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長編小説「フォワイエ・ポウ」(第29回掲載)5章「モーゼルワインの試飲初体験は?」

2006-05-16 12:34:50 | 連載長編小説『フォワイエ・ポウ』
<photo:"Norton 850 Commando">:Norton is a British motorcycle marque from Birmingham and founded in 1898. By 1913 they had begun manufacturing motorcycles. This began a long series of production and racing wins.

「ところで太田君、どうして君は?自分から相撲部の落第生?って、自分から云うのかな?」
「はい、入部して半年目で、相撲部を辞めたのです。ですから僕は、だめな男です」
「相撲部を辞めた。それからどうしたの?」
「いえ、辞めてからは他のクラブ活動はしていません」
「それはそれで問題ない。大学は学問の場所だから、クラブ活動しに行く場所じゃない。でも、なぜ辞めたの?」
「あ~、辞めた理由ですね」
「そう、それ、それが問題なんだ」
「単純です。あんなに頭が痛いスポーツだとは、思ってなかったのです。相撲の立会い稽古は、頭からぶつかる。だから、ぶつかっただけで頭が割れそうに痛いんです。想像していたより頭が痛いんですから、練習中に何回も脳震盪(のうしんとう)になったし、毎日頭が痛くて泣いていました・・・」
「今の大田君の感想、相撲の練習の事、初めて聞いたな。そうか、そんなに頭が痛いスポーツだとは知らなかった」
「・・・」
「太田君、大丈夫だ。大学相撲辞めてよかった。もうそんなこと忘れて、今の仕事に集中したら・・・」

本田の知り合いに、大相撲で十両まで昇進した人が、チャンコ料理店を開いていたのを思い出した。

(以上、前回掲載まで、、、)

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長編小説「フォワイエ・ポウ」の既掲載分をご参照になりたい方は、こちらから入れます、、、

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長編連載小説「フォワイエ・ポウ」(5章)-3

                 著:ジョージ・青木


十両まで昇進した人物は、ある時点で相撲世界でそれ以上の出世に見切りをつけ、先行き長い将来を考えた。結果、まずは郷里に帰り、現役時代に蓄えたお金を元手に、チャンコ鍋のお店を開いた。
という話は、本田自身の耳で聞いていた。
努力に努力を重ねて十両まで昇進した。にもかかわらず、それ以上の出世に見切りをつけた理由も、彼から聞いていた。どうしても体重の増えない体質、いくら食べても筋肉しか付かず、体重がある程度増えないことには、幕内に入って相撲をとっても、長続きしない。傍で見ているより、実際にはそうとう激しい格闘技であるプロスポーツが相撲である事。これ以上現役で相撲を続けると、まちがいなく自分自身の寿命を短(ちじ)めるに違いない。と、自分自身で判断し、相撲の世界から身を引く決心をした。と、聞いていた。
ちゃんこ鍋料理屋の常連客は本田の知人である。その知人から、事前に相撲界の話を聞いた後、知人の案内でちゃんこ鍋料理屋の経営者に会った。
今や普通の人になったプロの相撲取り。ちゃんこ鍋を食す目的で店に出向いた時、その人物に初めて会った。プロの相撲取りであった人物、ちゃんこ鍋店の店主の体格を見て驚いた。本田にとっては未知の出来事であり、驚異的な出会いであった。
身長は?もとより高い。元関取だった店主の言によれば、現役時代は187センチであったと言う。初めて本田がその店を訪れたのはサラリーマン時代。サラリーマン駆け出しの本田は、まだ20代の後半、チャンコ鍋屋の店主の年齢は、後になって判明したのであるが、本田より僅か2歳だけ年上である。たしか、約12年前の真冬12月上旬の出来事であった。真冬にもかかわらず、元関取の店主は、店内で浴衣(ユカタ)を羽織っていた記憶がありありと蘇ってきた。日常の関取の稽古場での制服とも云うべき浴衣であるから、胸元や足元は丸見えである。
「ン?なんと、彼は寒さを感じないのか。そう、テレビなどで見受ける若い関取衆は、かしこまった場面以外で見受ける姿はほぼ全員、浴衣をはおっている。それを思えば、店主の浴衣姿は、べつに異常ではないのだ・・・」
もともと好奇心の強い本田は、それとなく、さりとて真剣に、店主の立ち居振る舞い姿かカタチを、観察する。
まず、足の大きさが桁違いに大きい。30センチ位か?あるいはそれ以上?もちろんそれ以上だし、店主の手のひらは、本田と比べれば、倍近くはある。すでに四十台半ばの年齢に達した店主は、今、アマチュアゴルフの世界で有名人になっている。したがって筋肉はそれなりの姿を維持されており、遠目に見ればまだまだ体格は均整の取れたもの、並外れた人間におもえた。
ちゃんこ鍋店の店内に、店主の現役当時の数点の写真や化粧まわしなど、展示されていた。断髪式当日の写真は、ひときわ目立った。大銀杏のチョンマゲを切る儀式の写真を拝見する。やはり、いまよりもつっと若い。バランスの取れた面長、もちろんハンサムで、しかも髷が似合っている。いい顔で、土俵の真ん中の椅子に座り、神妙な面持ちで髷を切られるプロフィルのワンショットが店内にあった。
この写真こそ、この店にふさわしく、絵になるものであった。
写真を見て、
(今まで分からなかった。知らなかった。相撲の世界で十両まで昇進した力士とは、一流の人物なのだ!・・・)
頭の中で想像しながら、走馬灯のように彼の現役時代の日常を、本田は自分勝手に、思いだし想いを馳せた。
そんな空想のなか、つかの間ではあるが、本田自身は自分勝手に自分自身現役の関取になっていた。日々の稽古、本場所中の土俵上での真剣勝負等々空想が転回すればするほどに、いつしか本田の神経中枢にはアドレナリンがほとばしり出た。
そんな本田に、突然、武者震いが起きた。
一旦武者振りが治まれば、また冷静になり、相撲世界の現実を分析し始めた。本田にとって、全て遠い想像の世界にあったものが、現実の世界として捉えることができた。十両力士とは、その競争を勝ち抜いた立派な力士の位である。
まして、幕内まで昇進した力士は、大出世の結果である。
「大関は?」
「とんでもない出世か・・・」
「横綱は?」
「天才である!生まれながらにして恵まれた桁外れの体力と修練の成せる結果か」
・・・「天賦の才能か?」
「毎日のガチンコ勝負、稽古と本番の中、怪我をしない怪我をしても治せる体力気力に、最期は鬼にも勝る気迫だけか」
「運もあるであろう。出世などと考えるのは、なんと恐れ多いことか・・・」
単純に比較して考えてみれば、
日本の歴代の閣僚や大臣の総数よりも、角界で大関になった力士の数のほうが少ないのではないか。となれば、大臣より大関の方が偉いのか?
総理大臣を務めた人物の数と、横綱になった人物の数は、いったいどちらが多いのか。横綱の数のほうが少ないとなれば、総理大臣より横綱のほうがえらいのか?
よくわからないが、おおよその答えは出る。
となれば、

サラリーマン出世競争の世界とは、すでに比較の方法が見当たらない、全く別の次元の出来事だと理解した。

すでに、そんな相撲の世界の話を聞いていた本田である。立会いの厳しい稽古などは、ある程度想像できた。しかし、十両まで昇進した人物から、立会い稽古で頭が痛いという話は、聞かなかった。相撲の立会いとは、頭と頭をぶつけるもの、頭が痛いのは当たり前。プロの世界で経験をしてきた人間にとっては、そんな感覚であろう、とも、想像できた。
結論の結論が出た。
(プロ相撲など、普通の人間がやることではない。桁外れの体格を持った人間が命をすり減らしながら、命がけでやること。自分には縁のない世界である)
と、割り切って考えることにした。

この話し、すでに10数年前に聞いた話。元十両関取は、今も元気でちゃんこ鍋店を続けておられる。完全に固定客の定まった経営は、ますます盛んに推移していると聞く。
太田君に会った本田は、ちゃんこ料理店での思い出が浮かんでいた。

「お待たせしました。さあ、召し上がってください。味は?保証できません!ま、召し上がってみてくださいな。申し上げておきますが、あくまでも試食会ですよ。」
開店前に、買ったばかりの道具、新しい包丁とまた板を駆使して仕込んでおいた「試作品」は、完成した。
「エ、エ、もうできたのですか。早いですね」
本田は、2人の相手を一旦取りやめ、調理に取り掛かってから出来上がりまで、たしかに早かった。2人を待たせた時間は、せいぜい5~6分程であった。前もっての段取りと、下ごしらえが、完全にできていたせいである。
「うわ~、おいしそう。いただきま~す」
「この料理は特に、温かいうちに召し上がってください」
注文も受けていないのに、前もって冷やしておいた白ワインを一本開け、すでに用意しておいたグラスに注(そそい)いだ。
「ここは女性にお願いしよう」
本田は、五反田恵子に向かって、
「どうそ、このワインのテスト、おねがいします」
「ア~、おいしい。わずかにほのかに、甘いかな~」
「分かりますか?ドイツワインです。モーゼルワインで、この店ではドイツワインを専門に出そうか。と、思っています」
五反田によりテストされた同じワインを、今度は大田のグラスに満たした。
大田も飲んだ。
「おいしいです! よく知らないんですが、こんなおいしいワインを紹介して頂き、ありがとうございます」

未だ、ワインの味のよく分からない大田は、ワインを試飲するという新たなに体験に接した機会とその雰囲気を、素朴に喜んだ。

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<添付画像解説>:我輩の大好きな英国製バイク。これ、歴代英国の誇り<ノートン850コマンド>。〔NORTON850Commando〕添付画像の解説文章は現在草稿中なり。
念のため?申し上げておきますが、これ、ウイルス撃退用のノートン社製のバイクではないのよ!
かくして添付画像の解説文章<不肖・エセ男爵ブログをご愛読頂いている愛読者のお一人「漢(オトコ)の勲章」とこkennbou-7さん>に捧ぐ!は、現在草稿中。
たぶん明朝まで?お時間下さい、、、。



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20 Comments

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取りあえず写真に反応! (tono)
2006-05-16 13:43:24
今度は、ノートンですか。

NORTON Commando 850──NORTON MKⅢを代表するオートバイがCommando。伝統のフェザーフレームにダンストールのアップマフラー、ルーカスのヘッドライト、スミスのメーターと、イギリスが誇る世界No.1のパーツが光り輝くマシンです。



また、後ほど来ます。



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tonoさん・・ (エセ男爵)
2006-05-16 14:19:06
たいへん貴重にてありがたきコメント、ありがとうございます。

いや、

昨夜の飲み会の「あおり」をくらって、いささか睡魔に襲われつつ更新した「手抜き行為」(格調高きノートン画像の解説)、こうして今、殿下からの「解説」を頂き、誠に感謝しております。

「・・・!」

おかげさまで、

と・り・あ・え・ず、、、、

いま少し、昼寝を貪ります・・・

では、また後ほど!

ありがとうございます。

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つい、長くなりました。 (tono)
2006-05-16 16:00:26
相撲の世界、私も興味津々で聞き耳立てた経験があります。

20年以上前、友人夫妻に誘われて、夫婦して食事に行きました。

そこに現れた、もう1人の客がなんと、

当時現役バリバリの「佐田の海」関

確かに、でかい。しかし、若い。

土俵意外では、フツーの若者だ。

嫁さんの写真見せたがる。

おぉぉぉぉ、何という美人で可愛い嫁さんだ。

一緒にサウナにも入りまして、おなかの辺りツンツンさせてもらいましたが、

ぶよぶよに見える辺り、腹筋でカチカチ(驚)

本田さんの回想、一緒に巡らせて頂きました。



>未だ、ワインの味のよく分からない大田は、ワインを試飲するという新たなに体験に接した機会とその雰囲気を、素朴に喜んだ。



何か、似たような瞬間を多々通り過ぎてきた自分が居ます。即ち、年輪か?



モーゼルワイン、、、飲みたくなった。

しかし、今日は急遽、親しい顧客と飲み会。

魚屋故、ワインは確か置いてなかった(残念)。

でも、

蛸足の刺身(動いてる)と蛸シャブは珍味です。



PS:関係ないですが、タカジンの歌のCD借りました。歌手だったんですね。知りませんでした。



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相撲の世界 (あっこ*)
2006-05-16 19:54:40
相撲の世界ってこんなに厳しいものなんだと初めて実感致しました。

ちなみに舞の海関が好きでした^^



・・・とっても、現実的な話なんですけど、お詳しいですね~まるで経験があるかのような文章です。。。そうなんですか!?



出来上がったお料理が見てみたい!!きっとおしゃれ~な盛り付けなんでしょうね
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大相撲 (TS@捻くれ者)
2006-05-16 20:46:54
実際に食えるのは十両以上の関取のみと言われます。

裕福な日本の国技としては厳しいですね。

以前は中学生を部屋がスカウトに行き家も貧乏なので体が大きいという理由だけで相撲界に入るなんて事もごく普通でしたね。

かつての大横綱北の海(元北の海親方)は子供のころから大食いで食費がかかり相撲界に入る以外に方法はなかったと聞いた事があります。

しかし現在は体が大きいだけで相撲界に入る青年はいませんね。

相撲に関してはBlogを書き始めた頃

【大相撲の行方】

http://appeal66opinion.dokyun.jp/archive/l-70959.html

という記事を書いた事があります。

しかし先日述べた問題等当時から更に変り深刻な問題も出てきており再度記事にさせていただきます。
返信する
実は (刀舟)
2006-05-17 00:16:21
私、相撲は全くといっていいほど知りません。

ですから、相撲についてのコメントは出来ません。



>その雰囲気を、素朴に喜んだ。

私の勝手な解釈ですが、

酒を飲む時もっとも必要なものは、

“雰囲気”ではないかと…

良い雰囲気の中で、良いワインを飲む。

最高だと思います。

太田君になりたいですね。
返信する
これ…ノートン?? (kenbou-7)
2006-05-17 01:53:07
なんか…みた事あるなぁ…なんて思いながらみてました…。。。



しかし相撲の世界ってホント厳しいですね…。…ってオレあっこどんと一緒のコメントかよっ!?



…ちゃんこ食いてぇ~!!!



ポチ。
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Unknown (あすとろ)
2006-05-17 05:30:16
 わたしのふるさとにどういうわけか北海道出身の名横綱の姉が切り盛りするちゃんこ屋があります。

 現役時代横綱や写真額などの逸品をながめながら、ちゃんこを食べたことがあります。

 なかなかいい味なんで、相撲の世界のきびしさは感じないで食してきました。

(・・||||rパンパンッ
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相撲の記事 (TS@捻くれ者)
2006-05-17 16:55:34
場所明けに記事書きます。

三社の疲れで月曜になるか火曜になるかは分かりませんが^^;

返信する
tonoさん・・ (エセ男爵)
2006-05-17 17:22:17
コメントありがとうございます。

大相撲の世界。

私は全く興味なかったのですが、このチャンコ料理屋の大将のは実話でして、本当に2枚目の「元・十両力士」聞いた話の、ほんの一部です。

チャンコヤの大将とは今でも付き合いがあり、番組表、もとい「番付表」は(貰おうと思えば)毎回もとい、毎場所入手可能です。

ちなみに現役時代は時津風部屋。とにかく大将の手足の大きさ、体躯骨格の並外れた大きさ太さには驚きましたが今は見慣れていますから、でも実際彼の体格、一目どころか何十目も?おきます。

彼のゴルフの腕前は、当然プロなみです。やはり、桁違いに飛びますよ。彼の行きつけの練習場で時々遇った事ありますが、さり気なく(私に)レッスンをつけてくれます。彼は有名人ですから、教えてもらっていると、やたら目立つ。こちとら(サラリーマン時代ですが)真っ昼間から仕事サボって練習場に行っているわけで、知っているお客様にも遇ったり、挨拶したり、狭い街ですからいろいろ面倒です。

ワインのくだり、

実は若かりし頃、私は毎晩異なる先輩から誘われ、その都度お誘いを承諾しほとんど毎晩のように夜の街に繰り出していました。

当時の会社の大先輩の一人に、江田島の旧海兵隊一番最後の海軍兵学校出身(在学中?)で、下士官(海軍将校)として現場に配備される前に終戦を迎え、その後大阪外国語大学中国語を専攻。毎日、出社は15分~30分遅刻にて平然と仕事をなさる。最終的に、本社の中国室ができたとき本社勤務に抜擢された「我が郷里出身の傑物」がいました。

私はビールが好きだ。とその先輩の前で申し上げたと所、「ならばどのような場面でも、君はビールだけ飲んでいたら宜しい。ビールの値段はどの飲屋でもほぼ同じ。安心して、どういう場面でも何軒梯子酒を誘われても、平然とビールだけ飲んでいれば宜しい」などと、酒の飲み方を教わった。そんなこんな過去のアフターシックスの記憶を呼び起こしながら、書き続りたく思います。



PS返信!

何ですって?ヤシキたかじんはれっきとした大阪の歌手ですよ!味のある、良い歌い方をします。しかし、このくだり、笑い(あざけりの笑いではなく、いわゆるエミですよ!)がこみ上げ、、この一行に目を遣った後、突然一人で(たまらなく楽しくなり)パソコン画面の前で「吹き出し」てしまいました。

三莫迦隣国の事、歴史の事、国際政治を含む我国政治のこと、巷の事、マシーンの事、何もかもご存知の殿下。少しは「ご存じないこと」あってもよい、世の中ちょうどそれでバランスが取れるというモンです。

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