8月13日(火)
毎朝、両開きの鎧戸と窓を開けて新鮮な空気を取り入れる。この日は9℃まで冷え込んだが、朝から蒸し暑い日本よりはむしろ心地よい。身を乗り出して前の遊歩道の様子を眺めていると、散歩していた人が私の姿を認めて挨拶をしてくれたので、こちらからも挨拶をした。ここに住んでいるような気分になった。
エール・フランスのアプリにログインしておいたら、出発30時間前のチェックインが自動で行われていた。台風の進路が気になるが、予定どおり出発すると表示されている。
10時、グラン・モラン川の軌道自転車«Cyclo-draisines du Grand Morin»に乗りに出かける。グラン・モラン川沿いの廃線を利用した施設である。
10時30分、ジョワゼルJoiselleにある乗場に到着。他に客は1組の家族連れのみ。クリスチアヌは「車のナンバープレートに35と書いてあるから、サン=マロ(大西洋岸)から来たのね。」
昔のジョワゼル駅の敷地を利用しており、事務所、引込線に自転車庫、ピクニック用のベンチがある。ここから2方向のコースがあるが、ここからパリの方向へヴィルヌーヴ=ラ=リオンヌVilleneuve-la-Lionneまでの往復8.5kmのコースを予約してくれていた。
フランス国鉄SNCFのグレッツ=アルマンヴィリエ - セザンヌ線Ligne de Gretz-Armainvilliers à Sézanneのうち1972年に廃止されたクロミエCoulommiers・セザンヌ間の軌道の一部を利用している。現在、パリ東駅・クロミエ駅間を1時間に1本の電車が約1時間で結んでいるが、クロミエ・セザンヌ間は公共交通機関がないのが残念。
4人乗りの1号機を貸し出された。中央の2人が座席に座り、両端の2人が漕ぐ。
10時40分、出発。軌道の両側に高木が並び、その外側には広大な農地が広がる。漕いでいてとても気持ちが良い。
所々に、踏切がある。普通は道路側に遮断機が設置されているところ、ここは逆で軌道側に設置されている。踏切の100m手前に«STOP A 100M»という標識があり、踏切の前に«STOP»という標識がある。道路に通行者・車両がないことを確認したうえで、遮断機を自分で上げて自転車を通し、遮断機を下す。実際に自動車が踏切を横断するのを数回見たので、怠れない。農道との踏切には遮断機は設置されていないが、一時停止の標識がある。日本の鉄道関係者が行うように「右よし!左よし!」と指差喚呼により安全確認を行ったところ、クリスチアヌとジャンに結構受けた。
11時30分、鉄橋の手前で軌道上に遮断機と大きな岩が現れ、傍に«FIN DE PARCOURS - STOP»という標識が立っていた。つまり、ここが終点。後で地図を見て、この先はマルヌ県からセーヌ・エ・マルヌ県に入る県境であることが分かった。自転車を持ち上げて方向転換する装置が備え付けられており、容易に向きを変えられる。多客時には区間の途中で自転車同士が鉢合わせする場合がある。そのような場合は、いずれかの自転車を担いで軌道から下ろし、すれ違うことになっているそうだ。
4人で途中交代しながら漕いだ。みんなとても楽しんだ。ジャンは「シュー、ポーッ!」と汽笛の真似をし、私は「モンペリエ・サン=ロック駅行きのTGVは、間もなく発車します!」と駅のアナウンスの真似をした。
12時30分、出発地点に戻ってきた。もう一組の客は同じコースに出発していった。
傍のベンチでピクニックの昼食。ここでも弁当箱が活躍。茹で卵と野菜のサラダ、デザートにクイニー・アマン。空は晴れて気温18℃と爽やか。この場所は携帯電話が圏外。エトージュ城の近辺でもそうであったのであるが、村レベルの街では携帯電話の電波がしばしば圏外となり、何とか繋がる電話会社も地点によりよく変わる。山がない地形であるからだろうか。
13時30分、プロヴァンProvins に向けて出発。
14時、プロヴァン着。15時から「騎士の伝説La Légende des Chevaliers」という50分間の中世時代劇を鑑賞。乗馬しながらのアクロバット演技が迫力があった。客席は満員で、学校の遠足で来ている子供達も多く、大喝采であった。
16時、城壁の周囲を散策。城壁の外側は一面農地。
17時、バラ園Roseraieのサロン・ド・テで一服。クリスチアヌのお勧めは、バラのアイスクリームで、確かによい香りがしておいしい。古い品種のバラを見ることができた。花が小振りなので廃れたそうだ。確かに傍にある現代の品種と見比べると一回り小さく、色も地味に感じる。バラの苗は20€から販売。苗は日本に持ち帰ることができないので、花弁の砂糖漬けを購入。
その後、六角形の主塔が印象的なセザールの塔Tour César周辺を散策し、バラのジャムを購入。
19時、シャテル広場Place du Châtelに面したクレープ店«Crêperie Normande chez Mammy»にて夕食。エメンタルチーズとポワロー葱のガレット及びマロンクリームのクレープを頂いた。ここのガレットは裏返しで出てくる。
21時、セザンヌに戻る。
持参した浴衣2着を妻が着付けることになった。ジャンには寸法がちょうど合っており、割と楽にできた。クリスチアヌにはやはり寸法が大きいので、お端折りを何とか作って着付けた。2人とも満足してくれたのでよかった。
22時を回ったので、名残惜しいが、2階に上がって荷造りをしなければならない。クリスチアヌがイワシの缶詰や鴨のリエットの瓶詰など保存食品をどっさり持たせてくれた。弟思いの姉さん。荷物が結構重くなったけれど、嬉しかった。