現在の「令和5年春開始接種」では、基礎疾患のない12~64歳の人は新型コロナワクチンの接種対象外で、前回の接種からかなり間が空いてしまっていることから、不安に思われている方も多いかもしれません。さて、9月20日から「令和5年度秋開始接種」が開始されることが決定し、初回接種を終えたほぼすべての年齢が接種対象となります。
◆ リスクの高い人への努力義務・接種勧奨
これまで通り、65歳以上の高齢者、5歳以上の基礎疾患を有する人、その他重症化リスクが高いと医師が認める方場合については、予防接種法による「努力義務」や「接種勧奨」が適用されます。
「努力義務」とは、その対象となっている場合、接種を受けるよう努める必要があると定めたもので、「接種勧奨」とは、自治体が接種券を送付するなどの方法で接種を勧めることを定めたものです。
重症化リスクが高くない場合は、個々に接種を検討する形でよいかと思われます。ただ、下記に述べるように、オミクロン株対応でない従来株ワクチンのみの接種で終わっている人は、接種してもよいかもしれません。
「健康な人に対して接種勧奨を適用しない」ということが、「接種しないほうがよい」と誤認を招かないよう、報道にも配慮が必要です。
◆ 使用ワクチン
少しややこしいですが、図1に現在の案をまとめます。要点は、「令和5年秋開始接種」以降は基本的に新しいXBB.1.5対応1価ワクチンが用いられる想定であるということです。XBB系統は、現在流行しており全体の9割以上を占めているオミクロン株の名前です。
現在は、「令和5年春開始接種」がすすめられていますが、8月7日から初回接種であってもオミクロン株対応2価ワクチンの使用が可能になりました。現在流行しているのはXBB系統ですが、従来型ワクチンと比べるとオミクロン株対応2価ワクチンでは約7割の死亡予防効果が確認されています。
「令和5年秋開始接種」において使用されるワクチンは、さらに改変したXBB.1.5対応1価ワクチンの予定です。モデルナ社とファイザー社あわせて2500万回の契約がすでに済んでいます。
XBB.1.5対応1価ワクチンは、非臨床試験(マウスを用いた試験)において、XBB.1.5に対して現行2価ワクチンよりも高い中和抗体価を誘導することが報告されています。
従来株のワクチンのみの接種で終了している人は、現在流行しているオミクロン株XBB系統に対する防御効果は低い状況なので、接種のアップデートを検討ください。
◆ 接種費用は?
努力義務・接種勧奨の有無にかかわらず、少なくとも令和6年3月31日までは、新型コロナワクチンは無料で受けられます。
・・・
しかし、令和6年4月1日以降は、特例臨時接種から定期接種に移行する可能性があり、インフルエンザワクチンなどと同じように一部自己負担が発生する可能性があります。
◆ 今後の新型コロナワクチンの接種間隔は?
おおむね1年ごとに接種していくことが世界保健機関(WHO)の案として挙がっています。この優先度が高いのは、高齢者、重大な基礎疾患がある人、高度の肥満がある成人、免疫不全状態にある人、妊婦、医療従事者といったところです。
超高齢者や基礎疾患が多いなどのリスクがさらに高いと思われる集団では、6か月ごとの接種が望ましいとされています。
日本では、毎年2月頃に発表される北半球における次シーズンのインフルエンザワクチンの株を検討し、5~6月に型が決定されます。そして冬前に接種するといった感じです。新型コロナも今回のXBB.1.5対応1価ワクチンを皮切りに、冬前に年1回どちらも接種するといった形を、接種モデルとして提示できると分かりやすいですね。
・・・
メッセンジャーRNAワクチンは、新型コロナとインフルエンザの両方に適用可能な技術であるため、将来的には1本のワクチンで両方を予防できるなんて時代が来るかもしれませんね。
■ (2015年08月13日)「風疹流行による先天性風疹症候群は45例、そのうち7例死亡」
<その他のCRS関連の過去ログ>
(2014年02月19日)「2013年,風疹が最も流行した国ワースト3」に日本
(2014年01月23日)40例目の先天性風疹症候群が発生
(2013年12月31日)34例目の先天性風疹症候群が発生
(2013年12月20日)33例目の先天性風疹症候群が発生
(2013年12月07日)30例目の先天性風疹症候群が発生
(2013年11月08日)26例目の先天性風疹症候群が発生
(2013年10月31日)22例目の先天性風疹症候群が発生
(2013年10月11日)20例目(19+2-1)の先天性風疹症候群が発生
(2013年09月21日)19例目の先天性風疹症候群
(2013年09月05日)18例目の先天性風疹症候群
(2013年08月29日)17例目の先天性風疹症候群
(2013年08月01日)14例目の先天性風疹症候群
(2013年04月26日)風疹流行止まらず・・・10人目の先天性風疹症候群
そして2018年現在、風疹が流行しています。
CRSも発生していると耳にしました。
5年前の流行から、日本人は何を学んだのでしょうか?
日本政府・医療は風疹を征圧する能力が無いのでしょうか?
アカデミズム(専門学会)系の発言を集めてみました。
■ 「風疹流行対策に関する要望書」より抜粋(2013.7.29:日本小児科学会)
厚生労働省が 2013 年 1 月以降に発出した種々の注意喚起だけでは流行征圧には不十分です。 風疹流行の征圧と先天性風疹症候群の予防にはワクチン接種が極めて有効、かつ唯一の方法です。 成人層への風疹ワクチン(または麻疹風疹混合 MR ワクチン)の公費助成を行う自治体が増えつ つありますが、財政的な問題等からその数は非常に限られています。
日本小児科学会は、風疹流行の征圧と先天性風疹症候群の予防のために、厚生科学審議会予防 接種・ワクチン分科会において、成人のワクチン接種に直結する緊急施策と中期的な施策とを早 急に検討して厚生労働大臣に提言されるよう強く要望します。
■ 2020年度までの風しん排除のために、実効ある施策を要望しますより抜粋(2015.12.4:日本産婦人科学会他)
2020年度までの風疹排除を現実化するためには、「本邦成人男性感受性者約500万名中の400万名程度がワクチン接種を受けることが必要」と私どもは考えております。
しかしこの後行われたことは「抗体検査の費用補助」のみで、あとはワクチンの“勧奨”です。
肝心のワクチン接種のハードルを下げる施策はありませんでした。
そして現在の流行につながっています。
■ 「風疹流行の兆しあり!!!」より抜粋(2018.8.17:日本小児科学会)
速やかに風疹の抗体検査を受けて免疫の有無を確認してください。 妊娠中は風疹を含むワクチンの接種を受けることができません。風疹に対する抗体価が陰性あるいは低かった場合は、人混みを避け、ご家族や職場の同僚など、周りにいる人には罹患歴・予防接種歴を確認していただくようお願いします。もし風疹の罹患歴がなく、1 歳以上で 2 回の予防接種の記録がない人が周囲にいた場合は、急ぎ【麻疹風疹=MR】ワクチンの接種を受けてもらってください。
・・・・・
成人女性、夫、パートナー等を対象とした風疹抗体検査の費用助成事業が行われています。お住まいの市区町村保健担当部署に問い合わせをして、積極的に利用してください。
・・・・・
30~50 代の男性は、風疹への抵抗力が弱い人が多いので、ぜひ【麻疹風疹 =MR】ワクチンを接種してください。 詳細は、かかりつけ医、職場健康相談で尋ねてください。
現在の日本小児科学会のHPでも、①抗体検査、②ワクチン接種、という順番を崩していません。
そして費用助成は「成人女性、夫、パートナー等を対象とした風疹抗体検査」に限定され、流行の中心となっている30〜50代男性にはワクチン接種(費用助成なし)を呼びかけているだけです。
進歩がありません。
(例)「風疹の抗体検査・予防接種(成人)」(栃木県医師会のHPより)
<風疹抗体検査の対象者>
・栃木県内に居住する次のいずれかに該当する方
(1) 妊娠を希望する女性
(2) (1)の配偶者(※1)などの同居者(※2)
(3) 風しんの抗体価が低い妊婦の配偶者(※1)などの同居者(※2)
※1 婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある方を含む。
※2 同居者とは、生活空間を同一にする頻度が高い方をいう。
・・・つまり、妊婦さんと縁の無い30〜50代男性は、ハイリスクにもかかわらず放置されているのです。
予防接種に至っては、実施医療機関を紹介しているだけ。
■ 「首都圏における風疹急増に関する緊急情報」より抜粋(2018.8.20:国立感染症研究所)
風疹はワクチンによって予防可能な疾患である。今回報告を受けている風疹患者の中心は、過去にワクチンを受けておらず、風疹ウイルスに感染したことがない抗体を保有していない集団である。予防接種法に基づいて、約5,000人規模で毎年調査が行われている感染症流行予測事業の2017年度の結果を見ると、成人男性は30代後半[抗体保有率(HI抗体価1:8以上):84%]、40代(同:77~82%)、50代(同:76~88%)で抗体保有率が低い。今回報告を受けている風疹患者の中心も成人男性であることから、この集団に対する対策が必要である。
・・・・・
30~50代の男性で風疹に罹ったことがなく、風疹含有ワクチンを受けていないか、あるいは接種歴が不明の場合は、早めにMRワクチンを受けておくことが奨められる。風疹はワクチンで予防可能な感染症である。
ここでも「風疹はワクチンで予防可能な感染症である」と繰り返し強調しています。
しかし、やるべき事は「ワクチン接種」であることは明白なのに、そこにたどり着かないのはなぜなのでしょう?
3つの要因があると私は思います。
1.国民の無関心(自分には関係ない)
2.ワクチン不足・予算不足
3.ワクチン反対派の存在
1については、妊娠早期の妊婦さんが罹ると子どもに障害が発生する可能性がありますが、ハイリスクである「30〜50代の男性」が風疹にかかっても3日で回復します・・・だから“他人事”でしかないのですね。
そのために会社を休んで抗体検査に行ってお金を払い、結果を聞きに行くためにまた会社を休んで、抗体値が低ければ自費でワクチンを接種する・・・これでは気が進まないでしょう。
社内の健康診断のように、費用は会社持ちで医療者が会社に出張して抗体検査・ワクチン接種となってはじめてスムーズに事が運ぶと思われます。
2については、現在定期接種となっている1歳と就学前の子ども分しかワクチンは生産されていません。ですから「30〜50代の男性」に一斉にワクチンを打ちましょうと言い出すと、途端にワクチン不足になり子どもが接種できなくなることは明らかです。
また、「対象者4800万人全員に接種となると4800億円の予算が必要」だそうです。このお金をどこから捻出するかも問題です。
3については「ワクチンはすべて悪」と考える人たちがいるので、これはもう説得できません。10万回接種して1人の副反応がでてもダメ出しされてしまいます。
ワクチンは医薬品です。サプリメントではありません。
医薬品には効果と副作用があり、副作用を考慮しても効果が十分勝ると判断されれば認可されます。ワクチンもこのような審査を受けて認可され製品化されています。ワクチンに副反応はつきものですから、それを理解して接種を考えることが基本になります。しかし日本は「お任せ文化」があり、病気の知識・ワクチンの知識を学ばずに医者任せになる風潮があります。すると「信じて受けたのに・・・」ということになりがちです。
私は予防接種に関わって30年になる小児科医ですが、この「お任せ文化」に嫌気がさすことがあります。
① 病気の怖さを知る
② ワクチンの効果を知る
③ ワクチンの副反応を知る
①②③をクリアして初めてワクチン接種に望むのが理想です。
しかし日本では①が教育されておらず、③だけが強調される傾向があります。病気の怖さを知らずに、副反応を強調されれば、誰だって怖くなりワクチン接種に尻込みするのは当然です。
<参考>
■ 「間違いだらけの予防接種」
これらをクリアするアイディアはあるのでしょうか?
現在、年齢を区切ってワクチンを臨時接種するという案があちこちから出てきました。
過去には「高齢者男性に対する肺炎球菌ワクチン」「2008年から5年間行われた中学1年生・高校1年生相当年齢への3期、4期の追加接種措置」が行われました。
一斉にするのは予算・ワクチン準備に無理があるので、例えば「今年は30歳・35歳・40歳・45歳・50歳男性対象」とし、毎年1歳ずつずらすとか・・・あ、これでは5年罹ってしまうので「東京オリンピック(2020年)までに風疹撲滅」に間に合わないか・・・ま、他に名案があればいいのですが。
昨今、一部の自治体でワクチン接種費用助成が始まりつつあります。
望ましい方向ですが、これが全国一斉に行われると、やはり「ワクチン不足」が問題になりますね。
そして、ノロウイルスによる嘔吐下痢の季節でもあります。
その昔、ノロウイルスはカキや二枚貝を食べた際の食中毒として有名でした。
しかし近年、そのようなきっかけがなくても、患者さんが多数来院されます。
どこから感染したのでしょう?
・・・原因は意外なところにありました。
■ 冬の食中毒の原因は?
(2017.11.8:読売新聞)
(森井雄一/取材協力=大石 和徳かずのり ・国立感染症研究所感染症疫学センター長、堀 賢さとし ・順天堂大学教授)
大半はノロウイルス
Q おなかが痛いよ。寒くなったから、これって食中毒の心配はないよね。
ヨミドック 食中毒には冬でも気を付けてください。患者数は冬の方が多いくらいですよ。
Q ええ? 食べ物は腐りにくくなるのに?
ヨ 夏と冬では原因が違うんです。夏の食中毒は、主に細菌が原因です。加熱不足の鶏肉などから感染するカンピロバクター、卵や牛肉のレバ刺しが原因になりやすいサルモネラ菌、作り置きのカレーなどで増えるウェルシュ菌、そして今夏、各地で被害が出た腸管出血性大腸菌などが代表的です。一方、冬の食中毒の大半はノロウイルスが原因です。
Q 生ガキでおなかを壊す元になるウイルスだね。
ヨ カキなどの二枚貝は、海水中からノロウイルスを取り込んで蓄積している場合があります。十分に加熱しないで食べると食中毒を起こすことがあるのはそのためです。ただ、二枚貝が原因のものは、ノロウイルスによる食中毒全体の1割程度に過ぎません。
Q そうするとどんな食べ物が原因になるの?
ヨ 食材というより、料理をする人が感染して原因になることが多く、全体の8割程度にも上ります。ノロウイルスの感染力は非常に強く、さらに感染しても症状が出ないことがあります。トイレで排便した後に手をよく洗わないと、自らが排出したウイルスが料理に付着して集団食中毒を引き起こす心配があります。 嘔吐おうと や下痢など少しでも症状がある時は、調理を控えるなど、注意してください。
Q どうすれば感染を防げるの?
ヨ なんといっても、手洗いの徹底です。ドアノブなどから自分の手に付くこともあるため、特に調理や食事前には、せっけんを使って流水でしっかり洗うこと。手洗い後もタオルは共有せず、使い捨てのペーパータオルを使って拭きましょう。感染者の嘔吐物には大量にウイルスが含まれているので、使い捨ての手袋やマスク、エプロンを使って処理し、塩素系の漂白剤などで消毒してください。
受付窓口、あるいは電話でお問い合わせください。
当院の今シーズンの方針と、日本標準方式、WHO推奨方式、米国の指針を下表に示します;
★ 当院の方針
★ 日本標準方式・WHO推奨・米国の指針
厚生労働省が定めた日本方式では、
「13歳未満は2回接種、13歳以上は1回でもよい」
ですが、当院では2シーズン前から
「3歳以上13歳未満でも(条件付ですが)1回接種でもOK」
を導入しています。
条件とは、「過去に2回以上接種している場合」です。
いろいろなパターンが想定されますが、以下のどれでもOKです。
(例)
・昨シーズン2回接種
・昨シーズン1回、一昨年に1回
・2年前に1回、5年前に1回
・・・・
もちろん、強制するものではありませんので、厚生労働省推奨の日本方式を希望されても全く問題ありません。
なぜ回数を減らしたか、その理由・根拠は以下に示します;
1.3歳以上では1回接種でも有効率70%を超える。
2.3歳未満では2回目の接種の上乗せ効果が+30%期待できるが、3歳以上では+10%程度と少ない。
3.以前からWHOおよび米国の指針では、3歳以上は過去のワクチン接種回数をカウントして1回接種を導入しており、9歳以上では無条件で1回接種としている。
詳しくは以下のパンフレットをお読みくださるよう、お願い致します。
★ 「インフルエンザワクチン2017」パンフレット
(クリックすると拡大します)
(表)
(裏)
「手術適応は最終的には耳鼻科の先生が決めることです」とお断りした上で、私は「扁桃があることにより日常生活に支障が出る場合は手術が必要性を検討すべき」と説明し、ご希望により耳鼻科専門医へ紹介しています。
具体的には、
1.反復性扁桃炎:扁桃炎を繰り返して園・学校を休みがち
2.睡眠時無呼吸:扁桃および周囲組織(ひっくるめて「ワイダイエル輪」と呼びます)が腫れていることによりいびきがひどく睡眠時無呼吸があり、慢性的に睡眠不足なので昼間もだるそうにしている
等々。そして手術をすれば、以下のことが期待されます;
1.扁桃炎を起こさなくなる
2.夜熟睡できて昼間シャキッとする
さて、日経メディカルに「どうなってるの? 扁桃摘出の適応」(2017/5/25 横林賢一先生)という記事がありましたので紹介します。
驚いたのですが、日本では「扁桃摘出の適応」が確立していないとのこと。
つまり、各施設・医師の考えにより微妙に異なるのが現状らしいのです。
ですから、あちらの開業医では「手術が必要」と言われても、別の病院では「まだ大丈夫、様子を見ましょう」と言われる可能性があります。
記事の中で紹介された扁摘の適応は以下の通り;
さらに(1)反復性扁桃炎に関する適応(Paradise Criteriaより一部改変)
なんだそうです(上記は米国/英国のガイドラインで推奨)。
小児科医的には、溶連菌による扁桃炎を繰り返す子どもは時々見かけます。
当院通院患者で最高記録は15回。
当然、耳鼻科へ「手術適応のご検討をお願いします」と紹介しました。
しかし本人が「手術は絶対イヤ!」と戻ってきて「薬で何とかなりませんか?」と困ったことをおっしゃる。
仕方なくいろいろ調べた結果、漢方薬が効くかもしれないことがわかり、試しに飲んでもらったら、あれだけ反復していた扁桃炎がピタリとなくなって患者さんがビックリ(私もビックリ)。
「こんないいクスリがあるならもっと早く使って欲しかった」とさえ言われました。
溶連菌性咽頭炎の治療は抗菌薬が基本ですが、上記エピソードを経験してから反復例には漢方薬を併用するようになりました。
考えてみると、100年前までは「扁桃摘出」なんてことはできなかったわけです。
でも一定数の患者さんは存在したはずで、それに対して薬で対応してきたのでしょう。
<参考>
□ 「扁桃摘出術の安全性と合併症-扁桃を病巣とするIgA腎症の治療の進歩」(2017年5月26日:Medical Note」
日本でも同じ成分を含む製品が販売されています。
どうする厚生労働省!?
■ 抗菌ハンドソープ、販売禁止へ...FDA 〜トリクロサンなど19種類の成分を含む製品が対象
(2016.09.06:Medical Tribune)
米食品医薬品局(FDA)は9月2日、抗菌作用があるとして一般向けに販売されているせっけんやハンドソープなどのうち、トリクロサンやトリクロカルバンなど19種類の殺菌剤が含まれる製品の販売を禁止すると発表した。
FDAは2013年に殺菌剤が含まれる製品の規制案を発表し、販売企業に対して長期の安全性と有効性に関する臨床試験などのデータの提出を求めていたが、「通常のせっけんに比べ、これらの製品を使った手洗いが細菌やウイルスへの感染予防効果に優れるとのエビデンスはないことが分かった」としている。
販売企業には1年以内に指定の成分が含まれる製品の販売を中止するか、同成分が含まれない製品に切り替えて販売することが求められている。なお、トリクロサンなどが配合された薬用せっけんや抗菌ハンドソープはわが国でも販売されている。
◇ 「通常のせっけんと流水で手洗い」がベスト
FDAは2013年12月、トリクロサンを含む液体せっけんやトリクロカルバンを含む固形せっけんなどの殺菌剤を含むせっけんに長期間曝露することが、抗菌薬耐性菌の発生や甲状腺ホルモンあるいは生殖ホルモンへの悪影響に関係する可能性があるとの研究報告を受け、規制案を発表。殺菌剤が含まれている一般向けのせっけんやボディーソープなどの製品を販売する企業に対し、安全性と有効性の追加データを提出するよう求めていた。
しかし、提出されたデータを検証した結果、これらの製品が通常のせっけんに比べ感染症リスクや感染リスクの低減に優れているとのエビデンスはなかったという。
最終的に販売の中止が決定されたのは、わが国でも一部のハンドソープやせっけん、マウスウォッシュなどに配合されているトリクロサンやトリクロカルバンの他、クロフルカルバン(ハロカルバン), フルオロサラン、ヘキサクロロフェン、ヘキシルレゾルシノール、ヨウ素含有化合物など19種類の殺菌剤が含まれる一般向けのせっけんやハンドソープなどの製品。ただし、一般向けの手指の除菌用ローションやジェル、手ふき用ウェットティッシュ、医療機関で使用されているせっけんおよびハンドソープは規制の対象外としている。
なお、2013年に規制案が発表されたのを受け、米国では既に一部の企業がこれらの殺菌剤の使用を中止している。また、規制案で検証すべき成分として挙げられていた塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロキシレノールの3種類については、安全性と有効性のデータの提出期限を1年間延期。データ収集期間中は、これらの成分が含まれる製品の販売は許可されるという。
今回の規制に関し、FDA医薬品評価研究センター(CDER)のJanet Woodcock氏は、プレスリリースで「抗菌作用があるとされる石けんやハンドソープを使用している人は、細菌などの感染を予防する効果が高いと考えて使っているかもしれない。しかし、通常のせっけんと流水で手を洗うよりも優れているとの科学的根拠は全くない。それどころか、これらの成分は長期的には利益よりも有害な作用をもたらす可能性を示すデータがある」とコメント。
また、FDAは「通常のせっけんと流水で手を洗うことは、自分自身や他者への感染予防において最も重要なステップ。せっけんと流水が利用できない場合に除菌用ローションを代用する場合には、アルコールが60%以上含有されているアルコールベースのローションの使用が米疾病管理センター(CDC)によって推奨されている」としている。
★ 記事に出てきた化学物質を含んだハンドソープをamazonで検索してみました;
□ 「トリクロサン&ハンドソープ」 ・・・ビオレU®などメジャーな製品も。
□ 「トリクロカルバン&ハンドソープ」 ・・・これもメジャーなミューズ®。
□ 「クロフルカルバン&ハンドソープ」
□ 「フルオロサラン&ハンドソープ」
□ 「ヘキサクロロフェン&ハンドソープ」
□ 「ヘキシルレゾルシノール&ハンドソープ」 ・・・該当製品なし。
□ 「ヨウ素含有化合物&ハンドソープ」 ・・・該当製品なし。
その後、犯人は「エンテロウイルスD68」と判明し、このウイルスは神経も犯すこともわかってきました。
このウイルスに対するワクチンは現時点で存在せず、特効薬もありません。
■ 子供が原因不明の手足まひ、8割が症状残る
(2016年8月10日 読売新聞)
昨年夏以降、手足に原因不明のまひなどが起きた子どもが相次ぎ、一部の患者から「エンテロウイルスD68」が検出された問題で、日本小児科学会は、まひが表れた患者のうち8割に症状が残ったとする中間報告をまとめた。
中間報告によると、手足のまひが起きた患者のうち、ウイルス性の脊髄炎が原因とみられる54人を分析した。
まひが完全に治ったのは5人のみで、33人は改善が一定程度でとどまり、11人は改善が見られなかった。
手足のまひ以外に、4人に意識障害、11人に手足に感覚障害が起きた。8人は顔面まひやのみ込みの悪さを覚えていた。
45人の画像分析では、全員に脊髄に異常が見られ、このうち20人は脳幹にも異常が確認された。
昨年秋のニュースです;
■ 麻痺が残るエンテロウイルスD-68 流行のおそれ 感染研
(2015年10月16日:Hazard lab)
乳幼児や子供がかかるとぜんそくのような症状から、筋肉の虚弱やまひを引き起こす「エンテロウイルスD-68型」が国内でも流行のおそれ
昨年、全米で1000人以上が感染した“謎のウイルス”と呼ばれる「エンテロウイルスD-68型」の感染が、先月、東京や埼玉県内で相次いで確認されたと、国立感染症研究所が15日発表した。
「エンテロウイルスD-68型」はぜんそく症状を引き起こす呼吸器疾患で、海外では昨年8月、米国で大流行し、今年1月までに全米で1153人が感染し、このうち14人が死亡したと報告されている。
乳幼児や子供が発症しやすく、大人では症状が無かったり、軽傷で済む場合が多い。発熱やくしゃみ、鼻水などの軽症から、気管支炎や肺炎、呼吸困難に至り、重症化すると筋肉が虚弱化し、脳神経機能に異常をきたす場合もあり、麻痺が残るケースもある。
国立感染症研究所によると、東京都内では9月に小児総合医療センターに気管支ぜんそくのような症状で入院する患者が急増。このうち生後11カ月の女の子や2歳の男児など4人の子供の鼻水や気管内から「エンテロウイルスD68型」が検出された。
さらに埼玉県内でも、医療機関に入院した11カ月の男の子や5歳の女児など8人からウイルスの陽性反応が報告された。いずれも気管支ぜんそくや急性気管支炎で入院し、このうち11カ月の男の子は、9月7日に右半身に弛緩性まひの症状が現れて入院。9日から10日にかけて左足にもまひが進み、退院後も右側には後遺症が残ったという。
エンテロウイルスD-68型は、国内では2010年と2013年に120例以上の感染が報告されたが、今年は今月13日までに全国で51例発生している。ウイルスに対するワクチンは今のところ無く、国立感染症研究所では、予防のためにこまめな手洗いと塩素系の消毒剤による消毒が有効だとして注意を呼びかけている。
抗インフルエンザ薬について最新情報を交えてお復習いしておきましょう。
現在、使用可能な抗インフルエンザ薬は以下の通り(日経メディカル「抗インフルエンザ薬の使い分けと留意点」より);
小児科では・・・
1歳から9歳まではタミフル®(幼児はドライシロップで、体重37.5kg以上ではカプセルも)。
5歳以降は吸入剤(リレンザ®、イナビル®)を選択可能ですが、吸入力が弱いと効果が期待できないため、当院では小学生以上に処方しています。
実際の処方は、
・幼児期はタミフル®ドライシロップ
・小学生以上はリレンザ®とイナビル®がタミフル®より多い
といったところ。
イナビル®は1回勝負なので、過去に吸入薬を使用した経験がない子どもにはリレンザ®を勧め、経験のある子どもにはイナビル®もOK、と説明しています。
なお、1歳未満に使用が許可されている薬はありません。
さて、その効果には差があるのでしょうか?
A型よりもB型の方が解熱時間はやや長いが、A・B型ともに薬剤間での有効性の差は比較的小さい、という結果ですね。
一方、ウイルス消失率と家庭内感染抑止力には微妙に差があるようです(日経メディカル「抗インフル薬選択に家族内感染防止という視点も」)。
2013/14~2014/15シーズンにおける4~12歳の123例を対象に、ワクチン接種の有無、年齢を調整し4種類の抗インフルエンザ薬(オセルタミビル、ザナミビル、ペラミビル、ラニナミビル)に無作為に割付けた。診断はインフルエンザ迅速法で行い、患者から経時的に鼻汁を採取し、ウイルス力価(50%感染価:TCID50)を測定した。患者ごとに投与開始からウイルス消失までの時間を調べ、ウイルス消失の患者数の推移を4剤で比較検討した。
ウイルス力価の推移を確認できた102例で、ウイルス消失までの時間を解析した結果、ペラミビル群では投薬開始の翌々日にウイルス消失の患者が80%を超えていた。同時点で、他の3剤ではウイルス消失の患者が40~60%に留まっていた。
一方、廣津氏は、生活を共にする家族内での感染者発生率についても研究している。上記の患者と年齢、罹患ウイルスなどの患者背景が同じ2014/15シーズンの4~12歳の感染者を対象とした家族内感染者の発生率を見たところ、全体では患者本人から感染する可能性のある1261人のうち122人に感染が確認された。
これを抗インフルエンザ薬別に見たところ、ペラミビル群とザナミビル群の家族内感染率が7~8%だったのに対し、オセルタミビル群とラニナミビル群は12%程度と、前者の2剤の方が家族内の感染率が低下していた。
この報告によると、
・ウイルス消失率は、ペラミビル(ラピアクタ®)は他の3剤より高い。
・家族内感染率は、ペラミビル(ラピアクタ®)とザナミビル(リレンザ®)がオセルタミビル(タミフル®)とラニナミビル(イナビル®)より低い。
となりますね。
ただ、タミフル®ドライシロップを使用するのは主に幼児ですから、家族内の接触が濃厚であり、感染しやすい環境にあることを考慮すると・・・あまり差がないのかなあ。ラピアクタ®は点滴なので多用は無用(当院では受験生用と考えています)。あえて言えば、リレンザ®がベターでしょうか。
喘息発作が起きやすいほかに、ポリオのような麻痺も起こすことが知られています。
この度、全国調査の結果がまとまり、以下のように報告されました;
■ 原因不明の体のまひ 子ども中心に全国で66人に
(2016年1月19日:NHK)
去年の夏以降、原因不明の体のまひを訴える子どもが相次ぎ、一部から「エンテロウイルスD68」が検出された問題で、体のまひを訴える患者は26の都府県で5歳以下の子どもを中心に66人に上ることが分かりました。国立感染症研究所は、体のまひの程度や治療によって改善したかなど、詳しい実態調査を始めることになりました。
この問題は、去年8月以降、発熱やせきなどの症状のあと、原因不明の体のまひを訴える子どもが相次いで見つかったもので、一部から「エンテロウイルスD68」が検出され、その関連が疑われています。
国立感染症研究所が全国の病院を対象に調べたところ、まひを訴える患者は5歳以下の子どもを中心に66人に上り、20代から50代の人も含まれることが分かりました。
このため国立感染症研究所などの研究グループは、体のまひの程度や治療によって改善したのかなど、詳しい実態調査を行うことになりました。研究グループでは、患者の中には、治療によって症状が改善した人もいることから、今月いっぱい情報を収集し、今年度中に治療方法についての検討をまとめたいとしています。
研究グループの福岡市立こども病院の吉良龍太郎医師は「今もまひが残る患者が多いと考えられる一方、程度の差はあるが、多少症状が改善した子どもさんもいるので、いつ、どんな方法で治療を行えば最も効果的なのかを探っていきたい」と話しています。