中橋怜子の 言の葉ノート

自然、人、モノ、そして音楽…
かけがえのない、たおやかな風景を
言の葉に込めて

白髪染め

2015-08-31 | 徒然なるままに
「こめかみの白髪が目立って年寄り臭いから染めた方がいいんじゃないか」
「いいのよ、年寄りだから」

心にもない捨て台詞。
気がついたらヘアカラー売り場の前。

明日はよりによってヘアサロンは定休日。火曜日が待っていられなくて自分で染めることにした。

元来白髪にはなりにくい家系で、この年齢にして白髪が殆どないことがちょっとした自慢であった。生え際やこめかみに白髪が増えてきたことは自分ではわかってはいたが、目立って年寄り臭いとは何事か!

主人に言われて一目散にお店に来たものの、さてどんな色に染めたものか。
あれこれ手に取って迷っているとお店の方が「お客様なら明るめのブラウンが…そうこの明るめのマロンとか」

「秋ですもん、マロンですよね」
などと調子に乗って勧められるままに購入。帰って来て即染めにとりかかる。

『このまま20分放置ね…』

そこでハタと我に返る。

なぜ、私はこの夏おしゃれ染めもカットもしないで我慢してきたのか。
染め液を髪全体に施してからそのことを思い出したのだ。
この秋には長い黒髪が必要だったのだ。
そのためにこの夏の猛暑を長い髪で乗り越えたのだ。

慌てて5分で洗い流すも、髪はややマロン。まあ許せる範囲。

それにしても、長い艶やかな黒髪が美人の証しであった万葉の時代、もちろん今のような染め液があるわけでもなし、特に若白髪の女性などは悩ましいことだったろう。

しかし、考えてみれば、便利な染め液がなかった時代には便利な電灯もなかったわけだ。それはうまくできている。
寝乱れの髪に少々白髪が混じっていても見えることはなかったのだ。もちろんシミもシワも。
何しろ陽が沈んでしまえば、灯りと言えばロウソクかお月様だったのだから…。
しかも、当時まだ日本にはロウソクを作る技術は伝わっていなくて全て中国からの輸入品、寺院や貴族など限られた人だけが使える超高級品だったのだ。

こんな時代の話に毎日どっぷり浸かっていると、美化され過ぎた当時の暮らしぶりに疑問やツッコミたいことが山ほど出てくる。
ゴミや排泄物は…






















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仄暗い世界で …なら燈火会にて

2015-08-14 | 徒然なるままに
たそがれの空に迫りくる夜の闇、やがてやわらかい燈火の火影に古都奈良の風景が浮かび上がる。

燈火会最終日前夜の昨日、燈火が灯り出すころから、やがて古都が闇に沈むころまで奈良の町を歩いた。
美しい闇の世界に華やぐ古都を堪能させてもらった。

どうしてこれほどまでたくさんの人が闇に揺れる燈火の灯を求めて集まって来るのだろうか…。
帰り道にふと思った。

今、世の中が明る過ぎること。

街には24時間眠らないお店があちこちに点在。
街も家の中も明かりが溢れている。
こんなに明るくないといけないのだろうか?
もちろんそのお陰で我々も暮らしやすくなっているわけだが、少々明る過ぎやしないだろうか?
太陽が沈む意味がなくなってきているような気がする。

仄暗い世界が恋しくて集まってくる人たち。
やわらかい灯りは集まる人の心をやさしく照らし出す。

そして心が目を覚ます。

明かるかった時には見えなかったものが見えてくる。
見え過ぎて心惑わされていたものが見えなくなる。

人には、少し見えにくい、分かりにくいぐらいがちょうどいい時がある。
仄暗さに心安らぐ時がある。


興福寺の境内の前で燈火に身を屈める浴衣姿の若い女性に思わずシャッターを切った。
手を合わせ祈りを捧げているのかと思いきや、スマホで燈火の写真を撮っていたことが今よく見てわかった。
まあ、これも良し!


迫り来る闇の空に、ゆっくり浮かび上がる浮見堂。池には若い恋人同士を乗せた舟が行き交う。

















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御巣鷹山慰霊登山にかえて …原発再稼動の日に

2015-08-12 | 徒然なるままに
♪心の瞳できみを見つめれば、愛すること、それがどんな意味だかわかりかけてきた…

久しぶりに合唱団員と歌った。
『心の瞳』この曲は坂本九のシングル「懐かしきlove-song」のB面曲。
発売直後、坂本九は日本航空123便墜落事故で逝去。
「ねぇユッコ、今度の曲絶対ユッコが気に入るよ!すごくいい曲なんだ。これは僕たちの歌だよ」と妻に譜面やテープを見せていたという坂本九がとても気に入っていたというこの曲、それがまさかの彼の遺作となってしまった。

今日はあの事故からちょうど30年目。
あの日、テレビから飛び込んで来る恐ろしい映像を見ながら『私はもう二度と飛行機には乗らない』と思ったものだが、海の向こうならまだしも、地続きの所さえも飛行機で移動するこの頃である。

時の流れというものは良くも悪くも一生忘れるまいと思った強烈な記憶をも洗い流していく。

わずか数年であの強烈な記憶も時に洗い流されたというのか、昨日、原発が再稼動した。

原子力発電のメリットもデメリットもそれなりにわかっているつもりだ。
ここで賛成、反対を言うつもりはないが、再稼動するなら、せめて放射性廃棄物、核ゴミの安全で確実な処理方法が決まってからにして欲しい。

詰まって流れないトイレを使ってはいけないことぐらい、子供でもわかる。


御巣鷹山慰霊登山にかえて歌った「心の瞳」
休憩時間にはどこか懐かしいスイカ飴をなめながら、事故の日の記憶を辿った。






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結婚するということ

2015-08-10 | 徒然なるままに
日本人の平均初婚年齢が上がり続けている。
2013年の調べで男性30.9歳、女性29.3歳。年齢の上がり方もさることながら、男性と女性のその差がほぼ1歳に縮まっていることも興味深い。
女性の平均初婚年齢は年に0.2~0.3歳上がっているというから、30歳を越えるのもそう遠くはない。

かつて女性の結婚適齢期と言われた25歳ごろは、今では女性も仕事が充実しキャリアがアップしてくるいよいよこれからという時期である。
女性の社会進出、自立生活が可能になったことがこの数字に顕著に表れている。

さて昨日、友人がこの数字の伸びに拍車をかけた(笑)

花嫁40歳、平均から遅れること10年!
嬉しかったこと辛かったこと、経験も10年分なら、出逢った友、仲間、人との出会いも10年分。
新郎新婦の人との繋がり、仲間のあたたかさを感じる素晴らしい結婚式だった。

40歳だって50歳だって遅いなんてことは全くない。
我々が「遅い」と感じるのは、無意識のうちに「子どもを産む」という物差しを引っ張り出してきているからではないか。

『男が家庭を持ちたいってのは思いっきり阿保になれる場所がほしいからだ』
これは、川端康成の言葉。

結婚の目的はなにも子どもを作ることだけではない。
落ち込んだり、泣いたり、愚痴を言ったり、阿保なことを言ったり、ちょっとカッコ悪い自分をさらけ出すことができる場所を共につくっていくこと、結婚するということはそういうことではないか。

そんな場所をつくってほしい。
本当に、おめでとう!



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地方創生と女

2015-08-08 | 徒然なるままに
女の力は凄い!と改めて思った日。

車もすれ違うことができないような細い坂道を上った所にそのレストランはあった。古民家を改装したレストラン。

古民家といっても奈良町の町家や京都の町家とはわけが違う。
観光地でも駅前でも幹線道路沿いにあるわけでもない。
かといって日本の原風景を残す田舎というほどでもない。
この古家を買ってレストランを出すのにはかなり勇気がいったことだろう。

立地がよくない上に看板も出ていない。前を通っても気づかないような一見普通の民家。これで大丈夫なのか?

余計な心配だった。私たちが到着した時は8台ほど止められる駐車場はすでに満杯。
やっと入った古民家の中は…
女、女、女…女で満席。

古い部分を上手く活かした和モダンな内装はいかにも女性好み。


この光景に、先日の『地方創生』談を思い出した。
文化芸術を起爆剤に『地方創生』をという話に、無縁だと思っていた『地方創生』がグッと身近になり、実際様々な取り組みをされている方に混じって大いに話が盛り上がった。

そして私は自分の中で一つの結論を出した。

『地方創生』の鍵は女が握っているということ。

そこに女が集まること、そこから女が流出してしまわないこと、これが『地方創生』のキーポイントではないか。

女が価値を感じること
女が腰を上げること
女が財布の紐を緩めること
女が…

下手なバラマキ政策や一時凌ぎの公共事業より「女の心をつかむこと」に的をしぼって対策を練る方がよほど現実的な気がする。

女は「いい」と思ったら黙っていられない。頼まれなくても喋る。
(「よくない」と思ったときはもっと黙っていられない。さらに喋る)

侮るべからず、女の力!


レストランの前の道。


テーブル横の窓

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『長崎の鐘』に想う

2015-08-06 | 音楽
笑顔になっていただきたい!想いはそれに尽きる、だから老人施設慰問では哀しい記憶が蘇る歌はできるだけ歌わないようにしている。
しかしリクエストには応えなければならない。そのリクエストが多いのが『長崎の鐘』。戦争を知らない世代の私などが軽く歌っては申し訳ない、いつもそう思う。涙の中で心して歌う曲。

『長崎の鐘』は、自ら被爆しながらも我が身のことは顧みず懸命に被爆者の救護にあたった長崎医大の教授、永井隆博士のことを歌ったもの。
永井は死の床に伏してからも、ひたすら平和を希求し多くの著書を書き続けた。

爆心地から700メートルにあった長崎医大では多くの人が被爆した。永井もその一人であった。飛び散ったガラス破片で頭部の動脈を切断、自分の頭には簡単に包帯を巻き、大量出血で失神しながらも永井は被爆者の治療にあたった。

翌日自宅に帰ると家は跡形もない。台所とおぼしき辺りにロザリオと黒い塊り。焼け残った妻の骨盤と腰椎だった。

藤山一郎はアコーディオンを携えて病床の永井の枕元で『長崎の鐘』を歌った。

昭和26年、永井隆死去、享年43歳。

「戦争なんて古臭い話…」
これからもずっと「古臭い話」であって欲しい。決して「真新しい話」になんかになってはいけない。
再び戦争の惨禍が繰り返されないよう私たちは次の世代に語り継がなくてはならない。

本日の慰問の準備をしながら…。




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燈火

2015-08-05 | 徒然なるままに
今日から古都奈良は優しい炎に包まれる。闇の美しい奈良ならではの燈火の風景である。

蝋燭の年間売り上げが最も高いのは8月なのだそうだ。
今でこそ安価な蝋燭が出回っているが、その昔、日本ではまだ蝋燭が作られていなかったころ、中国から入ってくる蝋燭は大変貴重なもので、朝廷や寺院など限られた人たちだけの高級照明具であった。

「燈火の影にかがよふ うつせみの妹が笑まひし面影見ゆ」(万葉集)

〈大意〉蝋燭の火影に輝く微笑んだあの女(ひと)の姿が見える

「うつせみの」を「生きている」「生の」つまり「裸体の」と解釈する人もいるが(私もそのひとり) なかなか書くとなると勇気がいる。
それにしてもこんな艶っぽい歌、一体どんな高貴な殿方がどんな時に詠われたのだろう。

蝋燭の燈火のもつ1/fゆらぎ、燃える時に出る微量の水分から森林や滝に勝るマイナスイオンが広がることなどに注目され、最近よく蝋燭の癒し効果について耳にする。
難しい理屈は分からないが、蝋燭の燈火を見つめていると何か心が落ち着いてくるのは確かだ。

今宵から約10日間、奈良公園一帯に燈火が灯る「なら燈火会」
地元でありながら、観光客の方が多過ぎてこの二三年はすっかり足が遠のいていたが、東京の友人に誘われて(奈良の人間がおかしな話だが…)今年は闇一面に燈火の揺れる奈良公園に繰り出すことにした。

昨夜、燈火会の話をしていたらふと炎が恋しくなり、昨年の夏にいただいた美しい絵蝋燭に火を灯してみた。
「燈火会」独り前夜祭。

蝋燭の灯りで過ごす時間もなかなかいいものだ。






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熱中症になる

2015-08-02 | 徒然なるままに
一昨日、人生初、まさかの熱中症になる。しかも家の中で。

キッチンで夕飯の支度中、突然の頭痛とめまい、もしかして熱中症?まさか私が…とか思っている間にだんだん立っていられなくなってくる。
クーラーを入れているが、熱気充満のキッチンのガスコンロ付近は全く効いていない。

み、水、水だ!
冷蔵庫の中のお水と目についたドリンク剤を飲んで、ふらふらとソファまで行き倒れ込んだ。

眠ったのか気を失ったのか、家族が帰って来て目が覚めた。
水分を摂らないからだと散々叱られる。

私は食事の時以外ほとんど水分を摂らない。特に冷たい飲み物はあまり得意ではない。
そのくせ人一倍汗かきで、飲むとよけい汗をかくような気がして、よほど喉が渇かない限り余分な水分は摂らない。

これで今までの夏を何てことなくやり過ごしてきたので自分は熱中症なんかにはならないと信じていた。

食事の時に飲む緑茶、コーヒー、紅茶はカフェインに利尿作用があるため逆に脱水症状を起こしやすいらしい。ビールも同じく水分補給にはなっていない。また水だけガブ飲みしてもよくないらしい。

意識的に塩水、スポーツ飲料などをこまめに摂って、この猛烈な暑さを乗り切らねばならない…と深く反省した次第。

今回はたまたま冷蔵庫の側にいたことで大事には至らなかったが、ひとつ間違えれば死んでいたかもわからない。

決して他人事ではない。
油断すれば誰でも熱中症になることをもっと認識する必要がある。家の中でもだ。

一年で最も暑いとき、しかも体温と同じぐらいの異常な暑さ。

こまめに水分補給を!
食事の支度に取りかかる前にも!





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