陽気なM一家(続)

 
 観光案内所の受付嬢は赤毛の美人。まあ、ラトビア人やエストニア人て、概ねみんな美しいんだけれど。
 途端に相棒の顔が大いに緩む。相棒は、嫌忌する人種以外の人間の前では大抵、常にニコニコと笑っている。これが、若い女性や少女の前でとなると、さらにニッコニコ~ッ! に緩む。
 が、顔が緩いからって、頭も緩いと思って舐めてかかると、とんでもないしっぺ返しを食らうことになる。ので、人は見かけで判断しないほうがよろしい。

 受付嬢に地図を貰ってからも、東洋人観光客の特権でいろいろと食い下がる。多分行かないだろうのに、コンサートは? サーカスは? と尋ねる。あまり要りそうにないのに、パルヌのスペシャルビニールバッグを貰ったりする。

 観光案内所のすぐ横に建つのは、ロシアンな教会。うーむ、パルヌの僧院!
 思わず喜ぶ私に、
「チマルさん、どうしてそんなにロシアの葱帽子の教会が好きなの」と相棒が茶々を入れる。
 そうなの、ロシアの教会ってカラフルで、玉葱みたいな形の屋根がキノコの塊のように群らがってポコポコ突き出ているから、愉快なんだ。
 旧市街は小さいので、ほどなく歩き尽くせる。町歩きの後は海岸へ。途中、さっきとは別のロシアンな教会が建っている。喜ぶ私に相棒がまた茶化す。
「チマルさん、嬉しそうだねえ!」

 ところが、タリン門まで来ると……
 この門、何だかチャチだね、張りぼてのおもちゃみたい。首をかしげる私に、相棒が売り込む。
「古い城門なんだよ!」
 それでもうなずかない私に、相棒、本気になってタリン門を弁護する。
「はるばるタリンから海をやって来た商人たちが、くぐった門なんだよ! 由緒あるんだよ!」

 ……人にはそれぞれ、好みってもんがある。ゴメンね、タリン門。

 To be continued...

 画像は、パルヌ、エカテリーナ教会。

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