建交労長崎県本部

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トラック業界の賃金体系の特徴と問題点~建交労のトラック政策③

2017年06月25日 09時21分00秒 | トラック政策

(1)賃金体系の特徴

トラック運輸産業の賃金体系の特徴は、所定外賃金の比率が運転者で見ると50%~60%と高くなっていて、中でも歩合給の比率が高いことです。

トラック運輸産業の賃金体系は固定給よりも変動給の割合が高く、変動給の内訳で見ても歩合給の占める割合が高いこと、特に大型運転手の変動給比率が高く、時間外手当の支給よりも歩合給による支給の額が高くなっていることです。

 

(2)低賃金構造の原因と問題点=固定給が少ない賃金体系、世間の半分の一時金、運賃問題など=

①賃金体系上の問題点

i.固定給の低さと歩合給の拡大

基幹職種である運転者の賃金は、約半分が歩合給や時間外手当などで占められています。さらには個人請負などという違法な雇用形態も導入され、完全歩合制や個人償却制のところも増加傾向にあります。

完全歩合制(個人償却制)の特徴は、労働時間と賃金が連動していないことです。そのため、時間外労働賃金の計算が成り立たず、時間外労働割増賃金(残業代)が支払われないところも多くみられます。また、こうした企業では、社会保険に未加入という問題も含んでいます。

ⅱ.歩合給の中身

変動給のうち約5割から6割が歩合給で構成されています。その歩合給の支給方法は、売上げ(運賃)に対して支給する運賃歩合が主流になっています。

ⅲ.年齢別に見る水準

月例所定内賃金を道路貨物(トラック)と全産業、製造業の比較でみると、29歳以下の年齢層では道路貨物がいずれも高く、30歳~34歳を境にその後の年齢層では逆に低くなります。24歳までのトラック運輸産業の賃金は、全産業・製造業と比較しても高い位置にありますが、45才~49才までの賃金は全産業・製造業は2倍に増加していている一方、トラック運輸業では1.45倍に過ぎません。またトラック運輸産業の年間一時金は、若年層の水準が高いという特徴がなく、他産業と比較してすべての年齢層で約半分の水準にしかなりません。従って、年齢が進むにつれて格差が拡大しています。これでは将来安定して働くための賃金体系とは言えません。同時に60歳以降も年金制度の改悪により、年金の未支給期間があり、60歳以降の再雇用における賃金も問題があり、生活がなりたたないのが現状です。年金が満額支給されるまでの安心して暮らせる賃金体系が必要です。

②一時金の低さについて

トラック運輸産業での年間一時金は、全産業の半分以下の水準にあり、改善する気配がないどころか一時金の支給を無くした企業も増えています。一時金の支給基準は、他産業が(本給×月数)が基本となるのに対し、トラック運輸産業では本給そのものが低いことも要因となって基準のない金額設定が多くあり、他産業からみれば"どんぶり勘定"となっている企業が多いのです。

③産業構造の特徴からくる原因

最大の問題は運賃(物流費)問題です。トラックは90年の「規制緩和」により、事実上の運賃の自由化となりました。新規参入も容易(免許制から許可制へ、保有台数5台)になり、保有台数が20台未満の企業が圧倒的な比率を占めています。企業の零細化により運賃ダンピングによる過当競争が激化し、荷主からの値下げ強要にも対応しきれないのです。さらに、重層的下請け構造による下請イジメが横行し、トラック運輸産業の秩序も破壊されているわけです。

④違法性の疑いの強い控除一「事故」に対するペナルティ

運転者が事故を起こした(事故にあった)場合に修理費等の名目で労働者の賃金から控除するという問題も増えています。さらに、積み荷の「商品事故」に対する弁償金も運転手に課せられることも広がっています。何の定めもなく賃金からの一方的な控除する行為は、法違反(労基法第24条違反)となります。しかし、こうしたペナルティーを受け入れざるを得ない労働者の弱い立場が広がっています。