読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

従業員への信頼で成り立つ、「奇跡の経営~一週間毎日が週末発想のススメ~」(リカルド・セムラー著)

2009-12-06 06:40:37 | 本;ビジネス
~これまでの企業経営の常識が覆える奇跡の経営。企業なのに組織図がない、階級がない、人事部がないから社員をコントロールするしくみもない、トップには戦略がない……。そんなナイナイ尽くしの会社がブラジルにあるセムコ社だ。にもかかわらず、売り上げは6年間で3500万ドルから2億1200万ドルへと急成長し、社員の離職率はゼロに近いというから驚きだ。本書では、同社のCEOである著者が“世界で最も風変わりな職場を創り上げた哲学とその方法論を明かす。逆説的かつ非常識な彼の経営手法をどうとらえるか、読者の意見が二分しそうな一冊。~

<目次>
第1章 Anyday(どんな日でも)
第2章 Sunday(日曜日)
第3章 Monday(月曜日)
第4章 Tuesday(火曜日)
第5章 Wednesday(水曜日)
第6章 Thursday(木曜日)
第7章 Friday(金曜日)
第8章 Saturday(土曜日)
第9章 Everyday(毎日)


~本書で繰り返し出てくるテーマの一つは、わたし達の生活や仕事のあり方を変えてしまう「状況の変化」に対処するには、コントロールをやめることが絶対的に重要だということです。これは、一見逆のことを言っているように思うかもしれません。しかし、この方法こそが、自由市場と民主制資本主義の価値観に合致するものなのです。

「一週間毎日が週末発想」は、仕事や働く人をコントロールすることをやめ、ビジネス本来の目的に立ち返ろうとするセムコ社の取り組みそのものです。~


~社員が、仕事の範囲を自分自身で決めることができるのであれば、仕事に対する満足度はかなり高まります。セムコ社では、社員に、仕事の責任範囲を押し付けることはしません。一人前のおとなとして、彼らは、仕事で何をすべきか理解すると信じていますし、ガイドラインなどないほうが、彼ら自身が自分のすべき仕事の範囲を、試行錯誤しながら学んでくれます。~(本書より)


リカルド・セムラーの「セムラーイズム」を前職の会社のオーナーから渡されて読んだのが、今から15年前だったと思います。「会社は社員のものであり、会社の目標は利益を上げることではなく、社員全員が幸せになること」という経営哲学、中でも「従業員による経営」には感化されました。

このセムコ社の経営を見ると、ハーブ・ケレハーが創業したアメリカの国内線航空会社「サウスウエスト航空」、やクレド、ホスピタリティで有名なザ・リッツ・カールトンホテルが思い起こされます。これらの企業に共通するのは、従業員一人ひとりに委ねられた権限の大きさですね。


このセムコ社が新規事業に進出する際の三つの基本的な条件は次の通り。

① 進出するビジネスに複雑性、つまり、「高度な技術を要するもの」
② 参入する市場において、わらわれが質の高い企業となること
③ その市場において、われわれがユニークな存在価値を持つこと

また、社員が仕事、個人の生活、精神面の三つのバランスをとれるようにすることは、事業を成功させ、競争優位性を持つための健全な戦略だと述べられます。具体的には、仕事の場所を会社に限定しないというものです。

~20年前になりますが、われわれが、オフィス以外の場所で仕事をすることを決めた当初、われわれの考えに異論を唱える人達が大勢いました。このとき、反対を唱えた人達は、二つの誤った仮説を持っていたのです。

①オフィスに代わって仕事をする場所として、自宅だけを想定していたこと。
②会社や職場が、人にとって唯一の所属場所と考えたこと。


そして、グッドカンパニーからエクセレントカンパニーになるための本物の方程式は、「直観」、「幸運」、「失敗」、「セレンディピティー」。これら四つが、ビジネス上最も大切なコンセプトだといいます。


<「正義の経営」を学ぶ(1)~ブラジル・セムコ社~>
http://ameblo.jp/asongotoh/entry-10048027675.html#main


<奇跡の経営オフィシャルサイト - 奇跡の経営が提唱する社員を幸せにする>
http://www.7dwkend.com/

<「成功者の絶対法則/セレンディピティ」(宮永博史著/祥伝社刊)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/9deeaf5e0b73e15f9f8013bc9aeb2fb2


リカルド・セムラー(Ricardo Semler)
1959年オーストリア生まれ。ブラジルで学生に最も人気の高いコングロマリット企業セムコ社CEO。セムラー氏が21歳で父親から経営を受け継いだとき、セムコ社は倒産の恐れさえある小規模な会社だったが、その後大胆な組織改革によって急成長を遂げる。わずか 6年という短期間で、売上が3,500万ドルから2億1,200万ドルに成長。現在の従業員数は3,000人にのぼる。

その革新的な経営方針と経営手法は、ビジネススクールのケーススタディーに取り上げられ、毎年、世界中の大企業の経営幹部が、セムコ社の成功の秘訣を学ぶために訪れるほど注目度が高い。ハーバード大学の客員教授をはじめ、MITなどアメリカの大学で頻繁に講義をしている。前著『Maverick』(邦題 「セムラーイズム」 新潮社 刊)は、世界中で100万部を超えるベストセラー。



(訳者)
岩元貴久(いわもと・たかひさ)
日米で3つの会社(ソフト開発、ASP事業、マーケティング・コンサルティング)を経営する企業家。特にインターネットマーケィングでは、日本のトップと評され世界レベルの知識と経験を持つ。1990年より米系大手経営コンサルタント会社の東京、クリーブランド、ロサンゼルス、アーバイン事務所に勤務し、
Fortune500企業をクライアントとして持つ。

2000年にアメリカで起業。「好きな場所で暮らし、得意な市場で楽しく仕事をする」ことをモットーとし、本人がこよなく愛するカリフォルニア州オレンジ郡に家族と暮らしながら、2~3ヵ月に1度の割合で日本を訪れる生活をエンジョイしている。

著書として『e の力! 挑戦 e‐business 』 (中央経済社)、『「稼ぐ人」だけが知っている!13の氣づき』 (フォレスト出版)『自動的にお客様が増え続ける仕組みづくりCD版』(日本経営合理化協会)
『情報商人のすすめ』(総合法令出版) などがある。


<備忘録>
コントロールをやめる(P24)、セムラーのビジネス本来の目的(P25)、セムコのアイデンティティ(P28-9)、セムコ・ウェイ(P39)、セムコ社とは(P40)、セムコHR(P42)、新規事業の三つの条件(P42)、マジック・ワード「なぜだろう」(P45)、その手法(P47)、実践されないセムコ社への関心(P49)

自由な時間とは(P55)、本来ののんびりした状態とは(P57)、事業を成功させ、競争優位性を持つための健全な戦略(P61)、人は、より生産的に(62)、二つの誤った仮説(P71)

社員がその魅力的な何かを見つけられ、かつその魅力を高められる組織作りの原則(P90)、企業が発展するには(P92)、変動型給与(P106)、ちょっとだけリタイヤタイム(P108)、社員のことを・・(P116)、セムコの求人広告(P124)

ベルカーブ(P136)、セムコ社経営と労働者の関係(P137)、ジョブ・ローテーションとリバース・エバリューション(P139)、デュー・デリジェンス(P172)、企業のヨーヨー・ダイエット(P173)、Fortunate500(P183)、ハーバードの成功者(P186)、ダ・ヴィンチの制約(P187)

ミッションとクレド(P197)、企業と軍隊(P198)、何が重要か(P200)、オーケストラ・シンフォニー(P202)、5つの給与基準(P282)、カタリスト(P287)、リーダーシップとは(P289)、下からの評価(289)、一人前の大人(P292)、リーダーが英雄になるとき(P299)、直観(P318)、ビジネスプラン(332)、エクセレントカンパニーの本物の方程式(P339)、「どの道でも同じさ」(P340、314)、フォードの価値(P343)、組織がリスクを好んで受け入れるために(P348)、資本主義に引き継がれた共産主義(P351)


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