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原初美術の誕生 15 : 先行していたもの 前編

2013年04月22日 | 連載完 原初美術の誕生

< 南アフリカのブロンボス洞窟、右手中腹に洞窟入口、現世人類が10万年前に生活 >

前回まで、35000年前のヨーロッパ氷河期以降、世界の原初美術を見て来ました。

しかしそれ以前の500万年の間、人類は美術を作らなかったのでしょうか。

今回は、この謎に迫ります。




< 最古の人物像 >

Aはイスラエルのベルカハットで見つかった23~70万年前の高さ4cmの赤い凝灰岩製人物像。
Bはモロッコのタン・タンで見つかった30~50万年前の高さ6cmの石英製人物像です。表面に赤いオーカーが付着していた。
両方共、原人が作ったと考えられる。

遙か昔、現世人類への進化途上の原人が美術創作を行っていたのです。




< アフリカ最古の絵 >
これはナミビアのアポロ11洞窟で見つかった約24000年前の石板に描かれた動物図です。

アフリカ南端で、ヨーロッパ氷河期美術とほぼ並行して創作が行われていたのです。





< 加工し大切に扱われたもの  >

Aはイスラエルの洞窟(Skhūl),で見つかった10~14万年前の最古の貝殻製ビーズです。
Bは南アフリカのブロンボスで見つかった75000年以上前の直線模様が刻まれたオーカー(黄土)の一つです。この現世人類が生活していた洞窟からは8千点のオーカーが出土し、中に先端を尖らせたクレヨンが12本見つかった。黄色と茶色の中間色から赤まであったが、使用頻度の高い色は赤であった。
最も古い使用痕のあるオーカーはアフリカのザンビアで見つかり、25万年前のものです。
Cはハンガリーのネアンデルタール人遺跡(タタ)で見つかった象牙製プレートで、赤いオーカーが塗られていた。これは入念に作られ、長期間繰り返し儀式などに使われたと推測される。

この加工されたビーズやプレート、オーカーの出現は何を意味するのでしょうか?
これは「美術とは何か」と深く関わっています。

赤色のオーカーと人類の関わりにその答えがありそうです。





< 埋葬と赤色 >

Aはオーストリアで見つかった27000年前の幼児2体の埋葬で、赤いオーカーが撒かれている。37000年前以降のクロマニヨン人の埋葬では、死者はアクセサリーを付け、オーカーが撒かれていることがある。ネアンデルタール人は7万年前以降、埋葬を行っていたが、赤色顔料を塗った遺体が、ベルギーの洞窟(spy)などヨーロッパ各地で見られる。ヨーロッパの洞窟絵画にもオーカーは使用されていた。

Bは5世紀、日本の亀山古墳の墓室も赤く塗られていた。この赤は鉱石から取り出された水銀と硫黄の化合物で作られた。

このようにして見てくると、世界各地で遙か昔より古代まで、赤色は単に顔料と言うよりは、重要な意味を持っていたようです。

次回、この意味を説き明かしたいと思います。



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