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金剛蔵菩薩は、歌でもって重ねて説く。
「〈勝ち難い地〉を勝ち得た菩薩たちは知っている
形あるものには実体がないことを 本質がないことを 生れることも滅することもないことを
本来 常に清浄であるのだ これは戯れの言葉などではない
形あるものには本質などない それをつかむこともない 捨てることもない
それぞれの性質とは幻のごとく空しいもの 有無を離れて 分別を超えて在る
このように知る者は いざ 入ろう〈現前する地〉へ
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「〈現前の地〉に至ると――菩薩のまえに、〈百千万億の数限りない仏たち〉が現われます。
菩薩はこれらの仏たちに、うやうやしく礼拝をし、尊敬をささげ、数々の供養を差し上げます。―仏たちの身をいたわり(衣服)、仏たちに活力を与え(食物)、仏の身と心を安らがせ(寝具)、仏たちの(様々な生き物たちに対する)心配事を取り除く手伝い(医薬)をして差し上げるのです。
そのように仏たちに親しく近づき、その教えを聞いて忠実に修行し、すべての仏たちを喜ばせることができるようになれば、“何百千万億カルパ(1カルパは43億2000万年)のすべての善い行いの功徳”がつまった〈如来の教えの宝の蔵〉を特別に知ることができるようになります。菩薩は、ますます輝かしく、清らかになってゆくのです . . . 本文を読む
金剛蔵菩薩は諸々の大菩薩たちに語り始めた。
「仏の子たちよ、善い行いを積み重ねながら仏たちを敬い、供養し続ければ、に守られて深く広い心へと入り、大いに慈悲へとむかい、好んで智慧を求めるようになるでしょう。このを第一とすべきです。そうすれば智慧も授かり、すなおな心や深い心もどんどん仏へと近づいてゆくでしょう。そうして智慧が広大になり、真の仏の子となって、最後にはをきわめることができるでしょう。このような法にとどまることを、「歓喜の地に住む」と名付けるのです . . . 本文を読む
集まっていた菩薩たちのなかに、「解脱月(けがれなき月)」という名の菩薩がいた。彼は菩薩たちの心のうちを察して、金剛蔵菩薩にたずねた。
「清らかな想いと智慧の君よ。あなたはどういうわけで、菩薩の〈十の智慧の境地〉の名称だけを述べて、説明することなく黙っているのですか?ここにいる大菩薩たちは、“どうして名称だけを述べて説明してくれないんだろう?”と、じれったく思っていますよ。みんな、解説を聞きたがっています。だからどうか、菩薩の〈十の智慧の境地〉の奥深い内容についても、説明してくださいな . . . 本文を読む