あや乃古典教室「茜さす紫の杜」

三鷹市&武蔵野市で、大学受験専用の古文・漢文塾を開講しました。古文教師の視点から、季節のいろいろを綴ります。

謡曲「東北」② 

2013-02-24 00:54:26 | 


「東北」の続きです。

「花は根に 鳥は古巣に帰るとて」と、謡にあります。

元々は

漢詩)
-花悔帰根無益悔 鳥期入谷定延期-

書き下し)
-花は根に帰らむことを悔ゆれども 悔ゆるに益なし
 鳥は谷に入らむことを期すれども 定めて期を延ぶらむ-
     (いらむ) (ごすれども)  (ごを)

訳)春が暮れたと思って、花は散ってしまいました。
今年は閏年で春がまだ一月あると知って、
散り落ちたことを悔やんだとしても、もうどうしようもありません。

うぐいすも、三月尽と聞いて谷の古巣に戻ろうと思っていましたが、
きっと出発を一月延ばしたに違いありません。


和漢朗詠集にも収録されており、
「花は根に」「鳥は古巣に」帰るという趣向は、
以後、多くの和歌が引きます。

例えば、以下の崇徳院の和歌が、その代表格です。

-花は根に 鳥はふる巣にかへるなり 春のとまりを知る人ぞなき-
                            (千載集)

謡曲の謡い本は、
先行する古典を巧みに織り込みながら、
情趣を作り出しているという好例かと思っています。

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