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弱い文明

「弱い文明」HPと連動するブログです。 by レイランダー

浅川マキさんの思い出+都市伝説2

2010年01月22日 | Weblog

 ここ数年、自分が知っている、好きだった、あるいはゆかりのある、そういう著名人がバタバタ死んでいく感じがしている。人は皆死ぬのだから、長く生きているとその分だけ、そういう死に出会う確率も高まっていくというだけの話で、何も不思議はないのだけど。
 17日、歌手の浅川マキさんが亡くなった。僕はこの人の歌をよく知らない。基本的にはラジオだかテレビだかで、彼女が歌っているのをチラッと聴いた(観た)、程度の記憶しかない。ある時点まで、カルメン・マキとごっちゃになっていたくらいだし(寺山修司つながりで「同門」と言えなくもないが)。ただ、ちょっと変な形で出会ってしまった経験があるので、忘れがたい人物なのだ。

 一度目は、ある音楽系のミニコミに携わっている頃のこと。彼女に電話をしてコメントをもらったのだった。その企画は、とにかくいろんな表現分野のいろんな人に連絡がつく限り電話をかけまくるというもので、お題は「インディーズとメジャー」の問題に関わるような話だったと思う。丁寧に答えてくれる人もつっけんどんな人も、「なんの話?」という人もいっぱいいたが、そんな中で一番懇切丁寧に、どこの馬の骨ともわからない若造に対して延々と持論を語ってくれたのが、浅川マキさんだった。途中から話が「持論」から脱線して、もうこっちが切りたいと思っても切らせてくれなかった。しまいには「あなた面白い人ねえ、ウチに遊びに来なさいよ」などと誘われる始末で(お前の方がおもろいっちゅうねん、とツッコみそうだったが)、そこは「はあ、いずれ」とかなんとか、お茶を濁した。

 二度目は、僕の友人があるレコード会社に勤めるようになって、その関係から、マキさんのライヴに一緒に行くように誘われた時。東京・吉祥寺のライヴハウスだったと思う。
 その友人もマキさんとすでに懇意になっていて──というより、一度でも会えばみんな懇意になってしまうような人らしいのだけど──ライヴが終わったあと、楽屋口にマキさんを呼び出して僕と対面させた。会うのは初めてだけど、昔一度電話インタビューしたことがありました、憶えてます?・・・という形で切り出したところ、電話は憶えてはいないけど、そのテーマは興味深いのよねえ・・・という形で、また延々「持論」を語り始めた。電話の時から3、4年は経っていたので、その後に加わった音楽状況などもコミで語っているようなのだけど、第三者が把握するのが難しい内輪の様々な話が織り交ぜてあって、聴いているのは正直かったるかった。
 ただ、この人にはこの人の「宇宙」というものがあって、そこには寺山修司をはじめとするたくさんの「人」が、惑星や星雲のように広がっていて、その「人」をつたって旅していくのがこの人の人生なんだろうなあ、という、漠然とした感じを受けた。僕なんかその中の、星というより小惑星のかけらでしかなかったろうけども。
 マキさん、安らかに。あの世でもいろんな人とおしゃべりし続けているんでしょうね。 

 ちなみに、この日のライヴでベースを弾いていたのは、かの山内テツだった。海外のロック・シーンで成功した初めての日本人ミュージシャン。日本に帰ってきてからは不遇を極めたそうだが・・・ストーンズで来日したロン・ウッドが、「テツはどうしてるんだ」といって会いに行った時、あまりの貧しさを見て絶句したという逸話を聞いている。それはともかく、この日ジャズ・セッション風の演奏スタイルでテツ氏が(明らかにトリップしながら)弾く歪んだ音のリード・ベースは、「延々と持論を語る」に匹敵する過剰なまでの饒舌さだった(その代わり、マキさんの歌は全然憶えていない)。


 この間渋谷の青山通りを通った時、また変なポスター(のようなもの)を見つけた。去年「これって何なの」 と題して書いたエントリーの、「謎のステッカー」の貼られていた場所から程近い、青山学院大脇の歩道の立て札である。ご覧のとおり、車道側から見れば「ゴミの不法投棄禁止」を呼びかける役所の看板だが、裏の歩道側には、なんだかわからないモノと文字が貼られている。

 この中の「PUTS STM」という言葉を手がかりに検索してみたところ、同じステッカーを扱っているブログを見つけた。同種の様々なステッカー、落書などの写真を大量に掲載している、クール極まりねえブログ。
 http://nfkffnfk.blogspot.com/
 ページ下部の「label」のところから、「STM」「PUTS」というあたりを開くと、僕の見たのと同タイプのステッカーが確認できる(「政二さん」はまだ見つけられていない)。
 カテゴリー名以外、言葉の説明が一切ないので、あくまで推測ではあるけれど、どうやらこれが一つの答えであるようだ。この管理人氏の素性は詳しくは知らないが、ライダーであり、カメラマンでもあるらしい。絵をデザインしたのが、あるいは壁にスプレーで描いたのがこの人自身というわけではなく、別のライダー、あるいはパンクス、DJ仲間たちなのかもしれないが、少なくとも管理人氏はただの行きずりの傍観者ではなく、「関係者」であることは確かだろう(nfk=no future krewというのは彼が所属する走り屋チームの名らしい)。
 ステッカー類だけでなく、廃墟や裏町など、写真自体のインパクトがなかなかのもの。ステッカー類も、それ自体のデザインで勝負するというより、それが貼られる場所との関係性で見せる(魅せる)、ということだ。“ストリート・カルチャー”と銘打ったものは今の世の中に数あれど、彼が切り取ってくる絵には、ただの海外文化の受け売りとは別次元の説得力を感じる。うまく言えないが、こういうの、アリだな、と思ってしまう。浅川マキにこじつけるわけではないが、アングラは不滅。アングラは寡黙にして饒舌。

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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ESSU (motoyan)
2010-01-28 23:47:16
http://nfkffnfk.blogspot.com/search/label/SATOXIC
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>ESSU (レイランダー)
2010-01-29 10:12:50
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