信じる。

私は高校生の頃、どうして大人になると、本気で笑わなくなるんだろうと不思議だった。
私の周囲の大人たちは
それは両親や施設の看護師さんや医師や
私の周囲の大人たちは、いつも笑顔ではいたけれど、本当に心から笑ってはいないと私は感じていて、
それがとても不思議で、そうなるのが大人なら大人になることがとても怖いと感じていた。
素直に自分の気持ちを、
ありがとうとか
大好きだよとか
うれしいよとか
それはとても悲しいよとか
たくさんたくさんの気持ちを感じているはずなのに言葉にはせず
自分の中に閉じ込めてしまっている気がして、なんだか悲しかった。
ある時「あぁこれこそが大人になると感じられなくなることなんだ」と不思議とわかった出来事があって、私は「この気持ちを決して忘れないでいよう」と強く思っていたのに、
その出来事がなんだったかすら今は思い出せない。
大人になるって、怖いね。
きっと子供の頃はその言葉を発したあとに何が返ってくるかなんて先はあまり読めなくて、
だから素直に思ったことや感じたことを言葉に出せるんだと思う。

だから私は
せめて私は、
心を堅い殻で覆い隠すことはせずに
傷つくこともあるだろうけれど
だけど自分の気持ちを
感じたことを
素直に言葉にしたいと思って、
ありがとうとか大好きだよとかが
どうか伝わりますようにと願って、
本を出すことを決めた。
本当は怖いけど、
とてもとても怖いけど、
だけどきっと伝わる何かはあると信じて。
信じて。