映画批評&アニメ

◆ シネマ独断寸評 ◆

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映画寸評「太陽の下で ー真実の北朝鮮ー」

2017年02月03日 09時31分13秒 | 映画寸評

太陽の下で-真実の北朝鮮-」(2015年 チェコ・ロシア・独・ラトビア・北朝鮮)
 監督 ヴィタリー・マンスキー

明らかな「やらせ」の裏を撮ったとて
(以下、ネタばらし有り)

ロシアの監督が北朝鮮の庶民家庭の生活をドキュメンタリーで撮ろうとし、実際には全て北朝鮮側の監督の演出に基づくものを撮らされるので、隠し撮りをしてそれを映画にしたものだそうだ。北朝鮮の隠された真実が描かれているという宣伝につられて観たのが大失敗。

確かに、隠し撮りしたフィルムはその実態を暴いており、食事時のたわいない会話にもセリフが指示され、「アクション」という掛け声でシーンが始まるのには笑ってしまうが、そのようなシーンが続くのかと思うとそうではなく、8割がたは基になる映画を見せられるのである。主人公の幼い少女がエリートのための「少年団」に入り、その授業風景や、金日成の誕生日である「太陽節」に向けてのダンスの練習が描かれる。さらに青年たちの同儀式に向けての行進練習などを延々と見せられる。その中で物事のいちいちに「われらが敬愛する金日成大元帥様」のおかげという注釈がつけられ、街中に飾られた金父子の写真や銅像に皆が順番にお辞儀をしていくシーンが繰り返され、退屈そのものでうんざりさせられる。隠し撮りのシーンとしては、上記の食事場面の他は、工場の一つの班の成果発表の場面、少年団の一人が足を負傷したことにして皆が病院へ見舞いに行く場面、ラストで主人公の少女が思わず涙をこぼす場面、くらいのものである。

監督が2年間かけて粘り強く撮影許可の交渉をしたそうだが、そもそも監督はそれによって北朝鮮の真実が撮れると思っていたのだろうか。一般の一家族といってもそれは北朝鮮の指定した家族になるのが目に見えているではないか。不特定多数の家族を撮るのならまだしもだが。いかにもドキュメンタリー映画に見えるものが実は「やらせ」であり、その裏を撮ったフィルムなら見る価値があるが、どう考えても「やらせ」でしかないものの裏をいっしょに見せられても特に面白くはないはずだ。ついでながら、「やらせ」であるのは冒頭の食事シーンでセリフに関係なく、とても食べきれない量の豪華な食卓を見ただけで誰にでもわかるであろう。

総合評価 ①  [ 評価基準: (⑥まれにみる大傑作)⑤傑作 ④かなり面白い ③十分観られる ②観ても良いがあまり面白くはない ①金返せ (0 論外。物投げろ)]


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