有田芳生の『酔醒漫録』

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拉致問題解決のための実質ある再調査を

2014-04-01 08:05:39 | 参議院
 (2)安倍政権は「日朝平壌宣言」を基本的立場とすることができるのか。これが日本と北朝鮮との交渉を進める戦略的指針だということを(1)で書きました。それでは今後の日朝交渉をどういう方向で進めればいいのでしょうか。あえていえば戦術的指針です。かつて凍結となった合意があります。2008年6月と8月に福田康夫政権で日朝実務者協議が行われました。その結論だけを記しておきましょう。まずは「6月合意」(北京)です。2日間で合計7時間45分の協議が行われています。内容は(1)拉致問題(2)「よど号」関係者の問題(3)核、ミサイルなどその他の懸案事項(4)不幸な過去の清算問題(5)拉致問題の最終的な解決に向けた行動です。なかでも重要なのは(5)で、「北朝鮮側の行動」と「日本側の行動」が具体的に合意されました。ひとことでいえば「拉致問題は解決済み」と主張してきた北朝鮮が立場を変更し、具体的行動を取ることを約束したのです。

 日本側は「再調査」は、「生存者を発見し、帰国させるための調査である必要がある」と指摘、北朝鮮側もこれに同意したのです。日本側は(1)人的往来の規制解除(2)航空チャーター便の規制解除の措置(3)民間の人道支援物資輸送のために北朝鮮籍船舶が入国する場合には、その限りで認めることを表明しました。「8月合意」(瀋陽)では、さらに「拉致問題に関する調査の具体的態様」が6項目にわたって明らかにされます。たとえば1項目目にはこうあります。「北朝鮮が行う調査は、拉致問題の解決に向けた具体的行動をとるため、すなわち生存者を発見し帰国させるための、拉致被害者に関する全面的な調査になること」。さらにこの調査が政府認定の拉致被害者にとどまらないことも確認されました。

 日本側は、北朝鮮側がこの「調査を開始することと同時に」「6月合意」の(1)(2)を実施する用意があり、双方が措置を取る具体的タイミングを調整していくことが決まったのです。それが2008年8月12日のことでした。ところが福田首相は9月1日に辞任を表明します。日朝の合意は自然消滅することになりました。歴史に「もし」はありません。しかし拉致問題の再調査が行われていればどうなっていたでしょうか。いまとは異なる情況が生まれていたかもしれません。安倍政権の日朝交渉は、少なくとも2008年合意にまで戻らなければなりません。2002年に5人の拉致被害者を帰国させたものの、杜撰な「死亡」通知で、日本の世論は反北朝鮮で染まっていきました。在日朝鮮人へのヘイトスピーチが異常に高まった発端でもあります。

 あれから12年。幻の2008年合意を経て、ようやく6年前のスタート地点に立つことができるかもしれません。何度も強調しなければならないのは、被害者家族と被害者の高齢化です。もしかしたら「ラストチャンス」かもしれません。安倍政権は何をもって「拉致問題の解決」というのか。具体的な指針をもって大胆な外交を進めてもらいたいものです。横田早紀江さんは何度かこう語っています。「私たちは運動のためにめぐみを返せと言っているのではありません。死亡したという根拠が崩れているから生存を信じて頑張っているのです。本当のことが知りたい。その覚悟をもって訴えているのです」。(4/1)



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