最近読んだ本の中で、久しぶりに高揚感を持てた本があったので紹介します。
みだしの通り、*1坂口恭平さんの書かれた本です。
坂口さんは大学の建築学科を卒業していますが建築家ではなく、本を5~6冊上梓しておられますが作家という風でもなく、ドローイング(鉛筆などを用いて描く単色の線画)を発表してますが画家というわけでもなさそう・・・。かといって、マルチ人間と言っても少し違う。ただ、彼のやっていることは首尾一貫していると思いますが・・。
彼が最初に世に問うたものは、よく河川敷や公園などにブルーシートなどを材料に作られた家がありますが、そのような家や作った人を取材した「0円ハウス」(元々は大学の卒論として作られた)という題名の本です。その後も多少の振り幅はあったとはいえ、まあまあその路線だったので、今回の突然のテーマに驚いた読者も少なからずいたと思われます。
しかしながら、「0円ハウス」は福祉的な観点や、ましてや憐れみから発想したものではなく、彼の専門である建築としての面白さを元に出発したものでした。しかもただ建築としてユニークとか言う前に、彼の関心はその建物を設計し(設計書はなかったとしても)、建築した人の価値観や人生観に向けられていました。今回のテーマは「0円ハウス」で彼の言いたかったことを突き詰めていけば、ある意味当然の帰結という風にも考えられます。それは月並みな言い方ですが、価値観とかパラダイムの転換とかそういったような言葉で言い表すこともできるかもしれません。
この本の中で坂口さんは「態度経済」という言葉を使っています。この言葉を文章で説明するのは簡単ではありませんが、代表的なエピソードを紹介することである程度理解が可能です。それはこんなエピソードです。
「あるとき信頼しているカナダのキューレーター(学芸員)から、所属している非営利のギャラリーの活動費を調達するためのオークションに作品を無償提供してくれとの申し入れがあった。彼はその時自分の一番気に入っているドローイングの作品を贈った(以前彼のドローイングは50万円で売れていた)というもの。一般的にこのような場合、比較的軽い物で済ます人が多い(実際、他の人の提供したのはだいたいそのようなものだった)。それなのに彼は自分が一番自信があるものを贈り、それはその後40万円で落札された。」
ここでのポイントは、相手が信頼している人であることと、相手(金)により態度を変えるなということでしょうか。
まったく同じではないかもしれませんが、私も似たような経験があるので紹介しておきます。
このブログでも時々紹介してますが、私達(クラブの後輩達と)は3年前から山口県の祝島という離島で、年に1~2回鍼灸マッサージのボランティア(お接待と称してる)をやらせていただいてます。祝島は坂口さんの本でも紹介されてますが、上関原発の建設予定地のまん前にある島で、殆どの住民が原発に反対している、唯一の交通手段である船が1日3往復しかないそんな孤島です。
そこに交通費自腹、手弁当で(交通手段上必ず一泊以上になります)伺うのですが、その際に後輩達(プロも学生もいます)に必ず念を押すことがあります。それは、「無料でするからといって、決して手を抜いてはならない。むしろ普段以上に一所懸命やりなさい。」ということ。最近では毎回30名を越える方がいらっしゃるので、戦場のような慌しさですが、そんな訳でか祝島のみなさんには毎回喜んでいただいているようです。
その際無料では申し訳ないという方がいらっしゃるので、会場にアフリカの子供達を支援する募金箱を置いたところ、1万円札が入っていることもあり私達も驚きました。
その尊い浄財は、ケニアのアフリカ最大ともいわれるキベアスラムで、身寄りのないストリートチルドレンのため我が身を捧げて頑張っている友人(と私が勝手に思ってる)の早川千晶のもとに送られ、1人の子供が20円で1日生きながら得るための支援金として使われています。
「態度経済」とはこのようなことなのか、一度坂口さん本人にお聞きしてみたいものです。
なお手弁当とはいえ、民宿国広の国広さんのご好意により、祝島での会場・宿泊など無償提供いただいていることを申し添えます。それから、毎回我々のために新鮮な獲れたての魚を届けてくださる漁師の*2岡本さんのことも・・。
*1 坂口さんのプロフィールについては、 www.0yenhouse.com/ 本人の公式ホームページを参考にしてください。
*2 鎌仲ひとみ監督「蜜蜂の羽音と地球の回転」に出演。世の中つながってますね。
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