Guiding Star

翻訳屋さんのお気楽ブログ。好きなゲーム他、北米から気になったことをまったり更新中です。

もうすぐですね

2008-01-27 | Weblog
先日マスターさまの日記が更新されていたのですが、やっぱりマスターさまは優しいですね~
再確認できてとってもごきげんなみやびです。

さて、みなさんにご心配おかけしていましたが、やっとなんとか咳が止まりはじめてきたようです。完治にはあと少しかな。来週から氷点下だった気温がまた50Fまであがるそうなので、気温の変化でぶり返さないように気をつけます。
みなさんも体には注意してくださいね。

タイトルの「もうすぐ」っていうのはもちろん、ゲームの発売日のことですね。
今月31日はビッグなタイトルが目白押しなのでとっても待ち遠しいです。
とりあえず、みやびが購入予定なのは以下の4本。
「魔界戦記デスガイア3」
「テイルズオブデスティニー・ディレクターズカット」
「ユア・メモリーズオフ」
「Devil May Cry 4」

このうちDMCは北米バージョンを予約しているので、こちらは2月5日発売なんですね。なんだか通常版とコレクターズ版があるらしく、コレクターズ版はアニメがついてくるということなので、どうしようか迷い中です。
予約した時はなかったので、どっちが入手できるのか…。入手できるならDVD付のほうがいいのかな~?

「テイルズ」のHPではマスターさまのメッセージがアップされていますね
ちょっとお声が風邪気味のように聞こえたのですが、大丈夫でしょうか。気のせいだと良いのですが、いつもがんばりすぎて無理されることが多いようなので心配です。お体ご自愛くださいませ。

マスターさまといえば、「メモオフ」のイベントも来月開催されるんですよね。
うう~~。行きたいよぅ。

冷え込んでます

2008-01-20 | Weblog
やっと抗生物質から開放されました~♪
と言っても、まだ咳が止まりませんが

職場でも流行っているのか、お休みの人もちらほら目立ちますね。
今日もとっても冷えて寒い一日でした。

ゲームはまだ「Fate/Stay Night」をやってます。
セイバールートと、凛&アーチャールート(True End)が終わったので、今桜ルートをやっているところ。31日にいろいろ購入予定なので、それまでには全ルート攻略したいところですね。終わったら、感想なぞアップしたいと思いますのでお楽しみに

さてさて、毎週連載していた小説ですが、別サイトで連載をはじめたので、これからはそちら一本にしようかと思っています。
こちらで連載していたのも、そろそろ新キャラ登場というところに来たので一本化するならもうここしかない、と思ったのがその理由です。現在は5章までアップしておりますが、こちらも週1のペースでどんどん続きをアップしているのですぐに今までここで連載していた章に追いつけると思います。
というわけで、これからは別小説サイトGuiding Star2のほうで引き続き楽しんでいただければと思います。

別サイトでは感想や評価などのアンケートもありますので、お時間がありましたらぜひ感想をいただけるとうれしいです。

もちろん、ゲームなんかの話は引き続きここでやりたいと思っていますので、ここにも遊びに来てくださいませ。

みやび

風邪引きました

2008-01-13 | Weblog
今日はいい天気。

なのですが、風邪をひいてしまいました
水曜日から咳がひどくて市販の薬でがんばっていたのですが、さすがにつらかったので今朝病院に行ってきました。

診察の結果、ちょっくら気管支炎になりかけていたようなので、また抗生物質のお世話に…。
去年、せっかく流感の予防接種を受けたのに、意味ないですね。これじゃ

というわけで、今日はおとなしく(ゲームもせずに)寝てました。

みんなも風邪には気をつけよ~。

GS2:17章-魔道士見参!①

2008-01-13 | 書き物
ある晴れた日曜の朝。今日は国が制定している休日で、安東道場も御多分に漏れず一切の稽古を休みにしていた。門下生たちのいない道場にはいつものような活気はなく、代わりに凛とした冷たい朝の空気だけが場内に張り詰めている。朝露が東の空に上った陽の光を受けて、門扉に絡まるように伸びた朝顔の上できらりと輝いた。

誰もいないはずの道場に三人の人影が見えた。一人はその背丈ほどもある大剣を持った小柄な女性で、すらりと背の高い青年が長剣を手に対峙している。もう一人はその目が開かれているのかどうかさえわからないほど瞼が低く垂れ下がった老人で、若い二人の試合を身じろぎもせずに伺っていた。静寂に包まれた道場に、硬い金属がぶつかり合う音と、素足がピカピカに磨き上げられた床を擦るキュッキュッという音だけが響いている。

武器を手に対峙する二人は、どちらも驚くほど優れた剣術の持ち主であるらしく、気合を入れる声が時折聞こえる他はその激しい動きにも拘わらず乱れた息さえ聞こえない。外では鳥のさえずりが聞こえており、開け放たれた扉から差し込む眩しい陽の光が青年の髪から飛び散る汗をきらきらと宝石のように輝かせた。

「ふむ。これは…」

「ちわーっす…お?」

若い二人の動きをじっと見ていた老人が低い唸り声をあげた時、一組の男女が場内に入ってきた。いつにも増して元気な声をあげた敬介が場内の様子を見て目を丸くする。一歩遅れてきた勇希も同様だった。

「お前たちか…。よし、そこまで!」

老人はちらと二人を見ると仕合をしていた二人に声をかけた。

「うわ、疲れたー。あれ?二人ともこんな早くからどうした?」

終了の合図と同時にへなへなとその場に座り込んだつくもが祖父の隣で唖然としている二人を見て驚いたように声をかける。気を張り詰めていたさっきとはうって変わって今は華奢な肩を激しく上下させていた。

「え?いや、今日は道場の稽古が休みだって聞いてたからさ、ちょっと使わせてもらおうかと思っていたんだが…」

二年前の事件以来、勇希は敬介に頼んで簡単な護身術の稽古をつけてもらっていたのだが、数ヶ月前に満が命を落としてからは、更にその稽古を攻撃のほうにまで広げているという。普段は門下生やつくもの稽古でほとんど空くことのない道場を、この日敬介は勇希の稽古に特別利用させてもらえるよう、灑蔵に話をつけていたのだ。

「そういえば、そうだっけ。でもこんなに早くから来るとは聞いてなかったゾ」

敬介の説明につくもは額に流れる汗をタオルで拭いながら答えた。

「予定より早く来ちゃったから。邪魔するつもりじゃなかったの、ごめんね」

勇希が素直に謝ると、つくもは邪魔なんかじゃないよと笑って答えた。近頃のつくもは本当に勇希のことを気にかけているらしく、以前ほどつっかかることもなくなっている。それどころか最近は特に仲が良く、今も二人で敬介にはなんのことやらさっぱりわからない話題を楽しそうに話しはじめた。

しばらくそんな二人を微笑ましく思って見ていると、向こうから二本のペットボトルを手にこちらへ歩いてきた光に目が止まった。どうやら中身は水かスポーツ飲料の類らしく、つくもは礼を言うのもそこそこに、すごい勢いで中の物を喉に流し込んでいる。

「そんなに急いで飲むと…」

光が注意し終えないうちに案の定つくもは激しく咳き込んだ。隣にいた勇希が慌てて背中を擦ってやっている。そんなのどかな光景を苦笑しながら敬介は道場を訪れた時から頭の隅にこびりついている疑問を灑蔵に投げかけることにした。

「それより師範、光の稽古は師範がつけたんですか?」

つくもの咳が治まったのを確認した光が二人のほうに歩いてくる。ペットボトルを持っていないほうの手には古ぼけた長剣が握られていた。
敬介の質問に灑蔵はゆっくりと頭(かぶり)を振った。

「稽古はつくもがつけてくれたんだ」

敬介の疑問を聞いた光が老人の代わりにそう答えた。

「ええ?つくもに?おまえ、俺が稽古をつけてやろうかって言った時は断ったくせになんでつくもなんかに師事してるん…ぐぇ」

「あたしなんか、とはどういう意味よ」

不満気に口を尖らした敬介にいつの間にか傍に来ていたつくもが横から蹴りを入れた。

「おまえなあ…」

「光にはちゃ~んとあたしのほうがいい師範だってわかってたのよ。だ・か・ら、あんたには師事しなかったってわけ」

「何を~!」

「何よ。文句あるっていうの?あんただって少しは今のあたしたちの稽古を見てたんならわかるでしょ」

「ああ、いや、確かに…」

「凄かったよ。びっくりしちゃった」

つくもの自信たっぷりの言葉に言い淀んだ敬介の言葉を勇希が続けた。時間にしてほんの数分見ていただけに過ぎないが、確かに二人の稽古は敬介を圧倒していた。抜き身の剣を使ってつくも相手にあれほどの仕合が出来るほど上達するには並大抵ではない。それに光の場合は武術に関して全くの素人で、しかも稽古を始めたのはちょうど勇希が攻撃の指南を敬介に頼み込んだ頃だから、まだたったの数ヶ月しか経っていないことになる。それなのに今の光は玄人レベル、それも最強に近いレベルにまで成長している。元々筋が良かったのだとしてもその上達は異常に近い。もしかすると老師自ら、何か特別な方法で特訓したのかと思っていたのだが、どうやらそういう理由でもないようだった。

「お主も稽古をつけておると聞いたが?」

そこへ灑蔵が口を挟んだ。

「あ、はい。勇希の稽古を少し」

灑蔵の質問に気を取り直した敬介が丁寧な言葉で答えた。

「最近は護身術だけでなく、攻撃も指南しているそうではないか」

つくもの祖父が普段敬介たちの前に現れることは少ない。普段はこの稽古場で弟子達の稽古を見ているか、母屋で古い文献を読んでいることが多く、滅多に外出さえしないと聞く。それなのに、どこから聞いてくるのか、孫とその友人の身に起こっていることはつくも達本人でさえ知らないようなことまでこの老人はほぼ間違いなく知っていた。

「へ~。それは知らなかった。何を使ってんの?」

「これです」

面白そうに目を輝かせたつくもに勇希が持っていた手製の袋から二対の棒を取り出した。特殊な金属でできているのだろうその武器は驚くほど軽く、銀黒色に光る長い棒にゴムで滑り止めを施された突起のようなものがついている。

「なにこれ?トンファー??」

つくもが素っ頓狂な声を出すと勇希が頬を少しだけ紅く染めてこくんとうなずいた。

「俺は元々素手で戦うほうだから、武器はあんまり詳しくない。俺が知っていて、勇希が扱えるものといって思いついたのはこいつぐらいだったからな」

敬介が照れ隠しに鼻の頭を掻きながら言った。

「なるほどね。で、稽古のほうは順調なわけ?」

「ばっちりだ」

半信半疑なつくもに敬介は自信満々に胸を反らして答える。

「光だって確かに腕は悪くないが、勇希に比べればまだまだだな。俺に師事していれば、今の数十倍は強くなっていたんだろうが…。残念だよ、まったく…」

白い目を向けるつくもに敬介は悔し紛れにとんでもないことを言う。

「ふ~ん、あたしよりあんたの指南のほうがいいって言うんだ」

「まあな。もちろん、お前の指南もなかなかのものだということは認めるけどな」

「ちょっ、ちょっと敬介!」

調子に乗ってしゃべる敬介に勇希が横からストップをかけようとするが、もう遅い。つくもの翠の瞳が突然キラーンと閃いた。

「そんなに言うなら、勝負しましょ」

「へ?」

「どちらが腕のいい師範かを決めるの。そうね、方法は…お互いの弟子を手合わせさせて決めるってのはどうかしら」

「えぇ?」

「はぁ?」

突然痴話喧嘩の矛先が自分たちの方に向けられて、二人のやり取りを苦笑しながら聞いていた勇希と光が同時に間の抜けた声をあげた。だが、つくもは二人のことなどお構いなしで挑戦的な笑みを浮かべて敬介を見つめている。元々負けず嫌いの二人だ。こんな挑戦を突きつけられた敬介が黙って引き下がっているはずはない。そう思いながら二人を心配の眼差しで見つめていると、案の定敬介は二つ返事でOKした。

「つくも、ちょっと待て。そんなこと勝手に決めるなよ」

「そうよ、敬介だってさっきの二人の稽古を見たでしょ。私に手合わせなんて、絶対に無理だよ」

当の二人はもちろん猛反対を繰り返すが、つくもも敬介も聞き入れる様子は全くない。それどころか、今まで黙って事の成り行きを見ていた灑蔵までもが面白そうだから手合わせをしろと言い出す始末で、二人には仕合を行うしか術は残されていなかった。

あけましておめでとうございます。

2008-01-06 | Weblog
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

というわけで始まりました。2008年。
年始から吹雪いてくれちゃったりなんかして、Wind Chillは-5F(華氏)だったりで出勤初日はお休みしてしまいました。

なんかね~、22F以下になるとRock Saltなんかも効かなくなっちゃうらしいんですよ。(摂氏に計算しなおすとあまりの寒さに目ぇ回しちゃいそうなので換算してません。あしからず)

それがも~、10Fまで下がっちゃったりしたので想像もつかないほどの寒さだったりしたのであります。

てまあ、極寒の日が3日まで続いたんですがね、来週からいきなり60+Fとかなっちゃうそうで、なにこれ、もう春?ってな陽気で早くも振り回されそうな勢いです。

それでこのお休みは何をしていたか、と言いますと、相変わらずゲームばっかやってました。やっぱね、寒い日は家でごろごろしながらゲームでしょう。

シャイニングシリーズとか、アルトネリコ2とか三国無双5とか、いろいろあったんですが、この連休積みゲーになりつつあった「Fate/Stay Night」をやってみました。

まだ1周目のエンディングしか見ていないのですが、これ、かなりツボにはまっちゃってます。
「ひぐらし」よりこっちを先に遊ぶべきでしたね。なんとなく文章表現が「デモンベイン」のそれに似ているのは同じ角川書店だからなのでしょうか。ルビついてないのがきついのだけど、文字の大きさも読みやすいし、ある程度常識的な選択肢を選べばエンディングにたどりつけるのでチャートがなくても問題なく進めました。
バッドエンドになってもその後の「タイガー道場」が面白いのでわざと間違ったものを選ぶのもいいかもしれません。

個人的にはアーチャーが好きなので2週目の展開に期待です。

GS2:16章-風の知将⑨

2008-01-06 | 書き物
つくもが敬介と勇希の案内で、リオンに助けられた勇希を見つけたという場所に来た時は既に陽が落ちて辺りは暗く、外灯の白い光が辺りを不自然に照らしていた。秋にしては穏やかな暖かい夜で、海は凪いでいる。生暖かい風がつくもの首筋にまとわりつくように通り過ぎていった。

「ここまで来たのはいいけれど、光たちは一体どこにいるんだ?」

つくもの電話で急ぎ駆けつけた敬介は、途方にくれて辺りを見回した。辺りには誰もおらず、先にここに向かったはずの満の姿も見当たらない。勇希を見つけたのはここで間違いはないが、実際勇希にも、自分がどこからこの場所に出てこられたのか、見当もつかなかった。

「わからないわ。とにかく、満がここだって言ったのよ。二人の気を探してみるしかないわ」

冷静に答えたつくもだが、先ほどから得体の知れない不安と悪寒に襲われて、何か否定しようのない悪い知らせを予感していた。

「真津子がいない今、私たちでなんとか二人の気を探りましょう」

そう勇希が提案した時、どこからともなく光の悲鳴が聞こえてきた。

「!!」

三人は思わず顔を見合わせる。

「今の、聞こえたか?」

敬介の問いに二人は同時にうなずいた。

「あれは、光だった…」

つくもが堅い声でそう答えた時、三人はある方角からひどい悪寒を感じて同時に肩を震わせる。

「あそこだ、行くぞ!」

敬介の一声で、三人は暗闇に向かって一目散に走り出した。


***


「ま、つこ…」

満の日焼けした太い両腕が華奢な真津子の身体を抱きしめていた。冷たい洞窟の中で、服の上から伝わる真津子の体温が心地よい。満はそっと愛しい女性(ひと)の髪を撫でると、その耳に優しく囁きかける。

「真津子、帰ってこい。みんなのもとに…。俺のもとに…。お前が苦しむことはない、何も、ないんだ」

満は瞳の端に、リオンを拘束していた光の粒がどんどん拡散していくのを感じていないはずはなかったが、少しも気に留める様子はない。今、満の灰色の瞳には、愛しい女性のことしか入らなかった。

「真津子、帰っておいで。リオンはもう、いないんだ。お前を好きなのは、俺だよ」

満の瞳から零れ落ちた涙が真津子の白い頬へと伝わる。その衝撃に、真津子は小さく肩を震わせたかと思うと、その瞳に意思の光がみるみるうちに蘇っていった。

「み、満?あれ、私一体…」

いつもの真津子の声が聞こえてくる。堅く抱いていた真津子の身体から少し離れると、愛しい紫の瞳にいつもの輝きを見て、満はそっと微笑んだ。

「真津子…よかった。無事、戻って来れたん…だ…な」

そう言うと、満の大きな身体が突然ぐらりと揺れた。

「ちょっ、満、どうし…!!」

慌てて満の身体を支えようとした真津子は、自分の手に何かねっとりとした、生暖かいものを感じて目を見張る。真津子の白い両手は今、薄暗い松明の明かりの下でもはっきりとわかるほどの真っ赤な血で染まっていた。

「な…に、これ?」

脳が理屈の通った答えを弾き出す前に、真津子の瞳がくず折れた満の胸の上で止まった。そこにはあるべきでないものが深々と刺さっており、外に突き出た柄の部分が、松明の明かりに冷たく光っているのが見えた。

「光!満!」

突然、聞き覚えのある男の声が真津子の耳を劈いた。見上げると、青い顔をした光と、その後ろに汗だくになった敬介とつくも、そして口元に両手を当てて潤んだ瞳を見開いた勇希の姿が見えた。

「みんな、わ、私…。み、満が…」

真津子が何か言おうとしたその時、側で青い光の粒が弾け飛んだ。振り向くと、リオンが哀しそうな瞳をこちらに向けて立っている。

「おっさん!リオン、てめえ、お前がおっさんを殺ったのか?!」

敬介がいきり立ってリオンの前へ出ようとするのを光が遮った。

「光、邪魔するんじゃねぇ。この後に及んでまだやつを傷つけるな、とか言うつもりじゃないだろうな?」

興奮した敬介が光を睨みつける。だが、光は黙って首を振るとあごをしゃくってみせた。その先には、リオンを冷ややかに見つめる真津子がいた。

「私が、満を…」

真津子はゆっくりと、誰に言うでもなく言葉を紡いでいく。足元の砂がゆっくりと巻き上げられ、やがて真津子を中心に大きな渦を巻き始めた。

「リオン、私はあなたを、そして私自身を許さない」

真津子の声に感情はなかった。ただ淡々と言葉を紡ぎながら、一歩、また一歩リオンのほうへと歩をゆっくりと進めていく。真津子の周りには紫色の気が靄のようにたちこめ、その周りをはげしい渦が轟音を轟かせながら渦巻いている。

「マホーニー、君は…」

真津子をリオンが困惑した顔で見つめる。急いで手に持つビュートを奏でようとするが、その前に真津子の念動力がそれをリオンの手から奪い取って堅い洞窟の壁へと打ちつけると、ビュートはこなごなになってリオンの足元へと落ちていった。見る影もなくなった楽器の破片を見たリオンはその薄い唇を震わせた。

「君はホントにあいつのことを…。君に、ボクはもう必要なかったんだね…」

寂しそうにそう呟くと、リオンは暗闇の中に姿を消してしまった。

「あ、待て!」

急いで後を追おうと敬介が叫ぶが、もうその姿はどこにも見当たらない。暗闇に敬介は舌打ちすると、急いで満の様態を見ている光の側に駆け寄った。

「どうなんだ?」

「かなり深くまで刺さっているし、出血もひどい…。このままでは…」

光は唇を噛んだ。その横では勇希が今にも泣き出しそうなのを一生懸命堪えている。少し離れたところで気を抑えた真津子が呆然と魂が抜けた顔をして立ち尽くしていた。

「くそっ!なんで俺たちみんな攻撃魔法しか使えないんだ!こんな時に回復魔法が使えれば…」

つくもが悪態をついた時、光がはっとしたように顔をあげた。

「僕が…」

「え?」

「僕が、試してみる」

光はそう言うと、両掌を血の気の失せた満の前にかざして目を閉じる。暫くすると高まった気が光の周囲を青く包みこんだ。

「光…?お前、回復魔法が使えるのか?」

驚いて尋ねる敬介の目の前で、光の背に薄青色に輝く小さな翼が現れる。光の身体から発せられた気が満を包むと、辺りがまるで陽の光に照らされた草原のように暖かな心地よい場所に変わっていった。

どのくらい経ったのだろうか。暫くして、光がその目を開ける。だが、その瞳には苦悩の色が湛えられていた。

「どう、なの?」

近寄ってきたつくもが恐る恐る声をかけると、光は大きくため息をついた。

「ダメだ…。どうしてかわからない、ただ、何かが回復を阻んでいるようで…」

「無駄よ」

光の言葉を半ば遮るように真津子が冷たい感情のない声で宣言する。

「無駄って、どういうことだよ?」

「それはオリハルコンの短刀…」

「ええ?嘘でしょ?なんでそんなものがここにあるわけ?」

つくもが驚いた声で聞き返す。オリハルコンとは希少な金属で材質そのものに魔力があり、それを元に造られた刃物は切ったものを変形、変質させてしまう力があると言われている。オリハルコンは様々な物への加工が可能であったが、一番重宝されたのはやはり武器だった。術者の能力とその加工法によってはより強大な魔力を備えることができたと言われており、そのあまりの破壊力にあらゆる国々で所有および使用禁止令が発布され、歴史の表舞台では既に存在しないことになっている。だが実際は闇市(ブラックマーケット)において法外な金額で取引されていたことを仄めかす史実も残っており、一部の学者やオカルト好きな人々は未だに遺跡の発見を夢見ている者も多いという。オリハルコンは主に水属性を持つ金属であるが、ある一定の非常に厳しい条件下においてのみ生成されるため、人口で造ることはおろか、天然のオリハルコンの原石が現在見つかることはあり得ないとさえ言われていた。

そんな短刀がどうしてここにあるのか、それがつくもにはわからなかった。

「それだけじゃない…。その短刀の柄を見て」

つくもの疑問が答えられる前に、今度は勇希が震える声で言った。

「短刀の、柄?」

敬介が言われたとおりに見てみると、なにやら文字のようなものが刻まれているのが見える。

「これは…」

「古代文字よ。この短刀には、蘇生禁(きん)厭(えん)呪(じゅ)が…。貫かれた者を蘇生させられない、必ず死に至らしめる呪いがかけられているの」

勇希がつらそうにそう説明した。

「なんだって?!嘘だろ?そんな!それじゃ、満は…」

「本当よ。例えどんなに強力な回復魔法を使っても、彼を助けることは…」

真津子がゆっくり近づきながら、勇希の言葉を肯定する。絶望の言葉が暗い闇に吸い込まれて消えていった。