櫻井郁也ダンスブログ Dance and Art by Sakurai Ikuya/CROSS SECTION

◉新作ダンス公演2024年7/13〜14 ◉コンテンポラリーダンス、舞踏、オイリュトミー

断片1/12(岩波ホール閉館のニュースを、、、)

2022-01-12 | アート・音楽・その他

岩波ホールがコロナ禍によって閉館することを昨日のニュースで知り、ショックを受けています。レッスンの場でも話題になりましたが、日本の文化拠点がもうすぐ一つ消えるということでもあると思います。

この映画館からいただいたものは個人的に多大です。例えば、ここで上映されたアンジェイ・ワイダの『大理石の男』などによって、映画あるいは芸術と社会構造の具体的な変革運動との関係をかなり生々しく目の当たりにしたことは大きな出来事でした。

同じワイダ監督による『約束の土地』という忘れ難い映画に出会ったのも岩波ホールでした。近代の繊維工業で大事業を夢見た若者たちの生き様を通じて資本主義の始まりを描いたものですが、これは上記とは別の意味で強烈なインパクトがあり、非常に深く心に食い込んだ作品で、鑑賞から30年以上も経っていると思いますが、現代の生き方や人間の欲望や宿命について、いまだに考えさせられることが多いのです。

ほかにも、タルコフスキーの『鏡』やアンゲロプロスのいくつかの作品や羽田澄子さんのドキュメンタリー映画やさまざま思い出します。僕にとっては、岩波ホールとエキプ・ド・シネマがなければ知る事さえが出来なかった作品や作家はとても多かったし、ジェラール・ドパルデューやロミー・シュナイダーやヘルムート・バーガーなどの名演技を味わうこともなかったかもしれません。

何よりも、それらの作品を鑑賞することや演技に惚れることから芽生えた様々な興味の拡がりや思考の始まりというのは、掛け替えないものだったと思うのです。

また、ここで入手したいくつかのパンフレットには、採録された日本語シナリオが全編掲載されていました。これにより、スクリーンで観た経験をその日のうちに細やかに思い出すことが可能になりますし、気になった台詞を繰り返し眺めることもできますし、さっき目で見たものを今度は文章で文学的に味わい直すことができます。つまり、一回の映画鑑賞をより大切にすることができるのでした。このようなパンフレット作りには映画に対する特別な愛情と志を感じましたし、やはり観客として一作一作をより深く味わうこと助けを具体的にしてもらえるのは本当にありがたかったのです。

世評や流行に振り回されず、きちんと筋の通った考え方で、質の高い映画を公開してきた、その結果として、日本の文化全体に大きな影響を与えてきた映画館だと思います。

どうしてもこの一本を観なければ、という思いで仕事帰りに神保町の駅の階段を駆け上ってゆくことは、もう無くなるのだと思うと、ひどく寂しいです。いつか再開の日が来ることを心から願います。

  岩波ホールHP

 

 

 

 

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Stage info. 櫻井郁也/十字舎房:公式Webサイト

ただいま前回ダンス公演(2021年7月)の記録をご紹介しております。ぜひご閲覧ください。

※次回公演日程など、まもなく順次公開となります。

lesson 櫻井郁也ダンスクラス:ご案内  

2022年のレッスンは1月5日から開始します。募集状況など、上記クリックをしてください。

 

 

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