家族というものは切っても切り離せない存在である。多少腹の立つ事があったり、憎たらしいと思ったりしても他人とは違い大抵の場合、自然と修復が可能である。それが家族愛というものではないだろうか?しかし現代はちょっとその言葉も潰されてしまうような出来事も起こっている。
カラスの世界にも家族愛が存在すると私は思っている。現実にその場面を何度もこの目で見ている。人とは違いカラスは雛が独り立ちするまでのほんの短い期間に思う存分家族愛を発揮する。
私が印象に残っているカラスの家族愛はボソの一家族とブトの一家族である。今日はボソの話をしたいと思う。そのボソはひょっとしたら毎年繁殖している事に気が付いていない人もいるのでは?と思う程大人しいのである。
もう4年前の事である。3羽の雛を巣立たせたのだがすぐに1羽になってしまった。2羽は不幸にも死んでしまっていた。毎日雛に溢れんばかりの愛情を注ぎ込み雛も見る見る成長していった。ある程度大きくなっていたので親も雛を置いて出掛けるようになっていた。
ある日の事、いつものように公園内でボソ同士が集合して鳴き交わしていた。残された雛は1羽で羽繕いをしたり、地面を啄ばんだりしてくつろいでいた。その時、隣の縄張りのブトが番で侵入して来て急に雛へ襲い掛かったのである。雛は突然何が起こったのか解らない状態で飛び立ったのだが、相手はブトでしかも立派な成鳥である。当然その飛翔力は敵うものではなかった。必死の抵抗も空しく雛はブトに捕まってしまったのである。
ブトの番は2羽で雛を枝に宙吊りにして体を突き続けた。雛は羽をバタつかせて抵抗していたが、逃げる事は出来なかった。枝に押さえ付けられた足からは血が滴っていた。雛は悲鳴とも思える声を出し鳴いていた。その声が聞こえたのかボソの番は猛スピードで戻って来てそのままブトへ突進して行ったのである。見ている私は可愛そうだが手を出す事はしなかった・・・・してはいけないのである。
一旦は逃げる事が出来たのだが、ブトの番の息はピッタリで片方が雛を追いかけてもう片方がボソの番を追いやった。今度は地面に伏せてしまった雛を再び突き始めた。雛は段々抵抗出来る力がなくなったのかその場にぐったりとしてしまった。ブトは気が済んだのか何事もなかったかのように飛び去って行った。
雛は動く気配がなかった。ボソの番はブトがいない事を確認しているかのように辺りを警戒しながら雛の元へ降り立った。番の片方はもしかしたら母親の方だったのかも知れない。雛の首の辺りを軽く突いた。すると雛は少しだけ顔を上げて反応した。雛は瀕死の状態ではあるが生きていたのである。私もびっくりした。親が突かなければもしかしたらこの雛は二度と再び顔を上げる事は出来なかったかも知れない。
私もここまま帰る事が出来なくてずっと見ていた。雛の側に行こうとすると威嚇して来た。時期的にはもう威嚇はしない筈なのだが、この状況なら仕方がないかも知れないと思い離れたところから双眼鏡で見る事にした。
1時間程経って雛がふら付きながら起き上がったのである。その体には突かれた跡が残り何箇所か羽が逆立っていた。しかし鳥の回復力というのは凄いもので間もなく自分の足で枝に飛び移り上へ上と上がって行ったのである。足からはまだ血が滴り続けていた。止まっている枝が血に染まっていた。実に痛々しそうであった。この間も番はずっと雛を見守っていた。
しばらくの間ほとんど動く事はなかったのだが、次第に羽繕いを始めて血の出ている足をいたわっていた。ここまで回復したら大丈夫だと思い私はその場を去り家路へ着いた。
しかし夕方になりボソ一家が気になったので見に行ったのである。ちょうどカラスが眠りに就く時刻であった。ボソ一家は何と3羽で川の字になり眠りに就こうとしていた。雛は親に挟まれるようにして体を休めていた。既に血は止まっていた。この光景を見て私は本当に感動し、3羽の姿が頭に焼き付いてしまった。これこそ正真正銘の家族愛ではなかろうか?
それからしばらくボソの番は雛を1羽置いていなくなる事はなかった。雛は突かれた足を引きずっていたが支障はなさそうである。ブトも雛を襲撃にやって来る事はなくなった。未だにこのブトとボソは仲が悪いのは言うまでもないだろう。
この雛は秋に無事に独り立ちをして公園から姿を消した。もう4年前の出来事なのでこの雛は親になっている事だろう。そして自分が受けた愛情以上の愛情を家族に注いでいるに違いない。私はこのボソの番を「子煩悩ボソ」と呼んでいる。
画像:子煩悩ボソ夫婦
カラスの世界にも家族愛が存在すると私は思っている。現実にその場面を何度もこの目で見ている。人とは違いカラスは雛が独り立ちするまでのほんの短い期間に思う存分家族愛を発揮する。
私が印象に残っているカラスの家族愛はボソの一家族とブトの一家族である。今日はボソの話をしたいと思う。そのボソはひょっとしたら毎年繁殖している事に気が付いていない人もいるのでは?と思う程大人しいのである。
もう4年前の事である。3羽の雛を巣立たせたのだがすぐに1羽になってしまった。2羽は不幸にも死んでしまっていた。毎日雛に溢れんばかりの愛情を注ぎ込み雛も見る見る成長していった。ある程度大きくなっていたので親も雛を置いて出掛けるようになっていた。
ある日の事、いつものように公園内でボソ同士が集合して鳴き交わしていた。残された雛は1羽で羽繕いをしたり、地面を啄ばんだりしてくつろいでいた。その時、隣の縄張りのブトが番で侵入して来て急に雛へ襲い掛かったのである。雛は突然何が起こったのか解らない状態で飛び立ったのだが、相手はブトでしかも立派な成鳥である。当然その飛翔力は敵うものではなかった。必死の抵抗も空しく雛はブトに捕まってしまったのである。
ブトの番は2羽で雛を枝に宙吊りにして体を突き続けた。雛は羽をバタつかせて抵抗していたが、逃げる事は出来なかった。枝に押さえ付けられた足からは血が滴っていた。雛は悲鳴とも思える声を出し鳴いていた。その声が聞こえたのかボソの番は猛スピードで戻って来てそのままブトへ突進して行ったのである。見ている私は可愛そうだが手を出す事はしなかった・・・・してはいけないのである。
一旦は逃げる事が出来たのだが、ブトの番の息はピッタリで片方が雛を追いかけてもう片方がボソの番を追いやった。今度は地面に伏せてしまった雛を再び突き始めた。雛は段々抵抗出来る力がなくなったのかその場にぐったりとしてしまった。ブトは気が済んだのか何事もなかったかのように飛び去って行った。
雛は動く気配がなかった。ボソの番はブトがいない事を確認しているかのように辺りを警戒しながら雛の元へ降り立った。番の片方はもしかしたら母親の方だったのかも知れない。雛の首の辺りを軽く突いた。すると雛は少しだけ顔を上げて反応した。雛は瀕死の状態ではあるが生きていたのである。私もびっくりした。親が突かなければもしかしたらこの雛は二度と再び顔を上げる事は出来なかったかも知れない。
私もここまま帰る事が出来なくてずっと見ていた。雛の側に行こうとすると威嚇して来た。時期的にはもう威嚇はしない筈なのだが、この状況なら仕方がないかも知れないと思い離れたところから双眼鏡で見る事にした。
1時間程経って雛がふら付きながら起き上がったのである。その体には突かれた跡が残り何箇所か羽が逆立っていた。しかし鳥の回復力というのは凄いもので間もなく自分の足で枝に飛び移り上へ上と上がって行ったのである。足からはまだ血が滴り続けていた。止まっている枝が血に染まっていた。実に痛々しそうであった。この間も番はずっと雛を見守っていた。
しばらくの間ほとんど動く事はなかったのだが、次第に羽繕いを始めて血の出ている足をいたわっていた。ここまで回復したら大丈夫だと思い私はその場を去り家路へ着いた。
しかし夕方になりボソ一家が気になったので見に行ったのである。ちょうどカラスが眠りに就く時刻であった。ボソ一家は何と3羽で川の字になり眠りに就こうとしていた。雛は親に挟まれるようにして体を休めていた。既に血は止まっていた。この光景を見て私は本当に感動し、3羽の姿が頭に焼き付いてしまった。これこそ正真正銘の家族愛ではなかろうか?
それからしばらくボソの番は雛を1羽置いていなくなる事はなかった。雛は突かれた足を引きずっていたが支障はなさそうである。ブトも雛を襲撃にやって来る事はなくなった。未だにこのブトとボソは仲が悪いのは言うまでもないだろう。
この雛は秋に無事に独り立ちをして公園から姿を消した。もう4年前の出来事なのでこの雛は親になっている事だろう。そして自分が受けた愛情以上の愛情を家族に注いでいるに違いない。私はこのボソの番を「子煩悩ボソ」と呼んでいる。
画像:子煩悩ボソ夫婦
私なぞ、「あークン」の子が地面にいるだけで、落ち着かなかったのです。そのブトに攻撃されたボソが私の目の前にいたら? お気に入りのあークンの子だったら…と想像すると、人間の私はどうしただろうと自問自答しました。「マガモのギャラリーのように、野生に手を出してはいけないのだと、改めて思いました。
親子で川の字になって、寝ている姿…「もう一人にしないから大丈夫だよ」と親が子に言っているようですね。
きっと、その子も親譲りで「子煩悩」な親になっていますね。本当に生還して良かったです。
子煩悩ボソは今年は繁殖に失敗しましたが、来年は雛の姿を見せてくれると思います。
雛が地面にいると本当に落ち着かないですよね。まるで私達が親ガラスの気分です。でもきっと親ガラスも同じく落ち着かないのだと思います。地面にいると人との距離も近くなるので大変そうです。公園の木は下枝がないので、上がろうにも上がれなくて必死になっている雛の姿を見ていると「頑張って!!もう少しだよ」と声を出してしまいそうになります。
木って軽く叩くだけでも樹幹の枝が揺れています。相当な振動を感じているのだと思います。
今年野鳥の営巣調査があり営巣木にナンバーテープを打ち込むのですが、その振動だけでも巣から飛び立ってしまいました。