映画批評&アニメ

◆ シネマ独断寸評 ◆

基本は脚本(お話)を重視しています。
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映画寸評「THE GREY 凍える太陽」

2012年09月30日 17時33分11秒 | 映画寸評

THE GREY 凍える太陽」2012年 米)
 
監督 ジョー・カーナハン

 リアリティに欠けるサバイバル
 

 
極寒のアラスカでの飛行機事故で生き残った、石油採掘現場で働く男たちのサバイバルを描いたもの。望み薄の救助隊を待つよりは歩いて生還しようと行動するが、野生狼に襲われ次々と犠牲者が出る。飢えと極寒もある極限状況の中でいかに生き延びることが出来るか、という興味で観衆をひきつける話である。

狼などから作業員を守るのが仕事であった射撃の名手オットウェイ(リーアム・ニーソン)がリーダーとなり、その知識を生かすことになるのだが、その内容は余りにお粗末である。狼がどのような時に人間を襲うのか、例えば1人で居るのと数人で居るのでは大きく違うのか、火をどの程度恐れるのか、昼夜の違いはどうか、森と雪原の違いはどうなのか、群れが一斉に襲いかかることはあるのか、について合理的な説明はほとんど無いに等しい。したがって単に狼から逃げるしかないのか、多少でも戦う意味があるのかについてもはっきりしない。そして突然狼が襲ってきた時にオットウェイの発する号令は「走れ」のみなのである。結局、単に成り行きでうろうろしているだけのように見えてしまう。また、飢えと寒さとの戦い、と言いながらもそちらの面は全く問題となっていない。特に、川に落ちてずぶぬれになり、それだけで命の危機であろうと思われる場面で、ほとんど堪えていないかのような描かれかたは、余りにリアリティが無さ過ぎる。

しかし一面、サバイバルの中で、男たちは自らの生きる意味を問いかけるのであり、ある者は石油採掘現場での不本意な生活に生きる価値を見い出せず、オットウェイ自身も最愛の女性を失って自殺を考えたりした直後のことである。そしてやはり、それぞれの愛する人たちとの繋がりにその意味を見ようとするのであり、それ故、死んだ仲間たちのために写真などの入った財布を持ち帰ろうと試みる。これらの行動が極限の状況の中で、掘り下げは不十分ながらもシリアスな重みを見せる。

完成度は低いが、厳しい自然の描写などで十分見ることはできた。

 総合評価 ③ [ 評価基準: (⑥まれにみる大傑作) ⑤傑作 ④かなり面白い ③十分観られる ②観ても良いがあまり面白くはない ①金返せ (0 論外。物投げろ)]