木造帆船模型の最初の山場、船体外板張りです。 この部分、慣れないとどの板から手を付けていいか分かりませんよね…。
通常はモチロン図面に従うのですが、図面の指示に無理があれば『最下層甲板』に沿うようにします。 つまり、単層甲板のボルティモアクリッパーの場合は、フレームの上端(甲板貼り付け部)に合わせて"基準板"を張ります。 これは実船でも踏襲されていたので安心して実行してください。
なお、木目を潰して塗装する場合、この上に更に化粧板を張る場合はこの限りではありません。 先ずは張りやすいアール(曲率)で張り、化粧板のほうは図面通りの曲率で張ります。
接着剤はどのように使うかというと、外板の板同士は木工用ボンドを、フレーム/キールとは瞬間接着剤を使いました。 化粧(上)張りをしない場合、釘穴が目立ってしまうので釘は打ちません
基準板を左右対称に正確に張ったら、船体下部へ向かって張り進めます。 曲げに段々と無理がくるようになったら板を濡らして強い曲げクセを、更にキツくなったらテーパーをつけたり↑写真のようにスティーラーを入れて行きます。
塗装で木目を潰す場合はスティーラーの形状にそれほど神経質にならず、板を単純に細くして隙間を埋めます。 今回の製作では少し欲を出して"実船に近い"張り方をしました。 実船では必ずしもこの通りの張り方、板の幅ではないのですが、方法としては一緒です。 (エセックスでは"矢"の形にしましたが、より簡単なこういう方法もあります)
△ 矢の形(先端が切り落とされた形)にする訳。 実船でも外板には強い力が掛かるため、先端部にも必ず太い釘を打ち付けて固定しなければなりません。 しかし、板にある程度の幅がないと釘を打ち付けることは出来ませんよね。 そこでこういった加工をして強度を高めているのです。
外板は無理に前後一貫して張る必要はありません。 実船でも勿論、全通し張りなどしていませんのでご安心を。 また、スティーラー加工の仕方ですが、新たに張る板のみを加工する他、張ってある板も加工して入れる場合もあります。 この場合は元板は慎重に加工しましょう 失敗するとやり直しですから…。
△ 外板、甲板板は必ず左右対照に張っていきます。 左右ワンセットで進め、休憩する際、その日の作業を終える際も必ず左右対称に張っておしまいにします。 これは気温・湿度で板が微妙に伸縮するため、必須の方法となります。 特に梅雨時から晩夏に掛けては"絶対"です。
真上から。 丸みがきつい部分は板の断面が"台形"になるようカットすることも忘れずに。
船体部とギャラリー基部は違う曲率を持つので分離して製作。 塗装する場合は目立ちませんし、実船でも分割されているモノがあります。
キールと外板が接する面の加工法は説明書に従います。 理屈が分かっていれば、どんなカタチでもいいのですが、強度が低下しないように注意。
このボルティモアクリッパーでは、外板側は削らず、キールを削って埋め込むようにする方法が指示されますが、後付のキールの接着が上手くいきそうにないので、私は外板をナナメにカットする方法を採用しました。
船体後ろ下部の板の処理方法は迷います…。(写真左、舵を取り付ける付近) 本来ならキールの幅まで滑らかに細っていくのですが、削りすぎると板の強度が低くなります。 やぼったいですが、目立ち難いこともあり、強度優先で。
そして肝心なのが"コーキング"です。 実船では、木材のつなぎ目に詰め物をする防水処置のことですが、模型では外板裏側(船体内部側)に接着剤などを塗って補強することを指します。
これは、高温多湿~低温乾燥まで、多彩な気象条件を持つ日本では必須の工程。 木材同士を強固に固着しないと経年劣化で木材がバラバラになる可能性があります。 また、船体磨きの際のへこみも軽減できます。
使用する接着剤は「エポキシ系」が最適。 2液タイプが主流ですが、最近では単剤のものも増えてきています。 逆に木工用ボンドは絶対にダメです 親水性があり、湿気を吸って柔らかくなり、コーキングの役目を果たしません。
外板を張り終えて板先端の処理もしました。 この状態で船体を磨きます。 木目・継ぎ目を潰す場合はサーフェイサーを吹き付けるとカンタンに木目が目立たなくなります。
船体に十分磨きを掛けてから追加キールの取り付けに入ります。 クリップなどを使って正確に水平垂直を出します。 接着面に釘を打つと強度も増して良いですね。(爪楊枝などの木製がオススメ。 真鍮だと折れ易いです)
今回は、外板張り、船体磨き、追加キール付けでした。 具体的記述に乏しくて申し訳ないです。 実際の製作を言葉にするのは難しいのですヨ より詳しい解説は白井さんの著書にお任せします。 ただ、慣れてしまえば勝手に手が動いてくれる面も無きにしも非ず…。 (そこまで行くのが大変なんですけど…) まぁそれまで修行ですネ
次回は甲板張りと、甲板構造物の基部製作です。