たちさりがたきふぜいこそ。

2017-05-15 17:01:23 | 浮世見聞記
金沢文庫の特別展「国宝 金沢文庫展」を見る。

昨年夏、金沢文庫が管理する称名寺伝来の古文書類約二万点が、国宝に指定されたことを記念した展示会。

さりながら、目的は金沢北条氏四代の肖像画を見ることにあり。

実時によって確立した金沢北条氏は、二代顕時の子、三代貞顕が執権となって全盛期を迎へるが、ほどなく子息の四代貞将もろとも、鎌倉幕府滅亡と運命を共にする─

幕府が風前の灯火のなか、幕府の能吏として絶頂を極めた一族の運命の皮肉さを、思わずにはゐられない。

金沢貞顕は高時のあとを受けて執権となったものの、元来が穏健な性格であったために混迷する情勢を御しきれず、わずか十日で辞任してしまふ。

“政権が安定してる時にこそ手腕が発揮できるタイプ”

とは、後世の歴史家の評価だ。

また、わたしが学生時代に好んで見てゐたNHK大河ドラマ「太平記」では、金沢貞顕役を故•児玉清さんがイメージ通りに好演されてゐたことを思ひ出す。



金沢文庫をあとにし、隧道を抜けて、池辺の菖蒲が見頃を迎へてゐる称名寺のお庭に立ち寄る。



風にそよぐ若葉の音。

お庭を訪れた人々の会話。

子どもたちの嬌声──


時代の荒波をいくつも乗り越えた末の達観した静けさが、それらをゆったりと包み込む。


この風情こそが、

金沢北条氏が後世にのこした、

いちばんの、

“宝”ではなゐだらうか。
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