グリン先生の鍼灸ワールド

広島の鍼灸院
『グリンSHIATSUマッサージ』の院長ブログ。

「独立国家の作り方」坂口恭平

2012-08-31 | グリン通信


 最近読んだ本の中で、久しぶりに高揚感を持てた本があったので紹介します。
 みだしの通り、*1坂口恭平さんの書かれた本です。

 坂口さんは大学の建築学科を卒業していますが建築家ではなく、本を5~6冊上梓しておられますが作家という風でもなく、ドローイング(鉛筆などを用いて描く単色の線画)を発表してますが画家というわけでもなさそう・・・。かといって、マルチ人間と言っても少し違う。ただ、彼のやっていることは首尾一貫していると思いますが・・。
 
 彼が最初に世に問うたものは、よく河川敷や公園などにブルーシートなどを材料に作られた家がありますが、そのような家や作った人を取材した「0円ハウス」(元々は大学の卒論として作られた)という題名の本です。その後も多少の振り幅はあったとはいえ、まあまあその路線だったので、今回の突然のテーマに驚いた読者も少なからずいたと思われます。

 しかしながら、「0円ハウス」は福祉的な観点や、ましてや憐れみから発想したものではなく、彼の専門である建築としての面白さを元に出発したものでした。しかもただ建築としてユニークとか言う前に、彼の関心はその建物を設計し(設計書はなかったとしても)、建築した人の価値観や人生観に向けられていました。今回のテーマは「0円ハウス」で彼の言いたかったことを突き詰めていけば、ある意味当然の帰結という風にも考えられます。それは月並みな言い方ですが、価値観とかパラダイムの転換とかそういったような言葉で言い表すこともできるかもしれません。

 この本の中で坂口さんは「態度経済」という言葉を使っています。この言葉を文章で説明するのは簡単ではありませんが、代表的なエピソードを紹介することである程度理解が可能です。それはこんなエピソードです。

 「あるとき信頼しているカナダのキューレーター(学芸員)から、所属している非営利のギャラリーの活動費を調達するためのオークションに作品を無償提供してくれとの申し入れがあった。彼はその時自分の一番気に入っているドローイングの作品を贈った(以前彼のドローイングは50万円で売れていた)というもの。一般的にこのような場合、比較的軽い物で済ます人が多い(実際、他の人の提供したのはだいたいそのようなものだった)。それなのに彼は自分が一番自信があるものを贈り、それはその後40万円で落札された。」
 
 ここでのポイントは、相手が信頼している人であることと、相手(金)により態度を変えるなということでしょうか。

 まったく同じではないかもしれませんが、私も似たような経験があるので紹介しておきます。
  
 このブログでも時々紹介してますが、私達(クラブの後輩達と)は3年前から山口県の祝島という離島で、年に1~2回鍼灸マッサージのボランティア(お接待と称してる)をやらせていただいてます。祝島は坂口さんの本でも紹介されてますが、上関原発の建設予定地のまん前にある島で、殆どの住民が原発に反対している、唯一の交通手段である船が1日3往復しかないそんな孤島です。

 そこに交通費自腹、手弁当で(交通手段上必ず一泊以上になります)伺うのですが、その際に後輩達(プロも学生もいます)に必ず念を押すことがあります。それは、「無料でするからといって、決して手を抜いてはならない。むしろ普段以上に一所懸命やりなさい。」ということ。最近では毎回30名を越える方がいらっしゃるので、戦場のような慌しさですが、そんな訳でか祝島のみなさんには毎回喜んでいただいているようです。

 その際無料では申し訳ないという方がいらっしゃるので、会場にアフリカの子供達を支援する募金箱を置いたところ、1万円札が入っていることもあり私達も驚きました。

 その尊い浄財は、ケニアのアフリカ最大ともいわれるキベアスラムで、身寄りのないストリートチルドレンのため我が身を捧げて頑張っている友人(と私が勝手に思ってる)の早川千晶のもとに送られ、1人の子供が20円で1日生きながら得るための支援金として使われています。

 「態度経済」とはこのようなことなのか、一度坂口さん本人にお聞きしてみたいものです。

 なお手弁当とはいえ、民宿国広の国広さんのご好意により、祝島での会場・宿泊など無償提供いただいていることを申し添えます。それから、毎回我々のために新鮮な獲れたての魚を届けてくださる漁師の*2岡本さんのことも・・。


 *1 坂口さんのプロフィールについては、 www.0yenhouse.com/ 本人の公式ホームページを参考にしてください。
        
 *2 鎌仲ひとみ監督「蜜蜂の羽音と地球の回転」に出演。世の中つながってますね。

にほんブログ村

東洋医学 ブログランキングへ

立秋と二十四節気

2012-08-10 | 東洋医学


 二十四節気は、ウィキペディアによると、

「二十四節気は、中国の戦国時代の頃に太陰暦による季節のズレを正し、季節を春夏秋冬の4等区分にするために考案された区分手法の一つで、1年を12の「中気」と12の「節気」に分類し、それらに季節を表す名前がつけられている。なお、日本では、江戸時代の頃に用いられた暦から採用されたが、元々二十四節気は、中国の気候を元に名づけられたもので、日本の気候とは合わない名称や時期もある。そのため、それを補足するために二十四節気のほかに土用、八十八夜、入梅、半夏生、二百十日などの「雑節」と呼ばれる季節の区分けを取りいれたのが、日本の旧暦となっている。

2011年には日本気象協会が現代日本の気候に合わせた、新しい二十四節気を創造する事を目標とした準備委員会を設けた。一般からも意見を募り、2012年の秋頃には“ 21世紀の二十四節気 “を発表し、周知させていきたいという意向を示している。」

 もともと中国の黄河地方の気候を基にして作られたため、そのまま日本で使うには少し無理があり、実際の季節に対し早過ぎの感は否めません。それでも季節の移ろいに、わびやサビを感じる日本人の感性に合っていたため今まで使われてきたのでしょうね。

 もちろん我々東洋医学にたずさわる者は、暦に惑わされず季節の変わり目を感じとる感性が重要なことは言うまでもありません。

 新しい二十四節気が、みんなが納得できる良い物になることを期待しましょう。

 なお、江戸時代に新しい暦を作ることに情熱を燃やした、安井算哲を題材にした沖方丁の「天地明察」
http://www.amazon.co.jp/%E5%A4%A9%E5%9C%B0%E6%98%8E%E5%AF%9F-%E5%86%B2%E6%96%B9-%E4%B8%81/dp/404874013X
は秀逸(映画も9月に封切り)。数学や碁が好きな人にもお勧めです。


東洋医学 ブログランキングへ


にほんブログ村


 

黄帝内経運気7

2012-08-02 | 東洋医学


 黄帝内経運気の今年の内容を、もう少し紹介しておきましょう。

「太陽寒水が司天の年は、寒気が地に臨み、心火の気が天に従って火気が光り輝くので肺金が害を受けます。寒涼の気が時となく起こり、ひどい時には水が凍ることもあります。火気がむりやり天気に従えられているため、人々は心熱煩悶、喉の渇き、鼻づまり、くしゃみ、すぐに悲しくなる(*1)、たえずあくびが出るなどの病気にかかりやすくなります。熱気が妄りに上昇するため、寒気が下に報復して時ならぬ霜が降り、人々は物忘れがひどくなったり、時には心痛などの病気にかかったりします。太陽寒水が司天で太陰湿土が在泉であるために土気が潤って水が満ち溢れ(*2)、寒水の客気がこれに加わって湿土の気と結合し、万物は水を含んで変化します。人は飲んだ水が体内に蓄積され、腹が膨れて食欲がなくなる(*3)、皮膚がマヒする、筋肉の動きが悪くなる、筋脈がよく働かないなどの病にかかりやすくなり、ひどい場合には浮腫や背部の痛みなどが現れます。」

 *1 肺の作用です。
*2 そういえば今年の梅雨はひどい洪水が起きました。
 *3 脾の作用。今年はむくみの方が多いです。

 大事な事は、心痛やすぐ悲しくなるなどを、性格や環境のせいにせず、今年は全体的にそのような傾向にあることを理解しておくこと。それにより、自分や他人を責めたりせずにすみます。

 写真は、友人である菊地洋一氏撮影の<唐招提寺の蓮>。
 「原発を作った私が、原発に反対する理由」などの著書がある。
 http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=201106000057


にほんブログ村


東洋医学 ブログランキングへ