夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

谷間の梅

2013-03-09 18:54:10 | 日記
昨日は組合の飲み会で、楽しいひとときを過ごし、お酒のほうもついつい量を過ごしてしまった。
朝、少し痛む頭を押さえながら、職場に出勤。今日は学校は休みだが、昨日学年末考査が終わったばかりで、採点を待つ大量の答案があるのだ。
来週から補習授業が始まるので、その教材の印刷もしなければならない。



採点に疲れを覚えるたび、眼を休ませ、少し運動するために、校舎を出て軽く散歩する。
ここ数日の陽気に催されて、校内の梅は今日満開になった。

しかし、私が「谷間の梅」と呼んでいる梅の木だけは、まだ蕾のままだ。

この梅の木は、校舎と校舎の間の狭いスペースに植えられており、一日の大半が日陰になるという気の毒な場所にある。
それゆえ毎年、他の梅より一週間から十日ほど遅れて咲き始めるこの梅を、私はことのほか思いをかけて見守ってきた。

私は昔から、何をするにも必ず周囲の人より遅れをとってしまうタイプなので、もしかするとこの梅に、そういう自分を重ねて見ていたのかもしれない。
…幼稚園の頃、お昼の弁当がなかなか食べきれず、友だちがみな食事を終えて外に遊びに出て行っても、私は教室で一人食べ続けていた。
大学院を出るのも、論文を完成させるのも、就職も、他の人よりずっと遅れてしまったので、きっと私は心のどこかで引け目を感じていたのだと思う。

谷間の梅への愛着は、前の理事長が(もういなくなったから書いてしまうが)、「校内環境の整備」を理由に校内の梅・桜をはじめとする多くの木々をむやみに伐採した折(なんたる暴挙!)、この梅も枝を幹からバサバサ切り落とされ、見るも無惨な姿になったことで、いっそう増すことになった。
日当たりの悪い場所にあるため小ぶりだが、枝のつき具合はよく、楚々たる風情の立ち姿だったのに、こんなかたわになってしまって…と、その時は不憫に思ったが、翌春、例年に変わらず可憐な花をつけたのは、しみじみといじらしく感じられた。

今日は何度か様子を見に行ったが、夕方まで結局開花には至らなかった。天気予報では、明日は午前中曇り時々雨ということなので、花を見られるのはもう少し先だろうか? けれど、谷間の梅も全身で咲こうとしているのだから、いましばらく様子を見守ってやろう。

  春おそき年にも花をいつしかと祈る心を梅も知らなむ

〔3/10追記〕

谷間の梅は今日の午後、ようやく咲き始めた。
昨日の暖かさに引き換え、今日は午前中にわか雨が降り始めるころから急に寒く、風も強くなったのだが、昨日は咲かず、気温が10℃を下回り始めた今日の午後になって咲き出したのが、なんともこの梅の木らしい。
咲いているのを見つけたときは嬉しくなって、しばらくじっと見入ってしまった。

  風さえて降る雨にしも待たれつる谷間の梅はほころびにけり