訪米した自国の首相を軽く見せたがる日本メディア (永田町異聞)より
鳩山首相と話す時間をオバマ大統領は10分しかとってくれなかった。
「かくも遠い日米関係」(日経)、「首相の直談判、米側冷ややか」(朝日)と、日本のメディアはお決まりの書き方をする。
米側は、当然のことながら、予想通りの記事に満足しているだろう。
交渉ごとは、物欲しそうな素振りをしたほうが負けだと、あえて冷淡に見せているように筆者には思える。
こうして、日本メディアを思うがままに操って、鳩山政権にプレッシャーをかけ、米側に有利な条件を引き出す算段に違いない。
米側が自民党政権時代の日米合意にこだわるのは当たり前だ。2006年5月に合意した再編ロードマップをもう一度確認しておこう。
老朽化した普天間基地を返還する代わりに、辺野古崎と、周辺海域の埋め立て予定地に、2本の1600メートル滑走路をもつ新基地を日本に建設させる。
米海兵隊約8000人と、その家族約9000人が沖縄からグアムに移転するための施設、インフラ整備費102.7億ドルのうち、60.9億ドルを日本に負担させる。
普天間基地を返還するという美名のもとに、これだけの日本側負担を米国は交渉で勝ち取ったのである。その戦果をやすやすと手放すほど、いまのアメリカにゆとりはない。
空軍基地と海軍基地のあるグアムに、新たに海兵隊の基地を建設し、巨大軍事ハブにして、世界軍事戦略を進めようという計画。それに、普天間移設をパッケージすることで、日本の支出を最大限引き出すことに成功したのである。
ブッシュ大統領と小泉首相が蜜月関係にあった当時の日米交渉は、米側に都合よく進んだが、この巨額出費をともなうロードマップの是非が日本のメディアなどでしっかり論じられた記憶はあまりない。
なぜ、グアムの施設やインフラにまで日本が財政負担をしなければならないのか。それに対する答えは、普天間基地を戻してもらい、基地周辺の住民の負担を軽減するためだから仕方がない、ということだったのだろう。
2006年5月31日の衆院外務委員会で、共産党の笠井亮議員が60.9億ドルのグアム移転負担について質問したさい、麻生外務大臣はこう答えている。
「沖縄の海兵隊のグアム移転の経費というものにとりましては、基本的には沖縄住民の負担の軽減というもので、海兵隊をなるべく早く移転させることを実現するために行うものでして、このことにつきましては関係閣僚でずっと協議をし続けてきたところであります」
麻生発言の「沖縄住民の負担軽減」というのは、もちろん普天間基地周辺住民の負担軽減を言っているわけだろうが、辺野古の海を埋め立てて新基地をつくれば新たな沖縄の負担が生まれるわけで、そもそも、そこに矛盾があった。
だからこそ、昨年3月に全国37の市民団体による「辺野古への基地建設を許さない実行委員会」から15万人近い請願署名が国会に出されるなど、反対運動が広がっているのである。
先日の党首討論のさい、普天間移設問題で攻める谷垣総裁に、鳩山首相はこう言い返した。
「自民党政権は13年間もかかって、現行案でほぼ決まりかけていたとおっしゃるけれども、辺野古の海にくい一つ打てなかったじゃありませんか」
現実の問題として、辺野古に新基地建設を強行すると、大きな混乱を招く恐れがあるのだ。
そのために、鳩山首相は困難を承知の上で、違う選択肢を探している。
5月末決着と、わざわざ自ら期限を決めたのは政治家のテクニックとしては稚拙かもしれない。しかし、だからといって言質をとられないことばかりに腐心して、ごまかし答弁を平気で言う過去の首相たちより、ずっと好感が持てる。
たとえば、沖縄返還協定で密約を結んだ佐藤栄作首相は、ノンフィクション作家の澤地久枝を驚嘆させるほどに巧みな国会答弁だったが、その巧みさは言質をとられないという点においてであり、そのために答弁の中身は意味の判然としない空疎極まりないものだった。
自国の首相の応援をして然るべき日本のメディアが、もっぱらアメリカ側の顔色ばかりうかがった悲観的な記事を書く。課題山積の中国の主席より会談時間が格段に少ないといっては、鳩山首相がいかにも軽く扱われているかのように報道する。
多分、こんなことを繰り返しながら、日本のメディアそのものが軽蔑されていくのだろう。
鳩山首相と話す時間をオバマ大統領は10分しかとってくれなかった。
「かくも遠い日米関係」(日経)、「首相の直談判、米側冷ややか」(朝日)と、日本のメディアはお決まりの書き方をする。
米側は、当然のことながら、予想通りの記事に満足しているだろう。
交渉ごとは、物欲しそうな素振りをしたほうが負けだと、あえて冷淡に見せているように筆者には思える。
こうして、日本メディアを思うがままに操って、鳩山政権にプレッシャーをかけ、米側に有利な条件を引き出す算段に違いない。
米側が自民党政権時代の日米合意にこだわるのは当たり前だ。2006年5月に合意した再編ロードマップをもう一度確認しておこう。
老朽化した普天間基地を返還する代わりに、辺野古崎と、周辺海域の埋め立て予定地に、2本の1600メートル滑走路をもつ新基地を日本に建設させる。
米海兵隊約8000人と、その家族約9000人が沖縄からグアムに移転するための施設、インフラ整備費102.7億ドルのうち、60.9億ドルを日本に負担させる。
普天間基地を返還するという美名のもとに、これだけの日本側負担を米国は交渉で勝ち取ったのである。その戦果をやすやすと手放すほど、いまのアメリカにゆとりはない。
空軍基地と海軍基地のあるグアムに、新たに海兵隊の基地を建設し、巨大軍事ハブにして、世界軍事戦略を進めようという計画。それに、普天間移設をパッケージすることで、日本の支出を最大限引き出すことに成功したのである。
ブッシュ大統領と小泉首相が蜜月関係にあった当時の日米交渉は、米側に都合よく進んだが、この巨額出費をともなうロードマップの是非が日本のメディアなどでしっかり論じられた記憶はあまりない。
なぜ、グアムの施設やインフラにまで日本が財政負担をしなければならないのか。それに対する答えは、普天間基地を戻してもらい、基地周辺の住民の負担を軽減するためだから仕方がない、ということだったのだろう。
2006年5月31日の衆院外務委員会で、共産党の笠井亮議員が60.9億ドルのグアム移転負担について質問したさい、麻生外務大臣はこう答えている。
「沖縄の海兵隊のグアム移転の経費というものにとりましては、基本的には沖縄住民の負担の軽減というもので、海兵隊をなるべく早く移転させることを実現するために行うものでして、このことにつきましては関係閣僚でずっと協議をし続けてきたところであります」
麻生発言の「沖縄住民の負担軽減」というのは、もちろん普天間基地周辺住民の負担軽減を言っているわけだろうが、辺野古の海を埋め立てて新基地をつくれば新たな沖縄の負担が生まれるわけで、そもそも、そこに矛盾があった。
だからこそ、昨年3月に全国37の市民団体による「辺野古への基地建設を許さない実行委員会」から15万人近い請願署名が国会に出されるなど、反対運動が広がっているのである。
先日の党首討論のさい、普天間移設問題で攻める谷垣総裁に、鳩山首相はこう言い返した。
「自民党政権は13年間もかかって、現行案でほぼ決まりかけていたとおっしゃるけれども、辺野古の海にくい一つ打てなかったじゃありませんか」
現実の問題として、辺野古に新基地建設を強行すると、大きな混乱を招く恐れがあるのだ。
そのために、鳩山首相は困難を承知の上で、違う選択肢を探している。
5月末決着と、わざわざ自ら期限を決めたのは政治家のテクニックとしては稚拙かもしれない。しかし、だからといって言質をとられないことばかりに腐心して、ごまかし答弁を平気で言う過去の首相たちより、ずっと好感が持てる。
たとえば、沖縄返還協定で密約を結んだ佐藤栄作首相は、ノンフィクション作家の澤地久枝を驚嘆させるほどに巧みな国会答弁だったが、その巧みさは言質をとられないという点においてであり、そのために答弁の中身は意味の判然としない空疎極まりないものだった。
自国の首相の応援をして然るべき日本のメディアが、もっぱらアメリカ側の顔色ばかりうかがった悲観的な記事を書く。課題山積の中国の主席より会談時間が格段に少ないといっては、鳩山首相がいかにも軽く扱われているかのように報道する。
多分、こんなことを繰り返しながら、日本のメディアそのものが軽蔑されていくのだろう。
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