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「小沢一郎は無罪でも消えろ」 暴走検察と併走する巨大メディアの大罪

2012年05月07日 21時15分58秒 | Weblog
「小沢一郎は無罪でも消えろ」 暴走検察と併走する巨大メディアの大罪

 週刊ポスト 2012/05/18号 ・・・(大友涼介)より


小沢一郎民主党元代表を、捏造された証拠をもとに強制起訴した「暗黒裁判」は「無罪」に終わった。しかし、これはハッピーエンドではない。第一に、総理大臣を目前にした政治家を引きずり降ろした捜査権力の疑惑が放置されたままであること、そして第二に、その権力に加担して誤報と情報操作を重ねてきた大メディアがまったく反省していないことこそ重大だ。


*** 其の一 ***


■朝日社説がこだわる「私たちの指摘」

本誌は小沢一郎民主党元代表が無罪でも大メディアは”有罪扱い”を続けるだろうと指摘してきた。その通りに、まさに知性と品性をかなぐり捨てた剥き身の権力派メディアが、なおも国民を欺き続けようとしている。

党内ではいよいよ小沢氏の党員資格停止処分を解除する手続きが始まる。だが、国会では野党と一部の与党議員が小沢氏の政治的復権阻止にスクラムを組んだ。後押ししているのが大メディアの”無罪で疑惑が深まった”という奇妙な論理だ。

速報のテレビは、判決直後からエキセントリックな報道を展開した。

<微妙な判断 なぜ無罪>(TBS『Nスタ』)

<報告・了承を認定 なぜ無罪?>(フジテレビ『スーパーニュース』)

と、「なぜ」を連発した。『スーパーニュース』のキャスター安藤優子氏は「私たち素人の感覚」と断った上で、「真っ白けの無罪だとは到底いえないといっていいんですよね」と不満を叫んだ。素人ならそんなところで偉そうに喋らない方がいい。

さらに各ニュース番組は街頭インタビューを行い、「無罪はおかしい」という声を一斉に流した。都合よく選んだ”国民の声”を使ったネガティブキャンペーンである。

判決を「黒に近いグレー」と表現したのはテレビ朝日『報道ステーション』にコメンテーターとして出演した元特捜検事だ。それを受けて解説者の三浦俊章朝日新聞解説委員は、

「(無罪判決は)疑わしいけれども断定まではできないから。(小沢氏には)説明責任を果たしてもらいたい」

と、無罪の被告に説明責任を求めた。裁判で真実が明らかになるといって強制起訴を支持したのはどこの誰だったか。

それに呼応して自民党や公明党が証人喚問要求を突きつけるという、これまで何度も繰り返された「政・報一体」の小沢叩きの連係プレーを見せつけた。

朝日新聞は翌日の社説で

<政治的けじめ、どうつける>

と題し、小沢氏の復権を許さないと書いた。

<刑事裁判は起訴内容について、法と証拠に基づいて判断するものだ。そこで問われる責任と、政治家として負うべき責任とはおのずと違う。政治的けじめはつけていない。昨日裁かれたのは、私たちが指摘してきた「小沢問題」のほんの一部でしかない>

「裁判は無意味だった」と言い放った。無罪が言い渡された今、”刑法ではセーフだが、政治家としてはアウト”という新論理を創作したのだ。つまり、裁判などどっちでもよく、自分たちがあらかじめ決めていた結論こそがすべてなのだ。

読売新聞も同じ日の社説で

<政治家としての道義的責任も免れない>

と書き、小沢復権阻止で一致しているが、理由はもっとわかりやすい。こう主張した。

<党内には、小沢を要職で起用する案もあるが、疑問だ。「政局至上主義」的な小沢氏の影響力拡大は、消費税問題を混乱させるだけで、良い結果を生むまい>

小沢氏が問うているのは、増税や原発再稼働の是非である。なぜそれが「政局至上主義」なのか。”小沢だから悪”とか、”財務省がいうから増税”とか、挙げ句には”増税のためには大連立”などと書く大新聞こそ政局至上主義である。

無罪判決ははからずとも大メディアの危険な本質を国民に浮き彫りにした。メディア社会学が専門の服部孝章立教大学教授が語る。

「判決後の報道をつぶさにみてきたが、各メディアとも本来は切り離して論ずるべき判決報道と消費税法案がどうなるかという政局報道をゴチャ混ぜにして報じている。これはメディアが司法判断をもとに自分たちの政治的主張を述べているようなもので、報道として公正ではありません」


■「検審委員の素性」はどこから漏れた?

小沢氏への検察捜査は、村木厚子現内閣府政策統括官の郵便不正事件(※注1)と共通の背景を持つ。いずれも検察が政権交代を阻むという政治的意図をもって民主党の有力政治家を標的に強引な捜査を行い、偽の証拠まででっち上げた。結果、小沢氏は元秘書、村木氏は元部下の厚労省係長が有罪判決を受けた。

※注1 郵便不正事件 発端は自称「障害者団体」が厚生労働省の偽の証明書を得て、通販ダイレクトメールを送料が安い心身障害者用低料第三種郵便物として発送していた事件。大阪地検特捜部は偽証明書発行を働き掛けたのは民主党幹部の石井一参院議員という筋書きで捜査を進め、09年に政界捜査の入り口として当時同省局長だった村木厚子氏と部下の係長、自称障害者団体幹部らを逮捕した。石井氏は無関係で政界に捜査は及ばなかったが、小沢氏の事件同様、政権交代を阻止するための強引な国策捜査だったとされる。ところが、公判の過程で前田恒彦元主任検事が村木氏を有罪にしようと証拠のフロッピーディスクを改竄していたことが発覚し、村木氏は無罪、単独で偽証明書を作成した係長は有罪となった。その後、最高検は前田元検事と上司の大坪弘道元特捜部長及び佐賀元明元副部長を証拠隠滅罪で起訴し、3人とも有罪判決を受けた(大坪被告と佐賀被告は控訴中)

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ところが、小沢氏と村木氏の無罪判決への報道ぶりには雲泥の差がある。

無罪判決でも小沢氏に議員辞職を迫る朝日は、村木事件の無罪判決翌日の社説では

<特捜検察による冤罪だ>

という見出しで捜査のあり方を正面から批判していた。

<あらかじめ描いた事件の構図に沿って自白を迫る。否認しても聞く耳を持たず、客観的な証拠を踏まえずに立件する。郵便不正事件の検察の捜査はそんな強引なものだった>

そうした捜査手法は小沢氏の事件にもそのまま当てはまるうえ、冤罪事件という点ではむしろ今回の方がより悪質だ。

郵便不正事件でで前田恒彦元検事が村木氏を陥れるために改竄したフロッピーディスクは裁判で証拠提出されていないが、陸山会事件では東京地検特捜部の田代政弘検事が作成したでっち上げの捜査報告書は検察審査会に提出されて決定的な影響を与え、強制起訴で無罪の小沢氏を被告人の立場に追い込んだからだ。

一般国民から選ばれる検察審査会は検察をチェックするためにつくられたはずだが、それを検察や検審事務局である裁判所は「民意」の名を借りて組織的に特定の政治家を無実の罪に陥れる《国策冤罪でっち上げ機関》として悪用していたのである。

ジャーナリスト鳥越俊太郎氏はこの冤罪の構図にこそ陸山会事件の重大性があると指摘する。

「特捜部は小沢氏を起訴したくて徹底的に捜査し、秘書を3人逮捕してまであらゆる証言・証拠を検討したものの裏付けがなくて起訴できなかった。そこで一部の検事が検察審査会を騙そうとウソの証拠を提出し、起訴相当という間違った結論を出させた。新聞・テレビは検察審査会の強制起訴を”民意”と褒めそやしたが、それは特捜部の検事によってつくられた民意だ。

今最も明らかにすべきは、田代検事はじめ特捜部が意図的、組織的に証拠を捏造していたのではないかという疑惑を徹底的に糾明することです。そして検察審査会という危ういシステムを見直すことが必要だ」


今回の朝日社説は検察のでっち上げについて、

<法務・検察は、事実関係とその原因、背景の解明を急ぎ国民に謝罪しなければならない>

と書いたが、検察が謝罪しなければならないのは冤罪被害者の小沢氏に対してであり、国民に謝罪しなければならないのは検察と一体になって捏造や誤った”民意”を広めた朝日新聞自身である。

逆に大メディアは冤罪の構造糾明に及び腰だ。

朝日は

<気になるのは、小沢氏周辺から 強制起訴制度の見直しを求める声が上がっていることだ。ひとつの事例で全体の当否を論ずるのはいかにも拙速だし、政治的意図が露わな動きに賛成することはできない>

といい、読売も、

<安易な見直し論に走るべきではなかろう>

と書いた。

テレビはもっと露骨に強制起訴議決を擁護した。かつて水谷建設元社長から小沢氏の元秘書に5000万円が渡されたという同席者の目撃証言を現場映像やイラスト入りで生々しく報じるという大誤報をやらかしたTBSは、『NEWS23クロス』出今回も”スクープ”を飛ばした。

東京第5検察審査会に小沢氏の審査を申し立てた元新聞記者が「これじゃあ法治国家じゃねぇよ」と判決を批判する映像をモザイク入りで流したうえで、<検審メンバーの初告白>と題して小沢氏を強制起訴した検察審査会元委員を音声で登場させ、「当時の起訴議決は正しかった」と言わせたのだ。検察審査会の審議は密室で行われ、委員には厳しい守秘義務が課せられて議事録も委員の名簿も公開されない。検察事務局しか知らないはずの情報を一体どこから入手して委員を割り出したか知らないが、名簿が公表されていない以上、出演者が「本物の検審委員」だったと合法的に確認する方法はない。あの”私は裏金を見た”という”関係者”に続き、今また「匿名の検審委員」の証言で冤罪を正当化する”スクープ”とは大したものだ。


■週刊文春「隠し子大誤報」

なぜ、新聞・テレビは捜査や裁判の冤罪構造に斬り込もうとしないのか。

前出の鳥越氏は、「それは陸山会事件そのものがメディアによってつくりあげられた事件だったからだ」と指摘する。

すべてのスタートは政権交代前の09年の「西松建設事件」だった。

「検察は建設業者がダム建設の受注を有利にしようと小沢氏の事務所にお金を持っていったという古典的な贈収賄シナリオを描き、新聞にバンバンとリークしたことが発端だった。新聞はそれを検証せずに垂れ流すように書いていった。新聞が建設会社から小沢氏にカネが渡ったのが事実のような書き方をして、それを追いかけるように特捜部の捜査が進んでいく。情報の出元は同じだから各紙横並びの記事になり、国民には、『どの新聞も書いているから小沢氏は何か悪いことをしている』という印象が植え付けられる。その繰り返しを何年も続けたので、”小沢一郎は巨悪”というイメージがつくられてしまった」(鳥越氏)

判決後にもテレビは街頭インタビューで、「無罪?おかしいんじゃないか」と答える国民の声を放映した。メディアが国民に「小沢は巨悪」のイメージを植え付け、無罪判決が出ると今度は国民に「おかしい」と言わせていかにも国民が判決に納得していないように報じる。これこそ戦前のメディアが得意としていた危険な世論操作である。こんなかつて取った杵柄はしまっておく方がよい。

鳥越氏が続ける。

「総選挙前の西松事件は政権交代を阻止する、政権交代後の陸山会事件は小沢氏を政治の中枢からできるだけ遠ざけるという特捜部の考える”正義”のための捜査だった。それにメディアが完全に乗って世論はつくられた。国民はメディアに騙されてきたのであり、メディアは猛省しなければならない」

毎日新聞記者から『サンデー毎日』編集長、テレビ朝日『スーパーモーニング』のコメンテーターを歴任し、新聞・テレビの報道第一線に立ってきた鳥越氏の発言だけに迫真性と説得力がある。

オランダの政治学者カレル・ヴァン・ウォルフレン氏は小沢氏を政治的に抹殺しようとする検察と新聞・テレビによる執拗なネガティブキャンペーンを「人物破壊」と呼んだが、週刊誌ジャーナリズムでも小沢氏の判決に便乗して無関係な人物に対する悪質な人物破壊を行った。

『週刊文春』(5月3・10日号)が報じた<小沢一郎に隠し子がいた!>と題する記事だ。

まず、記事で「隠し子」とされる人物を小沢氏は認知したわけでもないし、生母や祖母を含めて当事者たちはいずれも「小沢氏の実子」であることを強く否定している。記事で根拠となっているのはX氏なる人物の匿名証言だけである。

何より問題なのは、全く論証できていないのに、レポートした人間の「確信」だけで断定的なタイトル、記事をつくり、しかもそこにプライバシーを暴かれているのが公職とまったく関係ない一般市民ばかりだという点である。

隠し子でない以上、ここで詳細を書けばさらなる情報被害を生むので避けるが、この記事では登場人物たちの関係について重大な誤解もしくは意図的な隠蔽がある。それさえ知ればこれが大誤報であることは誰の目にも明らかになるということを本誌は指摘しておく。

記者クラブ・メディアだけでなく、週刊誌までが権力者の犬に成り下がるこの国は本当に恐ろしい。


*** 其の二 ***


■”真っ黒けの無罪”100ページの駄文判決を読む

「とにかく無罪なんだから中身はいいだろう」、そんな国民と法治を馬鹿にした声が聞こえてきそうな判決文だった。

確かに、判決文をろくに読まないか、読んでも自分自身で判断しようとしない司法クラブ記者たちは、この判決がいかに異様か、いかに異例かを1行も書くことができなかった。が、この100ページにも及ぶ判決文は、たとえ無罪判決だといっても、日本の司法の腐敗を歴史に残す、恥ずべき「証拠資料」である。

*** ***

司法や報道の劣化に興味のある読者は、判決文全文を「NEWポストセブン」に掲載(※注2)したのでお読みいただきたい。本稿ではその評価を紹介する紙数はないので、どういう問題判決であったかをお伝えするにとどめたい。

※注2 http://www.news-postseven.com/data/ozawa-jud.pdf


・「小沢のカネ」を隠した

判決文の屋台骨を支える誤った論理の中核が、「秘書たちは小沢の個人資金4億円が発覚することを恐れて様々な工作をした」というストーリーである。

判決文はいろいろ小理屈を捏ね回して「小沢が巨額の個人資金を持っていることを隠そうとしていた」という論理を支えようとしているが、何をいくら言おうと、これが間違いであることは小学生でもわかる。

本誌が繰り返し報道してきた通り、小沢元代表の政治資金収支報告書には、はっきりと「借入金 小澤一郎 4億円」と記載されているのである。

このことは小沢叩きをしたい記者クラブ・メディアや政治家は決して口にしないから、いまだに本誌には「本当に記載されているのか。そんな話は週刊ポストしか書いていない」という読者からの問い合わせが多いほどだ。

どんな間抜けな秘書でも、”このカネは隠さなければならない”と思えば、報告書に親分の名前を堂々と書くわけがない。この議論は、この事実だけで誰の目にも真相は明らかである。秘書にも小沢元代表にも、このカネが小沢自身のものであることを隠す意図はなかったのである。

なお判決では右の記載について、「日付が、小沢氏から提供された4億円を担保に、りそな銀行から同額を借り入れた日だった」という事実を盾に、「これは小沢氏の4億円を記載したものではなく、りそなの4億円を記載したものだ」と結論付けるのである。「りそな4億円」を「小沢4億円」と記載することで小沢のカネを隠した、というのだから、もはや抱腹絶倒の駄文だ。


・「期ずれ」の工作

秘書たちが”犯罪だ”と追及されているもうひとつの行為が、「平成16年に購入した土地を平成17年に報告した」という「期ずれ」問題である。この程度のことが「犯罪」にならないのは次稿で述べる通りだが、特にこのケースで「故意」だの「工作」だのと大仰な言葉で批判することは間違っている。

判決文でも事実と認定された経緯では、石川秘書らは16年にいったん契約を結んだものの、購入を17年に延ばしたいと考えて売主に申し入れた。売主は売買の延期はできないが、登記を翌年にするのは問題ないと同意し、行政手続きの専門家である司法書士も、それで問題ないとしてそのように取りまとめた。

しかし、判決ではこの延期は実態を伴わない違法なものだとして、石川氏らの犯罪は成立するとした。

認定の是非はひとまず措くとしても、これが「故意」の「犯罪」だろうか?自分が会社の仕事で取引責任者になったと想像すればわかることだが、相手と合意し、専門家も問題ないとした取引が、後に当局から「それではダメですよ」と言われたとしても、それで逮捕されたり刑に処せられたりしてはたまらない。税務調査でもそうだが、普通は指摘を受けた段階で修正すれば許される話である。

この2点だけでもわかることだが、石川氏や他の秘書らは、政治家秘書が本業であり、会計や法律の専門家ではない。不動産取引や銀行からの借り入れなどの手続きに精通していたとは到底考えられない。突き詰めれば法的に瑕疵があったとしても、悪質な「故意」で「犯罪」を犯したという認定は、あまりにも実態からかけ離れている。だからこそ、他の政治家のケースでは、そうした記載ミスは、すべて修正報告で済まされているのである。


・動機がない

秘書らの一審判決では、政治資金収支報告書の虚偽記載の動機として水谷建設からの闇献金が認定された。しかし、本誌既報のように、闇献金は証言だけで物証がないうえ、石川秘書は水谷建設元社長が献金を渡したと証言した日付の前に小沢氏から土地売買代金4億円を受け取っていた。つまり4億円に裏金が含まれる可能性はゼロで、隠す動機がまるでないのである。


・裁判所が恐れるパンドラの箱

判決文がこんな恥ずかしい常識外れを書かなければならなかった理由は3つ考えられる。


①東京地裁の「秘書有罪判決」を正当化する

前章で述べたように、秘書たちの行為には他の政治家事務所にもいくらでもある「ずさんな処理」があったとしても、現職国会議員を逮捕するほどの「犯罪」があったとはいえない。

しかし、すでに同じ東京地裁で秘書たちに「推認」を重ねた無理筋の有罪判決が出てしまっている。(※注3)

※注3 秘書裁判の一審有罪判決 小沢氏の政治資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件で、収支報告書虚偽記載罪に問われた石川知裕代議士、大久保隆規元秘書、池田光智元秘書の3被告に対して、昨年9月、東京地裁は執行猶予付き禁固刑を下した。物証はほとんどなかったにもかかわらず、その判決文には、「会計責任者だから知っていたはず」「強い関心を持っていたはず」「推認される」「~と見るのが自然」といった言葉が数多く使われ、裁判官が作り上げたストーリーで犯罪を認定した前代未聞の論理だった。

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今回の判決文は、なんとか秘書判決が間違いでなかったとするために、無理に無理を重ねて「期ずれ」や「不記載」を認定したと”推認”できる。


②検察審査会の疑惑を封印する

裁判所としては、この動機が一番大きいかもしれない。小沢氏を強制起訴した検察審査会には、上掲のように重大な疑惑がもたれていた。今回の裁判と併行して、国会議員らが、その在り方について疑義を呈している。

特に、十万分の一以下の確率でしか起きない「不自然に若い審査員たち」問題は、本気で実態解明すれば、事務局の不正や犯罪が出て機か来かねないパンドラの箱である。

判決文が検審の決定を妥当とし、小沢側の控訴棄却請求を退けたのは、身内の疑惑を封印するためだったと”推認”できる。

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*7つの検察審査会が抱える重大疑惑 

判決は「検審の強制起訴の手続きに暇疵はなかった」としたが、疑惑は多い。

①検察の不起訴判断に異議を申し立てた「市民団体」はたった一人の元新聞記者だったこと。新聞・テレビが強調したような”良識ある市民の集まり”ではなかった。

②審査員は抽選ではなく恣意的に選ばれた可能性が高い。2回の審査会の平均年齢はそれぞれ34・3歳と30・9歳。有権者の平均年齢(52歳)からかけ離れており、本誌試算ではこれだけ若い構成になる確率は0・00067%だ。

③早退して起訴議決に参加しなかった審査員が議決書の作成日には出席していたことが森裕子参院議員の調査で発覚。

④強制起訴には2度の起訴相当が必要だが、1回目と2回目で議決理由が違い、

⑤補助審査員(弁護士)が暴力団の抗争時などに適用される凶器準備集合罪の概念を審査員にアドバイスして強制起訴を誘導したという疑惑もある。

⑥起訴の判断根拠が田代検事が作成した捏造の捜査報告書だったことは前述の通りで、

⑦特捜部は小沢氏に有利な証拠は提出さえしていなかった。

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③小沢一郎の政治的抹殺

判決主文を聞いて青ざめた記者クラブ記者たちは、判決文を読んで少しは安心したことだろう。

すでに述べたように、小沢被告は「無罪」にはなったものの、秘書や事務所は「虚偽記載」を「工作」したり、巨額のカネを隠蔽したりしたと認定された。

これには2説あり、

「指定弁護士に”犯罪行為はあったのだから”と控訴する材料を与えて、小沢を再び座敷牢に放り込む法務当局の策略だ」(小沢支持派の民主党長老)

という「控訴の布石」説と、逆に指定弁護士の顔立てて、これで”三方一両損”で控訴は諦めさせようという「幕引き」説である。ただし、幕引きといっても小沢氏にとって明るい未来はない。

「事務所と秘書が犯罪を犯したと認定されたまま裁判が終われば、その後もずっと、メディアや野党から『証人喚問だ』『説明責任を果たせ』『道義的、倫理的問題は残る』と言われ続ける。むしろこの方が小沢にとってはダメージが大きいかもしれない」(前出小沢支持派の民主党長老)

これが判例となり、確定判決として「事実」とされることは、日本の司法制度にとって拭い難い汚点になる。本来なら、司法記者はそういう問題こそ追及すべきなのだ。

いっそ小沢側から「無罪だから不当な判決」と控訴した方がいいが、無罪の被告は控訴できない。まさかそのための無罪ではないと信じたいが。


*** 其の三 ***


最も恐れていた事態が現実に起こってしまった・・・これが永田町のホンネだ。座敷牢に入れられていた小沢一郎が無罪判決を受けて表舞台に戻ってくる。すくみ上がった与野党議員は「それでも小沢は政界追放!」とヒステリックに叫ぶが、その前に自分自身の収支報告書をじっくりと眺めることをお勧めしたい。


■小沢喚問を叫ぶ免れて恥なき与野党幹部たちの「政治とカネ」

まずは野党。自民党の次期総裁候補の一人である石原伸晃幹事長はこう噛み付いた。

「政治的、道義的責任は重い。証人喚問を求める」

判決のトンデモぶりは前稿の通りだ。それでも「借入金の不記載」「期ずれ」が国会で説明すべき”犯罪”ならば、石原幹事長の「政治とカネ」はどうか。

代表を務める党支部の03年の政治資金収支報告書は、6万8000円だった講演会の会場使用料を68万円と記載し、その後数年にわたって繰り越し金額も誤って記し続けた。毎年数十万円も収支が合わなければ気付いて当然だが、相当ずさんな会計をしていたらしく、外部からの指摘で誤記が発覚したのは5年後。政治資金を1円単位まで精査して公表する小沢事務所では考えられないミスだ。だが、この件も報告書の修正だけでお咎めなし。

さらに石原氏には、橋下派1億円闇献金事件(※注4)の日歯連から巨額の迂回献金を受け取った重大疑惑もある。01年4月から03年9月まで小泉内閣で行政改革・規制改革担当大臣を務めた石原氏は、日本歯科医師会の懸案だった医療規制改革にかかわる立場にあった。迂回献金の手法は、日歯連がいったん自民党の資金団体「国民政治協会」に献金。その後、党本部から石原氏(党支部)への交付金として00~02年で総額4000万円が還流したというものだ。

※注4 日歯連闇献金事件 日本歯科医師連盟から橋下派への1億円をはじめ、多くの自民党有力議員に巨額の闇献金や迂回献金が行われた事件。診療報酬改定など医療政策で有利な政策をとってもらうための工作資金だったとされる。東京地検特捜部は04年に橋下派会長代理の村岡兼造元官房長官を政治資金規正法違反で立件(有罪確定)したが、捜査の過程で橋下派以外にも、山崎拓氏、石原伸晃氏などへの迂回献金疑惑が発覚して国会で追及され、時の小泉政権を揺るがす大きな問題となった。

党本部から1000万円単位の臨時交付金は異例で、計4回の献金はすべて日歯連から支出されて2週間ほどで石原氏側へわたっていた。日歯連の元会計責任者は闇献金事件の公判で、「特定の代議士に献金しても、国民政治協会から日歯連に領収書が発行された」と迂回献金のカラクリを証言している。まさに贈収賄につながりかねない疑惑だ。

小沢氏が政治資金で不動産を取得したことが問題ならば次のケースはどうか。

次期総裁選への出馬を明言している自民党の実力者、町村信孝元官房長官は、01年、資金管理団体「信友会」を通じて1000万円の不動産(北海道江別市)を取得し、6年後に600万円の安値で買い取って自宅にしている。不動産購入どころか、政治資金の私的流用さえ疑われるケースにもかかわらず、大メディアは報じず、捜査当局も動いていない。

無罪判決が出る前から、小沢氏を「無罪でも証人喚問すべき」と強く訴えた江田憲司みんなの党幹事長も、代表を務める政治団体「憲政研究会」で03年に840万円の不動産(横浜市)を購入している。小沢氏に対し、政治資金で買うこと自体がよくないと批判した政治家、メディアは多かったが、ならば彼らも追及すべきだろう。

そもそも日付や金額の間違いなど、収支報告書の修正は11年だけでも581件に上る。そのすべての議員や会計責任者が逮捕、強制起訴され、証人喚問を求められなければ、司法府も立法府もダブルスタンダードを認めることになる。


■出所不明の収入が1億円

民主党にも小沢氏の無罪を快く思わない面々がいる。

前原誠司政調会長は判決後のテレビ番組で「3審制が前提。(党員資格停止処分の解除は)控訴を見極めてから」「(消費税増税法案への造反は)極めて重い反党行為」と除名処分までほのめかした。

その前原氏には政治資金の疑惑が絶えない。昨年、大震災直前の国会で違法な外国人献金や暴力団と関係が深い企業グループからの献金を追及されて外相を辞任したことは記憶に新しい。

本誌は同氏が党代表だった05年にも秘書給与疑惑を報じた。政治資金収支報告書によれば、当時の政策秘書から個人献金の上限(年間150万円)を超える3年間で計1050万円の寄付を受け取っていたのをはじめ、夫人を公設第一秘書にして、その夫人から政治資金総額2548万円を借り入れていた。また、実母を公設第二秘書にして448万円の寄付を受け、後任秘書からも給与の3割を超える年間171万円の寄付を受けていた。税金で賄われる秘書給与を吸い上げる手法である。

さらに本誌は、前原氏の党支部や政治団体には「業務委託料」の名目で04年までに1億円近い出所不明の収入が計上されていた問題も暴いた。党は極秘裏に顧問弁護士を使って調査を行ったが、結果は一切公表されていない。もし小沢氏だったら特捜部が家宅捜索や秘書逮捕など徹底的に捜査した案件だろう。

党内で小沢氏の政敵とされる仙石由人政調会長代行の政治資金の使い方もまさに”黒に近いグレー”だ。仙石氏は長男の司法書士事務所と同室に3つの政治団体の事務所を置き、政治資金から07年~09年で計320万円を支払っていたが、使用実態がほとんどなかったことが発覚している。

また09年の総選挙時、政治資金収支報告書に書かれない”裏金”を使ったという疑惑もある。仙石氏と同じグループに所属するある議員は仙石氏から20万円の寄付を受け取ったと報告したが、仙石氏側の報告書にはその寄付が不記載だった。

仙石事務所は当時、「記載していないならポケットマネー」と答えたが、”個人のカネならいいだろう”という論理が通るなら、それこそ小沢氏の4億円はまったく問題ないカネである。

同様のケースは枚挙に暇がない。無罪判決の小沢氏に「説明責任」を求めて証人喚問すべきというなら、政治とカネの問題を抱えながら免れて恥なき政治家たちこそが、まず我が身の潔白を証明すべきである。

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