特殊清掃「戦う男たち」

自殺・孤独死・事故死・殺人・焼死・溺死・ 飛び込み・・・遺体処置から特殊清掃・撤去・遺品処理・整理まで施行する男たち

嫌な見積予約

2024-05-03 16:10:31 | その他
当社は、24時間365日、電話受付をしている。仕事の問い合わせ・依頼がほとんどで、あとはどうでもいい営業電話だったりする。そんな中で、たまに自殺志願者が電話をしてくることがある。
ある日の夜遅い時間に、年齢不詳・女性からの電話が鳴った。「飛び降り自殺の現場の清掃はいくらくらいかかりますか?」
話の内容から、てっきり特殊清掃の「見積依頼だな」と思った・・・が、違っていた。
「現場によって作業内容や費用は異なるので、実際に現場を見させていただかないと金額はだせないんですよ。」と、いつもの応え。
現場の場所や状況を質問したところから話が変わってきた。
「実は、これから飛ぶところなんです。」とその女性。「えッ?」」と絶句する私。
本音を言うと「嫌な電話にでてしまったなぁ」と後悔した。
無責任に「自殺はやめた方がいい」と言うのは簡単だが、本人にしても、死体業を長くやっている私にとっても自殺を考えることはそんな単純なものではない。決してきれい事や上っ面の同情心、ましてや自殺志願者を救済したなどという美談なんかじゃ片付かない複雑で深刻な問題なのである。特に、本人にとっては。
でも、関わってしまった以上は、自殺はしてほしくないと思った。
同時に、「彼女の人生に無責任に立ち入ることが正しいことか?」という疑問も持った。
でも、ことは急がなければならない。
きれい事は抜きにして、「とりあえず、飛び降り自殺や電車への飛込みはやめた方がいい」「その死に方は現場も悲惨だし、残された遺族や他人様に多大な迷惑をかけることになる」とアドバイスになっているようななっていないような話をした。
もちろん、机上論ではなく、そんな現場の後片付けをしてきた自分の経験を踏まえて話したから、少しは説得力はあったと思う。
その後も色々な話をしたが、社会には私の仕事を蔑んでいる人も多いけど、それに耐えながらも開き直って生きている自分の話をしたりして、何とかその場は思い留まらせた。
その後、彼女がどうなったかは知らない。知りたいような知りたくないような心持ちである。
少なくとも、生きていてほしい。それは彼女のためじゃなく、そんな相談を受けざるを得なかった私のために。


トラックバック 2006/06/02 投稿分より

日本初の特殊清掃専門会社
ヒューマンケア株式会社
0120-74-4949


コメント (13)
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