ギリシャ神話あれこれ:オデュッセウスの出征

 
 もうすぐ生活が変わるかも知れない。しかも、好転するとは限らない。不安要因、大。しかもそれが私に関わらない、関われない要因だとしたら……
 これまでの安穏とした生活のため、厄介事をなんとか回避しようと、まず考える。はは、どーせ私はスリザリン寮適性者。
 相棒は私を、参謀タイプだと言う。そう言えば私は、アキレウスなんかより断然、オデュッセウスのほうに共感が持てたっけ。

 オデュッセウス(ウリクセス、ユリシーズ)はイタケの王。ラエルテスの嫡男だが、実父は、狡猾で名高いシシュポスだという。

 オデュッセウスは多くのギリシア王に漏れず、絶世の美女であるスパルタの王女ヘレネに求婚した。が、自分の持つ領土は、しがないイタケ島。彼はヘレネの父王テュンダレオスに、ヘレネ自身に夫を選ばせ、選ばれなかった求婚者たちはその夫の権利を擁護する、という盟約を結ぶよう提案する。
 生憎、彼自身は夫には選ばれなかったが、名案の返礼にちゃっかり、テュンダレオス王の姪ペネロペを妻として貰い受けた(ペネロペだって、オデュッセウスの留守中に求婚者が108人も殺到したほどの美女)。

 が、自分が提案した盟約によって、彼もまたトロイア遠征に従軍しなければならないハメに。今ではヘレネに未練なんかなく、良妻ペネロペと赤ん坊テレマコスとの円満な生活に満足していた彼。加えて、出征すれば帰郷は難しい、何もかも失い乞食同然にまで身を落とし……、なんて予言を受けていたこともあり、出征を免れるために一計を案じる。
 遠征軍の諸将を募るために、ギリシア軍の使者たちがイタケを訪れた際、オデュッセウスは狂気を装って、種の代わりに塩を蒔き、牛と驢馬に鋤を牽かせて、畑を耕してみせた。上手く追っ払えれば、しめたもの。
 が、同行していた知将パラメデスが、この狂言を見抜き、ペネロペから赤ん坊を奪い取って、畑に置く。オデュッセウスの鋤が赤ん坊を避けて通ったので嘘がバレて、観念した彼は出征する。

 が、一旦出征すると、持ち前の知略と雄弁と勇気をもって、ギリシア軍の参謀、また密偵、使者、戦士してマルチに活躍。アキレウスの女装を見破って戦陣に引き入れたり、トロイアの木馬の奸計を考え出したりと、一貫してギリシア軍の勝利に貢献した。

 その一方で、純粋に自分のためだけに、陰険な謀略もやってのけている。
 トロイア戦争の最中、戦争に引っ張り出された恨みと、その知恵への怖れや焦りから、彼は、パラメデス謀殺を企む。知将は二人も要らないもんね。
 周到に証拠を工作し、パラメデスが敵軍と密通している、と総大将アガメムノンに讒言。無実のパラメデスを、まんまと処刑させてしまう。……あー、これ、やめて欲しかったな。
 ちなみに、兵士たちの娯楽にと、サイコロ遊びを発明したのは、このパラメデスだという。

 トロイア陥落後、オデュッセウスは懐かしい故郷へと向かうも、海神ポセイドンの怒りを買い、多くの島々を漂流。無事、イタケへと生還できたのは、出征から実に20年後のことだった。
 彼を待ち続けた貞淑な妻と余生を送るが、漂流先で儲けた子テレゴノスに殺されたという。

 画像は、プリマティッチョ「オデュッセウスとペネロペ」。
  フランチェスコ・プリマティッチョ(Francesco Primaticcio, ca.1504-1570, Italian)

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