迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

毒の快楽。

2017-05-21 08:55:31 | 浮世見聞記
新橋古本まつりを覗きに行くと、付近の新橋ビル脇で大盤将棋大会をやってゐた。

観光地のお土産屋などに売っている通行手形のやうな特大駒でさす様子は、豪快といふよりコントを見てゐるやうであった。



夜は上野広小路亭で、快楽亭ブラックの“毒”演会を覗ひてみる。



かつては立川談志一門で、百年以上昔に存在した外国人噺家の芸名を二代目として継ひでゐる彼は、アメリカ人とのハーフらしい。

なかなか破天荒な経歴の持ち主だが、落語は本格的な古典派。

前半は「犬の目」、そして上方落語らしく関西弁をつかった「算段の平兵衛」の二席を、たて続けに披露。

中入り後は「宿屋仇」、そして最後に“月丘夢路追悼落語”として、六代目圓生の二番目弟子だった噺家を主役に据ゑた「芝浜」のパロディーを聴かせた。

「月丘夢路といっても、今日いらしたお客さんで知ってゐる人は、あまりいないかもしれません」

とブラック師が初めに言ってゐたが─事実、客席の大半が『……?』な雰囲気だった─、わたしもずいぶん前に確か都内の名画座で、長谷川一夫主演の「一本刀土俵入」に、お蔦役で出演してゐるのを見たぐらゐだ。

その月丘夢路が“パロディー「芝浜」”に出てくるので追悼演題に選んだ、とのことで、確かに出てくるが、ほとんどこじつけだったのはご愛嬌。

さりながら、原典をよく活かした絶妙なサゲに、この噺家のタダものではないセンスを垣間見て、「今日は来てみてよかった」と、久しぶりに楽しい気分を味わふ。
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