映画批評&アニメ

◆ シネマ独断寸評 ◆

基本は脚本(お話)を重視しています。
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映画寸評「密偵」

2017年12月14日 11時52分09秒 | 映画寸評

「密偵」(2016年・韓国)
監督 キム・ジウン

武装独立闘争のスパイアクション
(以下、ネタばらし有り)

日本統治下の1920年頃に韓国で実在した武装独立闘争組織「義烈団」を描いたスパイアクション。義烈団のメンバー3人が骨董の仏像を売りに行った屋敷で、大人数の警官隊に包囲され、逃亡を試みて逮捕されるまでの冒頭が、屋根の上を走る警官たちを俯瞰するシーンを効果的に使ったスピーディな展開でまず惹き込む。

義烈団の団長、チョン・チェサン(イ・ビョンホン)の逮捕を焦る日本警察の東部長(鶴見辰吾)の指令で、部下の韓国人警官イ・ジョンチュル(ソン・ガンホ)は義烈団リーダーのキム・ウジン(コン・ユ)に接近する。二人が親しくなるが、義烈団はもともとチョンを協力者にしようと目論んでいたのであり、イ・ジョンチュルは言わば二重スパイの立場となる。職務への忠誠と祖国への思いに板挟みになった警官の葛藤をソン・ガンホが好演しており、彼の心が結局どちら側に付いたことになるのかは終盤まではっきりとはしない。

舞台は韓国の地方都市から上海、そして上海から京城(現ソウル)へ向かう列車、京城とテンポよく移り、特に閉じられた空間である列車内の攻防がサスペンスフルで大いに楽しめる。裏切者を突きとめる手法もなかなか良く出来ている。義烈団が爆弾を運ぶ目的の列車は何とか京城まで着くが、結局、京城駅で見破られて一味は捕まり、その場は逃げおおせたキムも隠れていた山小屋で逮捕される。それぞれの場面で山場と言えるようなアクションが繰り広げられ、意外な理由も付加されて上出来の展開である。義烈団はキムたちが逮捕されてそれで終わるのかと思ったが、そこからもう一段、総督府爆破という結末に向けてイ・ジョンチュルが動き、その成功というところまでを描いているので一種のハッピーエンドである。実際はやがて義烈団も消滅し、日本による統治は日本の敗戦まで続くことになるのではあるが。

イが裁判で述べた言葉の真相も最後で明らかにされ、虐げられた民族の気持ちを鼓舞する形でのカタルシスが得られるものとなっている。韓国で大ヒットしたとのことであるが、日韓対立等を抜きに楽しめる作品である。コン・ユや鶴見辰吾も好演しているが、イの同僚で職務に忠実で偏執的な雰囲気を見せるハシモト役のオム・テグが印象的であった。

総合評価 ⑤  [ 評価基準(⑥まれにみる大傑作)⑤傑作 ④かなり面白い ③十分観られる ②観ても良いがあまり面白くはない ①金返せ (0 論外。物投げろ)]