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日々の出来事から国際情勢まで一刀両断、鋭く斬っていきます。コメントは承認制です。但し、返事は致しませんのでご了承下さい。

私の視点 靖国問題の光と影 A級戦犯の合祀は秘密裡に行なわれた(最新版)

2005-05-26 02:11:52 | Weblog
私の視点 A級戦犯の合祀は秘密裡に行なわれた

☆何故に繰り返される公式参拝発言

 中国の呉儀副首相が23日、訪日日程を早く切り上げ、離日してしまった。その理由を中国側が「緊急の公務のため」と発表していたが、小泉首相以下日本の有力者が相次いで「非礼だ」と不快感を明らかにしたことで中国側も23日夜、「責任は日本政府側にある」と新華社通信を通じて反論、次いで24日に記者会見を行ない、報道官(報道局長に当たる)が強い口調で日本側の対応を非難した。そして、25日になると、中国政府は再び、「公務はあった」と多少歩み寄るかの姿勢を見せたものの、中国のマスコミがこぞって対日批判を展開した。中国という国が、マスコミを支配下に置いていることを考えれば、これは中国政府が日本に対して新たな局面を仕掛けてきたと見るべきであろう。
 両国間の一連の動きを見ていると、これは国交を結んでいる国家間が行なう外交では異例のやり取りだ。この事態は、明らかに今後の日中関係に深刻な影響を与えかねない。今のところは、中国政府も一枚岩というわけではないので最悪の事態にはならないと思うが、様々な要因が否定的に連鎖反応を起こせば、日中の対立、紛争にまで発展してしまう恐れさえある。
 それにしても日本政府の外交ベタにはほとほとあきれる。昨年11月、日中首脳会談で「(靖国参拝は)適切な判断をする」と思わせぶりな発言をして中国側に「小泉首相は理解してくれた。公式参拝、特に8月15日の参拝は避けるだろう」と思わせておきながら、その舌の根も乾かぬうちにまたぞろ中国側の怒りを買う発言をしてしまった。それを契機に高まった反日感情は今年4月、中国の国内事情も絡めながら「反日暴動」という深刻な事態にまで発展した。それに慌てた小泉氏は、ジャカルタで日中首脳会談をやる前に、大戦の反省と謝罪表明をして両国間の関係改善に取り組む姿勢を見せた。にもかかわらず、国会で岡田民主党代表から靖国公式参拝のことを聞かれると、公式参拝して何が悪いと言わんばかりの答弁をしてしまった。そしてあろうことか、自民党の幹事長を中国に送り込み、強硬発言をさせた。
 外交の舞台でこれほど態度を二転三転、発言を猫の目のように変えたら信用問題だ。謝罪や反省をしておきながらその後開き直るのは、中国に喧嘩を売っていると取られても仕方がない。これまで中国国内の対日強硬派を何とか押さえて来た胡錦濤総書記(国家主席)も「これが限界」と、小泉首相との会談を翌日に控えた副首相を帰国させたに違いない。こうなれば、日本が目指している「国連常任理事国入り」どころか、領土問題や天然ガス資源開発を巡る問題でも中国政府が長期にわたって強硬な反日策を打ってくる可能性が高い。

☆内政干渉?

 中国を刺激する発言の中でも自民党の武部幹事長の「内政干渉」発言は深刻なものだ。武部氏は21日、訪問先の中国で共産党の王家瑞対外連絡部長と会談し、中国側の「靖国公式参拝への抗議」を「内政干渉との声がある」と批判した。当初、「声がある」と言ったとは伝えられていなかったが、問題が大きくなって慌てたのか、そのように“訂正”された。しかし、私は、失言癖のある武部氏のことだ、第1報にあった「内政干渉だと語気鋭く迫った」との表現が正確ではないかと勘ぐる。
 武部氏は、内政干渉という言葉が外交においてどれほど重い意味を持つか、恐らく知らずに使ったのではないだろうか。16日の小泉首相の国会答弁「靖国参拝は他の国が干渉すべきでない」を引用したつもりであったと伝えられていることからしてその推測は的を射ていると思う。
 しかし、2つの表現は似て非なるもの。内政干渉は、「他国がある国の内政に干渉して『主権侵害』をする」ことなのだ。中国側にしてみれば、「靖国問題」のどこが内政というところだろう。いや、中国でなくてもそう考えるのが国際社会においては常識だ。
 武部氏はこれまでの政治活動の中で何度も失言している人物だ。私の率直な見方で言えば、「ボキャヒン(語彙のボキャブラリーと貧弱をかけた新造語)」の典型である。
 相手国との交渉を自国に有利に導くために、外交の舞台においては一つの事象を5つ6つの表現方法を使えるくらいの話術が要求される。諸外国の外務大臣を見れば、お分かりいただけると思うが、実に巧みな話術を身につけた人物が多い。一方、「永田町(日本の政界)」では党内事情最優先の「都合人事」で外務大臣になる場合がほとんどだ。だから、日本の歴代の外相は、外務大臣であっても英語がまともに話せない人が多い。日本の政界にはそういった外交に関する専門性を重視する空気はない。というよりも、自民党の政治家であれば、誰でも外相の役割を担えるとの勘違いがある。だから勢い、自民党の政治家が外交の舞台にしゃしゃり出てくることになるのだ。日本の最大与党自民党の幹事長である武部氏もご多分に漏れず「勘違い組」の1人だ。
 そんな武部氏にはまず、内政干渉の意味も知らないのだから、外交の舞台に出る前にもう一度義務教育を受けなおしてきたらいかがかと言いたくなる。それが嫌で内政干渉という意味を知りたいのであれば、ご自身の昨年10月の米大統領選の際に発して物議をかもし出した「次期大統領はブッシュでないと困る」発言をもう一度思い出されるがいい。この失言こそが、まさに内政干渉なのだ。
 
☆靖国問題の底流にあるもの

 それにしてもこの靖国問題。日本の政治家達は、何故にこれほどまでに頑なに参拝を強行するのだろうか。これはただ単に、靖国問題に留まらず、「君が代日の丸」、「歴史教科書」、「憲法改定」など一連の「神国ニッポン」の復活を願っての動きに連動するものと捉えるべきであろう。毎年のように政治家達がアジア諸国からの反発を承知しながら繰り返す「問題発言」にはそのような背景があると見るべきだ。そしてそれらの復古待望論は着実に国民の間に浸透し始めている。
 私の周りで最近、「亡くなった人を慰霊して何が悪いの?」という声を聞くようになった。また、「国旗や国歌は必要でしょ?」「中国や韓国だって自国の視点に基づいた歴史教科書を作っているのでは?」「憲法はアメリカに押し付けられたものじゃない?」という声も年々高まっている。祖父母の世代が行なったアジアへの侵略戦争が間違いなく「遠い過去」になり「不幸な出来事」程度に思われ始めていることの表れなのではないかと私は憂慮する。
 アジア諸国と日本の関係を子供のケンカに例える人が多い。「足を踏まれた痛さ」に訴える人もいる。それらの発言をするTVの解説者などは、被害に遭ったアジア諸国を擁護したつもりになっているかもしれない。確かに、それは「不幸な関係」を一部形容している。だが私はこの辺りにも問題点があるような気がする。
 「子供のケンカ」を引用する見方を具体的に表現すると、ケンカを一方的に仕掛けた子供が、大人に諌められて相手に謝った後、しばらく経つと、「そんなにひどいことをしてないもん」と言い、横柄に振舞う。すると、いじめられた子は、すごく痛かった、それにまたいじめようとしている、と大人に訴える…といった感じになるだろう。
 だが、そんなたとえで済むほどの「過去」であったのか。今一度、アジア諸国に日本が行なったことを思い返していただきたい。
 太平洋戦争では、約2000万人の命が失われた。最近の傾向として、日本人の戦死者に注目が集まるが、これはあくまでも戦争を仕掛けた側の死者であることを忘れるべきではない。最大の犠牲者は旧日本軍に侵略された国や地域の人たちだ。確かに約300万人もの日本人が死亡したが、その5倍以上の約1700万人の犠牲が侵略された側に出ている。その数字を聞いただけで、太平洋戦争がどれほど残虐な戦争であったかが容易に想像がつくはずだ。それだけの人の命を奪った戦争だ。責任者が裁かれて当然と考えるはずだが、いや実際に敗戦直後には日本では誰もがそう考えていたが、時の流れとともに体験者や証言者がこの世を去っていくと、異論を唱える者が出てきた。「あれはなかった、これもでっち上げだ」という始末である。

☆A級戦犯とは-東条とヒトラーの違い

 靖国問題で盛んに使われる「A級戦犯」についても、この言葉自体、その持つ重みが薄れている感がある。太平洋戦争の責任者を裁く「東京裁判」で訴追されたA級戦犯は28名、その内、精神異常や病死者が3名出たので実際に裁かれたのは25名だ。A級と言う位だからB、C級も存在する。それは責任と犯した罪の重さで決められた。B、C級戦犯の合祀については中国は問題にしていない。
 死刑宣告を受けたのは東条英機以下7名、他は終身禁固刑又は懲役刑に処せられた。
 処刑された7名の遺骨は、米軍が東京湾に捨てたとのこと(これについては、如何なものかと考える)だが、一部保守層の人が主張するように「アジア人差別」には当たらない。と言うのは、ナチス・ドイツを裁いた「ニュールンベルグ裁判」で処刑されたA級戦犯の遺骨も河に捨てられている。つまり、誰が太平洋戦争を正当化しようと、世界的にあの戦争は、ヒトラーが引き起こしたナチス・ドイツの欧州侵略戦争と同列に置かれるほど、「史上もっとも悲惨で醜い戦争」であったのだ。つまり、戦争当事者である国々だけでなく、世界のほとんどの国から、東条英機はヒトラーやムッソリーニと並ぶ戦争犯罪人として見られていたのだ。今朝のTV番組でコメンテイターがしたり顔に、「東条英機は、他の2人とは明らかに違う」と発言していたが、こんなレヴェルの低い人間が影響力を考えずにいい加減なことを言うから国民は迷うのだ。東条英機はただの当時の首相ではない。彼は陸軍大将を経て陸軍大臣になり、その勢いを買って首相になり、日本を戦争に導いた男だ。
 東条の擁護をする人間には、私はもう少し歴史を知れと言いたい。「生きて虜囚(りょしゅう)の辱めを受けるな(捕虜になって辱めを受けるくらいなら自決しろ)」との戦陣訓で兵隊達を死に追いやっておきながら、いざ自分のことになるとまるで往生際が悪く、敗戦後、すぐに自決するかと思いきや、米従軍記者の会見に応じ、「私はただの百姓」「私は戦争犯罪人ではない。戦争責任者だ」と“命乞い”をした人間だ。敗戦当時の陸軍大臣や特攻隊の創設者であった海軍中将が責任を取って敗戦直後に潔く自決したのとは大違いだ。確かに、ピストルで自殺を図ったが、それもアメリカ兵の前で、何故か急所を外している。生き延びるための臭い芝居と、当時の国民は冷ややかに見ていた。
 戦後生まれでありながら陸軍将校の父親の影響もあって「軍国少年」であった私に、周りの大人たちが面白がって戦争の話をよくしたが、それらの大人達は口を揃えて東条を「男の屑だ」とののしったものだ。
 その東条英機と13人のA級戦犯を、宗教法人靖国神社は1978年、「昭和殉難者」として秘密裡に合祀した。翌年、新聞報道で明らかになると大騒ぎになった。靖国神社も“正しい”ことと信じるのなら、なぜこそこそと合祀をしたのか。正々堂々と宣言をして実行に移さなかったのか。それは、間違いなく靖国が世論からの批判を恐れていたからだろうが、どこか不純な意図を感じてしまう。
 首相の公式参拝は、戦後間もなくから行なわれてきたことだったが、A級戦犯合祀が明らかになって当時の首相、三木武夫は翌80年、「私人」として参拝するに留めた。そして官房長官の宮澤喜一が公式参拝について「違憲ではないかとの疑いをなお否定できない」との政府統一見解を発表している。
 そう、この時点で、時の日本政府は、A級戦犯が合祀された靖国神社への首相による公式参拝を非公式ながら「問題あり」としているのだ。しかしその後、公式参拝の“復権”が中曽根康弘によって実現されると、ずるずると現在に至っている。中曽根は85年、公式参拝した際に、A級戦犯合祀との関連を記者団から指摘されると、「知らなかった」ととぼけた。

☆靖国を利用する政治家達

 こうして見ると、このような誠実さに欠ける日本政府の対応に、甚大な被害をこうむったアジア諸国が不快感や恐怖感を持つのは当然と思えてくるはずだ。これまでに私は何度も言っているが、日本政府はこの際、過去の過ちについては全面的に認め、歴史教科書などについても被害国とともに共同研究委員会を立ち上げて相互理解を深められるような教科書作りを模索し、地域の発展につながる道を歩むべきだ。いや、日本が誇りある、東アジアにおいて安定した地位を確保するにはそれしか方法がないのではないか。
 最後に、日本の政治家達に言いたいのだが、自らの選挙を視野に入れたパフォーマンスや発言でこれ以上近隣諸国を傷付けることは慎むべきだ。武部、町村といった今回の「存在感のある脇役」がカメラの前で、時折りカメラ目線になりながら語りかける姿を見ていると、日本の将来を考えての発言とはとても思えない。同様の事は、都庁の椅子に座るあの御仁にも言える。マスコミ各社の記者諸君、噂が本当かどうか知らないが、国政に再度打って出ようと言われている石原慎太郎氏に今回のことでマイクを向けることだけはしないように切望する。彼が今回の靖国を舞台にした「三文オペラ」に参加してくれば、事態はますます泥沼化することは目に見えているのだから。












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5 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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アジアと日本 (市絛 三紗)
2005-05-26 18:06:35
こんにちは。



日本は中国もふくめアジアの国々ともっと真剣に話し合うべきだと感じます。互いの主張を曲げなければ、何も変わりません。



今フランスとドイツは共通歴史教科書をつくろうとしています。このことは日本では報道されていないのではないでしょうか。
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靖国参拝問題で (猫介)
2005-05-26 22:04:57
こんばんは。小泉さんには本当に呆れています。今、中国に喧嘩を売っても勝てるわけがないのに。この間のデモであれだけの勢いで来られたら、日本は勝てるわけがありません。中国に経済制裁を加えられたら、日本国民全員餓死することになります。それを考えるともっと違うやり方があると思います。戦前の日本がしてきたことは曲げようのない事実なのですから。政治家の皆さんにはもう少し勉強をして欲しいです。
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ヒィリピンで旧日本兵発見。右向け~右っ! (阿部晋三にちょび髭をつけると誰かに似ている)
2005-05-27 23:32:06
産経新聞がスクープした旧日本陸軍兵士のヒィリピンでの発見が、今日のマスコミをにぎわわせ、政府も動き出したが、、このニュースはだいぶ以前から知られていたことではなかったか?この時期にこのタイミングで、産経新聞がスクープという形をとり、政府が迅速な対応をアピールしているところに、何か良からぬ意図を感じてしまうのは,穿った見方だろうか・・・。マスコミが脳天気に大騒ぎしていることがとても気になる。
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スルドイ! (浅井久仁臣)
2005-05-28 00:14:19
 旧日本兵の情報を知る人としてマスコミに登場している寺嶋芳彦に、私の家人が4月に会っており、その際、「近く旧日本兵の生存のニュースが明らかにされるよ」と言われたとのことです。ですから、阿部さんが言われるように、その明らかにされ方に不自然さを感じています。 

 ただ、解放戦線側にいたということもあり、何らかの「政治的な事情」があることも考えられます。
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あらら (浅井)
2005-05-29 00:25:30
 寺嶋さんを呼び捨てしてしまいました。単なるミスです。申し訳ありませんでした。
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