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お奨め本 :チンパンジー/フランス・ドゥ・ヴァールの著作

2012年05月26日 | 読書・映画・ドラマ
 彼は著名な動物行動学者で、特にチンパンジーの社会行動を活写することにかけては追従を許さない。なぜチンパンジーなのか? それはチンパンジーの社会行動と知能がずば抜けて優れていることにある。それらを理解出来れば、人間の心と社会行動の起源がわかるかもしれない。少なくとも読者は、「人間だけが素晴らしい知能を持っている」という奢りを捨てることが出来るに違いない。

 彼の本を奨める理由は、そのおもしろさにある。特に「チンパンジーの政治学」1998年刊(原典1979年)、がおもしろい。これは自然に似せた広大な飼育場で、20頭ほどのチンパンジーがボス交代を巡って大騒ぎをする様子を描いている。そこで繰り広げられる駆け引きはまさに人間と同じである。名前を付けられた当事者達が、半年から数年かけて政変劇を繰り広げ、ボスは栄枯盛衰を味わうことになる。一匹の豪傑だけが活躍するのではなく、多くの仲間の離反や協力が世代交代を進めることになる。



<ウィキペディアから転載>

 チンパンジーの他の研究にはアフリカのジャングルでの野外観察、研究棟での心理実験があるが、それぞれ一長一短がある。彼の方法が優れているのは、一望出来る展望台から群れの全行動をほぼ連続して観察出来ることにある。ジャングルは自然ではあるが、遮蔽物の為に観察は難しい。ただ批判もある。彼の記述は、それらの行動をあまりにも恣意的に表現しているとされる。確かにそれらにインタビュー出来ないので、確かめる方法はない。しかし他の研究と照合すれば、決して造り話と否定出来ないだろう。

 彼の他の本を紹介します。「利己的なサル、他人を思いやるサル」1998年刊。この本は多くの霊長類から広く社会行動の事例を収集している。「共感の時代へ」2010刊「THE AGE OF EMPATHY」。これは最新の本で、共感が如何に動物達に普遍的に備わっているかを語ってくれている。

社会正義や仁愛は、孔子やイエスが訴える遙か昔から存在していた。


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