ちょうど良い目覚め。
いい感じに酔いが残っていて、悪夢も見ずに熟睡できている。
下地は出来ている。さあ二軒目に行こう。
あ、まだ6時半だから吉野家かジョナサンでしか飲めない。
それに、中目黒で、しかも病院だった。
まだ薬に頼っていなかった頃、
下高井戸駅構内の吉野家によく通っていた。
豚皿とおしんこをつまみながら、ちびちび。
あそこはイスラム教経営でアルコールは一人3本しかダメだから、ビール2と日本酒を一合。
去年スーパードライからモルツに変わったのだが、
何故か吉野家の味付けにモルツは合わない。
牛丼の味の秘密は調理に使うのが日本酒でなく大量の白ワインにある、
それがサントリー輸入以外のワインであることに起因するのではないのか?
その頃休みの日は、又は仕事をサボって、一日中飲んでいた。
まず眠れないまま7時半に下高井戸の至宝、
定食屋「よ志み」で、
ミックスフライ270円か豚バラと大根の煮物¥230とビールを1・2本。
ここは安くて本当に美味しい。
定食は470円のコロッケ定食から、
一番高い焼肉定食620円までほとんどが500円代だ。
納豆定食350円ってのもあって、2年前までは270円だった。
吉野家や松家などのチェーン店と真っ向から竹やりで戦っている。
料理単品が200~300円代だし、居酒屋よりも断然安くておいしい。
朝はおもに河岸帰りの商店主たちが一杯やっている。
もちろん出勤前のサラリーマンも多い。
よく見かける中年の老紳士が(?)がいて、単身赴任か奥さんを亡くされたか離婚か独身なんだろう、いつもハムエッグ定食に納豆でささっと済ませて店を出て行った。
ここにはビールの抜き方に独特の流儀があり、お客さんの前にキリンの大瓶どんと置いて、栓抜きでシュポっと音を立て、落ちてく来る王冠をテーブルに着地寸前に左の手のひらで受け止める。
未だに怖くてその理由が聞けない。
ミックスフライは、大き目の鯵のフライ1尾と、もんごうイカだと思うがイカフライが5本、感心するのはイカの切り方だ。
縦の短冊切りにして軽く切れめを入れてるんだろう。
一見、出来た当初のモスバーガー(誰も知らないでしょう)の、フライドポテトくらいの大きさでサクっとしていて柔らかくておいしい。
いつも油が新しく胸焼けした事がない。
あとお気に入りはチンだけど自家製ハンバーグ、
自家製コロッケ、ひじき煮、豚バラと大根の煮物だ。
中でもこの煮物はたまにしかなく必ず頼む逸品だ。
さっと煮てあるのに、互いの味がそれぞれに溶け込み、引きたてあっている。
「情熱の赤、哀愁の青、今溶け合って夢の世界へ。nnn~n そこから先は~」
って感じだ。
by作詞松本隆 作曲筒美 京平 「セクシャルバイオレットNo1」
僕は最近の「豚の角煮」というもの格調の高さに納得がいかない。
確かに作るのはそりゃあ大変だ。
大きな豚バラが柔らかくなるのは時間がかかるし、時間差で大ぶりの大根にも味を染み込ませなきゃならない。
圧力鍋で一気に作る店もあるが、あれって味が一気に入るので、灰汁(あく)や焦げたような味がしておいしくない。
圧力鍋を使う場合は、まず別鍋で葱や日本酒入れて、沸騰させて灰汁(はいとダイヤモンド)をよくとってから、水を足し昆布や香味野菜やら日本酒か泡盛を加えて10分。
それから半分煮汁を捨て、新たに水とお酒とお好きな味付けを足して10分。
大根を入れて1分、あとは余熱。
メーカーごとのばらつきもあるけど大体これでいいと思う。
一晩冷やして置いて、上に張った氷の銀盤のような油を取るとなお良しだ。
たまに料理番組の取材の有名店で、女子リポーターが、
「脂が抜け落ちて、ゼラチン質やコラーゲンがぷるぷる~。口の中で解けてく~」
とか言っているが、それは嘘ですよ~。
いくら煮たって脂身が抜ける訳が無いですよ~。
みんな騙されないで下さいね。
それに高い。高い。高すぎる。だってたかがバラ肉ですよ。
昔は牛も豚も三枚肉、バラ肉は安かった。
庶民の味方でご家庭でも中華屋でもよく利用されてた。
今でも肉野菜炒めはバラ肉じゃあないと美味しくないアルヨ。
でも、昨今の豚の角煮・ラフテー・パーコーロー、人気で、本当に塊の三枚肉仕入れ価格が異常にに高いのです。肩ロースより高いです。
煮込んだら半分になっちゃうのにね。
作るほうも原価が高くて。お客も頼むのに覚悟がいる。
牛バラだって焼肉人気のせいで高値安定だ。
カルビなんて、やっぱり所詮バラ肉なんですよ。
それに骨付きなんて半分骨なのにあんな言い値段取りやがって。
ちくしょう!プリプロを半日かけて録音・編集したのに、なんで打ち上げの焼肉が割り勘なんだよ、豊岡!自分でカルビやらサンチュやら奉行で仕切ってたくせに。
俺は豚や鶏が食いたかったんだ!!
そしてロースよりカルビが高いなんてどう考えても変だ。
お百姓さんに申し訳ない。
やはり需要が多いせいなのだろうか。
最近の「脂が乗っている=上等」思考のせいなのか?
「よ志み」でちょっといい気分になったら、
一年前に改装された松原駅横の中華屋「光竜」へ。
ここは恐ろしく料理が早く、麺類以外は平均2分で出てくるし、その量の多さは本当に半端ではない。
肉野菜炒め、肉ニラ炒め、茄子ピーマン炒めなど全てお勧めだが、単品は殆どが500円だ。
「お、俺は肉が食いたい!」って時は焼肉500円と、ライスを頼んでその活火山の高さと、火口からのジューシーな噴煙にに驚くといい。
ランチ時の人気ランキング・男子部門ナンバー1だ。
女子・老人は・・・タン麺だと思う。
親父さん、おかみさん、いずれ店を継ぐ息子、その嫁、典型的な「渡る世間は」タイプだ。
そういえば改装前はなんだかすごくみんな背中を曲げながら、指のささくれを抜くみたいな店だったな。
しかし改装後のおかみさんはスーパーオオゼキで買い物してる時も、生き生き颯爽としてカートを押している。
花梨な雰囲気のお嫁さんはホール係だが、ちょっとした一輪挿しやミニサボテンが愛らしい。
そしてここから見る世田谷腺の風景が僕は大好きだ。
それに出前も一品からやっている。
1品からですよ!
松原~下高井戸近辺で、一日中スーパーカブをぶっ飛ばしているのはここの若旦那だ。
ちょっと松阪大輔に似ている。
星一徹のような親父さんとは全く似ていない。
その後、徒歩1分の我が家に帰り、ぐりちゃんにご飯を上げて、しばらくグリちゃんとお昼寝。
3時過ぎに目覚めると慌てて下高井戸の重要有形文化財、「坂本そば店」へと急ぐ。
この店はあまりに書くことが多すぎて、単行本が出せるくらいなので、後日詳しく書きますが、初めて入った方は驚きの連続で、潔癖症の人だったら卒倒するでしょう。
ハエ取りやホイホイがいたるところにあるし、実物もたくさんいます。二層式の洗濯機が2個と車椅子がいつもある。
広く雑然とした店内は100席はあろうか、半分はテーブル席で半分はお座敷です。
座敷は30畳くらいの大広間と、細長い8畳ほどの細長い飛び地、大広間の中には人気の3畳の個室がある。
看板に「店内は広いのでご休憩に利用下さい」と書いてあるとおり、タクシーの運ちゃんがアイマスクをして仮眠を取っていたりする。
店内には4箇所にテレビがあって、
お昼時ともなると、「NHK]「みのもんた」[TBS(なんだっけ?)」「いいとも」が爆音で流れ、店主らしき親父のラジオカセットレコーダーからは「NHK総合」か、一日中「花も嵐も」がエンドレスで、つまり3分×20×12だから720回かかっている。
人気の3畳の個室は3時過ぎはほぼ開いている。
一年ほど前は14型くらいのブラウン管テレビと、鏡台、黒電話、将棋盤、壊れたエアコンだったのだが、今年の春、急にソニーの液晶テレビに変わった。
ものすごくびっくりした。儲かっているのか!
春日部市、築40年の平屋に横付けされてたミニカが急にポルシェになった感じだ。
片方を開けると大広間につながり、
しかし一度禁断のもう片方の障子をあけてしまった。
布団がしいてあっておばあちゃんがぐうぐう寝ていた。
一畳の仮眠部屋だった。
僕はそこでほとんど「カツ煮」を頼む。
カツ煮は日本料理の最高傑作だと思う。
塩コショウして丁寧に揚げた肉を煮込み卵でとじるなんて、
大胆かつ難攻不落。
それに七味をかけていただくとコショーとのバランスに驚く。
よく海の無い県に分布される、ソースカツ丼当たり前派、東京に出てきて始めて食べたよ田舎もん系が、
「カツのサクサク感が薄れてね~」とか、
「煮込むと味のポイントがさあ~」とか言ってる奴は、
歌舞伎揚げとか浅草の硬いだけで胸焼けする天ぷらでも食ってろ!と言いたい。
大体いつから揚げたてが最高になったんだ!
僕はコロッケとかメンチカツは冷めたてがうまいと思う。
揚げたては熱すぎて味が解らないし、味が馴染んでいない。
代官山の肉屋の店頭で初冬に熱々をハフハフしながら、
コロッケを食べるのは付き合いたてのカップルだけにしろ!
でも天ぷらだけは揚げたてが大事だとと思う。
経験上言うがすぐ料理に手を付けないのはB型に多い。
「これ一本吸ってから」とメンソールとか吸ってたりさ。
もう一度言う。出されたらすぐ食え。
もちろん安い駅弁の常温のかき揚げも大好きだが
(崎陽軒のシウマ弁当を応援します)、箱根の旅館の5時に揚げました、だって7時に帰りたいんだもん、という冷たい天ぷらとぬるい茶碗蒸しなんて、大涌谷に投げ込むか、箱根神社のお賽銭箱に入れた方がいい。
又は「箱根湯煙りコンパニオン殺人事件・名物天麩羅に謎の密室殺人・美人仲居刑事が完全トリックを解く」で、
「この抹茶塩に毒が…」と比企理恵が死ぬぐらいで充分だ。
とにかくこのしょっぱい「カツ煮」は最高だ。
これだけで3時間は飲める。
肉でビール、玉ねぎでサワー、そしてサワー、そしてロック、もし最後に締めたかったら半ライスを頼んで、最後の一葉と雨水で「プチカツ丼」にしよう。
しかしこの「坂本そば店」のカツ丼は超フレキシブルだ。
ある日はうずらの玉子が一つだったり、二つだったり、それが無かったり、それがグリーンピースだったり、ある時は5つに切ってあったり、8つだったり、又はそれが縦に半等分つまり16切れだったり全くレシピが決まっていない。
一度凄く時間がかかってから「豚の角煮」が出てきて、黙って食べた。
チンし過ぎて「ほぼ燻製」だった。
一見さんやもう一方の入り口(二つあるんです)から来る客は、レジで食券を買う。その南口が無防備なんでタダ食い防止策なんだろう。
顔を覚えてもらえると、食券が料理と共に運ばれて来て後払いになる。
オーダーするたび「カツ丼の上550」「サワー400」とか。
帰りにそれをレジに持って行くとおばあちゃんがそろばんを弾いてくれる。
ここでメンバーを紹介すると、店主の「花も嵐も」が好きなおじいさん。
会計のおばあさんオンピアノ。ホールのおばさん。ホールのおじさん。
調理担当で最年長のおじいさんの5人だ。
未だに生きていて来日している、ソニー・ロリンズのカルテットより平均年齢は高いと思う。彼らはなんらかの家族関係にあると思う。
店主は気前がいい。
初めて行った時、食欲がまるでなく、「壜ビールを」と頼んだらお通しに枝豆(もちろん無料)が出てきた。続いて「レモンサワー」をと頼んだら柿ピーが出てきた。最後に「焼酎のロック」を頼んだらキムチが出てきた。
その時だけだったから、気まぐれったのか?
それとも顔色を気遣ってくれたのか?
いや、それは絶対にないと思う。
しばらくして晴れて定連となり、後会計になってから気付いた。
3回に一度はつけ忘れをしている。
ホールのおじさんの小説ミスか、おばあさんのピアノのタッチミスだ。
いつも400円~800円は少ない。
それで僕はつい何度かやってしまった。
伝票を1.2枚丸めてポケットに入れたり、お盆の下に隠したり、
それでも一向にバレナイ。
そして、いつもさんざん飲んで2000円以下の明朗会計の優良店となっていた。
しかしある日、店主にビールを頼むと
「アサヒ?キリン?」
「あ、キリンでお願いします。」
すると遠くのレジの方でホール係の例のハゲ親父が、
耳の遠いおばあさんに大声で言っていた。
「あの人は伝票持って行かずにこっちで付けといて。」
ああ、やはりこの日が来たのね。
でもこのハゲはやる事も激しい。
これはシャレではない本気(まじ)だ。
前にレモンサワーを頼んだらちょっと薄かった、というかチェーン店の居酒屋並みだった。二杯目「濃い目でお願いします」と言ったら焼酎7:サワー3だった。
もちろんレモンは変えない。締めに「ロックで下さい」と頼んだら、サワーと同じ量の焼酎が入っていた。それが全て400円。
親切なのか適当なのかさっぱりわからない。
さすがにその日は店を休みました。
4時から「水戸黄門」を見る。やはり東野英二郎は素晴らしい。
石坂浩二ver.は脚本は良く出来ているがやはり無理がある。
浅野光男の辺りは完全に老人を舐めきっている。
やはり初代の葉山さんの脚本は素晴らしい。
朝食が来る。又同じようなメニュー。
胸焼けしていて殆ど残す。
やっぱり運動してない体に海老ふりゃあとお肉は重かったぜ。
そういえば坂本そば店の定食のセンスも凄かったなあ。
一度興味本位でから揚げ定食を頼んだけど、殆ど下味の無い鶏の竜田揚げに、大量のポテトサラダとフライドポテトが付いていた。
でもあの展望レストラン、味は悪くないけど今一つだなあ。
ひと昔前の国民宿舎の食堂って感じだ。
そもそもこの病院は公務員の共済組合がやってるから、しょうがないのかもしれんが、8時閉店は早過ぎるしメニューが少ない。
病院なのに和食や体に優しいものがない。
もったいぶった特別定食1200円ってのがあったが、
「ポークソテーのなんとかソース添え」にいろいろ小皿が付いてるだけだ。
目黒銀座なら780円だ。
昔オヤジが心筋梗塞で倒れて、もう25年も通っているバカ高い慶應病院も、行き始めの古い本館だけの頃は、地下の薄暗い食堂と、銀座木村屋の小さな売店くらいしかなかったけど、鳴り物入りでオープンした新館の最上階には、
パレスホテル直営の展望レストランがあってその名も「オアシス」だった。
なんともまあ単刀直入というべきか。それとも痛烈な皮肉なのか。
神宮の森を一望できるパノラマビューはいいのだけど、取って付けたようにカロリー表示があるだけで、ほぼホテルのラウンジレストランにあるようなメニュー。
サーロインステーキやビーフシチュー、シーフードドリア、しないけどゴルフ場にあるような豪勢なクラブサンドウイッチ、五目焼きそば、デザートもいろいろ、うな重まである。
そして凄いのがたいがいののアルコール類があるのだ!
店内風景はそれはまあ凄いもんだった。
点滴のカートを背負ったおっさんが、昼間からうまそうにビールを飲んでいたり、
きっと明日大手術を控えたおじいちゃんが、最後の晩餐か、この世の名残りのように、いとおしそうにうな重と日本酒をついばんでいたりする。
片や長野県上伊那郡中川村(別に恨みはあまりありません)から出て来た親族連中がテーブルをくっ付けて、昼間から大宴会を繰り広げている。
夜は全く病院と関係ないようなカップルも沢山いて、信濃町から神宮外苑を抜けて絵画館や銀杏並木をお散歩し、表参道まで、又はその逆はいかにもなデートコースだからだろう。
薄い壁を隔てた隣は照明を落とした喫茶&バーコーナーまであり、バーテンダーが寡黙にシェイカーを振っていた。
そして、一番びっくりしたのはレストランの隅に、小さいながらも寿司カウンターがあるのだ!
食堂に寿司カウンターのある病院って、
日本広しといえどもあそこだけだと思う。でも板さんはいつもいる訳じゃなくて、
その寿司屋の営業時間も解らなかったから、座る機会も勇気もなかったけど、
一度白衣を来た先生二人が、板さんを前にお好みで握りをつまんでいた。
いかにもいまオペが終わったような外科医がまぐろやウニを……(イメージ)
「おはようございま~す」
元気ななつきちゃんが検診にくる。
残ってる薬の数を確かめている。
おそるおそる聞く。
「あの~昨日夜勤でした?」
「はい、そうですよ。もうすぐ明けま~す」
不思議そうな顔をしたが、声は嬉しそうだ。
「あのう~僕、昨日大丈夫でした?」
「あ、覚えてないんですね?やっぱり。」
なつきちゃんは血圧を計る時、細い指で僕の腕をぎゅっと閉める。
気持ち良く、すがすがしい。細腕繁盛病棟午前9時。
「デイルームで『チャンス到来~』とかなんとか唄いながら、
コンコンとかみゃあみゃあとか言ってぴょんぴょん飛び跳ねてましたよ。」
ああ・・・やっぱり。でも何故バービーボーイズ?
「でも楽しそうでしたよ。いつの間にか床で寝ちゃってましたから、起こしてあげたら、自分で戻っていきましたよ。」
なつきちゃんは笑いながら出ていった。
こんなキチ○の事よりもう夜勤明けだから、今夜のデートで頭が一杯なんだろう。
結婚するんならいい男を捕まえるんだぞ。
ナースさんの知り合い、数人いるが皆離婚している。
鈴木先生に会うのが怖い。
しかし夜光虫の再来。
今日は土曜日で先生はオフ日だ。
わ~い。
午前中はアホなメールをしたり、PCで音を聞いてアルバムのイメージを考えたりと、ベッドの上でだらだら過ごす。
小皿のフォックスフェイスとローズマリーと、
お薬たちが大人しく僕を見ている。
ぼうっとしていたらもう昼食だ。
鮭のソテークリームソース、サトイモのそぼろ餡かけ、
わかめの酢の物、もやしの味噌汁、硬派米、麦茶。
朝食べて無かったから美味しくいただく。
試しに千夏ちゃんからもらった梅干と麦茶でお茶漬けにしてみた。
うまい。
食品業界の小林製薬、永谷園の「俺流冷やし茶漬け」って商品があるが、
御茶漬けの素とぶっかき氷とウーロン茶(思いっきりサントリーだった)を、
イケメン俳優が音を立てながらかっ込んでいたが、
まだCMが続いてると言うのはあまりクレームが無かったって事だろうか?
僕なら一発でお腹を壊す。
しかしカキ氷ってのも原価の無い食べ物だよなあ。
氷いちごなんて解けたらただの人口いちごジュースだしね。
あれで600円とかとれるのかあ~すごい。
でもそのうちに、綿飴ならぬ綿氷いや綿雪とか出そうだね。
「蔵王の新雪から出来たパウダー綿雪」とか、
「グリーンランドのダイヤモンドダスト綿雪ミント味」とか、
「オーロラが見える南極圏の綿雪イチゴー」とか。
午後も音楽聴いてたら3時半頃ううちゃんから、これから行きますとのメールが。
ううちゃんは去年CDをプロデュースした、ギター弾き語りのアーティストだ。
ううちゃんの顔もおぼろげだ・・・
ん・・・おぼろ気?おぼろ豆腐?おぼろ月?千夏ちゃんが子ぎつねなら、ううちゃんはお月様だ。
「ゆっくりおやすみよお~」と言ってくれる、絵本のような優しい色調の満月のイメージが。
急に来るってるのは、急に狂ってるって事ではなく、やはり馬肉食ってるんじゃなくて、やはりパニクってるんだろうなあ?
馬肉には相当うるさい僕も躁だがいや欝だが、ううちゃんも相当なビビリンボウ(ブラジル音楽王国「王様ジュンカ・ガミーは陸軍大臣ジンナ・カヤマーのクーデターで亡命中」の楽器、日本でまともに弾ける人はいない)だからなあ。
初めての発作の時は心臓麻痺かと思って床に倒れてたら、店の内装工事のお兄さんが「辛そうだね」ってガリガリ君をくれた。
夏バテだと思ったのでしょう。
あの、世の中が急に白黒になりネガポジ反転になるような恐怖感は、なった事ある人しかわからないからみんななって下さい。
動悸・頻脈・呼吸困難と、死ぬんじゃないかぐらい極度の恐怖感。
次に起きたのはあるライブの日の夕方、ある男性ピアニストに紹介した素晴らしい歌い手の女の子が、優しさと気の弱さを暴言でカモフラージュしている、彼にリハで徹底的にやり込められていて、
「これ、音当たってねえ?これコードおかしくない?これどう展開すんのよ!」
って初登場で失礼なくわえ煙草で、でも全ては彼の勘違いだった。
彼女はリハが終わってからもずっと楽屋で緊張しながら、直前まで必死に譜面とにらめっこしイメージトレーニングをしていた。
いざ本番、彼女もガチガチ・僕もガチガチ。
でも曲が始まるとその緊張の空気はは一気に解けていった。
何か、一輪の睡蓮が水からゆっくりと茎を伸ばし蕾を膨らませ、優しく気高い花を広げ、清浄な香りを辺りに放っていくかのようだった。
急にピアニストの顔色が変わり、タッチも変わり、真剣に演奏しはじめる。
その唄声は儚いくらいに優しく、子供を守る母のように力強い。
障害物をするりと避けながら聴く者の体にしんなり入り込み、
琴線に触れるなんてレベルではなく、心臓をわしづかみにされたまま、でもゆっくりと優しくさすってくれる。
う~ん。素晴らしすぎてうまく言葉で言い表せないや。
日本人のカバーを一曲やったが、ライブで見た本物の彼女よりも良かった。
本番が終わった瞬間、ピアニストが大声で叫んだ。
「この子すげ~よ。すげえ!こんな子がいたんだっ!」
遅い。リハで気付け。1時間も遅刻しやがって。
でも彼も時間に遅れて馬肉食ってたんだろうなあ。
そして家に帰ってからも僕の緊張は途切れず、激しい発作がおきたのでした。
それからは頻繁にライブ後、ライブ中、リハ中を問わず、咳き込んだり、嗚咽したり、動けなくなったり。
要するに大好きな人も大嫌いな人も、意識する、感情を揺さぶられるという点では同じだし、マイナスオーラでもプラスオーラでも、その度合いが大きければパワーとして押し寄せてくる波動としては同じだ。
それに店に出演していただいてるのは大体が好きなミュージシャンか、彼らの繋がりで頼まれてしまいいやいや出演オッケーしたお方や、やや有名でメジャー落ちの態度のでかい下手な連中や、その取り巻きのいかにも擦れた感じ悪い業界人や、妙にテンションの高い女子マネージャー。
本当に疲れる。
頼むリーブミーアローン!アローン、ロー・・・
発作の頻度はどんどんエスカレートして行くのでした。
あ、うっかりしていたらもうすぐううちゃんが来る。
間に合えば渡したいと急に思い立ち、デイルームで動物たちと苦手な譜面書き、
カエル君ダルセーニョが多すぎたら解りにくいかい?
なんだダルせーニョも知らないんだ。
海水の温度が高くなって、
君のバリ島の仲間達が死んじゃうって事なんだよ。
鳥君ダカーポも知らないのかい?
内容がない高島暦くらいの大きさの薄い譜面でねえ。
駅前かタワレコでタダで手に入るような程度の音符なんだよ。
あ、もうお月さまがと思ったらううちゃんが後ろにいた。
続く
いい感じに酔いが残っていて、悪夢も見ずに熟睡できている。
下地は出来ている。さあ二軒目に行こう。
あ、まだ6時半だから吉野家かジョナサンでしか飲めない。
それに、中目黒で、しかも病院だった。
まだ薬に頼っていなかった頃、
下高井戸駅構内の吉野家によく通っていた。
豚皿とおしんこをつまみながら、ちびちび。
あそこはイスラム教経営でアルコールは一人3本しかダメだから、ビール2と日本酒を一合。
去年スーパードライからモルツに変わったのだが、
何故か吉野家の味付けにモルツは合わない。
牛丼の味の秘密は調理に使うのが日本酒でなく大量の白ワインにある、
それがサントリー輸入以外のワインであることに起因するのではないのか?
その頃休みの日は、又は仕事をサボって、一日中飲んでいた。
まず眠れないまま7時半に下高井戸の至宝、
定食屋「よ志み」で、
ミックスフライ270円か豚バラと大根の煮物¥230とビールを1・2本。
ここは安くて本当に美味しい。
定食は470円のコロッケ定食から、
一番高い焼肉定食620円までほとんどが500円代だ。
納豆定食350円ってのもあって、2年前までは270円だった。
吉野家や松家などのチェーン店と真っ向から竹やりで戦っている。
料理単品が200~300円代だし、居酒屋よりも断然安くておいしい。
朝はおもに河岸帰りの商店主たちが一杯やっている。
もちろん出勤前のサラリーマンも多い。
よく見かける中年の老紳士が(?)がいて、単身赴任か奥さんを亡くされたか離婚か独身なんだろう、いつもハムエッグ定食に納豆でささっと済ませて店を出て行った。
ここにはビールの抜き方に独特の流儀があり、お客さんの前にキリンの大瓶どんと置いて、栓抜きでシュポっと音を立て、落ちてく来る王冠をテーブルに着地寸前に左の手のひらで受け止める。
未だに怖くてその理由が聞けない。
ミックスフライは、大き目の鯵のフライ1尾と、もんごうイカだと思うがイカフライが5本、感心するのはイカの切り方だ。
縦の短冊切りにして軽く切れめを入れてるんだろう。
一見、出来た当初のモスバーガー(誰も知らないでしょう)の、フライドポテトくらいの大きさでサクっとしていて柔らかくておいしい。
いつも油が新しく胸焼けした事がない。
あとお気に入りはチンだけど自家製ハンバーグ、
自家製コロッケ、ひじき煮、豚バラと大根の煮物だ。
中でもこの煮物はたまにしかなく必ず頼む逸品だ。
さっと煮てあるのに、互いの味がそれぞれに溶け込み、引きたてあっている。
「情熱の赤、哀愁の青、今溶け合って夢の世界へ。nnn~n そこから先は~」
って感じだ。
by作詞松本隆 作曲筒美 京平 「セクシャルバイオレットNo1」
僕は最近の「豚の角煮」というもの格調の高さに納得がいかない。
確かに作るのはそりゃあ大変だ。
大きな豚バラが柔らかくなるのは時間がかかるし、時間差で大ぶりの大根にも味を染み込ませなきゃならない。
圧力鍋で一気に作る店もあるが、あれって味が一気に入るので、灰汁(あく)や焦げたような味がしておいしくない。
圧力鍋を使う場合は、まず別鍋で葱や日本酒入れて、沸騰させて灰汁(はいとダイヤモンド)をよくとってから、水を足し昆布や香味野菜やら日本酒か泡盛を加えて10分。
それから半分煮汁を捨て、新たに水とお酒とお好きな味付けを足して10分。
大根を入れて1分、あとは余熱。
メーカーごとのばらつきもあるけど大体これでいいと思う。
一晩冷やして置いて、上に張った氷の銀盤のような油を取るとなお良しだ。
たまに料理番組の取材の有名店で、女子リポーターが、
「脂が抜け落ちて、ゼラチン質やコラーゲンがぷるぷる~。口の中で解けてく~」
とか言っているが、それは嘘ですよ~。
いくら煮たって脂身が抜ける訳が無いですよ~。
みんな騙されないで下さいね。
それに高い。高い。高すぎる。だってたかがバラ肉ですよ。
昔は牛も豚も三枚肉、バラ肉は安かった。
庶民の味方でご家庭でも中華屋でもよく利用されてた。
今でも肉野菜炒めはバラ肉じゃあないと美味しくないアルヨ。
でも、昨今の豚の角煮・ラフテー・パーコーロー、人気で、本当に塊の三枚肉仕入れ価格が異常にに高いのです。肩ロースより高いです。
煮込んだら半分になっちゃうのにね。
作るほうも原価が高くて。お客も頼むのに覚悟がいる。
牛バラだって焼肉人気のせいで高値安定だ。
カルビなんて、やっぱり所詮バラ肉なんですよ。
それに骨付きなんて半分骨なのにあんな言い値段取りやがって。
ちくしょう!プリプロを半日かけて録音・編集したのに、なんで打ち上げの焼肉が割り勘なんだよ、豊岡!自分でカルビやらサンチュやら奉行で仕切ってたくせに。
俺は豚や鶏が食いたかったんだ!!
そしてロースよりカルビが高いなんてどう考えても変だ。
お百姓さんに申し訳ない。
やはり需要が多いせいなのだろうか。
最近の「脂が乗っている=上等」思考のせいなのか?
「よ志み」でちょっといい気分になったら、
一年前に改装された松原駅横の中華屋「光竜」へ。
ここは恐ろしく料理が早く、麺類以外は平均2分で出てくるし、その量の多さは本当に半端ではない。
肉野菜炒め、肉ニラ炒め、茄子ピーマン炒めなど全てお勧めだが、単品は殆どが500円だ。
「お、俺は肉が食いたい!」って時は焼肉500円と、ライスを頼んでその活火山の高さと、火口からのジューシーな噴煙にに驚くといい。
ランチ時の人気ランキング・男子部門ナンバー1だ。
女子・老人は・・・タン麺だと思う。
親父さん、おかみさん、いずれ店を継ぐ息子、その嫁、典型的な「渡る世間は」タイプだ。
そういえば改装前はなんだかすごくみんな背中を曲げながら、指のささくれを抜くみたいな店だったな。
しかし改装後のおかみさんはスーパーオオゼキで買い物してる時も、生き生き颯爽としてカートを押している。
花梨な雰囲気のお嫁さんはホール係だが、ちょっとした一輪挿しやミニサボテンが愛らしい。
そしてここから見る世田谷腺の風景が僕は大好きだ。
それに出前も一品からやっている。
1品からですよ!
松原~下高井戸近辺で、一日中スーパーカブをぶっ飛ばしているのはここの若旦那だ。
ちょっと松阪大輔に似ている。
星一徹のような親父さんとは全く似ていない。
その後、徒歩1分の我が家に帰り、ぐりちゃんにご飯を上げて、しばらくグリちゃんとお昼寝。
3時過ぎに目覚めると慌てて下高井戸の重要有形文化財、「坂本そば店」へと急ぐ。
この店はあまりに書くことが多すぎて、単行本が出せるくらいなので、後日詳しく書きますが、初めて入った方は驚きの連続で、潔癖症の人だったら卒倒するでしょう。
ハエ取りやホイホイがいたるところにあるし、実物もたくさんいます。二層式の洗濯機が2個と車椅子がいつもある。
広く雑然とした店内は100席はあろうか、半分はテーブル席で半分はお座敷です。
座敷は30畳くらいの大広間と、細長い8畳ほどの細長い飛び地、大広間の中には人気の3畳の個室がある。
看板に「店内は広いのでご休憩に利用下さい」と書いてあるとおり、タクシーの運ちゃんがアイマスクをして仮眠を取っていたりする。
店内には4箇所にテレビがあって、
お昼時ともなると、「NHK]「みのもんた」[TBS(なんだっけ?)」「いいとも」が爆音で流れ、店主らしき親父のラジオカセットレコーダーからは「NHK総合」か、一日中「花も嵐も」がエンドレスで、つまり3分×20×12だから720回かかっている。
人気の3畳の個室は3時過ぎはほぼ開いている。
一年ほど前は14型くらいのブラウン管テレビと、鏡台、黒電話、将棋盤、壊れたエアコンだったのだが、今年の春、急にソニーの液晶テレビに変わった。
ものすごくびっくりした。儲かっているのか!
春日部市、築40年の平屋に横付けされてたミニカが急にポルシェになった感じだ。
片方を開けると大広間につながり、
しかし一度禁断のもう片方の障子をあけてしまった。
布団がしいてあっておばあちゃんがぐうぐう寝ていた。
一畳の仮眠部屋だった。
僕はそこでほとんど「カツ煮」を頼む。
カツ煮は日本料理の最高傑作だと思う。
塩コショウして丁寧に揚げた肉を煮込み卵でとじるなんて、
大胆かつ難攻不落。
それに七味をかけていただくとコショーとのバランスに驚く。
よく海の無い県に分布される、ソースカツ丼当たり前派、東京に出てきて始めて食べたよ田舎もん系が、
「カツのサクサク感が薄れてね~」とか、
「煮込むと味のポイントがさあ~」とか言ってる奴は、
歌舞伎揚げとか浅草の硬いだけで胸焼けする天ぷらでも食ってろ!と言いたい。
大体いつから揚げたてが最高になったんだ!
僕はコロッケとかメンチカツは冷めたてがうまいと思う。
揚げたては熱すぎて味が解らないし、味が馴染んでいない。
代官山の肉屋の店頭で初冬に熱々をハフハフしながら、
コロッケを食べるのは付き合いたてのカップルだけにしろ!
でも天ぷらだけは揚げたてが大事だとと思う。
経験上言うがすぐ料理に手を付けないのはB型に多い。
「これ一本吸ってから」とメンソールとか吸ってたりさ。
もう一度言う。出されたらすぐ食え。
もちろん安い駅弁の常温のかき揚げも大好きだが
(崎陽軒のシウマ弁当を応援します)、箱根の旅館の5時に揚げました、だって7時に帰りたいんだもん、という冷たい天ぷらとぬるい茶碗蒸しなんて、大涌谷に投げ込むか、箱根神社のお賽銭箱に入れた方がいい。
又は「箱根湯煙りコンパニオン殺人事件・名物天麩羅に謎の密室殺人・美人仲居刑事が完全トリックを解く」で、
「この抹茶塩に毒が…」と比企理恵が死ぬぐらいで充分だ。
とにかくこのしょっぱい「カツ煮」は最高だ。
これだけで3時間は飲める。
肉でビール、玉ねぎでサワー、そしてサワー、そしてロック、もし最後に締めたかったら半ライスを頼んで、最後の一葉と雨水で「プチカツ丼」にしよう。
しかしこの「坂本そば店」のカツ丼は超フレキシブルだ。
ある日はうずらの玉子が一つだったり、二つだったり、それが無かったり、それがグリーンピースだったり、ある時は5つに切ってあったり、8つだったり、又はそれが縦に半等分つまり16切れだったり全くレシピが決まっていない。
一度凄く時間がかかってから「豚の角煮」が出てきて、黙って食べた。
チンし過ぎて「ほぼ燻製」だった。
一見さんやもう一方の入り口(二つあるんです)から来る客は、レジで食券を買う。その南口が無防備なんでタダ食い防止策なんだろう。
顔を覚えてもらえると、食券が料理と共に運ばれて来て後払いになる。
オーダーするたび「カツ丼の上550」「サワー400」とか。
帰りにそれをレジに持って行くとおばあちゃんがそろばんを弾いてくれる。
ここでメンバーを紹介すると、店主の「花も嵐も」が好きなおじいさん。
会計のおばあさんオンピアノ。ホールのおばさん。ホールのおじさん。
調理担当で最年長のおじいさんの5人だ。
未だに生きていて来日している、ソニー・ロリンズのカルテットより平均年齢は高いと思う。彼らはなんらかの家族関係にあると思う。
店主は気前がいい。
初めて行った時、食欲がまるでなく、「壜ビールを」と頼んだらお通しに枝豆(もちろん無料)が出てきた。続いて「レモンサワー」をと頼んだら柿ピーが出てきた。最後に「焼酎のロック」を頼んだらキムチが出てきた。
その時だけだったから、気まぐれったのか?
それとも顔色を気遣ってくれたのか?
いや、それは絶対にないと思う。
しばらくして晴れて定連となり、後会計になってから気付いた。
3回に一度はつけ忘れをしている。
ホールのおじさんの小説ミスか、おばあさんのピアノのタッチミスだ。
いつも400円~800円は少ない。
それで僕はつい何度かやってしまった。
伝票を1.2枚丸めてポケットに入れたり、お盆の下に隠したり、
それでも一向にバレナイ。
そして、いつもさんざん飲んで2000円以下の明朗会計の優良店となっていた。
しかしある日、店主にビールを頼むと
「アサヒ?キリン?」
「あ、キリンでお願いします。」
すると遠くのレジの方でホール係の例のハゲ親父が、
耳の遠いおばあさんに大声で言っていた。
「あの人は伝票持って行かずにこっちで付けといて。」
ああ、やはりこの日が来たのね。
でもこのハゲはやる事も激しい。
これはシャレではない本気(まじ)だ。
前にレモンサワーを頼んだらちょっと薄かった、というかチェーン店の居酒屋並みだった。二杯目「濃い目でお願いします」と言ったら焼酎7:サワー3だった。
もちろんレモンは変えない。締めに「ロックで下さい」と頼んだら、サワーと同じ量の焼酎が入っていた。それが全て400円。
親切なのか適当なのかさっぱりわからない。
さすがにその日は店を休みました。
4時から「水戸黄門」を見る。やはり東野英二郎は素晴らしい。
石坂浩二ver.は脚本は良く出来ているがやはり無理がある。
浅野光男の辺りは完全に老人を舐めきっている。
やはり初代の葉山さんの脚本は素晴らしい。
朝食が来る。又同じようなメニュー。
胸焼けしていて殆ど残す。
やっぱり運動してない体に海老ふりゃあとお肉は重かったぜ。
そういえば坂本そば店の定食のセンスも凄かったなあ。
一度興味本位でから揚げ定食を頼んだけど、殆ど下味の無い鶏の竜田揚げに、大量のポテトサラダとフライドポテトが付いていた。
でもあの展望レストラン、味は悪くないけど今一つだなあ。
ひと昔前の国民宿舎の食堂って感じだ。
そもそもこの病院は公務員の共済組合がやってるから、しょうがないのかもしれんが、8時閉店は早過ぎるしメニューが少ない。
病院なのに和食や体に優しいものがない。
もったいぶった特別定食1200円ってのがあったが、
「ポークソテーのなんとかソース添え」にいろいろ小皿が付いてるだけだ。
目黒銀座なら780円だ。
昔オヤジが心筋梗塞で倒れて、もう25年も通っているバカ高い慶應病院も、行き始めの古い本館だけの頃は、地下の薄暗い食堂と、銀座木村屋の小さな売店くらいしかなかったけど、鳴り物入りでオープンした新館の最上階には、
パレスホテル直営の展望レストランがあってその名も「オアシス」だった。
なんともまあ単刀直入というべきか。それとも痛烈な皮肉なのか。
神宮の森を一望できるパノラマビューはいいのだけど、取って付けたようにカロリー表示があるだけで、ほぼホテルのラウンジレストランにあるようなメニュー。
サーロインステーキやビーフシチュー、シーフードドリア、しないけどゴルフ場にあるような豪勢なクラブサンドウイッチ、五目焼きそば、デザートもいろいろ、うな重まである。
そして凄いのがたいがいののアルコール類があるのだ!
店内風景はそれはまあ凄いもんだった。
点滴のカートを背負ったおっさんが、昼間からうまそうにビールを飲んでいたり、
きっと明日大手術を控えたおじいちゃんが、最後の晩餐か、この世の名残りのように、いとおしそうにうな重と日本酒をついばんでいたりする。
片や長野県上伊那郡中川村(別に恨みはあまりありません)から出て来た親族連中がテーブルをくっ付けて、昼間から大宴会を繰り広げている。
夜は全く病院と関係ないようなカップルも沢山いて、信濃町から神宮外苑を抜けて絵画館や銀杏並木をお散歩し、表参道まで、又はその逆はいかにもなデートコースだからだろう。
薄い壁を隔てた隣は照明を落とした喫茶&バーコーナーまであり、バーテンダーが寡黙にシェイカーを振っていた。
そして、一番びっくりしたのはレストランの隅に、小さいながらも寿司カウンターがあるのだ!
食堂に寿司カウンターのある病院って、
日本広しといえどもあそこだけだと思う。でも板さんはいつもいる訳じゃなくて、
その寿司屋の営業時間も解らなかったから、座る機会も勇気もなかったけど、
一度白衣を来た先生二人が、板さんを前にお好みで握りをつまんでいた。
いかにもいまオペが終わったような外科医がまぐろやウニを……(イメージ)
「おはようございま~す」
元気ななつきちゃんが検診にくる。
残ってる薬の数を確かめている。
おそるおそる聞く。
「あの~昨日夜勤でした?」
「はい、そうですよ。もうすぐ明けま~す」
不思議そうな顔をしたが、声は嬉しそうだ。
「あのう~僕、昨日大丈夫でした?」
「あ、覚えてないんですね?やっぱり。」
なつきちゃんは血圧を計る時、細い指で僕の腕をぎゅっと閉める。
気持ち良く、すがすがしい。細腕繁盛病棟午前9時。
「デイルームで『チャンス到来~』とかなんとか唄いながら、
コンコンとかみゃあみゃあとか言ってぴょんぴょん飛び跳ねてましたよ。」
ああ・・・やっぱり。でも何故バービーボーイズ?
「でも楽しそうでしたよ。いつの間にか床で寝ちゃってましたから、起こしてあげたら、自分で戻っていきましたよ。」
なつきちゃんは笑いながら出ていった。
こんなキチ○の事よりもう夜勤明けだから、今夜のデートで頭が一杯なんだろう。
結婚するんならいい男を捕まえるんだぞ。
ナースさんの知り合い、数人いるが皆離婚している。
鈴木先生に会うのが怖い。
しかし夜光虫の再来。
今日は土曜日で先生はオフ日だ。
わ~い。
午前中はアホなメールをしたり、PCで音を聞いてアルバムのイメージを考えたりと、ベッドの上でだらだら過ごす。
小皿のフォックスフェイスとローズマリーと、
お薬たちが大人しく僕を見ている。
ぼうっとしていたらもう昼食だ。
鮭のソテークリームソース、サトイモのそぼろ餡かけ、
わかめの酢の物、もやしの味噌汁、硬派米、麦茶。
朝食べて無かったから美味しくいただく。
試しに千夏ちゃんからもらった梅干と麦茶でお茶漬けにしてみた。
うまい。
食品業界の小林製薬、永谷園の「俺流冷やし茶漬け」って商品があるが、
御茶漬けの素とぶっかき氷とウーロン茶(思いっきりサントリーだった)を、
イケメン俳優が音を立てながらかっ込んでいたが、
まだCMが続いてると言うのはあまりクレームが無かったって事だろうか?
僕なら一発でお腹を壊す。
しかしカキ氷ってのも原価の無い食べ物だよなあ。
氷いちごなんて解けたらただの人口いちごジュースだしね。
あれで600円とかとれるのかあ~すごい。
でもそのうちに、綿飴ならぬ綿氷いや綿雪とか出そうだね。
「蔵王の新雪から出来たパウダー綿雪」とか、
「グリーンランドのダイヤモンドダスト綿雪ミント味」とか、
「オーロラが見える南極圏の綿雪イチゴー」とか。
午後も音楽聴いてたら3時半頃ううちゃんから、これから行きますとのメールが。
ううちゃんは去年CDをプロデュースした、ギター弾き語りのアーティストだ。
ううちゃんの顔もおぼろげだ・・・
ん・・・おぼろ気?おぼろ豆腐?おぼろ月?千夏ちゃんが子ぎつねなら、ううちゃんはお月様だ。
「ゆっくりおやすみよお~」と言ってくれる、絵本のような優しい色調の満月のイメージが。
急に来るってるのは、急に狂ってるって事ではなく、やはり馬肉食ってるんじゃなくて、やはりパニクってるんだろうなあ?
馬肉には相当うるさい僕も躁だがいや欝だが、ううちゃんも相当なビビリンボウ(ブラジル音楽王国「王様ジュンカ・ガミーは陸軍大臣ジンナ・カヤマーのクーデターで亡命中」の楽器、日本でまともに弾ける人はいない)だからなあ。
初めての発作の時は心臓麻痺かと思って床に倒れてたら、店の内装工事のお兄さんが「辛そうだね」ってガリガリ君をくれた。
夏バテだと思ったのでしょう。
あの、世の中が急に白黒になりネガポジ反転になるような恐怖感は、なった事ある人しかわからないからみんななって下さい。
動悸・頻脈・呼吸困難と、死ぬんじゃないかぐらい極度の恐怖感。
次に起きたのはあるライブの日の夕方、ある男性ピアニストに紹介した素晴らしい歌い手の女の子が、優しさと気の弱さを暴言でカモフラージュしている、彼にリハで徹底的にやり込められていて、
「これ、音当たってねえ?これコードおかしくない?これどう展開すんのよ!」
って初登場で失礼なくわえ煙草で、でも全ては彼の勘違いだった。
彼女はリハが終わってからもずっと楽屋で緊張しながら、直前まで必死に譜面とにらめっこしイメージトレーニングをしていた。
いざ本番、彼女もガチガチ・僕もガチガチ。
でも曲が始まるとその緊張の空気はは一気に解けていった。
何か、一輪の睡蓮が水からゆっくりと茎を伸ばし蕾を膨らませ、優しく気高い花を広げ、清浄な香りを辺りに放っていくかのようだった。
急にピアニストの顔色が変わり、タッチも変わり、真剣に演奏しはじめる。
その唄声は儚いくらいに優しく、子供を守る母のように力強い。
障害物をするりと避けながら聴く者の体にしんなり入り込み、
琴線に触れるなんてレベルではなく、心臓をわしづかみにされたまま、でもゆっくりと優しくさすってくれる。
う~ん。素晴らしすぎてうまく言葉で言い表せないや。
日本人のカバーを一曲やったが、ライブで見た本物の彼女よりも良かった。
本番が終わった瞬間、ピアニストが大声で叫んだ。
「この子すげ~よ。すげえ!こんな子がいたんだっ!」
遅い。リハで気付け。1時間も遅刻しやがって。
でも彼も時間に遅れて馬肉食ってたんだろうなあ。
そして家に帰ってからも僕の緊張は途切れず、激しい発作がおきたのでした。
それからは頻繁にライブ後、ライブ中、リハ中を問わず、咳き込んだり、嗚咽したり、動けなくなったり。
要するに大好きな人も大嫌いな人も、意識する、感情を揺さぶられるという点では同じだし、マイナスオーラでもプラスオーラでも、その度合いが大きければパワーとして押し寄せてくる波動としては同じだ。
それに店に出演していただいてるのは大体が好きなミュージシャンか、彼らの繋がりで頼まれてしまいいやいや出演オッケーしたお方や、やや有名でメジャー落ちの態度のでかい下手な連中や、その取り巻きのいかにも擦れた感じ悪い業界人や、妙にテンションの高い女子マネージャー。
本当に疲れる。
頼むリーブミーアローン!アローン、ロー・・・
発作の頻度はどんどんエスカレートして行くのでした。
あ、うっかりしていたらもうすぐううちゃんが来る。
間に合えば渡したいと急に思い立ち、デイルームで動物たちと苦手な譜面書き、
カエル君ダルセーニョが多すぎたら解りにくいかい?
なんだダルせーニョも知らないんだ。
海水の温度が高くなって、
君のバリ島の仲間達が死んじゃうって事なんだよ。
鳥君ダカーポも知らないのかい?
内容がない高島暦くらいの大きさの薄い譜面でねえ。
駅前かタワレコでタダで手に入るような程度の音符なんだよ。
あ、もうお月さまがと思ったらううちゃんが後ろにいた。
続く