【フランクフルト】
国際決済銀行(BIS)は13日発表した四半期報告で、世界経済が抱える多くの問題点を指摘し、中国の経済成長減速やドル高、さらに企業のドル建て債務が新興国の脅威になっていると警告した。
同報告は「中国の経済成長減速とドル高は(新興国に)二重の難題を突きつけている。
それは商品(コモディティー)輸出業者をはじめとする成長見通しの悪化と、自国通貨建てで見たドル建て債務の増加だ」と指摘。
BISのチーフエコノミスト、クラウディオ・ボリオ氏は「われわれが目にしているのは単発の地震ではなく、何年もかけて主要な断層線に沿って徐々に蓄積された圧力が解き放たれたもの」だと述べた。
金融市場はここ数週間、中国が8月に人民元の切り下げに踏み切ったことなどをきっかけに乱高下している。
こうした動きを受け、世界第2位の中国経済は失速しており、ただでさえ鈍い世界経済の回復を脅かすとの懸念が高まった。
米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ開始時期をめぐる不透明感も市場の変動に拍車を掛けている。
同報告は「国際金融市場はこの数カ月に何度も打撃を受けたが、その多くは中国での出来事に原因があった」と述べた。
ボリオ氏はもう一つのリスクとして、新興国への資金流入が減速し、新興国が抱える多額のドル建て債務の返済がさらに難しくなることを挙げた。
「(統計から) 世界の流動性がある種の分岐点に立っていることは明らかだ。
中国とロシアへの資金流入は特に弱く、両国ほどではないにせよブラジルも弱い」と述べた。
一方で、新興国のノンバンク(銀行以外の金融機関)向けドル建て融資は2009年以降にほぼ倍増し、3兆ドル(約361兆円)を超えた。
同氏は「その大半が企業に向かっているため、それに関する金融の脆弱(ぜいじゃく)性のほか、為替レートや信用スプレッドの自己増幅的な動きへの影響について深刻な懸念が生じている」と述べた。
中国、インド、ハンガリー、ロシアといった新興国の中央銀行の多くは、経済成長をめぐる不透明感や商品価格の下落を受け、この数カ月に政策緩和に踏み切った。
BISは報告で、「過去数カ月は、金融政策の乖離(かいり)が市場を動かす重大要因であり続けている」とし、「FRBの利上げ開始時期は一段と不透明になっているが、米国と他の多くの国の金利差は開いたままで、外国為替市場に重大な影響を及ぼしている」と述べた。
BISは近年、金融市場が生産性の低さや高水準の債務という経済の重荷に対処する上で金融政策に頼りすぎていると警告しているが、ボリオ氏もこうした見解を繰り返した。
同氏は「現在は桁外れに低い金利が異常なほど長く続いている状況でもある。
金融市場は厄介なほど中央銀行の一挙手一投足に左右されるようになっており、結果として政策の正常化を複雑にしている」とした上で、「金融政策で世界経済の病を全て治癒できると見込むのは非現実的で危険だ」と述べた。