中華街ランチ探偵団「酔華」

中華料理店の密集する横浜中華街。最近はなかなかランチに行けないのだが、少しずつ更新していきます。

茶色の朝

2018年01月11日 | Weblog

 『茶色の朝』は20年前にフランスで刊行されベストセラーとなった本。
 作者は心理学者、人権運動家のフランク・パヴロフ。

 あらすじは、ざっとこんな感じです。

 物語は、主人公である“俺”とその友人のシャルリーが、陽の光がふりそそぐビストロでお互いのペットの話をするところから始まる。
 茶色以外のペットを飼ってはいけないという特別措置法ができたことから、シャルリーが飼っていた茶色とはいえないラブラドールを処分したという話をすると、“俺”もまた、白黒ブチの猫を処分したことを告白する。
 二人はお喋りをしながら、妙な感じが残り、どこかスッキリしないまま別れた。

 それからしばらくすると、今度は『街の日常』という新聞が廃刊され、新聞は『茶色新報』だけになってしまう。
 そして次は『街の日常』系列の出版社が刊行した本が、図書館や書店から消されていく。

 やがてシャルリーは茶色の犬を、“俺”も茶色の猫を飼うようになった。

 ≪世の流れに逆らわずにいれば、面倒に巻きこまれることもない。茶色に守られた安心、それも悪くない≫

 しだいに、そう思うようになっていった。

 ある日曜日のこと。
 “俺”はシャルリーと遊ぶため彼のアパートに行くと、自警団によってドアが破壊されているところだった。
 シャルリーは茶色の犬を飼っていたのに、なぜ?
 野次馬が言うには、過去に茶色ではない犬を飼っていたのが犯罪なのだと。

 シャルリーはどこに連れて行かれたのか?
 これは、あきらかにやり過ぎだ。
 自分は茶色の猫と一緒なら安全だと信じ込んでいた。

 今になって“俺”は思った。
 「最初のペット特別措置法が施行された時から警戒すべきだった」
 「いやだと言うべきだったんだ」
 「でも、自分には仕事もあるし、毎日やらなきゃいけないことも多い」
 そんな風にやらなかった言い訳を考えていると……

 誰かが戸を叩く。
 こんな朝早くに……

 

 本書は原作の翻訳だけではなく、高橋哲哉さん(東大教授・哲学者)のメッセージが添えられています。


 身の回りで起きる出来事に違和感を感じながらも、日常の忙しさを理由に考えることを停止してしまいがちな私たちに、「やり過ごさないこと、考え続けること」をやさしく語りかけています。

なぜ茶色なのか?
すべてが染まる
1ユーロの本
コーヒーの平和
内側にいる安心
慣れていく怖さ
たくさんの言い訳
日本の茶色
ふつうの人々
批判と悪口
茶色のメガネ
色つきの自由
考え続けること

 高橋哲哉さんのメッセージと合わせ読むと、現代日本の危機がひしひしと伝わってきます。
 ついでに言うと、高橋哲哉さんの『犠牲のシステム』、こちらもお勧めです。

 
 ところで……

 我国は食の世界で一足早く茶色の流行が予測されているそうですね。

 18年流行食予測 “地味メシ”が人気 カレー、唐揚げ・・・茶色に注目(日本農業新聞)

 

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