介護福祉は現場から 2007.02.22-2011.01.25

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『小国主義』(田中彰)を読む

2007-11-22 09:34:17 | 地球→ドイツブログ
岩波新書に
『小国主義ー日本の近代を読みなおすー』
という本があります。
1999年第1刷。岩波新書609。

この本は前に読んだのですが
こんどの集中講義(第5回。12月3日予定)で北欧をやるので
その準備の一環でとりだしたわけです。

著者の田中彰は、
岩波文庫からでている
『特命全権大使米欧回覧実記』(全5冊。1977~1982)の
校訂者として知られる。

1928年生まれ。
1945年8月15日、敗戦の日には
陸軍士官学校最後の士官候補生だった。

『米欧回覧実記』は、
明治4年、岩倉具視を特命全権大使とする46名が
1871年12月23日から1873年9月13日まで
アメリカ、イギリス、フランスからヨーロッパを回って
きた一行の公式記録だ。

全100巻のうち、アメリカに20巻、イギリスに20巻、フランスに8巻を
あてている。
ベルギー、オランダ、スイスに各3巻、デンマークに1巻、スウェーデンに2巻
をあてている。「小国」には合計12巻あまりをあてていて、田中によれば
わが国の小国への関心は明治のはじめでも相対的に高かったといえる。(p4)

明治に政治家は、国家の建設に当たって、そのモデルを模索した。
よく知られるようにプロシアのビスマルクに最も近いものをみたという。

田中の『小国主義』は、明治から21世紀(新書が書かれたのは20世紀末)
にかけて、日本は国家像として、覇権的な大国主義と平和的な小国主義の両極を視野にはおさめてきた。実際は、度重なる戦争の歴史で「大国主義」を貫いてきた。

大国主義を当然とする主流に対して、
1 明治の民権運動(植木枝盛、中江兆民)
2 大正デモクラシー(三浦鉄太郎、石橋湛山)
3 新憲法
の流れは、小国主義であったとする。

つまり、現在の憲法は、その基本精神において、小国主義をめざす思想を継承している。
このような田中の考え方は、1945年当時幹部候補生であった青春にその原点がある。

社会福祉を学ぶ人の北欧論は、その優れた社会的なサービスに感嘆するものであったし、その内容はもっと知られて良いと思う。
だが、「北欧は、なぜそこまでいけたのか?」のところの考察がないと
結局、日本で形だけまねをしても無理がある ということになる。

北欧の多くは
中立政策を守り、戦争の惨禍から免れることができた。
道路、下水道やごみの処理などのインフラは戦前に相当進んでいた。
それだからこそ、戦後、一気に社会サービスの展開が可能だった。


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