夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

卒業式

2013-03-01 22:38:24 | 日記
昨年の今日、卒業式のことを書いた記事では、

  校塔に鳩多き日や卒業す      中村草田男

の句を紹介したように思う。おそらく大学の卒業式、その学校のシンボルとなる校舎の屋根に鳩が群れてとまり、またその周囲を飛んでいる。卒業証書の入った黒い筒を手にした、スーツや晴れ着、袴姿の大学生たちが別れを惜しみつつ、母校から巣立っていく光景が目に浮かぶ。鳩は平和の象徴であり、若者の前途を祝福するような感じが伝わってくる。

本校では、県内の多くの高校と同様、今日が卒業式だったのだが、いささかの珍事があった。

私は、昨日の午後が休暇で、卒業式予行などの行事には参加していなかったのだが、今朝出勤し、保護者の案内のため、式場となる体育館の入口で、受付の準備をしていた。すると、体育館内で式典の用意をしている先生方が、
「……今日の問題は、やっぱり鳩ですね。」
「そう、鳩。」
などと話しているのが聞こえる。
何のことかと思ったが、その時は特に確かめることもせず、後になって、別の用事で体育館に入っていった。
しばらくしてから、
  パタパタパタッ!
という音が背後から聞こえてくるので、思わず振り返ると、鳩が体育館内を飛んでおり、やがて、高い所にあるスピーカーの上にとまった。…これで合点がいった。
なんでも、昨日の卒業式予行の時から、この鳩が紛れ込んでおり、館内を飛んだり、ステージ上を歩いたり、関係者の思惑をよそに、やりたい放題だったそうである。

この日も、保護者が入場する前になんとかしようと、少時、網を持って捕獲が試みられたようだが、外が寒いので、早めに体育館に入っていただこうということで、鳩のことは捨て置け、という次第に相成ったらしい。
私はその後も、体育館の外で保護者の案内に当たったため、式典の様子は知らないのだが、とりあえず無事には終わったようで、ほっとしている。

  卒業を鳩とともにぞ祝ひける      ちかさだ