京の昼寝~♪

なんとなく漠然と日々流されるのではなく、少し立ち止まり、自身の「言の葉」をしたためてみようと・・・そんなMy Blogに

『やわらかい生活』

2006-07-09 | 邦画


それとな~く幸せ

 



■監督 廣木隆一
■脚本 荒井晴彦
■原作 絲山秋子(「イッツ・オンリー・トーク」文藝春秋刊)
■キャスト 寺島しのぶ、豊川悦司、松岡俊介、田口トモロヲ、妻夫木聡、柄本明、大森南朋

□オフィシャルサイト  『
やわらかい生活

 みんな孤独で弱いけど、やわらかな時間が互いの心の隙間を埋めていく…
橘優子(寺島しのぶ)、35歳。 独身。一人暮らし。 一流大学卒で、一流企業の総合職。 バリバリのキャリアウーマン…だった。 しかし、仕事も、男も全て失い、どん底のまんま蒲田に引っ越した。 蒲田はやさしく優子を包む。 そしてWebサイト「Love KAMATA」を立ち上げた。 そんなある日、福岡からいとこの橘祥一(豊川悦司)が優子のアパートに無一文で転がり込んできた。 優子のもとに、議員(松岡俊介)、痴漢(田口トモロヲ)、チンピラ(妻夫木聡)が、ゆるゆると集まってくる。 4人の男たちのあわあわとした日々が、優子の心のやさしく包む。 どこか欠けていて、それでも生きていかなければならない、「生きていくこと」を彼らを通して、愛しく、切なく、描かれる。 


 おススメ度 ⇒★★★ (5★満点、☆は0.5)
 cyazの満足度⇒★★★


 「がんばらないでいいんだよ。」
もしかしたら、どこかの街の片隅で、こんな言葉を待ちながら頑張っていることで寂しさを紛らわしている一人暮らしの女性もいるのかもしれない。

 人はそれぞれ人には言えぬ過去の悲惨の出来事の一つや二つ持っているかもしれない。 主人公優子はそのトラウマから平凡に生きているようで実際には少し斜めに世の中を見て過ごしていたのかもしれない。 しかしたまたま環境を変えた先で自分が生きる世界と自分が必要とする男たちに出会う。 それは故郷の幼馴染であったり、大学時代の友人であったり、たまたま自分が立ち上げたサイトで知り合った二人の男たちであったり。

 何気ない日々の生活の中で限りなく自分らしく生活するために何が必要なのか。 主人公の目を通してこの映画は、飾らない33歳の女性のナイーブ且つ大胆に現実の人間模様を描いて見せた。

 主人公を演じる寺島しのぶはもしかするとこういうやや世の中を斜めに見ている女性を演じさせたら今最高の女優かもしれない。 それは原作こそ読んでいないので判らない部分もあるが、他の女優が演じたらこの主人公の姿を壊してしまうかもしれないからだ。 そこにはこの作品のテイストを損なってしまうかもしれない、些細なことで微妙に揺れ動く女性の心を演じ切れない気がするからだ。 絶妙の演技とは言わないが、他の女優さんが当てはまらない彼女でなければ出ない味が、この主人公優子をキャスティングしたスタッフのヒットかもしれない。

 小さい頃から“殿”、“姫”と呼び合う仲だったその“殿”役に豊川悦司。 二人の顔合わせはそれだけで興味があったのだが、どんなサイズにも不思議にフィットするトヨエツはこの映画でも心寂しい一人の女性の心のすき間を優しく埋める。
 久しぶりに髪型をストレートに戻した時点で、例のもじゃもじゃ頭(「弁護士九頭」)とはまったく別の人格を持ち前のどこか女性本能をくすぐる演技で魅せてくれた。
 実際には、ともに心の傷をなめ合う形で、この年になって初めて幼い頃の失っていた時間を少しずつ取り戻そうとしていた。
 なんだか少し懐かしい匂いは「愛していると言ってくれ」の榊晃次のトヨエツを見た思いがする。

 松岡俊介、田口トモロヲもこの役柄に合っていたかもしれないが、妻夫木クンは彼でない方が良かったのかもしれない。 ややトヨエツとかぶっている風味もあったからだ。

 何よりもこの映画、蒲田を舞台にしているところは、わが地元で特に愛着があった。 この映画をやはり地元のキネカ大森で観たのも、そのせいかもしれない。 舞台となった蒲田の、ばりばり下町の雰囲気も不思議に似合っていた。 時代遅れのデパート屋上の観覧車(蒲田東急プラザランド)や、JR蒲田駅前、商店街の居酒屋、池上本門寺(力道山胸像)、六郷土手、タイヤ公園(西六郷公園)、京急線の駅、緑の象・・・。 どれも日頃目にしている風景だ。 特に緑の象は知らなかったので一度確認してみたいところだ。

 金魚の名前に「うどん」と「そば」、笑っちゃうけどいい。
一人暮らしに、誰かに言われる「おやすみ」は心にしみ込むを一言だろう。
蒲田という飾り気のない街と、その街の銭湯の上のアパートに住み、“終い湯”にしか入れなかった一人暮らしの優子は、4人の男との関わりの中で元通りの自分を取り戻した。 それは“一番湯”というささやかな幸せの瞬間でもあった。




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74 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんばんは♪ (エリー☆)
2006-07-08 00:23:37
Cyazさん、こんばんは!!

 絲山秋子さんの「イッツ・オンリー・トーク」以前読みました。蒲田が舞台なんですよね~

 絲山秋子さんの日記もトキドキ読んでます



 そっか、この小説、映画に・・・・
未読~ (cyaz)
2006-07-09 22:37:03
エリー☆さん、コメントありがとうございますm(__)m



>絲山秋子さんの「イッツ・オンリー・トーク」以前読みました。蒲田が舞台なんですよね~ 絲山秋子さんの日記もトキドキ読んでます

そうだったんですか^^

僕は残念ながら原作は未読なんですよ><



>そっか、この小説、映画に・・・・

女性の視点で描いた映画ですから、女性の皆さんが観た方が感情移入できる映画かもしれませんね^^

ご覧になりましたか (DAO)
2006-07-09 23:25:51
いつもTBありがとうございます。

ゆる~~くて楽に暮らしていく・・・

少し切ない終わり方がよかったです。
そうですね~ (cyaz)
2006-07-09 23:30:06
DAOさん、TB&コメントありがとうございますm(__)m



>ゆる~~くて楽に暮らしていく・・・

少し切ない終わり方がよかったです。

そうですね^^ 彼女が心身ともの傷をバスタオルをはずして一番湯につかる姿は印象的でした!

トラックバックありがとうございます。 (のら)
2006-07-09 23:34:49
妻夫木くんは「気弱なヤクザ」だそうですが

どうにもヤクザには見えませんでしたよね・・



寺島さんは本当にうまいなぁと思います。
TBありがとうございます (SHO)
2006-07-09 23:59:42
私もこの作品は寺島しのぶだからこそなんじゃないかなと思っています。

蒲田という街をよくは知りませんが、粋のない下町という表現が気に入ってます。



Unknown (t@shi)
2006-07-10 00:17:34
TBありがとうございます。今日偶然、珍しく

何年ぶりかに蒲田に私用で行って来ました。

この映画のことが、雑然とした商店街を

歩いていると思い浮かびました。
はじめまして (shinpei)
2006-07-10 01:11:10
トラックバックありがとうございます。キネカ大森でご覧になられたんですね。確かにこの映画を見るにはふさわしい場所かもしれませんね。もし優子がキネカ大森にきていたら、劇場の下の階にある客の誰もいないゲームコーナーのすもうマシンの写真を撮っていると思います。あそこは不思議な空間だ。
このサイズ~ (cyaz)
2006-07-10 08:46:13
のらさん、TB&コメントありがとうございましたm( )m



>妻夫木くんは「気弱なヤクザ」だそうですがどうにもヤクザには見えませんでしたよね・・

ま、原作でどう描かれているのかわかりませんが、優子の出会うチンピラのイメージに合っていたからこそのキャスティングだったんでしょうね^^



>寺島さんは本当にうまいなぁと思います。

彼女は絶対このサイズの映画がいいと思います!

気取らない~ (cyaz)
2006-07-10 08:49:28
SHOさん、コメントありがとうございましたm( )m



>私もこの作品は寺島しのぶだからこそなんじゃないかなと思っています。

仰るとおりだと僕も思います!



>蒲田という街をよくは知りませんが、粋のない下町という表現が気に入ってます。

やや汚れた感はあるのですが、下町でも浅草のような感じではない気取りのない下町ですよね(笑)

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