少し細かく描かれていたらよかったかもしれません。
>って、『チルソクの夏』は未見なんですが…
anyさん、是非御覧になって感想聞かせて下さい!
いい映画ですよ^^
もっと軽いコメディータッチを想像していたので
サブテーマの重さにちょっと驚きました。
佐々部監督らしいといえばらしいのではなかったでしょうか^^
もう少し後半部分にウェイトを置いて欲しかった気もするのですが・・・。
>もう二度と戻ってこない輝きを感じるからなおのこと感動するのでしょうか
そうかもしれませんね^^
でもこれからまだまだ輝くこともいつか想い出に変わるものですから!
うーむ、立ち観って今では考えられないですね。
僕が最後に立って観たのは、確かユーロスペースで「すべての些細な事柄」(題名うろ覚え)でした。
そのユーロスペースも移転してしまうんですね・・・。
なんて考えさせてくれるところは良いんですが、僕もこの映画、色々なテーマを詰め込みすぎたような気がしました。
>そのユーロスペースも移転してしまうんですね
そうみたいですね^^
渋谷にもミニシアターがもっと増えるといいですが・・・。
>色々なテーマを詰め込みすぎたような気がしました
どこに視点を集中させるかは、観る側によっても変わってきますからね^^